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米軍:野蛮の思考回路(2) / ダール・ジャマイル
The US Military: A Mindset of Barbarism, Part 2 / Dahr Jamail
http://dahrjamailiraq.com/the-us-military-a-mindset-of-barbarismpart-2
kmasuoka 2010-02-21 11:43:03
2009年 2月9日 トゥルースアウト
ステパン・メストロビック博士とのインタビュー
昨日、「トゥルースアウト」ではステパン・メストロビック博士とのインタビュー第一部を紹介
した。メストロビック博士はテキサスA&M大学の社会学教授で、イラクにおける米軍の違法行
為に関する本を三冊上梓している:『アブグレイブ裁判:恥と名誉をめぐる専門家証人の報告』
、『交戦規定? イラク鉄の三角形作戦』、『「善良なる兵士」の裁判:イラク鉄の三角形作戦
における米軍の不法行為をめぐる社会学的研究』である。彼はハーバード大学で取得した臨床心
理学修士号を含め三つの学位を持っており、イラクで戦争犯罪を犯したとして告発された米軍兵
士にかかわる第32条審問 [軍事裁判審問]、軍法会議、減刑審問などのいくつかの審問で心理
学および社会学の専門家証人を務めてきた。アブグレイブ・スキャンダルに関与した看守の 裁判
にも専門家証人として出廷した。
メストロビック博士はこれらの本で、米軍が組織として機能不全に陥っていること、軍階層の頂
点にいる将校や政治家たちが不法な交戦規定を発布しながら、そ の規定と命令に従って任務を遂
行した下位の兵士だけが処罰されていることを入念に記録している。例えば、メストロビック博
士が専門家証人として出席した 聴聞会の一つで、米軍兵士たちは、自宅から出てきた武器をもた
ない75歳の老人を射殺したことを率直に認めたが、「兵役年齢男子」はすべて撃つという規則
に従っていたという理由で、兵士たちも将校連も、罪を問われなかった。
トゥルースアウトによるインタビューの第二部でメストロビック博士は交戦規定の不当性、イラ
ク「鉄の三角地帯」作戦、今日の米軍に蔓延する残虐さ、そしてそれらを解決する見通しを語る
。「鉄の三角地帯」作戦の中で、米軍兵士たちは伝説的なアメリカ人大佐マイケル・スティール
の指令のもとでイラク人拘留者を殺害した。2006年5月9日、イラクのいわゆる「スンニ派
三角地帯」で展開した作戦時に拘束した武器を持たない3人のイラク人男性を米軍兵士たちが処
刑したのである。関与した米兵数人は軍法会議にかけられ投獄されたが、軍内にはスティール大
佐こそが最大の責任者であると言う者もいる。
トゥルースアウト:「交線規定」についてはどうお考えですか? どのように決まるのでしょう
か? 戦場で実際に機能するよう期待されているのでしょうか? 明らかに機能していないとし
て、それはなぜですか?
メストロビック博士:現在のところ、十分な情報がないので、第一の質問にはお答えできません
。交戦規定をどう定めるのか、実際にどのような表現になっているかは、謎なのです。「鉄の三
角地帯」作戦で殺害を犯したとして告発された兵士をめぐる軍法会議の場で、政府は実際の交戦
規定の書面を証拠として提出することを禁じました。これが交戦規定だと兵士が聞いたことにつ
いて口頭で証言することを認めただけなのです。兵士たちは、「兵役年齢の男子全員を殺す」命
令だったと証言しました。その命令を出したとされる旅団長マイケル・D・スティール大佐は証
言も反対尋問も拒み続けているので、お尋ねの質問には永遠にお答えできないかもしれません。
恐らく、交戦規定がどのように決められ発効されるのか彼は知っているでしょうが。
では、そうした交戦規定は戦場で実際に機能すると思われていたでしょうか? ここでも、司令
官とペンタゴンの高官たちがこれらの交戦規定について全般に何を考えていたかに関して公開さ
れた情報が十分にないのです。くだんの交戦規定に限ってならば、具体的にお答えできると思い
ます。2009年11月5日、ナタニエル・ジョンソン大佐がバージニア州アレクサンドリアで
行なわれたウィリアム・ハンセーカーの減刑審問で証言しました。ジョンソン大佐はスティール
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大佐の大隊司令官の一人で、軍法会議を開催した「召喚官憲」の一人です。私は、ジョンソン大
佐の驚くべき証言を直接聞きました。彼の証言によると、スティール大佐は大隊司令官から曹長
に至るまで、自分の命令に同意しなかったり命令に疑問を呈する部下を常に解任すると脅し続け
ることで、「中毒性の命令風土」を作り上げたというのです。ジョンソンがあげた一例ですが、
スティールが兵士たちに「我々は威嚇射撃は行わない」と言っているなら、ジョンソンは部下に
「威嚇射撃を行う」と言っただろうというのです。司令官の間で一触即発の齟齬があり不満が高
まっているために兵士たちが混乱したのは明らかです。
明らかに、現場で兵士たちがこの交戦規定を遂行するならば、多くの問題に直面します。標的が
子どもを抱いているときや、女性の後ろに隠れているときはどうすればよいのか? 実際、そう
した状況は非常に多かったので、米軍はそのような標的、すなわち殺されないように人間の盾を
使っているゲリラを「戦術訓練ポイント」と呼んでいたのです。そのようなとき、兵士たちはど
うすべきでしょう? 威嚇射撃を行なうべきでしょうか? 発砲して負傷させるべきでしょうか
? 捕虜にすべきでしょうか? どんな結果になるとしても命令を実行するのでしょうか? 戦
闘の真っ最中に兵士たちが法学者のように振舞い、どうすべきかを議論する余裕がないことは常
識からわかります。戦闘で、こうした状況がどのくらい頻繁に起きたかはわかりません。わかっ
ているのは、ジョンソン大佐が兵士たちは混乱していたと証言し、ハンセーカーの刑期はすでに
これまでに勤めた期間で十分とすべきで、また、立場を普通除隊扱いにして退役兵士福祉を得て
PTSDの治療を受けられるようにすべきだと勧告したことです。減刑委員会はその勧告を無視
し、減刑も説明も与えませんでした。
交戦規定が機能しない理由は簡単です。「標的」が抽象的なものではなく、実際の人間で、標的
ではない女性や子ども、民間人などと一緒にいるからです。ですから、「標的を殺す」ときには
ほとんど常に罪のない民間人も「殺す」ことになります。さらに、標的は「情報」に基づいて事
前に特定されています。けれども、私が調査したすべてのケースで、いわゆるところのそうした
『情報」が出鱈目だったことがわかりました。アブグレイブのケースについて、米国政府は現在
、拘留者の90パーセントはテロリストでもゲリラでも何でもなく、アメリカ人にとっての脅威
でも何でもなかったことを認めています。「鉄の三角地帯」作戦でも、米国政府は、「標的」が
実際に「悪党」だったのか、何の罪もない農夫だったのか決して確認しようとしませんでした。
処刑すべき標的を前もって決める権限を持つ秘密の「情報源」は一体どんな者たちなのでしょう
? そうした「情報源」についても、そこから得られた「情報」を使うプロセスについても、知
られていることはほとんどまったくありません。イラクでもアフガニスタンでも、罪のない人々
が誤ってあるいはこうした作戦で殺されると、地元の住民たちがアメリカ人を憎み出すことだけ
ははっきりしていますが。
けれども、繰り返しますが、軍は民主的な社会ではないので、こうした重大問題についてのセミ
ナーや議論、公開討論などが開催されるとは思えません。これらの問題はほとんど隠蔽され、軍
法会議の過程を通して与えられるわずかな機会に部分的に表面化するに過ぎません。その一方で
、米国は民主的な社会ですから、人々は自分たちの名のもとに実行されている交戦規定について
知る権利があります。
トゥルースアウト:この虐殺を引き起こすことになった「鉄の三角地帯」作戦についてお調べに
なって、何がわかりましたか?
メストロビック博士:そこが問題です。殺人は日常的に起こっていたようで、残虐行為と考えら
れてさえいなかったようなのです。兵士たちが私に語ったところでは、指定された「標的」を殺
す任務に送り出されることは日常茶飯事だったのです。店員を見つけ出して妻と子どもたちの前
で殺したと生々しく語った兵士たちもいます。法廷記録にも「殺せ=殺せ」命令----標的に降伏す
る選択肢を与えない命令です(降伏する選択肢を与える場合は「殺せ=拘束せよ」命令)----につ
いての証言があります。実質上、作戦使命の多くは、チェイニー副大統領が在職中に言った「処
刑部隊」の任務だったようです。ですから、軍や政府、兵士たちにとって、こうした作戦任務は
「残虐行為」と見なされていなかったのです。
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「鉄の三角地帯」作戦中に起きたこの一つの事件が他と違っているとしても、兵士たちが犯した
行為が違っているわけではありません。法廷文書も示しているように、投獄されることとなった
兵士たちが作戦任務を遂行していたとき、別の小隊が別のところで同様の作戦任務を遂行してい
たのです。小隊長ホーン中尉は部下の兵士たちに「皆殺しにせよ」との命令を下したと言われて
いますが、こちらの作戦任務で兵士たちが犯した殺人については誰一人処罰されていません。
ですから、問題は、ハンセーカーとクラーゲット、ジルアードが告発されて投獄されたのはなぜ
か、ということになります。答えの一部は判事の冒頭弁論と最終弁論の中にあります。どうやら
、米軍は世界に向けて、自分たちは敵よりまともだという「メッセージ」を送りたかったような
のです。そのための一手段として米軍は周期的に一部の兵士を投獄することで戦争犯罪は許容し
ないという見せかけの申し開きをしているのです。実際には、日常化している「殺せ=殺せ」命
令そのものが戦争犯罪に該当するのですが。言い方を変えるならば、このケースおよび関連する
殺害のケースには政治的な意図があったということで、起訴される兵士たちは任意に選ばれてお
り、軍はそうした兵士たちを使い捨てと見なしているということです。
CNNが「バグダード運河殺人」と呼んだ同様の殺人のケースでは(「バグダード運河殺人」の
ハイパーリンクは「http://www.cnn.com/2009/US/11/17/army.tapes.canal.killings/index.html)、
小隊全部が殺害に関与したことはよく知られていますが、起訴されたのはたった3人です。兵士
の一人ヨシュア・ハートソンはCNNに対し、自分も投獄されるべきだと思うと述べていますが
、政府は彼と兵士仲間たちを投獄するかわりに起訴猶予とし、起訴対象としてピックアップした
兵士たちに対する不利な証言をさせたのです。
これらのケースすべてで、法廷では数十もの「残虐行為」が扱われたのですが、誰も起訴されな
かったという点が重要です。アブグレイブで最悪の残虐行為は情報部員が尋問室で行なったもの
で、中には尋問で殺された拘留者もいるのですが、米国政府は手を回してこれらの事件を軍法会
議の対象からはずさせたのです。私が調べたすべてのケースで、宣誓陳述書は起訴された事件と
同様の事件を数十報告していますが、それらの事件に対して言及がなされたところはすべて証言
から除外されているのです。「残虐行為」および戦争犯罪と定義され処罰される行為と無視され
る行為については、確実に、政治的意図を持った現実の「社会的構築」が行なわれているようで
す。
トゥルースアウト:イラクとアフガニスタンで、こうした事件はどれだけ蔓延しているとお考え
ですか?
メストロビック博士:秘密の交戦規定と交戦規定の制定プロセスを誰一人知ることができないと
しても、「鉄の三角地帯」作戦で使われたと同様の交戦規定が、アフガニスタンも含め現在も使
われていることは明らかです。数多くのニュースが報じているように、アフガニスタンとパキス
タンで米国政府は「情報」に基づいて事前に指定された人間の標的を殺すために無人航空機を使
っています。ニュースは、その過程で女性や子ども、民間人も殺されていることを日常的に報じ
ています。無人航空機という機械は、米軍兵士とまったく同じ使われ方をしているのです。つま
り、「鉄の三角地帯」作戦で適用されたと同じ交戦規定を適用するためです。ちなみに、報道に
よると、米国の遠隔操作地区に座り無人航空機による作戦を操作している者たちは、現場で戦闘
に参加する兵士たちよりも早くPTSDになるとのことです。
我々は「ポストモダン」技術を使って「シミュラクル」兵士と任務を遂行することに魅せられて
いるようです。「標的」は画面上のイメージになります。けれども、現場で対面していようと遠
隔操作の「シミュラクル」であろうと、同じ交戦規定を遂行しているのは実在の人間なのです。
そして、兵士たちの犠牲も民間人の犠牲も「シミュラクル」ではなく、まったき現実なのです。
トゥルースアウト:海外に派遣された兵士たちが国際法に従って振舞うようにするために、軍は
どうしなくてはならないでしょうか。
メストロビック博士:もっとも大切なのは、米国政府が国際法に従う決断をすること、そして兵
士たちが命令に従うことです。いずれにせよ、兵卒たちは常に命令に従っています。結局のとこ
ろ、ニュルンベルク原則の文言と精神に従うことです。ニュルンベルク裁判の冒頭弁論で、米国
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の主任検察官ロバート・ジャクソンは次のように言っています。「人類の常識は、法が末端の者
たちによる軽犯罪を罰するところで止まってはならないことを求めている。法の手は強大な権力
を手にしそれを意図的かつ体系的に用いて悪をなし、世界中に影響を及ぼした者たちにも及ばな
くてはならない」。ジャクソンが述べた「常識」という言葉を強調したいと思います。彼は法律
家でしたが、法を参照しなかったのです。というのも、法はしばしばそうした犯罪を正当化する
ために法律談義を持ち出すものですから。彼は「常識」を持ち出しました。これはプラグマティ
ズムの哲学者たち(ウィリアム・ジェームズ、ジョン・デューイ、ジョージ・ハーバート・ミー
ド)の「常識」という語の用法と共鳴するものです。すなわち、法的にどう正当化しようと、積
極的な敵意を見せていない人々を殺すのは悪いことだと誰もが知っているのです。ジャクソンが
言う「末端の者たち」は、この場合は、フォート・レベンワースに送られ指揮系統の上位にいる
文民および軍人司令官の命令を遂行する兵卒たちです。事実として、アブグレイブから「鉄の三
角地帯」作戦に至るまで、現在の戦争の中で戦争犯罪で起訴された将校はただの一人もいません
。ニュルンベルク原則とはまったく逆に、米国政府は「末端の者たち」すなわち兵卒だけを起訴
し投獄しているのです。
ジャクソンはまた特に戦争犯罪で起訴されるべき者として「自らは直接手を汚さない、地位と身
分のある者たち」を挙げています。米国が、残虐行為を引き起こすことになった政策と交戦規定
を制定した罪で大佐や将軍、文民高官を起訴する日がくることは予見できません。過去1世紀間
に、米国ではそのような動きをめぐる前例は一つもありません。米国が、最後に部下の兵士たち
が犯した残虐行為について上級将校を起訴したのは1860年、悪名高いアンダーソンビル監獄---南北戦争時に南部連合の兵士たちが体系的に北軍兵士たちを殲滅した場所です----の司令官を絞
首刑にしたときです。けれども、同様の状況で、米国政府はわざわざ手を尽くして「地位と身分
のある者たち」を守ってきたのです。例えば、1943年のビスカリ虐殺が起きたのは、ほぼ確
実に、ジョージ・パットン将軍が演説の中で兵士たちに捕虜を取らないよう、慈悲を見せないよ
う語ったことから引き起こされたものです(実際、パットン将軍が部下に向けて行なった演説と
スティール大佐が部下に向けて行なった演説はとてもよく似ています)。けれどもパットンは起
訴されず、かわりにウェスト軍曹が終身刑を言い渡され、コンプトン大尉はパットンの命令に従
っていただけという理由で無罪となりました。同様に、歴史家の多くが、ソンミ村虐殺事件では
カリー中尉が「捜査破壊」作戦のスケープゴートにされたと見なしています。
概して、米国は民主主義に基づくにもかかわらず、命令責任原則という確立した原則に訴えて、
その命令により残虐行為を引き起こすことになった「地位と身分のある者たち」を起訴していま
せん。改めて言いますが、これは軍事問題や法律問題にとどまるものではなく、より広い文化的
な問題なのです。最近のウォールストリート暴落でも、現在の経済危機を引き起こした「泥棒王
」たち(ソースタイン・ベブレンの言葉です)は責任を逃れたばかりか、自分たちだけご褒美ま
で手にしています。一方、多くの平均的なアメリカ人が家や仕事、未来を失っています。泥棒王
たちの判断が誤っていたためです。政府はウォールストリートの企業救済に乗り出しましたが、
一般のアメリカ人の救済は行なっていません。今日の米軍でも、同様の原則が働いているようで
す。スティール大佐が出した交戦規定により「鉄の三角地帯」作戦の悲劇が起きたにもかかわら
ず、大佐はそのまま無事引退してあらゆる福祉を受け取るでしょう。一方、彼の命令を遂行した
下級の兵士たちは刑務所に入れられています。アメリカにおけるこうしたエリート主義と民主主
義の文化的乖離はすでに例えば『The Power Elite and White Collar』を書いたC・ライト・ミル
ズのような社会学者によって研究されています。けれども、大きな文化的覚醒がなければ、アメ
リカ文化に見られるこの奇妙な様相が近い将来変わることはなさそうです。
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