新しい地域社会のパラダイムへの挑戦

【巻頭言】
新しい地域社会のパラダイムへの挑戦
理事長 道上 正
現在我が国は第三の社会改革の波に突入し
起こり、「失われた10年」ともあるいは「失
てきました。言うまでもなく第一の波は1868
われた25年」とも言われて経済の停滞を余議
年の明治維新である。この時、ちょんまげ頭
なくされている。そのような社会の閉塞感を
から散切り頭、着物から洋服、武家社会から
打破しようとして国民は自らの手で自民党か
大衆社会、幕府から政府、地方分散型藩政か
ら民主党への政権交代の選択を遂げた。
ら中央集権型国家に大きくパラダイム変化を
その時点がまさに2009年の平成維新と言わ
遂げた。列強各国が植民地政策を進める中で、
れている第三の改革の波である。歴代の政府
我が国は何とか列強各国からの植民地化を阻
は右肩上がりの上昇経済の下、公共事業を中
止しようとした強い意思が第一の波を起こし
心とした地方への配分をテコにして、均衡あ
た。多少の路線の対立はあったものの大きな
る国土の発展と政局の安定化を図ってきた。
混乱もなく社会の改革を成し遂げた。大河ド
しかしそれが崩壊して、現在「コンクリート
ラマで話題になっている「龍馬伝」や「坂の
から人へ」のスローガンの下、新しい時代へ
上の雲」で活躍した下級武士や庶民の力があ
向かって進もうとしている。もちろんこのよ
らゆる分野で明治・大正時代の山を形作って
うな改革時には多少の混乱はあるが、間違い
きた。しかしその栄えた社会も第二次世界大
なく新しい社会へのパラダイムシフトが起こ
戦で露と消えた。
っていると考えられる。
第二の改革の波は敗戦の1945年から始まっ
鳥取県でもこのような国の流れを受けて地
た。戦前の軍国主義国家から民主主義国家、
域の活性化と新しい県の姿を模索している。
これは我が国に対してアメリカが強力に進め
それは地域の「自立と連携」であり、このス
た民主主義であったが、当時の国民にとって
ローガンの下で現下の不況を克服しようとし
は涙の出るほどの素晴らしい贈物であった。
ている。具体的には新しい交通網の整備と相
国是は「富国強兵」ではなく、
「富国」一辺
まって、産業の活性化、広域観光への模索、
倒にパラダイムシフトを図って、全国民が総
中山間地の新しい生き方、中心商店街の活性
力をその一点に結集した。その結果世界に類
化方策など地域の諸課題の解決を図ろうとし
のない戦後復興と経済大国になった。世界の
ている。本センターも県と連携しながら地域
奇跡であると絶賛された。経済面では戦後の
社会の物心両面の豊かさを獲得するため、シ
重厚長大型産業から軽薄短少型産業へと需要
ンクタンクとしての専門性を生かし、
「地域
の波をうまくとらえながら国家経済を経営し
連携」を軸にしながら社会のコーディネータ
てきた。だが、20世紀末から中国をはじめと
にならんと活動しているので、忌憚のないご
するアジア諸国の台頭で国内産業の空洞化が
指導を賜りたいと念じています。
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