潤滑油・グリース

潤滑油・グリース
1
石油精製と製品の用途
蒸留とは、原油を熱し、その蒸気をそれぞれ
沸点の異なる範囲ごとに分離することです。
沸点の低いものから高いものへと順に取り
出されます。
常圧蒸留塔
この操作によって、ガソリン、灯油、軽油、
潤滑油、残渣物に分別されます。
減圧蒸留塔
減圧蒸留では、常圧(大気圧)に比べて真空に近く減圧して
蒸留するため、この名称がついてます。
2
潤滑油のはたらき
機械の互いに接触する金属間に油の膜をつくり、直接接触しないようにする
ことによって、摩耗、焼付きを防止し、機械の効率を高めること。
乾燥摩擦
二つの固体表面間に
「潤 滑 剤 の 介 在 し な い 」
摩
擦
境界摩擦
(境 界 潤 滑 )
流体摩擦
(流 体 潤 滑 )
二つの固体表面間に
「潤 滑 剤 が 介 在 す る」
摩
擦
二つの固体表面間に
「流 体 膜 が 介 在 す る」
摩
擦
トラブルの発生源、
潤滑剤の腕の見せ所
摩擦・摩耗が極少
3
ストライベック線図
ストライベック線図は、軸受の摩擦係数μが荷重W・相対速度V・潤滑油の粘度ηに
よってどのように変化するかを表した線図です。
この曲線から潤滑は、3つの領域に区分されることがわかります。
流体潤滑:潤滑油膜があるために固体面どうしの接触はありません。
混合潤滑:一部は流体潤滑、一部は境界潤滑の状態。
境界潤滑:油膜厚さが小さく、荷重がほとんど表面突起部で支えられている状態。
(金属接触している)
4
流体潤滑の原理
相対する2面間に流体潤滑膜が形成される機構は、すべり軸受の場合にはくさび効果、
固体表面が伸び縮みして2面間に流体潤滑膜が形成される場合を伸縮効果、2面が互
いに近づく際に油膜が形成される場合を絞り膜効果といっています。
くさび効果
絞り効果
5
潤滑剤の種類
潤滑剤の種類
流体潤滑剤
潤滑油(多くは鉱油)
鉱油(石油の精製)
合成油
水系潤滑材(水基系)
動・植物油(油脂)
半固体潤滑剤
固体潤滑剤
グリース
二硫化モリブデン
グラファイト(黒鉛)等
潤滑剤は、潤滑油、グリース、固体潤滑剤 の3つに大別されます
6
潤滑油に求められる基本性能
①潤滑作用
軸受や歯車、あるいは すべり案内面など、互いに接触する二つの金属間に油膜を
つくって双方の滑りをスムーズにする作用。
②減摩作用
互いに接触する二つの金属間に薄い油膜をつくって、直接接触させないことにより、
摩耗を防ぐ作用。
③冷却作用
金属加工時、また機械の高速回転部分で発生する摩擦熱を取除き、高温部分を
冷却する作用。
④密封作用
エンジンなど、機械内部のすき間を油の膜で密封して、圧縮された混合気をもたらさ
ない作用。
⑤さび止め作用
金属表面を覆って、金属表面が空気中の酸素や水分と直接接触するのを防ぐこと
により、さびの発生を防止する作用。
⑥防塵作用
外部よりゴミが入るのを防ぐ作用。
⑦清浄作用
エンジンなどの高温運転で発生するスラッジ、沈殿物をオイル中に分散させ、機械
内部を清浄に保つ作用。
⑧動力伝達作用
密閉した容器内の液体の一部に圧力を加えると「どこでも、同時に同じ圧力が伝た
わる」というパスカルの原理を応用した作用。油圧式ブレーキ、油圧プレス、射出成
型機などで使用される油圧作動油の最も重要なはたらき。
7
潤滑油の構造と基油の種類
潤滑油の構造
潤滑油は、基油(ベースオイルを呼ぶ方が多い)と添加剤で構成されています。
大きく分けると,鉱油系と合成油系とに分類されます。
2.化学合成基油
ナフサ
高粘度
指数基油
分子組替
鉱物油
鉱物
基油
水素化分解
4.高粘度基油
化学合成 +
基油
または
3.部分合成基油
鉱物
基油
合成
鉱物油
化学分解
1.鉱物基油
精製
基油の種類
化学合成
基油
部分
合成油
高粘度
指数基油
潤滑油の基油の多くは、鉱油ですが、一部の用途には合成油、動・植物油、水性潤滑剤
も用いられます。
最近では、合成潤滑油が高温・極圧用に多く使われるようになってきました。
8
潤滑油の構成(添加剤)
潤滑油は基油と添加剤で構成されています。
添加剤とは、潤滑剤の性能や寿命を向上させる目的で潤滑剤に添加するものをいい、様々な添
加剤が使用されています。
すべり面が流体潤滑状態に保たれていれば、相対運動面に与える性能は、潤滑油の主要構成成
分である基油の粘度によって決定されます。
機械の起動時等や荷重条件により、混合潤滑状態や境界潤滑状態になることがあります。
このように相対運動面が近接しているようなしゅう動条件のもとでは、潤滑油に特別な化学物質で
ある添加剤を混入します。
潤滑油の基油に混入して境界潤滑性能を向上させる添加剤の代表的なものが、油性向上剤と
極圧添加剤です。
油性向上剤は、その分子が固体表面に化学吸着によって膜を形成し、境界潤滑性能を発揮しま
す。この吸着膜は固体表面がある温度以上になると、表面にとどまっていることができずに、潤滑
性を失います。この温度を転移温度といいます。
極圧添加剤は、固体表面と化学反応を起こして潤滑性の優れた膜を形成します。
この極圧添加剤は化学反応に関与するため、固体表面の温度が高い条件下で効果を発揮します。
添加剤については、次ページを参照してください。
9
潤滑油添加剤の種類
種
類
耐荷重
添加剤
目
的
構
添加量%
摩擦面に油膜を作り、摩擦や摩耗を防ぐ。
0.1~1
耐摩耗
摩耗を減らす
摩擦面に反応して融点の低い皮膜を作り、摩耗を減らす。
0.5~2
極圧
境界潤滑時の焼付を防ぐ
油の酸化を遅らせる
酸化防止剤
清浄
分散剤
機
摩擦摩耗を減らす
油性
清浄剤
(金属系)
分散剤
(無灰系)
1~10
油が劣化すると酸性成分や重合により生成する不溶物が生成し、性
能低下・粘度増加・腐食・油路閉塞・汚染等を引き起こす。連鎖反応
停止型と過酸化物分解型がある。
0.05~1
エンジン運転中に生成する不溶物(す
内燃機関において、高温にさらされたり、燃料の不完全燃焼物及び
す、劣化生成物を分散し酸を中和し、 燃料中の硫黄化合物が燃焼して生ずる硫酸が油中に混入すると不
エンジンを清浄にする
要物を生成する。これがエンジン各部に堆積あるいは析出すると摩耗
促進等を引き起こす。界面活性剤の堆積を利用
不溶物(すす、劣化生成物)を分散
する
温度よる粘度変化を小さくする
低温で縮まっていた高分子が、温度上昇に伴い膨張し増粘効果が
大きくなり、温度上昇に伴う粘度低下を補う
0.005~
0.01
流動点降下剤
油中のろう分の結晶固化を防止し
流動点を下げる
結晶成長の方向性を利用
0.1~ 0.5
錆止め剤
金属表面の保護皮膜を作り、錆の
発生を防止する
極性基を金属面に向けて吸着し、水と酸素の浸入を防ぐ。金属表面
に付着した水を置換する。界面活性剤の機構を利用
0.1~1
腐食防止剤
金属の腐食防止
金属と反応し表面に保護膜を形成する
0.05~2
泡消し剤
油中の泡の発生を防ぎ、消泡作用
をする
発泡現象は、機械の損傷(潤滑性低下)・効率低下・油自身の劣化
促進の原因となる。水と他油との混合、圧力の急激な変化、空気噛
みこみなどの要因がある。一般に粘度が大きいほど泡はたちやすい
乳化剤
油と水のエマルジョンを作る
界面活性剤の機構を利用
粘度指数向上剤
10
粘度の単位
石油の粘度を表わす場合は通常,絶対粘度を密度で除した動粘度が使用される。
動粘度の単位は従来,cSt(センチストークス)を用いていたが,
現在はSI単位で表示することになっておりmm2/sで表わされる。
従来の単位とSI単位の関係は次のようになる。
従来単位
SI単位
cSt
mm2/s
P
Pa・s
cP
mPa・s
動粘度
絶対粘度
換 算 率
1cSt=1mm2/s
1P=1×10-1 Pa・s
1cP=1mPa・s
一般潤滑油は、IS0 VG ○○
車両用は、SAE粘度の ○○ W で表わします。
11
粘度
粘度の測定法
油の温度を規定温度にして
油が線Aから線Bまで落ちるの
に要する時間で計測
一般潤滑油は、40℃
車両量は、100℃
を基準としています。
粘度の概念
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温度と粘度
温度によって、粘度は変わる
粘度の大きな特徴は、温度によって変化することです。
たとえば、冬場にエンジンがかかりにくいのは寒さの影響で
粘度が高くなすからです。
夏より冬のほうがねばいのは、寒さのために粘度が高くなり、
オイルがスムーズに流れにくくなるからです。
グラフは、あるオイルの粘度と温度の関係を示したものです。
40℃では90平方ミリメートル・パー・セコンドですが、100℃では
20平方ミリメートル・パー・セコンドの粘度です。このように、粘度
は使用温度によって変わってくるものです。
13
粘度指数
<粘度指数(VI:Viscosity Index)>
オイルは温度によって粘度が変わる。
この変化の度合いがあまりにも大きいと潤滑油としては
非常に扱いずらくなり、性能も十分に発揮できません。
温度による粘度変化が少ないものが性能的にも優れている。
この粘度変化の度合いを示す値が、「粘度指数(VI:Viscosity
Index)」 で、温度による粘度変化が少ないことを粘度指数が
高い、一方、粘度変化の度合いが大きいものを粘度指数が
低いと言います。
(例)機械の適正粘度範囲が指示されている場合。
100℃の動粘度が同じで、粘度指数の異なる、A油、B油 二つの潤滑油があったとき、
機械の適正粘度に対して、温度による粘度変化が少ないB油の方が使用温度範囲が広い。
A油は温度範囲が 40~100℃、B油は 20~100℃ で使用可能です。
B油の方が、A油と比べ高性能潤滑油と言えます。
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潤滑剤の一般性状
項
目
意
動粘度
密度
質量・容量換算、粘度換算、他油種の
混入の判定
引火点
取り扱い火災予防の目安、異種油(燃
料を含む混入の判定、蒸発性の目安
流動点
低温側の使用温度限界の目安
絶縁破壊電圧の低下、潤滑性低下、乳
化、劣化促進、発錆、エステル油の加水分
解等を起こさないための監視
水分
夾雑物
不溶解分
義
適油選定の基準、劣化判定の目安、異
種油の混入の判定
油の劣化生成物+金属摩耗粉
+塵埃等の無機物
トルエン不溶解分
金属摩耗粉+塵埃等の無機物
色相
全塩基価
炎を近づけて一瞬引火するのが引火点、
継続的に引火するのが燃焼点、自然に発
火するのが発火点。一般的には燃焼点は
引火点より20~60℃高い。また引火点にも
開放式と密封式でデータに差がある
使用油の汚れ、劣化判定の目安
ペンタン不溶解分
全酸価
潤滑油に作用したせん断応力とせん断速度と
の比を粘度といい、動粘度は粘度を密度で
割った値であり、潤滑油が質量の作用で流動
するときの抵抗の大きさを表す。
【粘度(mPa・s または cP)】
【動粘度(mm2/sまたはSt】×【密度(g/cm2)】
(油の劣化生成物)
=(ペンタン不溶解分)-(トルエン不溶解分)
基油精製度の目安、劣化判定の目安
添加剤残存量の目安、劣化判定の目安
添加剤残存量の目安(エンジン油の酸中
和・清浄性を示す尺度)
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鉱油系潤滑油の性質と用途
名称
性質
用途
スピンドル油
潤滑油の中で最も低粘度
沸騰点が最も低く樹脂化しない
高速・軽荷重向き
工作機械の高速部分
マシン油
一般機械の潤滑油として最も広く用いられる。
一般産業機械の軸受
低速軽荷重滑り軸受
ギヤー油
極圧添加剤を含み、粘度は中~高
油膜構成力大
歯車装置用
一般高荷重用
タービン油
純鉱物油の優秀な油。耐久性良
乳化しない。酸化変質し難い
舶用タービン、減速機、
ポンプ、油圧
モービル油
モータ油
高温化で、粘度が大きく低下しない
引火点高い、弁にたまる炭化物少ない
小型内燃機関の内部の
潤滑
冷凍機油
凝固点低い。粘度が低い、水・アンモニアに混
ぜても乳化しない
アンモニア冷凍機、製氷機
の内部潤滑
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ギヤ油の選定方法
歯車に使用する潤滑油は、滑りによる摩擦や摩耗を低減するために
極圧剤が添加されています。また、衝撃やすべりによる油膜切れを防
ぐため高粘度油がよく使用されます。
歯車の種類
使用条件
平歯車、ハスバ歯車、
カサ歯車
軽荷重
R&Oタイプギヤー油
該当油種
重荷重
EPタイプギヤー油
ウオームギヤ
使用条件を
問わず
コンパウンドタイプギヤー油または
EPタイプギヤー油の粘度の高い油
ハイポイドギヤ
〃
ハイポイドギヤ用ギヤー油
開放式歯車
〃
開放ギヤ用ギヤー油
R&Oタイプ:精製されたベースオイルに錆止め剤(Rust Inhibitor)と
酸化防止剤(Oxidation inhibitor)が添加された潤滑油
EP:極圧(Extreme Pressure)剤が入った潤滑剤
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給油方式
18
油の白濁①
運転していると油が、白く濁ることがあります。
白くなる原因は
1.空気(気泡)の混入
2.水分の混入
があります。
戻り管
泡が発生
空気が混入する要因
1.吸入側の配管が弛んでいるため油ポンプが空気を吸込んでいる。
油
2.油タンクの吸入管がより高く空気を吸込んでいる。
3.戻り管が油面より高いので戻った油が空気を巻き込んでいる。
空気の混入によるトラブル
戻り管が油面より
高い場合
1.空気は圧縮性があるので、振動・騒音の原因となる。
2.歯面など接触面の油膜が切れる恐れがある。
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油の白濁②
水が混入する要因
水分は外部から水が直接混入する以外に、空気中の湿気が影響します。
運転するとギヤーケースの温度が上がり、内部の空気が膨張し空気が
ケース内よりでます。運転停止すると、ギヤケースの温度が下がり内部の
空気は収縮し、外部空気が侵入します。環境によっては水分が混入します。
水分混入によるトラブル
1.錆の発生
2.油中の水分により、油膜切れによる焼きつき
3.潤滑油の劣化
潤滑油の劣化と水分量の規定
油の中の水分量が、0.2%を超えると酸化劣化が促進されます。
よって、一般に潤滑油の水分量の許容値は0.1%とされています。
20
気泡と水分の見分け方
1.気泡混入による白濁の場合
容器に入れて放置しておくと、気泡は油より軽いので下部より澄んでくる。
1~2時間で透明になります。
2.水分混入による白濁の場合
容器に入れて放置して24時間たっても上部がわずかに透明になる程度
(乳化していると水と油は分離しない。)
空気が混入した場合
水分が混入した場合
21
グリースについて
22
グリース潤滑の利点と欠点
利
点
①滴下・飛散僅少。長期間補給せず潤滑が可能。製品、機械等の汚損防止可。
②異物混入防止。グリース自体がシールの役目をし、腐触性ガス、水、ごみなどの
侵入防止、潤滑面保護。潤滑部のシール構造を簡単にすることが可能。
③給油困難な箇所や、給油回数の多い所に有利。
④使用温度が広範囲。広範囲の潤滑条件でも一種類のグリースで間に合う。
⑤低速,高荷重に対しても良好な潤滑性。
⑥長期保存可能、潤滑部のさび、腐食を防止。
欠
点
①給油、交換などの取扱い困難。
②水、ごみなどが混入した場合の除去困難。
③撹拌抵抗が大。発熱し易く冷却効果小。
④高速回転には余り向かない。
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グリースと潤滑油との比較
グリース
潤滑油
回転速度
超高速は困難
(dn値に制限有り)
あらゆる速度に可
回転抵抗
回転初期は比較的大
小
冷却効果
小
大
漏れ
循環装置
少
多
単純(軸受だけで可)
複雑
必要油量
少
多
補給間隔
比較的長い(無補給)
比較的短い
24
グリースの構造と成分
グリース:ベアリングなどに用いられている軸受の潤滑剤。
潤滑油が「液体」であるのに対して 「半固体」。
グリースの構造
①潤滑油基油(ベースオイル)
石油系潤滑油がメイン。用途により、シリコン油、
ジエステルなど合成油も使用。
②増稠(ぞうちょう)剤
潤滑油基油に均一に分散させて、グリースを固体、
半固体状にする。石けん系(リチウム、カルシウム
など)がメイン、高温用などの特殊用途用に
非石けん系(ウレア、ベントンなど)あり。
増稠(ぞうちょう)剤
添加剤
基油
図1.グリースの構造
③添加剤
潤滑油と同様に、グリースにも酸化防止剤、さび
止め剤、耐荷重添加剤などの各種添加剤を配合。
図2.グリースの顕微鏡写真
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増ちょう剤
金属石けん
複合金属
石けん
リチウム
常用120℃で使用可。耐水性、せん断安定性に優れ、万能グ
リースとして多用
ナトリウム
高温で使用後、冷却すると硬化する。常用100℃まで可。
耐水性及びせん断安定性不良
カルシウム
構造維持に水分が必要で、常60℃で使用可。耐水性良好だ
が、せん断安定性は不良。条件の厳しくない、一般用途で使用
(安価)
リチウム
耐熱性に優れる。特に目立った欠点はない。
カルシウム
耐熱性に優れる。大気中の水分で表面が硬化する傾向がある。
アルミニウム
耐熱性優れる。高温で軟化す傾向がある。
脂肪族ウレア
ウレア
脂環式ウレア
高温での安定性、油分離が少ない。耐水性も良好。
芳香族ウレア
ベントン
シリカエアロゲル
耐熱性に優れる。だだし、200℃以上では多量の残さを残し、
潤滑性を失う
耐熱性に優れる。耐水性、錆止め性は不良。
26
グリースの種類
種類1
適正温度範囲
用途別
種別
備
考
ちょう度番号
1種
1号,2号,3号,4号
-10~60℃
鉱油とカルシューム石ケンからなQり、耐熱性はないが耐水性がある。旧カップ
グリース
2種
2号,4号
-10~100℃
鉱油とナトリューム石ケンからなり、耐水性はないが、やや耐熱性がある。旧
ファイバーグリース
1種
1号,2号,3号
-20~100℃
鉱油とリチウム石ケンからなる汎用型で自動車用にも適用されることがある。
2種
0号,1号,2号
-40~80℃
鉱油あるいは合成油とリチウム石ケンからなる低温用グリース
3種
1号,2号,3号
-30~130℃
鉱油あるいは合成油とリチウム石ケン、あるいは非石ケン増ちょう剤からなる
長寿命、広範囲用
自動車シャーシグリース
1種
00号,0号,1号,2号
-10~60℃
鉱油とカルシューム石ケンからなるシャーシグリース
自動車用ベアリンググ
リース
1種
2号,3号
-2~120℃
鉱油と主としてリチウム石ケンからなる耐熱性のよいグリース
集中給脂用
グリース
1種
00号,0号,1号
-10~60℃
主として鉱油とカルシューム石ケンからなる集中給油式中荷重軸受用
2種
0号,1号,2号
-10~100℃
主として鉱油とリチウム石ケンからなる集中給油式中荷重軸受用
3種
0号,1号,2号
-10~60℃
主として鉱油とカルシューム石ケン及び極圧添加剤からなる集中給油式高荷
重軸受用
4種
0号,1号,2号
-10~100℃
主として鉱油とリチウム石ケン及び極圧添加剤からなる集中給油式高荷
重軸受用
高荷重用グリース
1種
0号,1号,2号,3号,
-10~100℃
鉱油と増ちょう剤及び固体潤滑油からなり衝撃を伴う高荷重軸受。しゅう
動面用
ギヤコンパウンド
1種
1号,2号,3号,
-10~100℃
鉱油とアスファルトからなる粘ちょうな潤滑油でオープンギヤ及びワイヤロープ用
一般グリース
ころがり軸受用
グリース
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グリースの温度と荷重条件
極圧条件 磨耗条件
荷重条件
Li石けん基
極圧グリース
(固体潤滑剤)
Li石けん基
極圧グリース
(極圧剤添加)
Ca石けん基
グリース
(カップグリース)
Li石けん基グリース
(万能型グリース)
60
複合Ca石けん基グ
リース
複合Li石けん基
複合Al石けん基
有機化ベントナイト
100
ポリウレアグ
リース
150
温度条件 ℃
高温・高荷重は、合成・複合グリスを使用する
28
グリースの硬さ(ちょう度)
ちょう度番号
分類
軟
潤滑油
グリース
動粘度
ちょう度
硬
ちょう度番号
ちょう度
000号
445~475
00号
400~430
0号
355~385
1号
310~340
2号
265~295
3号
220~250
ちょう度大(軟):低荷重・低速回転・軸受温度の低い場所
ちょう度小(硬):高荷重・高速回転・軸受温度の低い場所
(高速回転でグリスが遠心力で飛散しない様にする)
※潤滑油と使用方法が違う
29
ちょう度試験法
ちょう度計
試験容器に入れ、平らにならしたグリースに規定の円すいを
5秒間落下させ,その貫入深さ(mm)を10倍にしたもの
数値が大きいほど軟らかく,小さいほど硬い
ちょう度=侵入深さ×10
30
グリースの管理基準
項
目
目的
管
理
基
準
新油に対して±30~50
ちょう度
グリースの変質程度を知る
ヘキサン不溶分
基油の損失(蒸発,分離),その他潤
滑油の混入程度を知る
鉄分量
軸受等の摩耗量を間接的に知る
酸価
グリースの酸化劣化程度を知る
-
0.5~1.0%以下
3.0mgKOH/g 以下
(IRで代替1710cm-1)
IR
水分量
水,じん埃,その他異物の混入を知る
-
元素分析
外観の変化
硬さの変化
: 目視で変化、乳化、異物の有無。
摩耗状況の確認 (はく離、フレッチング、ピッチング etc.)
: 触視で確認。軟化、硬化の確認
31
グリースの混合安定性
種類の違うグリスは基本的に混ぜてはいけない
ベントン
ウレア
Li石けん
Li石けん Ca石けん Na石けん Al石けん
○
△
×
×
×
△
Ca石けん
△
○
△
△
×
-
Na石けん
×
△
○
△
×
△
Al石けん
×
△
△
○
×
△
ベントン
×
×
×
×
○
×
ウレア
△
-
△
△
×
○
○:一般に両方の性質に応じた変化をする
△:かけはなれた変化をすることもある
×:著しくかけはなれた変化をする
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固体潤滑剤
固体潤滑剤は、以下の条件で用いる
(1)潤滑油、グリースの代用品、
(2)潤滑油、グリースの添加剤、
(3)潤滑油、グリースが使用できない条件下での潤滑剤
代表的な固体潤滑剤の諸特性
摩擦係数
種類
層状固体
潤滑剤
高分子
潤滑剤
軟金属
潤滑剤
その他
材料
融点又は昇
華点℃
大気中
真空又は不活
性ガス
使用温度範囲℃
使用形態
大気中
真空又は不
活性ガス
物
体
皮
膜
複合材
MoS2
>1800
0.05~0.25
0.02~0.10
-200~350
~800
○
○
○
グラファイト
>3500
0.10~0.30
潤滑性悪い
~450
-
○
○
○
327
0.02~0.15
0.02~0.15
-250~280
-250~200
○
○
○
0.02~0.10
0.02~0.10
50~350
50~300
○
○
PTFE
ポリイミド
銀
960
潤滑性悪い
0.10~0.30
-
~450
○
○
鉛
320
0.10~0.30
0.05~0.30
-250~200
-250~150
○
○
0.10~0.25
0.10~0.25
250~900
250~900
○
○
CaF2
※単体として使用する場合、複合材の場合、温度範囲は拡大する
33
固体潤滑剤
二硫化モリブデン(MoS2)やグラファイトで代表される固体潤滑剤は相対運動す
る材料表面の損傷を防止したり、摩擦・摩耗を低減するために粉末または薄膜
で利用される固体です。高荷重、高温、衝撃荷重下などの厳しい潤滑条件で
は、特にその効果が発揮される。
1.潤滑油・グリスに混ぜる
2.乾性潤滑剤として使用
代表例:モリコート
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固体潤滑剤(四フッ化エチレン PTFE)
PTFEはプラスチックの一種であり、二硫化モリブデンやグラファイトよりも軟ら
かく、プラスチック材料などの軟らかい材料の潤滑に適しています。
PTFEは大気中から真空まで潤滑性に変化が少なく、耐薬品性に優れている
などの特性があります。
耐熱性や耐荷重性でみると、二硫化モリブデンやグラファイトほど、過酷な条
件では使用できない。
代表例:DUブッシュ
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