「人工地盤緑化のための建物構造と荷重の考え方

屋上緑化コーディネーター資格登録者への情報提供その 6
特定非営利活動法人
屋上開発研究会
屋上緑化コーディネーターのためのスキルアップ研修
『豊島区役所と池袋西武から学ぶ新しい屋上緑化のかたち』に関する報告
(文責
屋上開発研究会
資格部会
橘大介)
■はじめに
屋上緑化コーディネーターのためのスキルアップ研修として、「豊島区役所と池袋西武から学ぶ新し
い屋上緑化のかたち」というテーマで研修会が開催された。実施概要は次のとおりである。
・開催日時:2015 年 7 月 29 日(水)14 時 00 分~16 時 30 分
・研修場所:豊島区役所および池袋西武
・研修目的:今回の研修は、最近竣工したばかりの新しい屋上緑化および壁面緑化施設を見学するこ
とによって、最新の設計・施工技術の進化について考察を加えることを目的として実施された。(写真
1~2参照)。
・研修参加者:30有余名(スタッフ含む)
・講師:(株)日比谷アメニス
比嘉栄太朗氏
ほか2名並びに松本薫氏(屋上開発研究会)
写真1 松本講師による概要説明(豊島区役所)
写真2 比嘉講師による概要説明(池袋西武)
■研修内容について
【1】豊島区役所
建築家隈研吾氏の新庁舎(建築)設計コンセプト、平賀達也氏の緑の設計コンセプトなどは、としま
特集版 5 月号、豊島区庁舎エコミューゼガイド、Forest Guide などに詳細が記述されている。したがっ
てそれら資料を参照すればよいので、ここでは割愛し、著者、緑化技術にかかわる有識者並びに当日の
見学者が抱いた感想(見学のポイント)などを中心に、以下紹介することとした。
① 10階
台地の自然環境
大変素晴らしい景観が展開されており、ゆっくりと憩える空間が演出されていると感じた(写真
3 参照)。個人的に一番感心したのは、小川の造り込み方である。越流堰を設けることで水深を確保
するとともに、流速を落とし、水循環停止時の水位確保も可能にしている。このやり方は土木技術
者的発想であり、よく練られていると感じた(写真 4 参照)。一方残念に感じたのは、園路通路資材
の小口処理ができていないこと、護岸の固定方法に工夫が足りないこと、糸状藻類の発生低減を狙
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った水域内への土壌利用の制限などであり、きれいな屋上緑化やビオトープの設えとしてはちょっ
とがっかりするところもあった(写真 4 参照)
。屋上緑化後進国(おっと失礼!)においてでさえ、
最近ではきれいな納まりになっている。またすぐに訂正が必要と感じたものに、植物名板の記載ミ
スがあった。一般の方々が楽しく「何の木が植わっているのだろう」と、名板をご覧になるのに、
間違った名板では美しい施設を台無しにしてしまうといっても過言ではない。植栽時に十分な確認
ができていなかったのであだろうか。
写真3 素晴らしい景観の10階
写真4 良いところと悪いところが共存する園内
② 8階、6階、4階の自然環境(緑化)について
きれいではあるのだが、見た目やコンセプトにこだわるあまり、選定樹種、植栽密度などに若干
の疑問を抱く有識者の方々が多くおられたように感じた。つまりこのエリアで外の景色を見せなが
ら、高木類を小さなコンテナに密植して永続した美しさをどういった管理で維持されていくのかと
いうことである(写真 5~7 参照)。一方、植栽基盤造成型の壁面緑化は、風圧力などに対する安全
性が十分確保されているようであり、構造設計者の立場からは納得のいく造り込みになっていた(写
真 8 参照)。
いずれにしても同豊島区役所新庁舎緑化施設は、大変良い緑化空間であることに間違いなく、今
後どのような維持管理がなされていくかおおいに期待したい。
写真5 高木類の密植状況
写真6 剪定は切返剪定を旨とする
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写真 7 不連続の小さいプランターへの植栽
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写真 8 構造面で十分配慮された壁面緑化
【2】池袋西武
本日 2 つ目の事例が池袋西武本店 9 階にある「食と緑の空中庭園」である。屋上面積は約 5,800 ㎡あ
り、レストラン&バー、フードカート、各種ショップ、屋上庭園などがある。屋上庭園には、睡蓮の庭、
壁面緑化、グラスフィールドなどがあり、そのうち前 2 者がその中心として位置づけられている。それ
ぞれの概要は以下のとおりである。
① 睡蓮の庭
睡蓮の庭は、モネやセザンヌなどの絵画を彷彿とさせる設えを施こしたものである(写真 9 参照)。
既存建物の比較的大きな水辺ということで、構造補強や水域の造り込みなどにかなりの工夫が施さ
れていることに感心した。景観的にも万人受けする庭園である一方、著者の好きな花卉類も多く植
栽され、トンボなども舞う、憩いの空間になっていた。
② 壁面緑化
3 つのタイプの壁面緑化が設置されており、いずれも基盤造成型で、独立壁を美しく見せる形式
である(写真 10 参照)。豊島区役所の壁面緑化と同様に、構造的にしっかりとした植栽基盤システ
ムが採用されていた。近年こういった安全に留意した壁面緑化システムが増えたことをうれしく思
う。
写真 9 美しい睡蓮の庭
写真 10 同じく構造面で十分配慮された壁面緑化
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■おわりに
今回の研修では、最新の屋上緑化を 2 事例見学させていただいた。いずれの事例も見学して楽しめる
空間に設えられていた。豊島区役所では、屋上緑化空間を見学するだけでなく、エイトリアム、外構な
どにもみるべきものが多かった(写真 11~12 参照)。また池袋西武では、個人的に大好きな花卉園芸植
物も楽しむことができた(写真 13 参照)。見学後、いつものように記念の集合写真を撮り(写真 14 参
照)、散会とした。それでは、次のスキルアップ研修およびその報告をお楽しみに。
写真 11 独特な木質調のエイトリアム
写真 12 枝張の小さいケヤキ
(こういう場所での適用はどうなのでしょうか?)
写真 13 涼しげなマツムシソウ
写真 14 いつもの記念集合写真
(英名はピンクッションフラワー、そう見えますか?)
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