答申書「高槻の街づくり“近未来計画”に関する提言」

高槻商工会議所
会頭 小山 洋三
平成 21 年 9 月 14 日
様
高槻商工会議所
地域活性化委員会
委員長 桑内 義和
答 申 書
「高槻の街づくり“近未来計画”に関する提言」
平成 20 年 12 月 12 日付けで諮問のありました「高槻の街づくり“近未来計画”に関する
提言」について、慎重に審議を重ねました結果、次のとおり答申いたします。
記
はじめに(答申にあたって)
;
地域活性化委員会は、平成 20 年 12 月 12 日の運営委員会において、小山会頭から「高
槻の街づくり“近未来計画”に関する提言」について諮問を受けました。そして、本年 1
月 26 日の第 1 回を始めとして、9 月 10 日の第 7 回(最終回)まで、ほぼ各月定期的に委
員会を開催し、提言のタイトルに相応しい“希望の持てる輝かしいわが街高槻の実現”に
向けて議論を重ねて参りました。
委員会では、高槻市の担当課やまちづくりの専門家等を講師として招聘しながら、提言
をより現実的な骨子として構築すべく検討を行いました。
提言について、議論するにあたり、特に、高槻及び隣接する島本町に所在する貴重な観
光資源等の資産の有効活用を近未来の高槻の街づくりの基盤に据えて、当地域が潜在的に
持つ多種多様なポテンシャルに着目しつつ、それぞれ実現への期待を込めた視点で検討い
たしました。
委員会の審議では、夢のある高槻の街の将来像について、各委員から出された具体的な
事例による率直な提案が数多く出され、これらを参考としつつ、提言に対する意見として、
総括的に取り纏めました。
それでは、まず、本論に入ります前に、本答申書を作成するにあたり、その背景となる
今後の高槻の街づくりを今、真摯に考えるべきこと、また、
“近未来計画”として観光資源
の活用を答申書の骨子の中核に据える理由について、基本的な考え方を簡潔に述べること
にします。
わが街高槻は、京都と大阪のちょうど中間に位置し、北に北摂連山、南には淀川とそれ
らを結ぶように芥川が市内を横切る大変自然に恵まれた環境にあります。古くから人が住
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み、稲作等も行われ、周辺には遺跡や史跡が多数点在しています。昭和 30 年代後半から人
口が大きく増加し、製造業等の企業が市内に進出する中で、日本の高度成長期と歩調を合
わせるように、高槻も発展を続けて参りました。
また、中心市街地では、JR と阪急電鉄が並走し、ターミナルが程良く近接し集客に適し
たロケーションにあるため、周辺部の商店街が発展し、現在も、人で賑わう商店の集積が
あります。
しかし、時代が進み、経済の成長期から安定期に入った今、成長期に高騰した地価や環
境に対する配慮等から、企業はよりその活動に有利な地に移転を始めています。また、高
槻の人口増加期に流入してきた世代も、定年退職等で第一線を離れて、その人達の子供達
の時代となり、彼らは多様な価値を求めて、市外へ流出する傾向も見受けられるようにな
っており、市内人口は、近年、ほぼ横ばい状態で均衡しています。
そこで、今こそ、私達は、新しい時代に向けての街づくりを行わなければならないと考
えます。こうした意味で、会頭の「高槻の街づくり“近未来計画”に関する提言」は、貴
重であり、提案内容の着実な実行が求められます。
さて、前述しましたように、高槻には多くの寺社、遺跡や史跡等の貴重な観光資源があ
ります。これらの資源をハード及びソフトの両面から再整備し、人が集うための観光事業
の一助とする必要があります。
まず、ハード面の整備では、観光資源へアクセスする動線の整備や遺跡・史跡そのもの
の修復等があります。動線の整備については、市内を横切る芥川は、春には桜、夏には蛍
等、市街地にあって自然を満喫できる希少な場所であり、流域に桜を植樹して京阪間の一
大桜の名所の完成を提唱いたします。
この芥川流域を大きな機軸とした桜の整備により、市内に散在する観光資源に通じる動
線の始まりと位置づけます。そして、順次桜の植樹を進める中で、一方では、JR高槻駅
ターミナルを基点とした桜街道に沿った回遊路を整備するものです。つまり、JR 高槻駅北
から西に進む道路の沿道に桜の並木を植樹することで、ターミナルから芥川までの動線を
活かせるものと考えます。
次に、ソフト面での整備としては、例えば、日本の歴史にその名を残す、安土桃山時代
に高槻城主であった、キリシタン大名の高山右近についてであります。高山右近は、キリ
シタンであったがために、宗教的な背景が取り沙汰されて、当地での評価は分かれるとこ
ろがあるように思われます。しかし、高山右近を歴史的観点から客観的に史実として伝え
ることが重要であり、そのためには、高槻の長い歴史を知るための史料等の観光資源に関
する情報のさらなる整備や検証等が必要と考えます。また、歴史上の人物や事件等を史実
として忠実に知ることができる、いわば“高槻・島本辞典”的なものの整備も必要ではな
いでしょうか。
このように、ハード、ソフト両面から観光資源を活かす観光事業を推進することにより、
周辺地域における商業の発展も期待でき、今後の高槻の街づくりを検討するにあたっての
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最大のバック・グランドであると考えます。
以上に述べました考え方に基づき、委員会におきましては、答申書に盛り込むべき骨子
を下図(図表-1)のとおり構成しました。図表-1にある骨子の項目としましては、
Ⅰ.桜並木の整備と活用
(芥川ルートと水無瀬神宮ルートを軸とした“観光資源を結ぶ桜街道”)
(1)観光資源の活用
Ⅱ.中心市街地の活性化
(1) 街路の無電柱化(電線類地中化)をはじめとする「中心市街地活性化基本計画
(案)
」に対する高槻市中心市街地活性化協議会意見書に盛り込まれた事項の実現
(2) JR高槻駅南側における人工デッキの再整備と“市民憩いの場”の創出
(3) 高槻名産品の開発・地場産農作物等の活用
(4) 市民や若者が集える安全・快適な街の実現と魅力ある施設の設置
Ⅲ.企業誘致と「高槻ブランド」製品の開発
Ⅳ.道路整備(新名神高速道路及び観光資源を結ぶアクセス道路の整備)
Ⅴ.高槻の情報発信
Ⅵ.その他
以上、6つの分野に関して、委員会での意見を取り纏めて構成しました。
図表-1
答申書の骨子
道路整備
企業誘致と
「高槻ブランド」
製品の開発
桜並木の整備と活用
芥川ルートと水無瀬神宮ルートを軸とした
“観光資源を結ぶ桜街道”
(新名神高速道路及び
観光資源を結ぶアクセス
道路の整備)
観光資源の活用
中心市街地の活性化
街路の無電柱化をはじめ「中心
市街地活性化基本計画」に対す
る協議会意見書事項の実現
高槻の情報発信
高槻名産品の開発・地
場産農作物等の活用
JR高槻駅南側人工
デッキ再整備と“市民
憩いの場”の創出
市民や若者が集える安全・
快適な街の実現と魅力あ
る施設の設置
3
その他
Ⅰ.桜並木の整備と活用
(芥川ルートと水無瀬神宮ルートを軸とした“観光資源を結ぶ桜街道”
)
前段で述べました芥川流域及びJR高槻駅を起点とした芥川へ通じる道路(芥川ルート)
に加え、隣接する島本町の水無瀬神宮に至るルート(水無瀬神宮ルート)を中心とした桜
の整備を機軸にして、市内を桜街道で動線化することにより、市内の観光資源を点から線
への連結を実現させたいと考えます。
つまり、伝統的に日本人が今日までこよなく愛して続けてきた桜を起爆剤として用い、
“桜並木”を高槻市内から島本町にかけた主な観光資源のある地域に重点的に市内から整
備することにより、高槻の街自体の魅力向上にのみならず、観光客誘致の相乗効果を狙っ
た積極的な観光資源活用に繋げるものです。
(図表-2 及び図表-3 参照)
この桜並木の整備は、市外からの観光客誘致とその波及効果としての街の賑わい回復と
地元商業の活性化にも大いに資するものと思われます。
もう少し、具体的に言えば、摂津峡公園~芥川河川流域、上宮天満宮~島本町水無瀬地
域へ至る道路のほか、城跡公園周辺一帯や市内に点在する観光資源を繋ぐ道路に桜並木を
連ねて整備し、京都と大阪間の桜の一大名所とする構想です。繰り返しになりますが、こ
の桜街道の整備にあたっては、芥川流域のルートに加えて、高槻と隣接する島本町広瀬に
ある水無瀬神宮に至るルートの 2 つを最大限に活かすことが重要です。
ご存知のように、水無瀬神宮は、日本史上有名な“承久の変”において、悲運の主人公
とされる後鳥羽上皇を奉る神社であり、全国的にも歴史愛好家には注目に値すべき場所の
一つであります。鶯の声が耳に心地よく響く神社の境内には、大阪府下で唯一、名水百選
に選ばれている「離宮の水」の清水が湧き出ており、これを利用する近隣の一般市民が引
きも切らず訪れて、人々の日常生活にも溶け込んでいる様子が伺えます。
この水無瀬神宮をはじめとする島本町にある観光資源と高槻市が有する多くの歴史的観
光名所との連携を図ることで、これまで以上の効果的な観光資源活用が可能となります。
この実現により、観光需要として従来殆ど無かったと思われる、宿泊を伴う観光客誘致の
促進も期待されます。また、大阪と京都の中間に位置するという優位性も十分に発揮でき、
他市からの人の流入による地元商業への好影響の効果も併せて大いに期待できます。
しかし、桜並木の整備を実現させるにあたっての大きな課題があります。それは、これ
まで、市内の様々な団体から同種の提案がありましたが、残念ながら、現在まで実現をみ
る事ができていないことです。
その大きな理由のひとつに、桜の植樹とその後の桜の管理を主体的に運営できる組織が
不明確であったことであるのではないかと推察されます。そこで、今回の桜街道整備計画
にあたっては、NPO 法人等を設立し、具体的な管理・運営計画の策定と実行を行う等、よ
り実効性の高い手法を採用することを提案します。このことの成功のためには、行政等の
関係機関との実現化への協議と連携を進めながら、事業開始のための運営資金の確保や PR
活動を行うことが前提となると考えます。
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それでは、桜並木の整備とその活用について、以下に具体的に説明します。
図表-2「桜並木の整備」
(中心市街地及び周辺地域)
図表-3「桜並木の整備」
(芥川ルート・水無瀬神宮ルートほか)
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①高碕
達之助氏の「荘川桜」の苗木を入手し、芥川ルート及び水無瀬神宮ルートを中
心とした観光資源周辺に桜並木を整備する
桜並木整備のための植樹をするにあたり、はじめに、高槻が生んだ著名な人物の一人で
ある高碕 達之助氏に纏わる桜について、ご紹介します。
高槻市出身である高碕氏は、旧制茨木中学を卒業後、農商務省水産講習所、メキシコ万
博漁業㈱水産技師を経て、1917 年に東洋製罐㈱を創立しました。そして、1952 年には、
電源開発㈱(J-POWER)初代総裁に就任し、その後、鳩山内閣の経済審議庁長官や通商産
業大臣を歴任した高槻が誇る人物です。
彼は、岐阜県荘川村(現在の岐阜県高山市荘川町)で当時、電源開発㈱が進めるダム開
発に伴い、湖底に沈む運命であった村人自慢の二本の桜の大木を移植し、本来電源開発㈱
が敵対する立場であった村人から心から慕われ続けました。そして、現在もこの桜は咲き
続けています。
このエピソードが時を経ても後世に伝えられ、今、学校現場でも話題を呼んでおり、全
国 100 箇所以上で高碕氏の「荘川桜」の 2 世苗の植樹が行われていると言うものです。
この高槻に所縁ある著名な人物の由緒ある苗木の植樹による桜の整備は、人の心を引き
付ける魅力を十分に備えていると考えます。
②桜並木を整備した芥川流域にトロッコ列車を走行させる
高槻市を南北に縦走する芥川は、摂津峡から淀川本流に至る約6kmを流れています。
この芥川に沿って整備された桜並木と並行して、トロッコ列車を走行させることを提案し
ます。
トロッコ列車といえば、京都の保津峡を眺めながらの嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車を
想起される方が多いと思われます。同列車の走行距離は、嵯峨・亀岡間の 7.3kmであり、
距離的にも似通った高槻の芥川沿にも、是非とも走行を実現させたいものです。この事業
は、老若男女を問わず大変夢のある、自然に童心へと回帰できるひと時を共有できる素晴
らしいものです。
また、トロッコ列車走行の実現は、高槻市民のみならず、他市からも多くの観光客を誘
導する大きな原動力となり得るものと考えます。
③城跡公園に高槻城を再建して、桜と日本庭園を整備し、大茶会を年中行事に育てる
高槻が誇る大きな歴史的資産のひとつである高槻城跡に市のシンボルとしての高槻城を
再建する一方で、城跡公園内一帯に桜を植樹して日本庭園を整備し、ここで春には満開の
桜を眺めながらの茶会を開催すれば市内外の注目を集めることができますし、ひいては文
化都市を標榜する高槻の名を大いにアピールできるのではないでしょうか。
かつて太閤秀吉が開いた京都北野天満宮の大茶会に肖(あやか)り、我が街高槻におい
ても高山
右近の居城であった高槻城跡公園での茶会を年中行事として継続的に開催する
6
ことは、今夏に 40 回目を迎えた高槻まつりや例年 5 月の連休に行われるジャズ・ストリー
トと並んで、高槻の年中行事として育て定着させれば、非常に意義深いと考えます。
④芥川を増水して活かすことにより、「床料理」も実現可能となる
芥川の増水のためには、提言の中にありますように、淀川本流から水をポンプ・アップ
して、芥川上流から流し、再度淀川に戻す循環型事業の実現が前提となります。この増水
事業が実現した暁には、有名な京都、鴨川等で夏の風物詩ともなっている所謂、納涼床の
設営も高槻市内を流れる最大の河川である芥川の魅力を向上させると共に、桜並木と相俟
って、風情やゆとりを演出する、これまでにない付加価値的な魅力の創出として面白アイ
ディアであると考えます。
以上のような桜並木の整備による桜を介在させた関連事業により、芥川の上流域である
摂津峡・芥川を往年の姿である“名勝
摂津耶馬渓”として復活させ、また、中流~下流
に至る流域では、市民の散策や憩いの場として、さらには、市外からの観光客の誘致にも
大きく貢献するものと思われます。
それでは、次に、提唱した桜並木の整備によって連結された市内の観光資源についての
活用方法を考察することとします。
(1)観光資源の活用(観光資源を有効活用することによる街の活性化)
わが街、高槻には全国的にも有名な数多くの歴史的史跡や遺跡を始め、神社や寺等の観
光資源が点在しています。
それらの一部を列挙しますと、安満遺跡をはじめ、城跡公園、神峰山寺、三好芥川城跡、
摂津峡、阿武山古墳(藤原鎌足墓所説)、今城塚古墳(継体天皇御陵説)、伊勢寺(伊勢姫)
、
乾性寺(能因法師墓所)
、上宮天満宮等、枚挙に暇がないほどです。
しかし、残念ながら、これまで高槻が誇る貴重な観光資源をそれらが持つ魅力相応には、
充分に有効活用できていないと言わざるを得ません。もう一歩進めて言えば、折角の財産
が遊休資産化しているとも言え、このことは、私達の努力が不足していたと言う反省材料
ともすべきでしょう。
今後は、観光に関係ある団体をはじめ、高槻市や民間団体等がこの共通目標の基に協力・
連携して、あらゆる機会と手段を通じて、市内外に一般市民の興味を喚起するような創意
工夫ある情報発信を継続的に行うことにより、高槻への観光客の誘致に努力していく必要
があると思われます。
それでは、以下に委員会での検討の際、出された具体的な提案を説明します。
①富田地域の造り酒屋と寺巡り
富田地域の町並みは、かつての江戸時代の歴史的景観を留めており、教行寺、普門寺(黄
檗宗・隠元法師の道場であり、14 代将軍足利義栄の宣下式が執り行われた)
、本照寺等の寺
7
院が立ち並ぶほか、富田の酒として名を残す造り酒屋があります。
当地区に残る歴史的な町並みは、北摂においても有数であり、この極めて日本的で日本
人の心を惹きつける有形資産とそれらが醸し出す無形の独特の雰囲気をこれまでに比して、
市内外へアピールして、市民だけでなく、近隣他市からも多くの歴史愛好家や日本文化を
愛する人達を呼び込む努力をすべきであると考えます。また、その可能性を秘めていると
言えます。
②高槻の歴史・文化(高山右近や今城塚古墳等)についての認知度を高める
高槻には、所謂キリシタン大名として著名な高山右近をはじめとする歴史上の人物や継
体天皇陵説がある今城塚古墳等のわが国の歴史・文化史に名を残す人物を偲ぶことができ
る遺跡や史跡等が数多く点在します。
前述しましたように、これまで、高槻市が誇るこれらの価値ある資産を、行政と関係団
体等が連携しながら、民間ベースを中心として、外部へ効果的に PR して認知度を高めるこ
とにより、古くから栄えた歴史ある高槻の側面もアピールできると思われます。そうする
ことで、近隣他市に留まらず全国からも多くの歴史愛好家等を呼び込めるポテンシャルを
実現化できると言えます。
③島本町の観光資源との連携による面的展開(“合同観光マップ”の作成等)
このように、高槻市において多くの埋もれた観光資源が存在しますが、より多くの他市
からの観光客を誘引しようとすれば、単体としての観光資源の活用に留まることなく、そ
れらを結ぶ面的な展開を目的とした戦略を立てる必要性が認められます。ゆえに、そのた
めには、近隣自治体との連携が必要条件となってきます。
特に、高槻市と隣接する島本町との連携が必須と思われます。同町には、前述しました
ように、特に著名な水無瀬神宮や楠公父子決別之所(国指定史跡桜井駅跡)ほか、寺院も
あり、また、同町と連なる付近には三川合流(桂川、宇治川、木津川)や山崎の合戦の天
王山等、歴史的に名を残す史跡が点在します。
地域にある観光資源を活かしていくためには、それらが所在する高槻市と島本町という、
それぞれの自治体単体による個別での観光情報発信や観光客誘致ではなく、相互に協力・
連携して取り組むことによる相乗効果が単体でのコストの総和以上に行政区域を超えた面
的な観光客の誘導と回遊の実現に結びつくことになります。
④参加・体験型観光の取り組み(事例:親子等による市民参加の遺跡発掘)
これまで述べてきましたように、観光資源を多数もつ高槻ではありますが、他市からの
観光客を誘致する方策として、従来型の観光客が観光資源を訪れて見学すると言う既成概
念に捉われず、例えば、観光資源を観光客が参加・体験する場として活用することも、独創
的な発想ではありますが、面白いものであると考えます。
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当然ながら、そのようなことが、可能となる条件整備が前提となりますが、例えば、遺
跡を親子や家族、また、親しいグループに楽しみながら発掘させることも、観光資源利用
の有効な方法のひとつです。
⑤「
『原地区』に残る大切にしたい、子供の頃に体験した“田舎の原風景”
」
高槻の中心市街地から車で北へ約 20 分にある、芥川の清流とのどかな田園風景が広がる
原地区は、かつては、千原の里とも呼ばれて、農林業や寒天づくりも盛んな地区でした。
そして、環境変化や都市化の影響も比較的受けることなく、現在に至っても、恵まれた
緑に覆われた自然が残り、また農業も営まれている、いわば“北摂の桃源郷(アルカディ
ア)
”ともいうべき地域です。当地区は、平成 19 年 3 月に「高槻・とかいなか創生特区」
の名称で、国の構造改革特区制度の認定を受け、
「通称:どぶろく特区」として今後の北部
の地域おこしとして注目されています。この次世代へと引き継いで残しておきたい“子供
の頃遊んだ田舎の原風景”を今後も大切に保存すると共に、この希少な価値ある場所を高
槻の豊かな自然から授けられた魅力のひとつとして、対外的にもアピールできる地域資源
であると確信します。
以上のような観光資源の活用に関して、特に強調しておきたいことは、これらの高槻市
が保有する多くの魅力溢れる観光資源を市外に発信し、観光客誘致に役立てることが大き
な目標ではありますが、まずは順序として、高槻市民が自ら、市内の観光資源の良さを身
を持って再認識することから始める事が最も重要であると思われます。
Ⅱ.中心市街地の活性化
JR 高槻駅と阪急電鉄高槻市駅を中心とする中心市街地は、高槻の玄関口であり、高槻の
顔でもあります。中心市街地の持つ魅力や賑わいは、街全体の実力を測るバロメーターで
あり、これら両駅前周辺について見れば、他市からの来訪者に対して高槻の街の特徴を訴
求し、印象づける重要なステージであり、この観点から、駅前の魅力をさらに改善・向上
させることが求められます。そして、このような駅前周辺の魅力アップに伴う人の集積度
の高まりに対応すべく、中心市街地に立地する商店街は、商店街が本来的に持つ地元消費
者に対する物販・サービス機能のみならず、安全で快適な歩行空間と回遊性の確保や楽し
くアメニティに満ちたショッピング環境の整備を進めることにより、商店街が地域コミュ
ニティの核となり、地元顧客に支持され、期待される商店街を目指して自助努力すること
が必要です。
そこで、中心市街地の活性化を推進するにあたり、次の 4 つの重点項目を推進すべきで
あると提言します。
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(1) 街路の無電柱化(電線類地中化)をはじめとする「中心市街地活性化基本計画(案)」
に対する高槻市中心市街地活性化協議会意見書に盛り込まれた事項の実現
高槻市が、平成21年12月7日付で国の認定を受けた「高槻市中心市街地活性化基本
計画」について、協議の場である高槻市中心市街地活性化協議会が高槻市へ提出した「基
本計画(案)への協議会意見書」に盛り込まれた事項と内容(要約)は次のとおりです。
①安全・快適な空間づくりによる歩行者優先のまちの実現
中心部への車両流入を抑制して、「車両通行止めによる歩行者天国」の実現と市内を循
環するワンコインバス等の運行実現への検討が期待される。
②「通りを活用した観光の目玉」による賑わいの創出
中心市街地の賑わい創出のため、通りに「観光の目玉」となる魅力的な場所、例えば、
オープンカフェや生鮮食品を並べる「市場」等の誘致を提案する。
③JR 高槻駅の安全・快適な利用環境の整備
基本計画にある事業として、
「JR 高槻駅ホームの拡幅、階段の増設・拡幅を検討する」
ことが記載されていますが、より一層、安全・快適な駅利用環境の整備を目指して、これ
に加えて、駅ホームの東への延伸の実現を期待する。
④中心市街地の無電柱化
中心市街地の無電柱化は、都市景観の向上、安全で快適な通行空間の確保、都市部の
防災性の向上、安定したライフラインの実現及び情報ネットワークの信頼性の向上等に
ついて、多くのメリットがあり、中心市街地での取組みは、街のブランドの確立・向上
にも繋がり、市民のわが街に対する誇りとなる。
⑤JR高槻駅南側駅前商業施設の再生検討
JR 高槻駅前南側のグリーンプラザたかつき 1 号館並びにグリーンプラザたかつき 3 号
館の両施設については、再生検討がそれぞれ個別事業として記載されていますが、施設
単体の再生ではなく、
「グリーンプラザたかつき 1 号館―松坂屋―3 号館―高槻駅前郵便
局及び駅前広場」の一体的な再整備が望まれる。
⑥事業実施における治安への配慮
中心市街地に係るあらゆる事業に対して、特に治安面の留意を図り、真の安心・安全の
まちづくりを期待する。基本計画にある一部の商店街を対象とするに留まらず、中心市
街地全域を対象として、防犯カメラの導入を強化する等、具体的なアクションを望む。
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これら 6 つのうち、③JR 高槻駅の安全・快適な利用環境の整備について、JR西日本の
計画では、駅ホームの東への延伸工事の予定はありませんが、ホームの拡幅の観点からは、
外側線専用ホームの新設(新快速専用乗場・上下線とも)、新西口改札口の設置、および乗
り換え通路の新設に本格着工し、平成28年春供用開始を目指しています。また、④中心
市街地の無電柱化は、人口 36 万人の中核市である高槻の中心市街地において、特に歩行者
が安心して、安全に歩行できることによる賑わいの創出が期待できるとともに、地元商業
の発展にも貢献するものです。また、後述します放置自転車問題の解決と併せて、是が非
でも実現すべき重要な事業であると考えます。
中心市街地における無電柱化の社会的・公共的メリットをもう少し具体的に言えば、電
柱が無くなることで歩道の有効利用が可能となり、高齢者をはじめ、ベビーカーや車椅子
の方等の所謂、交通弱者の人達にも安全であり、歩行空間のバリアフリーを実現すること
で、安全で快適な通行空間の確保が可能となります。
また、電線類の地中化による美しい町並みの形成は、都市景観の向上に資するものであ
り、台風や地震等の災害時の電柱倒壊や緊急車両の通行確保の安定したライフラインの実
現が可能となります。さらには、災害時の情報通信回線被害を軽減し、情報通信ネットワ
ークの安全性・信頼性向上等、市民生活にとって誠に重要であります。
高槻市内にも、現在一部でありますが、無電柱化が実現できている街路は散見されます
が、今後さらに中心市街地内において早急に拡大していくことが強く望まれます。次に⑤
JR高槻駅南側駅前商業施設の再生検討について、基本計画によれば、グリーンプラザた
かつき1号館および3号館の再生検討については、両館に留まらず、駅前広場や周辺街区
も含めた一体的再整備に向けた検討を行い、また、まちづくり会社が中心となって、区分
所有者等の合意形成を図るとともに、将来的なビルのあり方や求められる機能等の調査・
検討事業を推進するとしています。
JR高槻駅北側の開発は 20 数年を掛けてようやく終了しましたが、南側は開発が始まっ
たばかりです。しかし、JRと阪急の両駅間にある商業地域でも事業主の高齢化が進んで
おり、後継者問題など事業承継が進展していない傾向にあります。そのため廃業や業態変
更などで商店街が様変わりしてテナントミックスが図れず、土地問題も絡み、同地域では
一体的な開発が進んでいないのが現状です。次回の中心市街地活性化法などを利用し、個
別に実現可能なところから取り組んでいくことが望まれます。
同地域の再生は強く望むものであり、高槻の活性化及び固定資産税など税収の増加が図
れるものと考えます。
(2)JR高槻駅南側における人工デッキの再整備と“市民憩いの場”の創出
平成24年度にJR高槻駅南側駅前広場については、人工デッキへのエレベーター・エ
スカレーター設置、多機能型トイレ整備などのバリアフリー化等が完了し、人工デッキの
再整備は実現しましたが、市民や来訪者のための送迎車乗降場へのアクセスが階段のみな
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ので、横断歩道やエレベーターの設置が望まれます。また、海外からの観光客等にも配慮
し、JR高槻駅周辺に外国語の案内看板の設置を提案します。
また、高槻商工会議所の創立 60 周年時(平成 19 年度)に、60 周年記念実行委員会が提
唱しました『たかつき夢、未来構想』-ものがたり-に盛り込まれましたメッセージであ
る「都市の賑わい、水と緑と野鳥の街-青き流れと散歩道」について、部分的ではありま
すが、これを具現化するために、
「JR高槻駅南玄関を水の庭園としたべネチア広場に模し
た市民憩いの場」を整備することを提案します。
JR高槻駅南側のグリーンプラザたかつき1号館前の地下には約 100 トンの消火のため
の貯水槽が埋め込まれており、この水源を利用して駅前に高槻版“ベネチア風憩いの場”
を創出するものです。水辺には、森林浴ができる緑の植樹を施し、また市民憩いのスペー
スを設けて、文化都市高槻に相応しい高槻の南の玄関口の創出を行政に期待したいと考え
ます。
(3)高槻名産品の開発・地場産農作物等の活用
現在、高槻の逸品の開発の事例としては、どぶろく“原いっぱい”等があり、また、地
元名物では、例えば、高槻発祥ご当地グルメとして、約 30 年前から塚原・南平台・阿武野
周辺で伝えられてきた“高槻うどん餃子”があります。また、オリジナル商品の開発事例
としては、市内ホテルが開発した高槻産の鶏卵を使用した洋菓子である“高槻フレッシュ
ロール”等が挙げられます。
一方、地元の農家が生産した野菜を使用したメニューの開発と農家の紹介も地産地消
を促進するものとして、意義があるものと思われます。
特に、近年の社会情勢として、消費者の安全・安心・健康志向は、「生産者の顔が見える
安全食材」を求めており、これらの食材をできるだけ多くメニューに盛り込む取り組みと
して、地元高槻の生産者より直接届いた採りたての新鮮で美味しい野菜も興味を引くこと
になると思われます。
なお、補足的説明ではありますが、安全な野菜の公的認証制度としては、
「大阪エコ農産
物認証制度」があります。これは、農薬の使用回数、化学肥料の使用量を府基準より半分
以下に設定した基準の下で栽培された、環境にやさしい農産物の大阪府の認証制度です。
そのほか、伝統ある富田地区の酒、田能地区で生産される寒天、服部地区の越瓜等も採
り上げることができます。
ところで、現在、高槻市内では、樫田、萩谷、成合等の地区において朝市が開催され、
農産物等が販売されていますが、これを中心市街地内の商店街等で行うことにより、中心
部の賑わいや地元商業の振興に大いに資するものと期待できます。
つまり、地場産農作物等を直接、消費者に販売する試みを中心市街地内の商店街で行う
ことは、前述した消費者の安全で安心、健康志向や地産地消の促進等の観点から、メリッ
トは大きいと考えます。
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例えば、付近に宿場町の街並みや一里塚があり、歴史的風情が残る芥川商店街において、
遊休地を有効利用して朝市や夜市を開催し、地場産の野菜、味噌、漬物、餅等を定期的か
つ継続的に販売することができれば、地元市民の消費者にも喜ばれることでしょうし、ま
た、商店街としても来街者を誘引でき、賑わいの大きな要因になり得ると思われます。
(4)市民や若者が集える安全・快適な街の実現と魅力ある施設の設置
次に、市民や若者が集まる仕掛けづくり、特に、女性が魅力を感じる施設等の整備を進
めることが肝要です。
高槻市内には4大学生、約 6,700 名(内訳:大阪医科大学約 1,000 名、関西大学総合情
報学部約 2,200 名・社会安全学部約 1,100 名、平安女学院大学約 400 名、2014 年 5 月 1 日
現在。大阪薬科大学約 2,000 名、2013 年 5 月 1 日現在。
)が昼間人口としてありますが、
現状では学外での高槻の中心市街地においては、残念ながら、若い彼らの興味を擽り、誘
引するハード及びソフトな魅力が充分でないと言わざるを得ません。そこで、女性が魅力
を感じる施設等の整備、中でも特に若い女性が集まる仕掛けづくりを具体的に検討するこ
とが望まれます。
近年の実証された一般的傾向として、若い女性が集まる場所には、必然的に老若男女、
ファミリー層等、多層な年齢層の人たちが集まるものです。この現象は、言わば、“女性主
導の時代”が到来しているとも言えるかもしれません。
しかし、現状の中心市街地においては、一方通行の規制等により、地理的な把握がしづ
らく、その上、道も狭く放置自転車が散乱し、通行に支障のある場所も散見されることか
ら、地域ぐるみで抜本的な整備をする必要があると考えます。
この観点におきましては、前述しました「中心市街地活性化基本計画(案)への協議会
意見書」に盛り込まれた事項の一つである、安全・快適な空間づくりによる歩行者優先の
まちの実現が前提となります。
つまり、具体的方策として、中心部への車両流入を抑制する交通規制を実施することや
中心市街地の地理的把握を容易にする具体的な整備として、
「通りの名称」を再考すべきで
はないでしょうか。南北の道を「筋」東西の道を「通り」とし、これらの筋や通りに万人
に分かり易く地域のイメージを向上させる名称をつけることを提案します。そして、地域
内のコインパーク等を行政や商店街が借り上げ、現在中心部に不足している駐輪場の設置
を実現すべきであると考えます。
交通規制につきましては、道路整備計画に関して、特に交通工学上の観点を十分に検討・
考慮した整備により、車両通行止めによる歩行者天国等による回遊性の向上が可能な中心
市街地内の道路整備を行政には進めて頂きたいと存じます。この実現のために、行政、地
域住民、専門家等の関係者による検討委員会の設置を提案します。
また、高槻市は、京都大学大学院農学研究科附属農場の移転に伴い、その跡地を含めた
一帯を「
(仮称)安満遺跡公園」として整備し、弥生時代の安満遺跡を保存・継承し、防災
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機能を備えた、緑豊かな公園を目指す取組を進めています。平成31年には一時開園とし
て西側エリアがオープンする予定で、公園の案内や市民活動の拠点機能などを担うパーク
センターや子供向け全天候型施設などが設置されることになっています。
JR 高槻駅と阪急高槻市駅にも程近い同公園には、市内外から若者や親子連れが社会体験
できる魅力ある施設を誘致し、集客を図ることにより街の活性化と施設の維持管理に必要
な安定財源を確保することに繋がります。
また、同公園は地域の広域避難地や市の防災拠点となる予定ですが、今後想定される大
規模災害に備えて、市民のための充実した機能を持つ緊急避難場所の設置について、スピ
ード感をもって具体的な計画策定とその実行を期待します。
Ⅲ.企業誘致と「高槻ブランド」製品の開発
高槻の北部の成合地区におきましては、待望の新名神高速道路事業が高槻 IC・JCT 以西
において、平成 28 年度の開通に向けて順調に進行しています。
当事業は、市民の生活の利便性の向上はもとより、特に製造業を営む事業所のメリット
は物流コスト軽減をはじめ、工場立地条件、立地環境の拡充について多大なものがあり、
高槻市の発展に大きく寄与することは、誰もが認めるところです。
そこで、特にエコ・バイオ・ハイテク等のいわゆる“未来産業”や産学連携拠点となり得
る研究所等を積極的に誘致することにより、高槻市の特色ある企業集積の実現が可能とな
ります。
当然ながら、新名神高速道路のメリットを活かすことは、一般企業の誘致を否定するも
のではありませんが、一般的な工業都市ではなく、緑豊かな文化都市である高槻市個有の
確立したアイデンティティを対外的に発信し、アピールすることに大いに資することであ
ると考えます。
この実現のための条件としては、3 つが挙げられます。
ひとつは、用途地域についての配慮や特区指定が鍵であり、二つには、
「高槻市企業立地
促進制度(企業誘致条例)
」の積極的活用、最後に、IC・JCT へのアクセス道路の整備であ
ります。
また、これらの企業誘致についての柔軟かつ積極的な運用により、工場の市外移転防止、
優良企業の定着に資する相乗効果もあると考えられます。
一方、高槻の既存企業に目を転じますと、市外から高槻を訪れる人たちから、しばしば、
「高槻には何があるのですか?」と言う質問を受ける事があります。大阪から高槻に向か
う人は、電車の車窓から、先ず目に入るのは JR 摂津富田駅東のパナソニックの工場、続い
て明治製菓、そして、サンスターの工場のようです。このような日本の企業としては冠た
る企業の工場が並列して立地しており、これらの企業に協力を求め、
「高槻ブランド」の製
品を開発していただく事は、企業の社会的貢献の評価を向上させるものでもあると思われ
ます。
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また、新名神高速道路が開通するのを機に、農産品の朝市や地酒等高槻の特産品を販売
するなど、高槻ブランドの発信基地となる道の駅の設置が望まれます。
Ⅳ.道路整備(新名神高速道路及び観光資源を結ぶアクセス道路の整備)
前述したような市内に点在する観光資源の有効活用及び広域交流機能の更なる強化に資
することになる新名神高速道路をさらに有効に機能させるためには、それらの関係するア
クセス道路の整備が不可欠と言えます。
新名神高速道路の供用に伴うIC利用車両台数は、1 日あたり、16,300 台と予測されて
います。このため、高槻市をはじめ、大阪府ではスムーズな交通の流れを確保するため、
新名神高速道路へのアクセス道路を計画しています。
具体的には、高槻市道としては、都市計画道路である南平台日吉線と市道の原成合線で
あり、一方、府道については、
(仮称)高槻東道路と十三高槻線があります。
新名神高速道路をはじめ、これらの関連道路については、今後、西日本高速道路㈱をは
じめ、大阪府、高槻市において、協議を重ね連携を図りながら、平成 28 年度の供用開始に
向けて努力されているとのことでありますが、今後、供用開始の前倒しの可能性も含めて、
遺漏なき計画的な道路整備をお願いしたいと存じます。
Ⅴ.高槻の情報発信
これまで採り上げて説明してきました多くの高槻にある潜在的な魅力をこれまで以上に、
効果的かつ効率的に市民や市外在住者等に発信して認知度を高めていくためには、市民が
相互に我が街を知ることができる機会を提供することや高槻に関する様々な情報を検索で
き、共有できる仕組みの構築を検討する必要があります。
(1)市民大学(仮称)「高槻大学」創設の検討
まず、はじめに、市民を主な対象者として、例えば東京の特定非営利活動法人が運営す
る「シブヤ大学」に倣って、市民大学として位置づけた(仮称)
「高槻大学」の創設を提案
したいと考えます。この形態は、学校教育法で定められた正規の大学ではなく、民間はじ
め各方面の方々が講師となって、学術的分野を問わず趣味の分野、また健康面等について
幅広く市民に生涯学習の場を提供するものです。
講師となる多才な人が持つ知識・智恵や経験を学ぶ場を提供することで、現在の社会で
希薄化しつつある人の繋がりが醸成・復活され、市民と街との関係をも育む効果が期待で
きます。この市民大学に参加することにより、専門分野を学習するのみでなく、参加者が
地域に密着することで見えてくる課題やコミュニティ等を共有することが可能ともなりま
す。さらに、最近、地域の活性化の手法の一つとして注目されている「まちゼミ」の実施
を提案します。まちゼミは、主に商店街等の店主、経営者やスタッフが講師となり、プロ
ならではの専門知識や技術、コツを無料で少人数の受講者にゼミナール形式で披露するも
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のです。テーマは、扱う商品やサービスについての専門知識や使い方のアドバイスを始め、
そこから発展させた生活提案、店やまちの歴史、文化まであらゆる事項に及びます。
これは、人と人との繋がりを醸成するとともに、地域の人たちを通じた文化の交流・高
度化にも貢献するものと思われます。もちろん、地域商業等の活性化にも大きく資するも
のです。
(2)地域情報サイトの創設や充実に注力
高槻に関する「住む」
「食べる」「遊ぶ」「観光」「イベント」「学ぶ」「医療」等の情報を
発信する地域情報サイトが幾つか開設されています。今後、まちの情報から、つながりや
交流を生み、活力ある地域づくりを推進することが重要であり、地域情報サイトが高槻を
より強く発信していく場となることが望まれます。
地域情報サイトは情報発信の有力な手段であり、サイトの創設や充実に注力していきた
いと考えます。
Ⅵ.その他
その他、高槻の今後の街づくりに是非とも必要な骨子としまして、以下の事項があると
考えます。
(1)富田地域の都市機能回復・向上のための「阪急電鉄・JR両駅高架事業」の実現
富田地域は、JR と阪急電鉄との距離が至近にあり、JRにより同地域の北部地域が、ま
た一方では、阪急電鉄により当地域内を南北にそれぞれ分断されて、人的及び物的な交流
のバリアとなっている事は否めません。
ついては、阪急電鉄のみならず、JRも含めた早期の高架事業化の実現化により、特に
富田地域の地元商店街において、主導的かつ連鎖的な活性化が促進され、市民や学生等の
集積度が高まり、賑わいが創出されることを願うものです。
(2)大阪と京都の中間地点である高槻に観光客を下車させる具体的“誘導策”の検討
高槻は、市内をJRと阪急電鉄がほぼ平行に走行し、大阪市と京都市のそれぞれのター
ミナルへは 10 数分で到着できると言う、他市にはない極めて優れた立地上のアドバンテー
ジを有しています。
しかし、この優位性は、逆説的に言えば、例えば大阪や京都のターミナルにある大型商
業施設での購買を希望する消費者行動からすれば、大きな弱点とも成り得るものであるこ
とを充分に認識しておくことが必要です。
このような、強みと弱みが表裏一体とも言える立地条件のうち、強みを活かし、伸ばし
ていくことが、今後、高槻が採るべき基本戦略であると推察されます。例えば、近隣他市
からの観光客等の誘致については、これまで述べてきた高槻の魅力向上策を具体的な戦術
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として着実に実践していくことが、他市から人々の流入を促すことに繋がり、この観点に
おいて、高槻の立地は、高い優位性を秘めていると言えます。
(3)市内 5 駅を点から線(或いは面)に繋げる仕掛けづくりの検討
高槻市内には、JR及び阪急電鉄の駅がそれぞれ、2 駅と 3 駅ずつの合計5駅があり、各
エリアに居住する市民はじめ、市内の人的移動への貢献度は多大なものがあります。
しかし、もう一歩、駅としての機能を活用するならば、これら 5 駅間で縦横双方向的な
人の流れを作り出す具体的な方策を検討することが、市内での回遊を促進して、さらなる
街の賑わいを創出するために重要であると考えます。
そのためには、例えば、市内に点在する観光資源を結ぶ「観光ルートの確立」やまた、
市民、来訪者を惹きつける魅力的な店舗等を計画的に配置することが肝要と思われます。
市内に鉄道 2 線 5 駅が所在するという、他市にはない恵まれた条件をもっと活かすべき
であると提案します。
特に、今迄、希薄となっている二自治体の観光資源を一元化して、例えば、一泊二日の
旅行客のニーズに対応し得る複数の観光ルートの開発が望まれます。
(4)
「高槻市中心市街地活性化基本計画」への反映
高槻市におかれましては、この度の提言及び本答申書の内容について、次回の「高槻市
中心市街地活性化基本計画」へ可能な限り柔軟に反映される事を期待いたします。
その際には、主体となる高槻市や関係機関・団体等、そして、高槻商工会議所も含め、協
力と連携を図りながら、提言や本答申書の提案について各事業の実現可能性や実現するた
めにクリアすべき具体的課題等を検討する中で、優先順位も考慮しつつ、着実な実現に向
けた進捗を望みたいと存じます。
結びに代えて;
さて、この度、答申書を取り纏めるにあたり、これまでの地域活性化委員会での審議を
振り返りますと、本答申書は、小山会頭の「高槻の街づくり“近未来計画”に関する提言」
をベースとする中で、各委員の我が街高槻を愛する真摯な気持ちの総和として結実したも
のであります。6 回に亘る議論の過程において、高槻の近未来の発展に必要な潜在的要素を
洗い出し、それらの活用方法を委員が相互に確認・検証できたことは、大変意義深いもの
でした。
現在、JR高槻駅北東地区では、道路や公園等の公共施設をはじめ、商業、業務、居住、
文教、福祉、交流等、多くの機能を集積する、高槻の街づくりにおいて画期的で注目すべ
き市街地再生事業が順調に進行しています。その一つとして、関西大学・高槻キャンパス
の開校が平成 22 年 4 月に迫っており、中心市街地周辺には若いエネルギーが溢れ、爽やか
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さと賑やかさが増していくように感じられます。そして、当地区の整備事業が、数年後に
最終的に完了すれば、既に平成 17 年春にオープンした JR 高槻駅北地区市街地再開発事業
に続いて、駅前の好立地を活かした利便性に優れた街が出現することになります。
結びにあたり、提言された事業について、行政や民間、関係各位が理解ある連携の下に
当事者意識を持ち、主体的に取り組むことによって、事業実現へ向けて着実にアクション
を起せば、高槻の街としてのアイデンティティがより一層明確になり、牽いては、都市ブ
ランドの確立に繋がると確信いたします。
そのためには、桜並木の整備・運営主体となる NPO 法人等の設立が望まれるところです。
そして、高槻市・島本町の行政がアクションを起し、高槻・島本を愛する皆様が、結集し
て大きな力となり、共通目標である“次の高槻・島本の街づくりの青写真”が一つひとつ
実現されますことを心から切に願いまして、結びと致します。
以上
提言より約5年が経過し、
金田会頭より現状に即した見直しを行うように指示があったため、
地域活性化委員会で審議した結果、社会情勢の変化及び現状を踏まえ
1.JR高槻駅と阪急高槻市駅間の商業地域の活性化
2.JR高槻駅南側広場の更なる安全性と利便性の向上
3.
(仮称)安満遺跡公園へ魅力ある施設を誘致することによる街の活性化
4.新名神高速道路開通を機に、高槻ブランドの発信基地となる道の駅の設置
などを新たに提案し、答申書の幾つかの項目について削除及び加筆修正を行いました。
平成26年6月26日
地域活性化委員会
委員長 西田 直弘
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