環境に配慮した製品・容器の開発

CSR/サステナビリティ レポート 2010 ¦ 花王株式会社
性能の向上と環境負荷削減を追求
花王は「製品の安全性と高い品質を確保するとともに、環境負荷を削減していく」という製品開発指針に
基づき、原材料調達から生産、物流、使用、廃棄までの全ライフサイクルを通じて環境への影響や負荷
を評価する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」を実施しながら、環境配慮型製品の開発・技術の実用化
に取り組んでいます。
また、そのための独自の指標、「環境適合設計要領」を整備し、環境面や安全性に関わるさまざまな項
目について定性的・定量的な評価分析を行なっています。
その中で2008年度から、環境負荷の改善率を明確にするため、新たな指標「環境負荷改善率」を取り入
れ、既存の「基準製品」と新たな「開発製品」のライフサイクルCO2排出量を比較・評価しています。
2009年6月に発表した環境宣言でも、製品のライフサイクル全体で環境負荷削減を進めていくこと、そ
のために多様なステークホルダーと一緒に活動に取り組んでいくことを大きなテーマとして掲げていま
す。
再生ポリエステル繊維の利用
より環境負荷の少ない製品を開発するために、花王は「クイックルワイパー」のドライシートに用いている
ポリエステル繊維を、再生繊維に置き換える技術開発を進めてきました。素材メーカーの協力も得て、繊
維の100%(製品全体の約90%)を置き換えることに成功し、2003年10月から発売しています。
再生繊維を使用した「クイックルワイパー」のドライシート表面
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植物由来プラスチックを使いやすく改質
~改質ポリ乳酸樹脂「ECOLA」(エコラ)を開発
花王は、石油を原料とするプラスチックにかわるカーボン
ニュートラルの植物由来プラスチックであるポリ乳酸樹脂をよ
り使いやすくするために、独自の結晶制御技術や軟質化技
術を駆使して「改質研究」に取り組んでいます。改質ポリ乳酸
樹脂「ECOLA」(エコラ)はその成果のひとつで、現在の汎用
石油系樹脂と比べても遜色のない性能と加工性を実現。そ
の結果、押出成形でつくられるシート製品や、射出成形でつく
られる多様な形状のプラスチック製品に活用できるようになり
ました。これは、成形時間・手間の改善だけでなく、成形時の
消費エネルギーの削減にも大きな役割を果たしています。
現在「ECOLA」は、複合コピー機のマニュアルを入れるポ
ケットやパソコンの筐体に使用されるなど、利用範囲を広げ
ています。今後は、さらなる用途の拡大に向け、さまざまなビ
ジネスパートナーとの取り組みを進めていきます。
「ECOLA」を使用した複合コピー機のマ
ニュアルポケット(写真提供:(株)リコー)
「第41回日化協技術賞」の「環境技術賞」を受賞
花王クエーカーの「鋳造※1用湯道管(EGランナー)」が、「第41回日化協技術賞※2」の「環境技術
賞」を受賞しました。「EGランナー」とは、新聞古紙に耐熱性樹脂・繊維などを複合化させ、紙ベース
にもかかわらず約1,400℃の高温に耐えられるようにした湯道管で、一般的な陶器製の湯道管と比
べて軽量(約1/10)かつ加工が容易で、廃棄物量が大幅に削減(鋳造後に残る湯道管の燃えかす
として約1/16)でき、作業性の向上、そして環境負荷の低減が図れます。
現在この「EGランナー」は、国内および海外(独・韓・中・タイ)で好評を博しており、今後、EUやアジ
ア諸国を中心に拡販を図るとともに、本技術を湯道管以外へ応用することも検討中です。これから
も、花王クエーカーの鋳造ビジネスを通じて、持続型社会実現のために努力していきます。
※1 鋳造
砂などでつくられた鋳型に、約1,400℃の溶けた金属を流し込み成形する金属加工方法。
※2 日化協技術賞
㈳日本化学工業協会(日化協)が、化学技術の進歩と化学産業の振興を目的に、1968年に制定。
「環境技術賞」は環境負荷低減に対して、著しい効果があった技術に贈られるもの。
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容器包装の3Rを積極的に推進
容器包装は、運搬時における中身の保護や品質の保持、使用時のさまざまな情報提供など、中身を使
い切るまでは製品の一部としての重要な役割・機能を担っています。
花王は、こうした役割・機能を、最小限の資源で満たす容器包装材料の研究開発に取り組むとともに、
3Rの観点から再利用や再生材料の使用に積極的に取り組んでいます。また、袋状の容器からのつめか
えが苦手な方にも配慮した、ユニバーサルデザインを取り入れた容器の開発にも取り組んでいます。
2009年度は、容器包装材料(段ボール除く)の使用量は前年度に比べて800トン増加しました。これは
ヘルシアスパークリング等の売上げ増加による影響です。
容器包装の3R
1. リデュース:中身の濃縮化、包装容器のコンパクト化
2. リユース:つめかえ・つけかえ用製品による包装容器の再使用
3. リサイクル:再生材料の使用
容器包装材料使用量の推移
(単位:t)
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
プラスチック
49,200
55,700
55,700
55,000
56,500
紙
26,100
25,600
22,500
21,600
21,300
段ボール
65,600
67,700
73,700
71,700
70,600
3,800
3,600
3,400
2,700
2,300
144,700
152,600
155,300
151,000
150,700
ほか
計
容器に使用する樹脂量削減
「アタックNeo」濃縮化による資源の削減
(アタックバイオジェルとの比較)
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「ヘルシア緑茶」350mlボトルの薄肉化による資源の削減
「セグレタヘアエステ」個装包装の大幅な簡素化(改良前と比較)
製品包装簡素化による包材の使用量削減
「ピュアホイップ3個セット」の包装を簡素化
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つめかえ用・つけかえ用製品の改良
つめかえ用パックは、すっかりおなじみになりました。中身をつめかえることで、シャンプーや液体洗剤の
プラスチック本体容器を繰り返し使うことができ、省資源とごみの削減に役立っています。
花王が最初のつめかえ用パックを発売したのは1991年のことですが、その品数は年々増え、2010年3
月時点で138品目にのぼっています。私たちは、消費者の方々がつめかえやすいように、ボトルの大き
さや内容物の粘度などに合わせた、さまざまな改良を加えています。
つめかえ用・つけかえ用製品
また、中身の性質や安全性の観点から、つめかえを消費者の皆さまにおすすめできない製品もありま
す。そのような場合は、スプレーなどの部品を再使用する、つけかえ用製品をご用意しています。
中身を本体容器につめかえて使います
スプレー部分などを、新しい容器につけか
えて使います
つめかえ用製品の比率は1997年から急速に増え、現在ではほぼ80%で推移しています(本数ベー
ス)。たとえば「ハミング(濃縮タイプ)」のつめかえ用の比率は96%です。これは、2009年度に販売され
たつめかえ・つけかえ用製品が、すべて本体容器(プラスチック容器に入った製品)だった場合と比べる
と、3万トンのプラスチック使用量を削減したことになります。
つめかえ商品への転換率
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つけかえ容器によるCO2削減
「ソフィーナボーテ 泡マッサージケア洗顔料」でつけかえ容器を追加し、ノズルとキャップの再使用、1個
箱の削除、中身の増量により、1回使用当たりのCO2排出量を約20%削減。
「ソフィーナボーテ 泡マッサージケア洗顔料」つけかえ用容器の追加
「キュレル」の新つめかえ用容器が「第33回木下賞」と「World Star 2009」をダブル受
賞
「キュレル 薬用シャンプー&薬用コンディショナー」の新つめかえ用容器の開発が、「第33回木下
賞」の「研究開発部門賞」を受賞しました。
この賞は、(社)日本包装技術協会が、毎年その年度において包装技術の向上並びに包装産業の
発展に貢献した製品、技法、事例、デザイン、アイデアなどの業績を表彰するもので、包装業界一の
歴史を誇っています。
ボトルと同じ成形法で開発された新つめかえ用容器は、フィルム製のスタンディングパックと同等の
環境調和性を有しています。また、ぬれた手でも開封しやすいプルリング機構や片手で持ってつめ
かえできる形状など、ユニバーサルデザイン性にも優れている点が高く評価されました。
さらに、World Packaging Organization(世界包装機構:WPO)の世界パッケージコンテンスト
「World Star 2009 Competition」でも、その技術が認められ、「World Star 2009」を受賞しま
した。
今後も、社会の環境意識の高まりに対応するため、本技術のさらなる応用展開を進めていきます。
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