「路上にいたとき、大人から『君は、路上生活者だ。その生活はこれからも

アイキャン会報 「こどものこえ」2015 年 12 月号
2015 年 5 月~10 月を振り返って(事務局長井川)
「路上にいたとき、大人から『君は、路上生活者だ。その生活はこれからも変わらない』と言われた。でも、
僕は、この活動を通して変わることができた。僕を信頼してくれた人たちに、心から感謝している。
」
9 月 30 日、この元路上の子どもの言葉とともに、マニラでの元路上の子どもたちによるカフェの経営という
挑戦が始まりました。
「手を洗う」という習慣を身に付けるだけで半年以上、そして接客の概念を身に付けるた
めに更に半年以上、様々なパンの作り方を覚えるのに更に 1 年以上かかり、このオープンの日を迎えるために、
計画から合計 4 年もの歳月を要しました。この先もどれだけ多くの困難が待ち受けているのかは、火を見るよ
りも明らかです。しかし、彼ら・彼女らが、これまでの人生の中で、感じてきた怒りや悲しみ、そして葛藤を燃
焼させることで、ついに手にした自分たちの店を守り切ることができると、私は信じています。
ICAN 事務局長
井川定一
さて、今期 2015 年 5 月から 10 月も、日本とフィリピン各地で様々な活動を実施することができました。詳細は次のページ以降
に譲りますが、これらはすべてアイキャンを応援してくださっている皆さまのお力によるものです。心よりお礼申し上げます。特
筆すべき点としては、「路上の子どもの事業」において、元路上の青年たちによるカフェのオープン、児童養護施設「子どもの家」
の完成、
「災害の影響を受けた子どもたちの事業」において、レイテ島台風被災地での小学校 125 教室の建設・修復の完了、
「紛争
地の子どもたちの事業」においては、40 年以上ミンダナオの紛争地で政府軍と戦ってきた MILF (モロ・イスラム解放戦線)に対
する平和研修の開始、国際理解教育事業の「トゥライ・プロジェクト」に 4,500 人が参加したこと等があげられますが、どれも、
実現するまで何年もかかったことばかりです。アイキャンが解決しようとしている課題は、どれも根が深く、複雑で、一過性の介
入で解決するものではありません。一人ひとりの子どもたちが抱える重い課題を次から次へと抱え込み、子どもとアイキャンのど
ちらが長く立ち続けられるか、勝負をしているような気分になる時さえあります。だからこそ、1 つ 1 つの小さな成果に着目し、
その成果に勇気付けられながら、
「子どもたちにとって平和な社会」を、着実に作り上げていくことが大切だと思っています。
ここ最近は、フェイスブックやマンスリーレポート等、インターネットを通じた報告に力を注ぐ一方、紙媒体での報告が十分に
できておりませんでした。ここにお詫び申し上げます。この度、紙媒体での報告を強化するにあたり、事業の進捗を少しでも多く
伝えられるように、会報を大幅にリニューアルいたしました。同時に、可能な限り職員の業務量を抑えるために、レイアウトに関
しては、シンプルなものを採用するとともに、フェイスブックとの差別化のために、文章量は大目にして、
「読み物」としての媒体
を意識しました。ぜひ一読して頂き、事務局に感想や改善案等を頂けますと幸いです。
特集:路上の子どもの児童養護施設 「子どもの家」がついに完成!
マニラの路上の子どもたちが、愛情溢れた環境で生活し、学校に復学できる児童養護施設「子どもの家」がついに完成いたしま
した。これにより、多くの路上の子どもたちが、危険な路上から出て安心して暮らすことができます。
「子どもの家」フロアマップ
子ども部屋
トイレ兼シャワールーム
キッチン
玄関とリビングルーム
多目的ルーム
~アイキャンの「子どもの家」が生まれた背景~
都市化が進むフィリピンには、25 万人以上の路上の子どもが存在し、その数は増え続けていま
す。家庭内暴力や育児放棄、経済的逼迫等により路上に押し出された子どもたちは、差別や偏見、
空腹や病気等に苦しみ、事故や犯罪に巻き込まれる危険に常に晒されています。そのような中、
トラウマや人間不信に陥ったり、辛いことや空腹感を忘れるために薬物やシンナーに手を染めた
りする子どもも多く、路上の子どもの 54%が薬物を経験していると言われています。
このような状況に対して、アイキャンは、子どもたちがシンナーを止めて学校に戻る必要性に
気付くことを促すために、カウンセリングや路上での道徳教育を 2006 年より行ってきました。し
かしながら、活動を通して、子どもたちが路上を出て施設に入り、復学するという決断をしても、
フィリピン政府や他の NGO の児童養護施設は、満員のために入居まで半年以上かかることも多く、
その間に誘惑の多い路上に気持ちが戻ってしまったり、ギャングに再加入させられ、殺されてし
まうケースも発生していました。そのため、アイキャンは、子どもが決断したら速やかに施設に
移ることができるよう、児童養護施設「子どもの家」を建設することにしました。
~「子どもの家」の建設プロセス~
「子どもの家」の設立は、困難の連続でした。まずは、土地の確保です。フィリピンでは、日本
とは異なり、一部地域を除いて、日本のような不動産業者は存在しないため、マニラ各地を周り、
土地を 1 つ 1 つ確認していく必要がありました。半年以上探した結果、隣接するサンマテオ市に
広い土地(約 8,000 平方メートル)が見つかり、購入することになりましたが、地権者は、14 人
にも跨っており、その中には、海外に住んでいる方や既に亡くなっている方もいたため、1 人 1 人
と交渉していく必要がありました。また、土地を購入した後に開始した母屋の建設は、フィリ
「子どもの家」の建設
収支表(2014-2015.12)
ピンではよくあることですが、予定していた工期が過ぎてもなかなか終わらず、1 日でも早く
完成させるべく、毎日のようにスタッフが現場を訪れ指示し、最終的には、予定から 5 か月も
オーバーしての完成となりました。また、更に、その後の政府からの各種許可証取得も、想定
以上の時間を要す等、開所が予定より大幅に遅れてしまいました。
資金面でも困難が続きます。当初、
「子どもの家」は、2013 年末から大規模な「募金キャン
ペーン」を行うことで、土地の購入や建設を行う予定でしたが、2013 年 11 月に歴史的規模の
台風がフィリピンを襲ったことで、キャンペーンは実施できなくなりました。そこで 2 階建て
の計画の内、1 階の建設をまず進めることとし、個人で大口のご寄付をしてくださった A.K.
様、K.K.様を始め、皆さまからのご寄付や会費、助成金、街頭募金、書き損じはがきやチャリ
ティ語学教室(スマイルチケット)等の資金を合わせ、なんとか土地代や建設費を支払うこと
ができました。ご協力いただいた皆さま、心より感謝申し上げます。
~「子どもの家」のこれから~
支出
土地代
塀建設費
母屋建設費
水場建設費
合計
収入
路上指定寄付金
路上指定助成金
その他(会費、ハガ
キ、寄付、語学教
室、マンスリー等)
合計
2,062 万円
253 万円
1,170 万円
382 万円
3,867 万円
2,009 万円
500 万円
1,358 万円
3,867 万円
2016 年 1 月、いよいよ子どもたちが入所します。入所する子どもたちは、親との同居が困難であ
ることや復学意欲が高いこと等の基準を設け、カウンセリングを経て選定しました。今年度、5 名
程度から開始し、寄付収入に比例して、将来的に 50 名程度まで、子どもの数を増やしていきます。
「子どもの家」は、元路上の子どもたちが愛情溢れる環境で生活できる場所であるとともに、今
も路上にいる子どもたちの生活を改善する拠点でもあります。「子どもの家」で生活する元路上の
子どもたちが、自身の成功体験を今も路上にいる子どもたちに共有することで、より多くの路上の
子どもたちがシンナーを止め、復学する意欲を高めることができます。また、
「子どもの家」では、
ボランティアを積極的に受け入れ、交流を行うことで、路上で心に傷を負った子どもたちの大人へ
の不信感や恐怖心を軽減し、トラウマを抱える子どもたちの心を和らげていきます。
「子どもの家」の運営にご寄付をお願いします!
皆さまからのご寄付に応じて、
「子どもの家」で生活する子どもたちの数を増やす
ことができます。ぜひ、この機会にご協力をお願いします。
①
マンスリーパートナー:月 1,000 円から開始できる継続的なご寄付
②
路上の子ども指定寄付:路上の子どもたちの活動へのご寄付
③
アイキャンの活動全体へのご寄付:路上を含むアイキャン全体へのご寄付
詳しくは、この会報の最後のページをご確認ください。
「子どもの家」年間運営費
費目
通学費・教材費
医療費
食費
衣服費
通信光熱費等
寮母、社会福祉士
政府関係費用
子どもの活動費
その他
合計
金額(円)
227,070 円
156,600 円
591,948 円
15,660 円
441,612 円
1,957,500 円
156,600 円
455,400 円
125,280 円
4,127,670 円
2015 年 5 月~10 月のアイキャンの活動
Ⅰ
危機的状況にある子どもたちとともに行うプログラム
災害の影響を受けた子どもたち
※アイキャンの会計年度は毎年 5 月 1 日に始まります。
~2 つの事業地で建設事業完了~
2013 年 11 月に起きた大型台風ハイエンの被災地・レイテ島ドゥラグ町にある 2 つの小学校、計 16
教室の建設・修復が今年 8 月に終わり、ついに当初の目標であった 15 校 125 教室の建設・修復の全
てが終了しました。2014 年 12 月に大型台風ハグピートの被害を受けたサマール島ドロレス町では、
台風によって壊された 309 世帯の家の建設が完了しました。洪水が発生する危険地域に住んでいた
人々は、アイキャンと行政が用意した再定住地に移り、今後洪水に苦しむこともなくなりました。
路上の子どもたち
~70 名の子どもを保護~
ごみ処分場周辺の子どもたち
~新しい仲間と作業所~
ドロップインセンター(通所型
の保護施設)において、計 70 名の
子どもを保護し、教育や栄養改善
の食事提供等をしました。うち 5
名は、他の NGO が運営する短期保
護施設に入り、長期保護施設への
入所に向けて準備しています。
フェアトレード生産者団体 SPNP
が、7 月に作業所を移転し、以前
より家賃の負担が軽くなりました。
また、新しいメンバーを増やすた
め、既存メンバーによる住民対象
のトレーニングを 8 月から行い、
9 月に 4 名が新加入しました。
紛争地の子どもたち
先住民の子どもたち
~教員等に研修を 11 回実施~
ミンダナオ中部の教育省やピキ
ット西部の高校の教員を対象に、
平和教育実施能力を強化する研修
を計 7 回、また、村のリーダーや
MILF(モロ・イスラム解放戦線)
を対象に、紛争調停能力を強化す
る研修を計 4 回実施しました。
ジェネラルサントスの子どもたち
大学生 7 名に、文房具、制服、
傘、鞄等を提供し、学費や教材費
等も補助しました。また、奨学生
に進捗報告を書いてもらい、成績
をスタッフが把握するとともに、
集まって各自の今年の目標を共有
しました。
~企業の寄付で教育環境改善~
パナソニック株式会社寄贈のソ
ーラーランタン 210 個を、ミンダ
ナオ島の 14 の先住民の学校に、
また、ジョイパックレジャー株式
会社と浜松南ライオンズクラブ寄
贈の文房具を、同ミンダナオ島の
児童計 1,309 名に提供しました。
~奨学生 7 名に補助~
障がいを持った子どもたち
~新規事業の調査を開始~
新規事業立案に向けた調査を 6 月より開始し、盲学校や職
業訓練所等の訪問を行いました。
外国にルーツを持つ子どもたち
~学校の文書を翻訳~
翻訳ボランティアが、学年便り等の教育機関からのお便り
計 69 件の依頼に対応しました。
今期のメディア掲載
5月1日
5 月 29 日
5 月 31 日
6月
6月
6月1日
6月1日
6月3日
7 月 26 日
8 月 27 日
8 月 30 日
8 月 31 日
9月2日
9月3日
9月6日
フリーペーパーPrimer 「第 3 回 ANA 寄席 2015 in Manila」の収益金を寄贈
中日新聞 名古屋高校生国際ボランティア団体「どえりゃあ Wings」が路上の子どもの保護施設建設へ寄付
まにら新聞 「どえりゃあ Wings」の元代表吉野君が世界一周の旅に出発し、路上の子どもの短期保護施設を訪問
JPF NEWS Vol.14 ICAN の活動概要と台風ハグピートへの救援活動
あいちモリコロ基金 助成活動成果調査報告書 「絵手紙をきっかけとした、国際理解・社会貢献活動」
ボラみみ 6 月号 名古屋高校生国際ボランティア団体「どえりゃあ Wings」が路上の子どもの保護施設建設へ寄付
THE FRONTIER TIMES(名古屋国際中学校高等学校広報誌) フェアトレードにおけるアイキャンとの連携
中日新聞(朝刊)名古屋市民版 レイテ島に建設した 12 校の学校での合同引渡し式典
岐阜新聞 「路上の子の貧困解決探る」 海外事業部吉田のインタビュー
MILF Official Website MILF 対象の国際人道法に関する研修
BS 日テレ 「広瀬アリス×広瀬すず エシカルの贈りもの ~ハピネスをつくるデザイン~」 パヤタス訪問
まにら新聞 茶道裏千家 秋のチャリティー茶会の案内
まにら新聞 w-inds.がレイテと路上事業地訪問
スポーツニッポン w-inds.がレイテに学校建設
朝日新聞 レイテ島に学校 2 校が完成
Ⅱ
「できること(ICAN)
」を増やすプログラム
国際理解教育事業
~絵手紙大会「トゥライ・プロジェクト」が 8 年目に突入!~
日比の子どもの相互理解を促進する絵手紙交流「トゥライ・プロジェクト」が始動しました。(トゥ
ライとは、タガログ語で「橋」の意味。両国の架け橋を指しています。
)8 年目となる今回のテーマは、
「私の『平和』のイメージ」
。フィリピンからは、アイキャンの事業地や交流のある学校の子どもたち
が、日本からは、愛知県の小中高校計 20 校が参加し、日比合計約 4,500 枚の絵手紙が集まりました。
7 月に、フィリピンで名古屋国際中学校・高等学校の海外研修が行われ、日本とフィリピンの若者が
「理想の地球」を描き、実現するための行動計画を立てました。10 月からは、日本の若者とフィリピンの路上の子どもによる
スカイプ交流プログラムが開始し、名古屋市立北高等学校の 1 年生 37 名と、路上の若者 5 名が交流しました。互いの国の食文
化や将来の夢、路上での辛い事をどのようにして乗り越えたか等の質問を通して、相互理解を深めました。
語学教室事業
~新たに 4 名の講師が登録~
スタディツアー・研修事業
~夏のツアーを実施~
5 名の生徒が入会し、既存の講
師の紹介により、新たに 4 名が講
師として登録しました。既存講師
の代行対応からスタートし、うち
2 名は、レギュラー講師としてク
ラスを受け持つようになりました。
8~9 月にスタディツアーを 3 回
実施し、全国から計 26 名が参加
しました。また、9 月には、路上
事業地でのボランティアをメイン
としたボランティアツアーを行い、
11 名が参加しました。
フェアトレード事業
NGO 相談員事業
~8 回のイベントに出店~
~外務省より、6 年連続で受託!~
フェアトレード関係者や株式会
社デンソー等が開催した 8 件のイ
ベントに出店し、延べ 39 名のボラ
ンティアとともに、パヤタスごみ
処分場周辺の女性たちが作った縫
いぐるみや雑貨を販売しました。
今年度も外務省の「NGO 相談員事
業」を受託しました。今期、日本事
務局での電話やメール、対面での 660
件の相談対応の他、愛知、静岡、福
島、新潟、東京で計 10 件の出張サー
ビスを実施しました。
インターン育成事業
MY アイキャン事業
~外務省インターンプログラム~
今年度も、外務省インターンプ
ログラムで 1 名を採用しました。
マニラ事務所に配属された石田は、
「障害を持った子どもたちの事業」
のニーズ調査にあたり、盲学校や
職業訓練所等を訪問しています。
9 月 7・14 日
9 月 10 日
9 月 13 日
9 月 20 日
9 月 28 日
10 月
10 月
10 月
10 月 4 日
10 月 7 日
10 月 8 日
10 月 25 日
10 月 25 日
10 月 25 日
10 月 25 日
~街頭募金で施設建設を呼びかけ~
名古屋の街頭での募金活動を 5
回行い、中学生から社会人まで延
べ 103 名のボランティアが参加し
ました。集まった募金は、児童養
護施設「子どもの家」の設立・運
営に充てさせていただきます。
まにら新聞 裏千家チャリティ茶会の案内
読売新聞 レイテ島で新たに 2 校、計 15 校が完成
MILF Official Website MILF 対象の平和研修
まにら新聞 裏千家マニラ協会が茶会参加費を寄付
NHK・FNN 聖明福祉協会式典でインターン石田が登壇
JICA「mundi2015 年 10 月号」インターン石田の紹介
ゆうちょ財団「助成団体活動レポート」路上事業紹介
JPF 2014 年次報告書 サマール島被災地での救援事業紹介
まにら新聞 路上の若者のカフェがオープン
MILF Official Website MILF 対象の平和研修
公明新聞 インターン石田の紹介
テレビ東京「世界をひらく僕らの一歩」 同上
フリーペーパーPrimer11 月号 路上の若者のパン
フィリピンプライマーブログ 一日事業地体験案内
中日新聞朝刊 路上の若者のカフェがオープン
歌手 w-inds.が、
路
上の子どもたちが
通うアイキャンド
ロップインセンタ
ーを訪れました。
今期、日本事務局
で、多くの訪問者
を迎え入れ、活動
の理解を促進しま
した。
2015 年 5 月「どんな状況下でも、最後までやり抜く」
<災害の影響を受けた子どもたちの事業>
私は、海外でのプロジェクトの進め方を学びたいと思いアイキャンのインターンに応募し、2014 年 12 月に
大型台風 22 号(ハグピート)で被災したフィリピン中部サマール島での住宅建設事業に参加しました。
私が現地入りした 2 月、既に被災から数ヶ月経っていたにもかかわらず、半壊した家にビニールシートを被
せただけの小さな家に住んでいる方が沢山いました。特にお年寄りや障がいのある方、女性のみの世帯では、
自ら家を修復することはもちろん、修復に必要な資材を購入することも困難な状況でした。更に、被害が大き
かった地区の一つの村は、役員による派閥等の地域の政治的な問題が根強く、他 NGO は、活動は難しいと判断
して次々と撤退していました。
そんな中、アイキャンはまず、村の役員とだけで決めるのではなく、村の上位にある町の役員や住民たちと
ICAN レイテ事務所
も話し合い、みんなが納得できるよう一つひとつの過程に客観的な基準を設けることから始めました。そし
インターン
て、炎天下の中、全スタッフが朝から晩まで一軒一軒回り、住民の疑問や不満に直接対応していきました。ど
山崎秀幸
れだけ疲労が溜まっていても、疲れた顔一つ見せずに笑顔で住民に声をかけるスタッフの姿には、同じ団体
の仲間ながら心を打たれるものがありました。こうした過程を経て、
はじめは非協力的だった村の役員も次第に協力的になり、住民への資
材提供や住宅の再建が進んでいきました。
それから 4 ヶ月後、修復・建設合わせて 309 世帯の家が完成しまし
た。今では村の至る所にアイキャンが修復した家が立ち並び、私が初
めて来た時とは、全く異なる光景が広がっています。ある時、83 歳で
1 人暮らしのおじいさんが、私の手を強く握って涙を浮かべながら「あ
りがとう、ありがとう」と何度も何度も感謝の言葉を述べてくれたこ
とが、とても印象に残っています。
この事業を通して、どんな状況下でも住民の立場を理解することを
放棄せず、住民と「ともに」活動を進めていくことの大切さを学びま
した。今後も、応援してくださる日本の方々の想いを最大限に届けよ
うとするスタッフを見習いながら、活動に取り組みます。
路上の子どもたち
5 月 15 日/ケソン
災害の影響を受けた子どもたち
5 月 8 日/ドゥラグ
カフェのオープンに向けて
完成した 74 教室の引き渡し式典
元路上の子どもたちによ
新設した 18 教室及び修
る協同組合カリエ(タガロ
復した 56 教室(12 校)の、
グ語で「路上」の意味)の 18
教育省への引き渡し式典が
名が、原価計算や価格設定
行われ、教育省や建設労働
の仕方を学びました。講師
者、子どもたちや保護者な
は、日本からのインターン。
ど、約 120 名が参加しまし
会計の基本について復習し
た。ジェネラルロハス小学
た後、自分たちの作るパン
校のカリト君(12 歳)は、
やコーヒーの原価を計算しました。カフェのオープン前に、会 「新しい快適な校舎で勉強できるのがとても嬉しい。勉強を頑
計管理も自分たちでできるようになるため、エルシーさん(16 張りたい。
」と語りました。現在までに 15 校 125 教室の目標の
歳)やジェームス君(20 歳)は必死にメモを取っていました。
内、14 校 115 教室の建設・修復が完了しています。
フェアトレード事業
5 月 9 日/名古屋
世界フェアトレード・デー
5 月の第 2 土曜日は「世界
フェアトレード・デー」で
す。名古屋でもイベントが
開催され、アイキャンから
は、高校生を含む 8 名のボ
ランティアが、パヤタスご
み処分場周辺の女性たちが
作った商品を販売しまし
た。一番積極的に声掛けをしていた M さんは、
「商品の背景を説
明すると、真剣に聞いてくれる人もいて、話すのが段々楽しく
なった」と話していました。
MY アイキャン事業
5 月 20 日/名古屋
千種高校インターアクトクラブからのご寄付
5 月 2 日、路上の子ども
の保護施設「子どもの家」
への募金活動をしたいと、
千種高校インターアクト
クラブの 4 名が日本事務局
を訪れました。その時の説
明をもとに校内や駅前で
呼びかけ、後日二日間で集
めた募金は 5 万円を超えました。22 日に早速届けてくれたメン
バーの S さんは、
「現地の子どもたちに会いに行きたい」と語り
ました。
2015 年 6 月「子どもの協同組合の新たな 1 年」
<路上の子どもたちの事業>
路上の子ども・若者たちによって設立された協同組合「Kalye(カリエ)」
(タガログ語で「路上」の意味)は、
その誕生から 2 年を迎えました。現在 72 名が所属しており、設立前から続けてきたパン作りの技術訓練のほ
か、昨年からは、カフェのオープンに向けたビジネスマナー研修も行っています。
6 月 12 日、この 1 年間の活動を振り返り、次の一年について考える年次総会を開催しました。まず、品質
管理委員のローレンから、パン作りに関して起きた問題の一つとして、
「パンの大きさや形が一定でないなど、
質の悪いパンがあった」ということが報告されました。これを受けて、
「より質の良いパンを作り続けるため
に」というテーマで話し合い、
「材料を使う前に、その種類や量が適切かを確認する」
、
「パン製作者として何
をすべきか、共通認識を持つ」ことなどを改めて皆で共有しました。
ICAN マニラ事務所
次に、教育委員の 4 名が、この 1 年で行った研修のリストを示して出席者とともに内容を振り返り、今後
岩下奈未
必要な研修について意見交換をしました。エルシーは、
「カフェやビジネスをするためにどうやってお金を運
用するかを学ぶことができる」という理由で、
「マネジメント」を、リ
カは「パンを多く売るためには、何が売れるかを知る必要がある」と
いう理由で「マーケティング」を挙げました。その後、取締役会のサ
ミュエルが、自分たちのビジネスを成長させるための計画案を提示し
ました。そして、「より質の高いパンを作り、売上を伸ばす」「チラシ
など、広報にもっと力を入れる」
「会計と品質管理を一層改善する」こ
となど、次の 1 年に向けた更なる活動を皆で確認しました。全ての議
題を終えた後、次の 1 年間の活動を中心になって担う取締役会や各委
員会メンバーを選挙で選出しました。選ばれたメンバーが壇上に立ち、
宣誓式を行いました。そのうちの一人、アーネルは、
「投票ありがとう
ございました。初めて選ばれてとても嬉しいです。うまく運営できる
よう頑張ります。
」と述べました。最後に、皆で宣誓文を読み上げて総
会を終えました。アイキャンは、カリエが自ら活動を持続していけるよう、新しい役員・委員をはじめとしたメンバーを中心とし
た活動を、しっかりと見守っていきます。
ごみ処分場周辺の子どもたち
6 月 18 日/ケソン
先住民の子どもたち
6 月 23 日・25 日/マライバライ
チームビルディングによる変化
フェアトレード生産者団
体 SPNP の 5 名に、チームビ
ルディングのワークショッ
プを行いました。ごみ処分
場周辺の立ち退きや病気に
よるメンバーの減少で、重
い空気が続いていた SPNP
ですが、スタッフの話と、
協働作業を行うワークで一転し、皆が笑顔になりました。ビビ
アンさん(57 歳)は、
「考え方がポジティブになれた。これか
らも皆と一緒に製作を頑張りたい」と語りました。
頂いた学用品を大切に
2 つの学校の先住民の児
童、計 515 名に、日本の企
業からお預かりした学用品
(鉛筆、ノート、消しゴム
等)を届けました。それま
で、数本の鉛筆や数枚の紙
しか持っていなかった子ど
もたちですが、これで授業
の板書や宿題に取り組みやすくなります。クリスチャン君(8
歳)は、
「もらった学用品を大切に使います。全てに自分の名前
を書いておきます」と話しました。
国際理解教育事業
MY アイキャン事業
6 月 10 日/名古屋
スーパーグローバルハイスクールとの連携
文部科学省指定の「スー
パーグローバルハイスクー
ル」である、長野県上田高等
学校の先生 2 名が、今後の
連携に関する打合せに来ら
れました。今年 3 月に同校
の 11 名が参加したスタデ
ィツアーでの経験を踏ま
え、同校の理念に沿った研修の企画・立案を希望されました。
引き続き先生方と協議を重ね、より良いものを作り上げていき
ます。
6 月 20 日/名古屋
笑顔でお礼を
マニラの路上の子ども
の保護施設「子どもの家」
の建設・運営寄付を呼び掛
けるため、15 名のボラン
ティアとともに街頭募金
を行いました。参加した高
校生の K さんは、
「最初は
恥ずかしかったが、頑張っ
てねと言ってくれる人もいて嬉しかった。笑顔で『ありがとう
ございました』ということが大切だと思った。」と感想を述べ
ました。
2015 年7月「誰かの問題が私の問題に変わる日」
<国際理解教育事業>
6 月 28 日~7 月 12 日の 15 日間、愛知県名古屋市にある中高一貫校名古屋国際中学高等学校(文部科学省
指定のスーパーグローバルハイスクールアソシエイト校)の海外研修をマニラで実施し、8 名が参加しまし
た。この研修は、高校生が世界の問題を自分の課題として捉え、よりよい社会を作る一人となっていくこと
を目指しています。15 日間の中で、現地の高校やアイキャン事業地、社会起業家等を訪問しますが、研修の
山場となるのが、路上やごみ処分場周辺地域の子どもたちと過ごす 2 泊 3 日の合宿です。
合宿ではまず、ゲームなどを通して子どもたちの緊張をほぐした後、自分の地域や家族など、それぞれが置
かれた境遇を話し、相互理解を深めていきます。ある路上の子どもは、
「僕の親はご飯をくれない。だから小
さい頃から果物を切る仕事をして、自分で稼いでご飯を食べてきた。
」と話しました。自分とは違いすぎる環
ICAN マニラ事務所
境に言葉を無くす高校生もいます。
阿部真奈
合宿 2 日目の夜、グループに分かれて「理想の社会」の絵を描きました。
「誰もが安心して暮らせる家」
、
「お金がなくてもみんなが学べる学校」
「病気になったとき、お金がな
い人は無料で診察してくれる病院」「自然が溢れる環境」「紛争や戦争
のない社会」など、文化や境遇が違っても、目指す理想の社会は同じ
であることを皆で認識しました。そして最後に、その理想の社会に向
けて自分が実践することを、一人ひとりが誓いました。帰国前夜、日
本から参加した一人の生徒は、
「自分や自分の国のことばかり考えず、
もっと世界が注目すべき。僕はこの問題に対して、活動していきたい」
と、研修初日とは明らかに違う表情で話していました。大切なのは、
それぞれ生まれ育った背景や持っている課題は異なっていても、共通
の理想のビジョンを描き、それに向かってともに行動すること、そし
てその輪を広げていくことなのです。
名古屋国際中学高等学校との連携で海外研修を実施するのは、今年
で、5 年目になります。彼らの先輩にあたる元参加者たちは、帰国後、フェアトレード製品の販売や街頭募金活動等に取り組むとと
もに、研修での学びを進路選択にも活かしています。世界の問題を自分事として捉え、理想の社会に向けて行動する人が増えるよ
う、私たちはこれからも、国際理解教育に力を入れていきます。
路上の子どもたち
7 月 25 日/ケソン
障がいをもった子どもたち
7 月 22 日・30 日/リパ
初めてのコーヒー作り
協同組合カリエが運営
するカフェの内装工事が完
了し、13 名が店内でコーヒ
ー作りの練習をしました。
焙煎方法を変えた作り方
や、ミルクを加えたカフェ
ラテ、カプチーノ、マキア
ートの作り方を学びまし
た。ジェイソン君(19 歳)は、「コーヒーメーカーはボタンが
たくさんあって、最初は自分にはできないと思ったけど、練習
して作れるようになって嬉しい」と語りました。
職業訓練所の成果と課題
障がい者団体の活動内容
や課題を調査するため、
NRVC(国立職業リハビリ・セ
ンター)を訪問しました。
「マッサージの技術を習得
し、自信が持てた」と訓練生
が語る一方で、講師は、
「訓
練生の子どもも障がい者で
あることが多いが、NVRC は 18 歳以上を対象としており、子ど
もにまで対象を広げる余裕がない」と話しました。引き続き調
査を実施し、アイキャンでできることを考えていきます。
MY アイキャン事業
国際理解教育事業
7 月 10 日/名古屋
ボランティア発案のイベント
マンスリーパートナーの
大学生 K さんが「NGO 職員に
聞いてみよう!」をテーマに
自主イベントを開催しまし
た。集まった 10 名の参加者
からは、「NGO のやりがい」
「NGO 職員に求められる能
力」「社会を変えるために今
必要なこと」など、様々な質問が出ました。終了後、
「貧困の現
状をもっと学びたい」
「NGO でインターンをしたい」等の声があ
がり、各自のできること(ICAN)を見つけたようでした。
7 月 30 日/瀬戸
平和について考える
聖霊中学高等学校の定例
行事「平和のつどい」におい
て、中学 1 年生 159 名に対
し、講演を行いました。ミン
ダナオの紛争地から平和に
ついて考える内容で話した
後、今年は「平和」がテーマ
となる絵手紙大会「トゥライ
プロジェクト」を紹介しました。講演後、担当の先生から「生
徒たちも現地をイメージできたと思う。絵手紙以外にも、募金
など、できることに取り組みたい」との言葉を頂きました。
2015 年 8 月「ミンダナオの人々とともに平和をつくる」
<紛争地の子どもたちの事業>
約 40 年間紛争を続けてきたモロイスラム解放戦線(MILF)とフィリピン政府との間で「包括和平合意」が
結ばれてから、1 年半が経ちました。以来、
「バンサモロ自治政府」の設立に向け、その骨格を定める「バンサ
モロ基本法」の審議が行われています。
アイキャンは、その当事者である MILF を対象に、紛争調停能力を高めるための研修を実施しています。8 月
24 日~26 日に行われた第 1 回研修では、
『平和の伝達と普及』をテーマにしました。今年 1 月に国家警察の特
殊部隊と MILF の間で武力衝突が起き、それを契機に和平合意に対して疑念を抱く人々が増えていく中、スタ
ッフと話し合い、「今必要なのは、和平プロセス及びバンサモロ基本法の重要性を社会へ発信していく」と判
断したためです。
ICAN ミンダナオ
研修では、計 30 名の参加者から、バンサモロ基本法の支持を訴える具体的なアイデアが出されました。20 代
中部事務所
の参加者グループは、
「バンサモロ基本法が成立しなければ、再び情勢が悪化し、女性や子どもたちが被害を受
松浦晶子
けることになると訴えるポスターを作りたい」と提案しました。それに対し、アブバカールさん(39 歳)は、
「た
とえ法案の成立及び履行が無理だったとしても、再び紛争に戻るわけ
ではない。MILF は平和を求め、戦争を否定している。バンサモロ基
本法の重要性を訴える際は、その点を明確にしなければならないので
はないか。
」と意見を述べました。こうした活発な議論や講義を経て、
アミルさん(32 歳)は、
「和平プロセスやバンサモロ基本法への不信
感や疑念を払拭するために、自分たちの持っている能力を生かす方法
や技術を学ぶことができた」と語りました。
研修後、ティルソさん(39 歳)が私に、
「研修を行ってくれたこと
に、非常に感謝している。アイキャンがこの地域で事業を行っている
ことが、我々の大きな力になっている」と話してくれました。私は今
回、参加者たちが「アイキャンはミンダナオの人々と『ともに』いる」
と感じていることを知り、「アイキャン、そして日本を含めた国際社
会がミンダナオを見捨てていない」と示すことが重要だと感じました。MILF を対象とした研修は全 3 回行われます。今後は、9 月
に『平和の文化と紛争』
、10 月に『紛争解決のための平和的手段』のテーマで研修を行い、MILF の紛争調停能力を高めていきます。
ごみ処分場周辺の子どもたち
8 月 29 日/ケソン
先住民の子どもたち
8 月 11~18 日/ブキドノン
新メンバーへの技術訓練
フ ェア トレー ド生 産者
団体 SPNP が、
メンバーを増
やすため、5 人の住民に技
術訓練を行いました。参加
者は、最初は思い通りに作
れず苦戦していましたが、
最 後に は全 員が 完成 させ
ることができました。参加
したテルマさん(24 歳)は、
「テディベアの体を作るのは本当
に難しかったですが、一つ作れた時は喜びに満ち溢れました。
学びがあって楽しいです。
」と話しました。
教室に明かりを!
パナソニック株式会社の
プロジェクトの一環で、無
電化村の 7 つの学校に、計
90 個のソーラーランタンを
提供しました。これで、計
654 名の子どもたちが、雨や
曇りの日の暗い教室内で
も、支障なく勉強できるよ
うになり、教師たちも授業の準備がしやすくなります。校長の
ニラさん(58 歳)は、「ソーラーランタンのお陰で、教育の環
境が整備されました」と喜びを語りました。
スタディツアー・研修事業
インターン育成事業
8 月 5~9、26~30 日/ケソン
交流を通して考えた、
「私のできること」
スタディツアーを 2 回開
催し、計 14 名が、路上の子
どもたちやごみ処分場周辺
地域の住民と交流し、現地
の課題について学びまし
た。ツアー最終日前夜、
『私
のできること』として、
「ア
イキャンの活動や自分が今
回感じたことを、周りの人に伝えたい」
、
「マンスリーパートナ
ーの毎月の寄付額を増やして、アイキャンに託したい」などの
声が上がりました。プラン C は 9 月 9~13 日に実施します。
8 月 7・18・21・24 日/ケソン
ニーズ調査で見えた課題
外務省の「NGO インターン
プログラム」で、6 月よりマ
ニラ事務所に勤める石田が、
「障がいを持った子どもた
ちの事業」に関するニーズ調
査を行いました。国立盲学校
等での聴き取りを経て、石田
は、「なぜ教育を受けられる
視覚障がい児が少ないのか、退学せざるを得ないのかが見えて
きた。一人でも多くの障がい児が教育を受けられる社会を実現
させられるようなプロジェクトを考えたい。」と報告しました。
2015 年 9 月「被災地でついに全 125 教室が完成!」
<自然災害の影響を受けた子どもたちの事業>
2013 年 11 月 8 日。大型台風ハイエンがフィリピン中部に壊滅的な被害をもたらしたその日から、2 年が経
とうとしています。この台風で、レイテ島のドゥラグ町の家や学校の 9 割以上に被害が生じ、子どもたちは、
ビニールシートで覆われた屋外の仮設校舎で、雨の日は雨漏りのために傘をさして授業を受けていました。
アイキャンは、ドゥラグ町の 15 校 125 教室の修復・再建に取り掛かり、この度、ついに最後のダカイ小学校
とサンラファエル小学校の教室が完成しました。9 月 2 日には、現地教育省への引き渡し式典が開催され、レ
イテ州知事、ドゥラグ町長、教育省ら関係者、そして約 350 名の児童・住民が参加し、チャリティコンサート
の収益を寄付してくださったライジングプロダクション所属のアーティスト wind-s.も、日本から駆け付けま
した。ダカイ小学校の校長は、
「日本の人々の支え、建設に関わった地域住民など、皆の思いや力が合わさって、
ICAN レイテ事務所
この学校が完成しました」と挨拶しました。式典の最後には、フィリピンの歌である「ブコ」
(直訳すると「コ
福田浩之
コナッツ」だが、Buhay ko(ブハイコ)=「私の人生」という意味もある)を、全員で合唱しました。歌って
いる間、会場の後方にいた母親たちは涙を流し、
「やっとこの日を
迎えることができた」と語りました。
後日、完成した学校に行くと、真剣な表情で先生の話を聞き、
板書をする子どもたちの姿が見られました。休み時間になると、
ゴム飛びをして遊んだり、教室内で友達同士ふざけ合ったりする、
屈託ない笑顔が見られ、笑い声が響き渡りました。子どもたちに
声をかけると、
「これが私の教室で、これが私の椅子。毎日学校に
来るのが楽しみ。
」
「お父さんが、僕たちの学校を作ったんだ。
」と
自慢げに話していました。
安全な校舎で勉強するという、子どもたちにとって当たり前の
日常を取り戻すことができた一方、緊急雇用(キャッシュフォー
ワーク)で建設に携わった住民からは、
「自分の子どもが通学を継
続できるよう、仕事を探さなければ」という声が聞かれました。
生活の糧であったココナッツの木を被災で失った住民たちは、依然として過酷な経済状況に置かれており、地域住民の生計向上に
力を入れていく必要を感じます。私たちアイキャンは、今後も住民とともに、更なる復興に向けて一歩一歩進んでいきます。
ごみ処分場周辺の子どもたち
9 月 22 日/ケソン
紛争地の子どもたち
9 月 15 日/ピキット
正式に 4 名が仲間入り!
1 ヶ月間の技術訓練を終え
た 4 名の住民が、正式に
SPNP(フェアトレード生産
者団体)に加わりました。新
メンバー加入後最初の定例
会では、ワークショップを
通して、SPNP がパヤタス訪
問者や商品購入者に与える
影響を再確認したほか、メンバーの将来の夢や展望を共有しま
した。新加入のジャーニーさん(31 歳)は、
「早く沢山の製品
を作れるようになり、家族の助けになりたい」と語りました。
新たに学校 2 校の建設を開始
ピキット町西部の 2 校の
建設を開始し、基礎を築く
ための掘削作業や支柱の鉄
筋の設置が終わりました。
雨漏りや浸水被害に悩まさ
れてきたダトゥ・ビトル・マ
ンガンサカン記念高校の校
長ローランドさん(46 歳)
は、
「雨で勉強ができないと子どもたちが嘆く度に、もう少しで
新しい校舎ができ、大雨でも勉強できるようになると励まして
いる」と言い、完成を心待ちにしています。
スタディツアー・研修事業
語学教室事業(スマイルチケット)
9 月 1~7 日/サンマテオ
路上の子どもと 1 週間過す ICAN ボランティアツアー
路上の子どもたちに、教
育、給食提供、商品開発等の
ボランティア活動を行うツ
アーを初開催しました。保
護施設で路上の子どもたち
と寝食を共にした参加者 11
名からは、
「何かをしてあげ
ようと思って来たが、与え
られる方が多かった」
「真の意味で人の役に立てるよう、力をつ
けなければ」
「路上の子どもは強く優しい。この子たちを幸せに
できるよう私も頑張りたい」等の声が聞かれました。
9 月 3 日/名古屋
1 ヶ月ぶりに全員揃った授業
木曜日の英語中級クラス
に、1 ヶ月間休会していた A
さんが復会し、久しぶりに
全員が揃いました。この日
のトピックは「一般的な疾
患」で、風邪や頭痛などの症
状の伝え方やそれに対する
アドバイス等の会話を学び
ました。授業後、A さんは、「久しぶりで、すぐに英語が出て
こない時もあったけど、改めて授業がとても楽しいと感じまし
た」と笑顔で話していました。
2015 年 10 月「路上の若者がカフェをオープン!」
<路上の子どもたちの事業>
路上の子ども・若者たちが、長年にわたるパン作りやビジネスマナー等の研修を経て、9 月 30 日にカフェを
プレオープンしました。このカフェでは、常時 10~12 種類のパンやコーヒーを用意し、本格的なオープンに
向けて週 3 回営業しています。ようやく自分たちの店を持ったメンバーは、ビジネスの成功への意欲に満ち溢
れ、その思いを来店者に常々伝えています。「路上にいた仲間と一緒にカフェをオープンできて、とてもワク
ワクしています。カフェは自分にとっての希望で、新しい人生の始まりです。
」
(ジェイソン/20 歳)
しかし、プレオープンを果たした喜びも束の間、メンバーたちは早速、カフェを運営する難しさに直面して
います。例えば、メンバー同士の連携が足りず、お客様に注文の品を提供するのに時間がかかってしまったり、
マーケティング力が乏しい故に集客数が伸び悩み、多くのパンが売れ残ったりしています。お客様が来店した
ICAN マニラ事務所
時にスタッフの姿がホールになく、
「いらっしゃいませ」の掛け声がないという指摘を私や他のスタッフがし
原理栄子
たこともありました。
このように、様々な問題がありますが、メンバーたちは、問
題を一つひとつクリアするため、営業後にその日の売上や接客
態度、宣伝活動について振り返る時間を持ち、改善案を話し合
い、日々奮闘しています。メンバー間の連携については、お客
様を待たせないよう、ホール、キッチン、会計の各担当が連携
してどのように対応すべきかを、営業時間外にシミュレーショ
ンしました。また、商品の売れ残りや集客数の増加については、
宣伝活動や商品開発についてメンバー間で話し合い、売れ残っ
たパンを日持ちの良いラスクにし、店の外で試食を兼ねた呼び
込みを開始しました。すると、ラスクの味の評判は良く、試食
した方がそのまま店内で購入するというケースもあるなど、早
速効果が表れました。
路上の若者たちにとって、カフェの運営を安定させるには
まだまだ課題だらけの日々ですが、私は、そんな彼らの新たな挑戦が周囲の人々に理解され、応援されることを願いながら、これ
からも見守っていきたいと思います。
紛争地の子どもたち
10 月 1~3 日/ピキット
障がいを持った子どもたち
10 月 30 日/マニラ首都圏
平和的な紛争解決方法を学ぶ
視覚障がい児の就学率向上を
MILF(モロイスラム解放戦
約 1,000 人が参加した国際
線)を対象とした 3 回目の
会議「21 世紀の教育:学習者
研修を行いました。27 名の
に焦点を当てたパラダイム
参加者は、仲裁、交渉、対話
の促進」において、フィリピ
等、暴力や武力を用いない
ンの視覚障がい児教育に関
平和的な紛争解決方法につ
する調査報告を行いました。
いて、講義やシミュレーシ
初等教育就学率が 1 割以下で
ョンで学びました。研修後、
ある視覚障がい児の未就学・
アブドゥラ・サリクさん(38 歳)は、
「問題が起きた時は、人 中途退学の理由等を報告し、教育省職員からは、
「視覚障がい学
を責めるのではなく、それがなぜ起きたのかに注目して解決策 生のカリキュラムや教員研修だけでなく、未就学児の状況を改
を探る必要があると学んだ」と語りました。
善すべきであると分かった」との言葉を頂きました。
フェアトレード事業
10 月 3~4 日/東京
今年もグローバルフェスタに出店
日本最大級の国際協力イベ
ント「グローバルフェスタ
2015」がお台場で開催され、出
店しました。関東及び近郊のボ
ランティア計 15 名とともに、
パヤタスの女性が作ったフェ
アトレード商品と、フィリピン
料理の販売を行いました。スタ
ディツアーの参加である A さんからは、
「フィリピンの現状を
見て、できることをずっと探していた。少しでも役に立てたこ
とが嬉しい。
」との感想がありました。
MY アイキャン事業
10 月 31 日/名古屋
街頭募金に多くのボランティアが参加!
路上の子どもの保護施設
「子どもの家」の設立を呼び
かける街頭募金に、小学生か
ら社会人まで 43 名のボラン
ティアが参加しました。4 ヶ
所に分かれて 2 時間活動した
結果、330 名の方から、いつ
もの 4 倍もの額の募金を頂き
ました。参加者からは、「路上生活をしている方も募金をして
くださり感動した」「募金をする人の気持ちになって呼びかけ
ることの大切さを知った」などの声が上がりました。
ぜひ、アイキャンを応援してください!
1、マンスリーパートナー
今年度、後 70 名足りていません!
アイキャンでは、毎月 1,000 円(1 日あたり約 33 円)から 10,000 円の一定の金額を寄付
してくださる「マンスリーパートナー」を募集しています。危機的状況の子どもたちの生活
を改善するためには、継続的な活動がとても重要です。ぜひ、マンスリーパートナーになっ
て、アイキャンの活動とフィリピンの子どもたちを応援してください。誕生日には、子ども
たちからプレゼントが届きます。
2、通常のご寄付
アイキャンの活動全体、そして事業に対する指定寄付を受け付けております。
アイキャンの活動は、皆さまからの善意で成り立っております。ぜひ、アイキャンの
写真:マニラの路上の子どもたちの
ための ICAN ドロップインセンター。
毎日、ご飯を食べ、シャワーを浴び、
勉強できる唯一のスペース。活動継
続には、皆さまの寄付が必要です。
活動を応援してください。皆さまからの想いを必ず子どもたちに届けます。
【ご寄付の方法】
クレジットカード:サイトから今すぐお手続きできます。https://kessai.canpan.info/org/ican/
口座からの引き落とし・お振込み:お申込用紙又は下記サイトからお申込みしていただけます。
http://www.ican.or.jp/j/my_ican.html
【アイキャンの口座一覧】三菱東京 UFJ 銀行
ゆうちょ銀行
楽天銀行
名古屋駅前支店(221)
2361021 特定非営利活動法人アイキャン
00850-6-78233 特定非営利活動法人アイキャン
ビート支店(210)
JAPANNET BANK
普通
7001258 特定非営利活動法人アイキャン
本店営業部(001)
4005809 特定非営利活動法人アイキャン
アイキャンは認定 NPO 法人のため、寄付者は、税制の優遇を受けることができます。
税額控除の額:その年の認定 NPO 法人等への寄付合計額(※)-2000 円×40% ※所得税額の 40%が上限
詳しくは、国税庁のサイト(https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1263.htm)またはお近くの税務署へ
―マンスリーパートナーさんのご紹介―
武内加奈さん「出会った子どもたちに恥ずかしくないように」
私は、ボランティア情報誌でアイキャンを見つけ、
「楽しそう!」と思ったのがきっかけ
で、日本事務局でのボランティアを始めました。私がしている活動が誰のためなのか、自
分の目で確かめてみたくなり、スタディツアーに参加することを決めました。
ツアーでは、目・耳・鼻・口・手・心の 6 感を使って感じたことがたくさんありました。
温かいお母さんたちや子どもたちとの出会いや楽しいこともたくさんありましたが、私に
とっては目をそむけたくなるような場面も多くありました。帰国してからも、あの子たち、
今どこで何をしているのかな、今日はちゃんとご飯を食べているのかなって考えたら、も
どかしくて涙が出る日々が続きました。でも、その時の気持ちや貴重な体験を、友達や家族、大切な人に伝えたい、
出会った子どもたちに恥ずかしくないように、まずは日本で活動を頑張ろう!と思えるようになりました。フィリピ
ンで出会った人たちやアイキャンのスタッフの方と一緒に、私も成長していきたいと考えています。
3、書き損じハガキ・切手・商品券
昨年度 5,935,828 円分のご寄付に!
年賀状を書く際に書き損じた未投函の官制ハガキや年賀ハガキ(未使用含む)をアイキャンに
送ってください。ハガキ 1 枚当たりノート 2 冊分の価値のご寄付になり、フィリピンの子どもた
ちの教育や生活を改善する活動に役立てることができます。
【集めているもの】未投函の官製ハガキ、未使用切手、未使用テレフォンカード、商品券
【送付先】〒460-0011 名古屋市中区大須 3-5-4 矢場町パークビル 9 階
認定 NPO 法人アイキャン
アイキャン宛
平成 22 年度外務大臣表彰団体
アイキャンは 1994 年より、貧困削減や紛争解決等に取り組む国際 NGO です。
住所:
〒460-0011 愛知県名古屋市中区大須 3 丁目 5-4 矢場町パークビル 9 階
TEL&FAX: 052-253-7299(火曜~土曜:12~19 時)
Website: http://www.ican.or.jp/
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