女性の顔の魅力判断への評価モードの影響 単独評価と並列評価の違いの検討 ○森 久美子 (関西学院大学社会学部) キーワード:顔、単独/並列評価、選好逆転 The effect of separate and joint evaluation mode on female face preference Kumiko MORI (School of Sociology, Kwansei Gakuin University) Key Words: Face, Separate/joint evaluation, preference reversals 性が顔の魅力判断に影響するとした森(2014)の結果と一致し ている。しかし性別ごとの分散分析の結果、女性での顔タイ プの主効果 (F(1,47)=5.77, p=.02)以外の主効果および交互 作用は見られなかった。 方 法 提示刺激 刺激作成のため、大学生 26 名(男性 9 名・女性 17 名)に対して予備調査を行った。女性の正面向き顔写真 12 枚を用意し、成熟性(女性らしい・セクシーな) 、幼児性(幼 い・若々しい) 、魅力度(魅力的な・好き)について 5 件法で 評定を求めた。成熟性が高く幼児性が低い写真、幼児性が高 く成熟性が低い写真の中から魅力度の差が小さい写真を 2 枚 ずつ選択し、合成したものを成熟性の高い顔(Mature 顔:M 顔) ・幼児型の高い顔(Immature 顔:I 顔)とした。 実験参加者 大学生 69 名(男性 19 名、女性 50 名) 実験課題 課題はノート型 PC に提示される刺激写真を評価 することであった。刺激提示と反応計測は E-Prime2.0 により 制御した。 独立変数 M 顔・I 顔を並べて評価する並列評価群と、M 顔→ I 顔の順に一枚ずつ評価する MI 単独評価群、I 顔→M 顔の順 に評価する IM 単独評価群の 3 群を設け、各群にランダムに参 加者を割り当てた。 従属変数 呈示された刺激に対する選好を「魅力的―魅力的 でない」の両極尺度を用いて 4 件法で評定を求めた。各刺激 の成熟性と幼児性についても予備調査と同じ各 2 項目で測定 した。評価語を提示してから反応までに要した時間を合わせ て測定した。 反応時間 魅力度判断に要した時間を対数変換し、条件と性 別の効果を検討したが、これらの効果は見られなかった。成 熟性や幼児性に対する判断に要した時間について同様の検討 を行ったところ、男性では MI 条件において女性らしさやセク シーさを判断する際の判断時間が短かった。この結果も、成 熟性が単独での評価場面で効果を持つとした森(2014)の結果 と一致している。しかし I 顔の属性判断時間が並列評価条件 で短くなるという傾向はみられなかった。 結 果 魅力度 各顔の魅力度の平均値を条件と性別ごとに図1に示 す。 女性では条件に寄らず M 顔が I 顔より選好されていたが、 男性では M 顔は I 顔より先に単独で提示された場合に魅力が 高く評定されていた。この男性の結果は、単独評価では成熟 魅力度 目 的 選択肢への選好が、選択肢が提示された状況や文脈によっ て変化する現象を選好逆転という。森(2014)は、複数の対象 について、個々の対象を別々に提示して評価を求める単独評 価(Separate evaluation)と、すべての対象を同時に提示して 評価を求める並列評価(Joint evaluation)における選好逆転 の問題を、顔刺激への好みを用いて検討した。具体的には女 性の顔に対する魅力の規定因として幼児性と成熟性をとりあ げ、単独評価場面では並列評価場面よりも成熟性の高い顔が 選好される可能性を示した。森はこの結果を、Hsee ら(1996) に従い、成熟性が幼児性にくらべて単独でも評価が容易な属 性であることによると考察している。 しかし、森(2014)の実験方法は、顔への選好の測定法とし て、単独評価では魅力評定、並列評価では選択を用いており、 両評価条件で評価モード(単独・並列)だけでなく評価尺度 (評定・選択)が異なっていた。そこで本研究では、森(2014) の実験方法を見直し、両条件の評価尺度を統一した上で選好 逆転が再現されるかどうかを検討する。 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 MI 並列 IM 単独 MI 並列 男性 単独 女性 M顔 図1 IM I顔 条件・性別ごとの各顔に対する選好(魅力度) 考 察 本研究では森(2014)でみられたような明確な選好逆転現象 を再現することができなかった。このことは、森(2014)の結 果が、評価モードの違いではなく評価尺度の違いによって生 じていた可能性を示唆している。一方で、男性参加者に関し ては、単独評価において M 顔の特性判断が速まり、魅力評定 が高まるといった森(2014)と整合する結果もみられた。本研 究では男性参加者数が少ないため、今後も男性データ数を増 やして検討を続ける必要があろう。また、並列評価時と単独 評価時における反応時間の違いの意味についてもさらに吟味 が必要と考えられる。 引用文献 Hsee, C. K. (1996). The evaluability hypothesis: An explanation for preference reversals between joint and separate evaluations of alternatives. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 67, 247–257. 森久美子(2014). 顔刺激の評価方法が顔選好に及ぼす効果 日本心理学会第 78 回大会発表論文集.
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