市民環境活動報告会 - 神奈川県環境学習リーダー会

第18回
市民環境活動報告会
講演要旨集
~気づきから行動の環(わ)~
平成24年3月3日(土)
かながわ県民センター・ホール
第18回市民環境活動報告会実行委員会
第 18 回市民環境活動報告会プログラム
12:00~12:05
12:05~13:05
13:10~13:30
開会挨拶
NPO 法人神奈川県環境学習リーダー会副代表理事
第 18 回市民環境活動報告会実行委員会実行委員長
柳川 三郎
《基調講演》
「森はいかに楽しいか」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1
~丹沢の再生活動の報告~
東京農工大名誉教授・丹沢大山自然再生委員会委員長
木平 勇吉
《口頭発表》
「被災地の子どもに笑顔を届ける」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 6
~東日本大震災で被災した子どもたちへの心の支援活動~
NPO 法人かながわ環境カウンセラー協議会
川村 卓正
13:30~13:50
「コンビニエンスストアにおける店舗の節電」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥12
~少しの工夫で大きな成果~
かながわ環境保全推進会議実践行動部会
近藤 菊郎
13:50~14:10
「相模原市自然環境観察員の活動」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥17
~活動内容と調査結果~
相模原市自然環境観察員
小川 路人
《休憩 10 分》
14:20~14:40
「市民による NO2 簡易測定手法の変遷と活用」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥23
~市民レベルにおける NO2 簡易測定活動の意義・効果~
NPO 法人神奈川県環境学習リーダー会大気環境部会
長村 吉洋
14:40~15:00
「三陸ボランティアダイバーズの活動」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥29
~地元の漁師と共に海底の瓦礫撤去~
NPO 法人神奈川県環境学習リーダー会
松原 洋一
15:00~15:20
「人と森林の間に立って」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥35
~神奈川県森林インストラクターの活動について~
NPO 法人かながわ森林インストラクターの会
久保 重明
15:20~15:40
「大学における自然観察と「気づき」の育成」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥41
~「自然観察」を中心とした環境教育と気づきについて~
神奈川工科大学 応用化学科
高村 岳樹
15:55~16:55
《テーブルセッション》‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥45
テーマ1
東日本大震災
テーマ2
大気(NO2)
テーマ3
自然観察
テーマ4
節電
16:55~17:00
閉会挨拶
NPO 法人かながわ環境カウンセラー協議会 理事長
木村 信幸
基調講演
森はいかに楽しいか
~丹沢の再生活動の報告~
丹沢大山自然再生委員会
委員長 木平 勇吉
1 はじめに
私たち市民が人間らしく生きていくために必要で、誰でもが利用できる財産を「社会的
共通資本」と呼びます。森や川や海、道路や交通機関、教育や医療制度などです。今回の
震災はその大切さを改めて教えてくれました。
今、丹沢の森は荒れて惨めな姿を曝していますが、多くの市民が行政と協力して自然再
生の活動を続けています。そして10年間が経ちました。ようやく回復の兆しが見えはじ
めました。こんな嬉しいことはありません。今日はその活動に関わっている私の体験をお
伝えします。病気だった森が元気になるのを見ることほど楽しいことはありません。
丹沢は神奈川 900 万人の水源林であり、防災林であり、登山を楽しむレクリエーシヨン
の場所です。安全で、健康で、心豊かな日々を与えてくれる丹沢の森は、私たち市民にと
ってかけがえのない「社会的共通資本」です。
2 丹沢の森林の歴史
現在の森林の姿は人間が過去に行ったこと、すなわち、破壊や保護の結果です。丹沢の
半世紀を振り返ると私たちの社会の動向をよく映し出しています。
* 関東大震災による大規模な山地崩壊と戦時中の激しい森林伐採(1940 年代)
* 燃料革命(薪・炭から石油へ)と建築木材を作る人工林の造成(1950 年代)
* 高度経済成長・林業隆盛と里地里山の都市化と人口増加(1960-70 年代)
* 林業衰退で農家の森林手入れ放棄による森の荒廃と生態系撹乱(1980 年代)
* 行政による水源林造成事業と自然環境の再生・保護活動(1990 年代)
* 市民による丹沢の自然再生活動と水源環境税の活用(2000 年代-現在)
3 丹沢の自然環境の荒廃
1980 年代から丹沢の森林はひどく荒れてきました。山で働いていた人は都会で働き森は
放置されました。暗くなった森からは土壌が流れ出し渓流の水は濁りました。汚れた大気
で樹木は枯れ野生動物が跋扈しています。大勢の登山客が押し寄せ登山路は汚れました。
バブルに沸く大都会の影響を強くうけています。昔の美しい森の姿と現在の荒廃した姿と
を写真で見比べてください。
* 人工林の手入れ放棄と土壌の流出、根の浮き上がり
* シカの増加と地面の草や低木の消滅
* ブナの枯死と見苦しい景色と生態系の撹乱
- 1-
*
*
*
*
渓流の荒廃と水生生物や魚の絶滅と変化
登山道、ゴミ、トイレ、標識、山小屋の荒廃
外来動植物の侵入と固有、希尐動植物の絶滅
地域社会の崩壊、集落の消滅、過疎化
4 丹沢の自然再生への時代の大きな流れ
自然再生は 1990 年代から行政の活動で始まりました。2000 年以降は市民活動が盛んに
なり、官民の協力が始まりデータと知識と経験が蓄積されています。代表的な活動を時間
順に挙げて見ます。
行政
第1回総合調査の実施(1960 年)
行政・市民
第2回市民参加による総合調査の実施(1993-1996 年)
行政
「水源の森林づくり制度」の発足(1997 年)
行政
丹沢保全計画の作成(1999 年)
行政
自然環境保全センターの設立(2000 年)
市民
ボランティア・ネットワークの設立(2000 年)
市民・行政
第3回市民協働による総合調査の実施(2004-2006 年)
市民・行政
データベース E-TANZAWA の開発(2006 年)
市民・行政
自然再生委員会の設立(2006 年)
行政・市民
水源環境税と県民会議(2007 年)
5 自然再生委員会の設立-市民協働の先進的なモデル-
図は「みどりの市民参加」、木平勇吉編、日本林業調査会刉、2010 年より引用
- 2-
この委員会は行政(国、県、市町村)と市民(NPO、企業、団体、マスコミ、研究者)が
協力して進める再生活動の中核組織で計画、実行、評価、参加啓発、広報を組織立てて行
っています。メンバーはつぎの参加団体の代表者です。
学識・経験者 東京農工大学名誉教授、日本獣医生命科学大学准教授、生命の
星・地球博物舘専門学芸員、東京大学大学院教授、日本大学教
授、東京情報大学教授、
(株)環境事務所代表取締役、
(株)野
生動物保護管理事務所代表取締役、
(有)川又林業代表取締役
NPO 法人
NPO 法人神奈川県自然保護協会、NPO 法人丹沢自然保護協会
日本野鳥の会神奈川支部、神奈川県山岳連盟、NPO 法人みろく山
の会、神奈川県勤労者山岳連盟、NPO 法人北丹沢山岳センター、
丹沢山小屋組合、丹沢大山ボランテイアネットワーク世話人会、
丹沢資料保存会
マスコミ
神奈川新聞社、
(株)テレビ神奈川、
(株)アール・エフ・ラジ
オ、横浜エフエム放送(株)
企業
トヨタウエインズグループ、サントリー(株)
、東京電力(株)
、
団体
(財)神奈川県公園協会、かながわトラストみどり財団、
(財)
宮が瀬ダム周辺振興財団、神奈川県農業協同組合、神奈川県森
林組合連合会、
(社)神奈川猟友会
行政機関
相模原市、秦野市、厚木市、伊勢原市、松田町、山北町、愛川
町、清川村、関東森林管理局東京神奈川森林管理署、神奈川県
オブザーバ- 国土交通省関東地方環境事務所、神奈川県環境科学センター
事務局
神奈川県緑政課、神奈川県自然環境保全センター、委員会事務局
6 自然再生のための活動内容-市民の手足と汗-
市民、NPO や行政(県や国)が協力して丹沢で行っているさまざまな活動を写真で紹介
します。大きな難しい仕事からささやかな仕事までいろいろです。
1 人工林間伐と下層植生の回復作業
2 シカ柵の設置と捕獲による頭数管理
3 ツキノワグマ、野鳥、魚、渓流生物、外来動植物、希尐種の調査
4 ブナの枯損調査、害虫(ブナハバチ)研究と大気観測
5 土壌保全・土砂留め工の実施と渓流の水量、水質の長期調査
6 登山道利用調査と整備、標識、丹沢クリーンハイク、トイレの管理
7 みどりの回廊の設定と植生と動物の実態調査
8 講演会、シンポシウム、公開勉強会の開催
9 自然観察会、夏休み親子自然探検隊、地形地質観察会、体験エコツアー
10 山開き行事、自然解説ガイド、自然保護指導員研修会
11 市民参加の森林づくり、草刈り、植林、人工林整備体験活動
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企画展の開催、資料の収集展示会
炭焼き体験、森の学校、尐年・尐女登山教室、市民登山、親子で沢登り教室
ホームページ運営、パンフレット、印刷物、幟旗の作成、環境副読本の作成
出前講義、県知事、シンガー・ソングライター白井貴子さんの登山案内
ワールドフェスタへ参加、百貨店協賛展示
7 水源環境税事業への市民参加-県民会議の活動-
市民参加を標榜して2007年から始まった「かながわ水源環境税」は年予算38億円
で全国で最大規模です。その事業の運営に参加する市民組織として「県民会議」が発足し、
公募委員10名、専門家委員10名、関係団体委員10名で構成されています。丹沢をは
じめ神奈川県の水源林・水源域を整備する県の事業であり、評価と県民への報告が県民会
議の为な役目です。現場でのモニタリング、広報活動、市民との意見交換会など活発に活
動しています。その仕組みと事業の内容はつぎの図のとおりです。
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上の2枚の図は「かながわ県民会議資料」から引用
8 見えてきた丹沢再生-森林再生に関わる楽しみ-
今は、まだ、丹沢は雪と氷に閉ざされています。しかし、訪れる人は尐なく静かで、落
葉した雑木林は見通しが良く、
陽だまりでは樹木の冬芽のふくらみが感じられる季節です。
私の好きな季節です。
シカの数は確実に減り、出会う機会は尐なくなりました。しかし、森にとってもシカに
とっても良い状況に向っていると思います。春に向って多くの草が地面を覆い、若葉が芽
吹くことを期待しています。
シカ柵の中の植物が盛んに生育することは既にわかりました。
これからはシカ柵外の草の回復に関心が向けられています。昨年はシカの好まない草木は
回復することがわかりました。
次に、間伐され整備されたスギ・ヒノキ人工林の中で下草や灌木が回復するかが待たれ
ますが、まだ判りません。植生により地面が覆われて、土が安定することが目に見える丹
沢再生の最初の一歩です。今年は気をつけてぜひ訪れて下さい。
シカのようす、樹木や草のようす、土壌のようすを確かめて、それらが良い方向に変化
するのを実感することは森林研究者の私の楽しみです。
- 5-
被災地の子どもに笑顔を届ける
~東日本大震災で被災した子どもたちへの心の支援活動~
NPO 法人 かながわ環境カウンセラー協議会
横浜支部 環境教育委員会 川村 卓正
1.はじめに
2011 年 3 月 11 日に発生した巨大地震とそれに伴う津波は、東北地方に大きな傷跡を
残しました。甚大な被害のあった被災地で暮らす人たちは、家族や友人を失ったり、家
を流されたりして生活基盤が大きく破壊された上、厳ししい寒さや飢えに苦しみ、先行
きの見えない不安を味わい、肉体的にも精神的にも大きなダメージを受けることになり
ました。
子どもたちの置かれた環境も極めて深刻で、その報道に触れ
るたびに心配し、
何か支援できないものかと思案していました。
ちょうど『子どもの力を引き出すうまい叱り方』という教育
書を震災直前に上梓していたこともあり、被災地出身の教育関
係者から、
「子どもたちの心のケアが必要だ」という声が届きま
した。
「環境」とは「生きやすさ」のバロメーターと考え、それ
が良くなるように活動するのが、環境カウンセラーとしての自
分のスタンスですので、これを機に、子どもたちの心のケアを
支援する活動を立ち上げることにしました。
2.3つの支援プロジェクト
支援活動は、2011 年 3 月下旬からスタートしました。首都圏で支援の準備をした後、
できるだけ迅速に被災地へ届けるといった方針を決めて、順に3つのプロジェクトを立
ち上げました。
①子どもの心のケア・プロジェクト (3月下旬~)
②被災地の子どもにボールを届けるプロジェクト (4月初旬~)
③被災地の子どもに笑顔を
届けるプロジェクト (5月中
旬~)
スピードが必要な上、組織も
現地情報もないため、支援計画
を立案したら、すぐにインター
ネット経由で告知し、協力者や
情報を募りました。
支援する地域は、早くから情
報が入手できた宮城県石巻市、
女川町、大崎市に決めました。
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3.子どもの心のケア・プロジェクト
震災とその後の生活環境の過酷さにより、精神的に大きなダメージを受けている子ど
もたちの心をケアするために、教員用ツール『子どもの心のケアシート』を作成し、そ
れを被災地で配布するプロジェクトです。
3.1『子どもの心のケアシート』の制作
①子どもの心的外傷後ストレス障害(PTSD)についての資料を基に、首都圏で教育関係
者、出版関係者らとともにたたき台となる文書を作成した。
②①の文書を被災地在住の障害者治療の専門医へインターネットで送信し、内容を検証
してもらう。
③アドバイスを取り入れて、わかりやすく
見やすいデザインを施して 1 枚のシートに
まとめ『子どもの心のケアシート』を完成
する。
④『子どもの心のケアシート』は印刷用の
データとインターネット配布用のデータ
を用意する。
3.2『子どもの心のケアシート』配布
①A4 カラー印刷したシートを 100 枚用意し、
被災地で医療支援活動をする弓哲玖氏(ニ
ューヨーク州立大バッファロー校歯学部
臨床指導員/障害者医療)らの医療支援チ
ームへ送付。
②被災地の学校や避難所で医療支援する
際に、教職員に『子どもの心のケアシート』
を手渡しで配布。
③Mixi や Twitter などの SNS で告知し、PDF データをダウンロード配布またはメール送
信して、被災地の小学校などで活用してもらった。
(写真)避難所での活動(石巻市)
小学校での活動(大崎市)
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4.被災地の子どもにボールを届けるプロジェクト
震災から 3 週間ほど経過し、被災地についての情報も徐々に伝わってきた頃、毎日新
聞に「小学校から逃げる時、津波に追いかけられて必死に走りました。避難所では、ト
ランプや宿題をしています。今は足を伸ばして寝れるし、ご飯のおかわりもできます。
でも、もっと外で遊びたいです。ボールがあ
るとうれしいな。
」
と言う記事が掲載されまし
た。
この記事を読み、津波で被災した地域の子
どもにボールを届けて、思いっきりストレス
を発散させてあげたいと思いました。サッカ
ーボールが1つあると、大勢の子どもが毎日
のように楽しめます。また、元気に走り回る
子どもの姿を見れば、大人も楽しめるのでは
ないかと考え、記事が掲載された翌日から、
プロジェクトをスタートしました。
4.1 10日間で大量のボールを集める
ボールや支援物資を集める時間が短かったた
め3つの方法で集めました。
①インターネットを通じてボールの寄付
を募る。
②サッカー関連イベント会場への来場者
にボールの寄付を募る。ボールには、被災
地の子どもたちへ向けたメッセージを書
いてもらう。
③イベントに出場するプロ・フットサル選
手たちからも、応援メッセージや支援物資
を募る。
★集まったボールと物資
・サッカーボール 約200個
(うちメッセージボールが25個)
・その他のボール 約25個
・シューズ 15足
・スポーツウェア 20着
・ソックス 20足
など
(写真)横浜で開催したイベントの様子
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4.2 集めたボールを届ける
震災直後から手書きの壁新聞などで情
報を発信し続けた石巻日日新聞の近江社
長は、サッカー東北リーグ所属「コバルト
ーレ女川」の代表も務めています。その近
江氏から「コバルトーレ女川は、一切流失
してしまいまして・・」 というメールが
届きました。津波でクラブハウスを丸ごと
流され、選手はサッカー活動を中止して支
援活動をしているとのことです。そこで、
その下部の小学生チームなどにボールな
どを届けることにしました。
①被災地への出発に際して
横浜市に緊急支援車両の申請をし、許可証
を交付してもらう。
②出発準備
支援物資のほか、自分たちの食料、水、調
理器具、懐中電灯、手ぬぐい、ロールペー
パー、ガムテープ、マジックペン、マスク、
ゴム手袋、軍手、長靴、カッパ、スコップ、
工具、ゴミ袋などを持参。
③ボールの配布
单米のサッカーリーグなどでプレーする岡本
寅之氏
(横浜市出身)
と 2 人で被災地へ行き、
子どもたちに直接渡す。
<为な配布場所>
・石巻市のコバルトーレ尐年用練習場で近隣
クラブに呼び掛けて配布
・万石浦小学校避難所、渡波小学校避難所で
子どもに手渡しで配布
・女川総合体育館の駐車場で子どもやその家
族に配布
・一般車両通行止めの地域では、通行中の自
衛隊緊急車両などに直接依頼
・メッセージ付きボールの一部は、大崎市、
石巻市内の医療施設やファストフード店など
に展示
(写真)被災地でボールを配布する様子とメッセージボール
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5.被災地の子どもに笑顔を届けるプロジェクト
5月になっても石巻や女川の津波の被害地域では、瓦礫に埋もれ泥色の光景が広がっ
ていました。子どもたちに、もう尐し明るい色彩を見せてあげたいと思い、避難所周辺
にヒマワリの種を蒔く活動をすることにしました。
種を蒔いた場所には、メッセージを書いた『笑顔復興中』フラッグを立てカラフルな
色合いになるようにしました。みんなで種を蒔き、被災地で暮らす人たちに育ててもら
い、やがて自分たちが育てたヒマワリが咲く姿を見て『笑顔』になろうといったプロジ
ェクトです。
5.1 ポスターで参加者・協力者を募る
数多くの参加者・協力者を募るために、プロジェクトの概要を知らせるポスターを制
作しインターネット上で告知しました。
また、参加形態は下記の3つ用意して参加しや
すくしました。
①ヒマワリの種を蒔くイベントを開催し、みんな
で被災地へ行きヒマワリの種を蒔く。
②被災地へ行けない人は、ヒマワリの種と『笑顔
復興中』フラッグにメッセージを書いたものを指
定した場所に送付する。
③被災地へボランティアに行く場合、その場所で
許可をとりヒマワリの種を蒔き、
『笑顔復興中』フ
ラッグを立てる。
5.2 『笑顔復興中』フラッグ
『笑顔復興中』フラッグの用紙にメッセージを
書き、2つ折にして間に割り箸を挟んで糊づけす
ると旗のようになります。
それをヒマワリの種の傍に立てると目印になり、
ヒマワリが咲くまでの間はカラフルな色彩となり
ます。
当初、参加者にインターネット経由でデータを
ダウンロードしてもらい、それを各人にプリント
してもらっていましたが、手間や経費がかさむた
め、印刷会社に協力を仰いだところ善意により無
料で印刷してもらうことになりました。
それを参加者や被災地の協力者に郵送したところ、
とても評判がよく、支援活動をする著名人の方々
からも多くのメッセージが届けられました。
(写真)上:ポスター 下:
『笑顔復興中』フラッグ
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5.3 女川でヒマワリの種を蒔く
ヒマワリの種を蒔くイベントを 6 月 4 日に女川
で行いました。女川総合体育館避難所の責任者を
務める平塚氏と協議し、避難所のどこからでも見
えることと、すぐ下に遺体安置所があり慰霊にも
繋がるとの判断で、運動公園奥側の急斜面に種を
蒔き、
『笑顔復興中』フラッグを立てることになり
ました。
①蒔いたヒマワリの種 1000 粒
②『笑顔復興中』フラッグ 300 本
③イベント参加者 首都圏 23 名(現地へ 4 名)
、
宮城県内 9 名(女川町から 5 名)
ヒマワリの種を蒔いた後、
間引きなどの作業は、
女川小学校の子どもたちや他の支援で女川を訪れ
た人たちの手で行われ、8 月の終わりに花を咲か
せました。
5 終わりに 心の支援と復興
女川総合体育館避難所には、仮設住宅を待つ人
たちが数多く避難していましたが、11 月には全員
(写真)上:女川の斜面にヒマワリの種を蒔く。
が仮設住宅へ転居できました。
下:斜面に並ぶ『笑顔復興中』フラッグ
12 月 24 日に女川を訪問した際には、港のすぐ
そばの食堂も再開し、多くの客でにぎわっていました。また、クリスマスと言うことで、
サッカー日本代表の松井選手や駒野選手らが支援に来て、子どもたちも大いに喜んでい
ました。その会場のすぐ奥の斜面で、枯れてもなお立っている数本のヒマワリを見つけ、
その姿が東北人の無言で粘り強く頑張る姿と重なりました。
復興には長い時間がかかりそうですが、子どもたちがよい環境で成長できるように、
粘り強く心の支援活動を続けていく必要性を強く感じました。
最後に、被災地の皆さんが一日も早く復興されることをお祈りいたします。
(写真)女川の斜面に残ったヒマワリ(12 月 24 日)。
女川港前浜で 11 月に食堂を再開した魚屋岡清さん
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コンビニエンスストアにおける店舗の節電
~尐しの工夫で大きな成果~
かながわ地球環境保全推進会議 実践行動部会
近藤 菊郎
1 はじめに
昨年の震災から約1年がたちます。震災後は多くの人が家庭や職場で節電を余儀なくさ
れました。企業や家庭では15%の節電を求められそれぞれの場所でその達成のための努
力が行われました。特に夏場の節電は多くの人の記憶に新しいことと思います。
コンビニエンスストアにおいても夜間看板照明の消灯や、店内照明を蛍光灯からLED
照明に変えるなど対応は素早く大きな効果をあげました。それらの取り組みを紹介しさら
に当店独自の取り組みで15%節電を大きく上回る成果を上げた事例を紹介します。
2 かながわ地球環境保全推進会議実践行動部会での活動
2・1 マイアジェンダを登録して、自为的に環境配慮活動を実施する企業、
NP
O、個人などの申し出により、積極的に実践行動を行う意思のあるもので構成
される会である。
2・2 各年度の総会で活動内容を決定し実施される。
2・3 平成21年10月「地球温暖化への取り組みと生物多様性確保への動き」と題
し、環境省大臣官房長 单川 秀樹氏の講演
平成22年6月「生態系保全の新目標の課題」と題し、環境省自然環境局長 鈴
木 正則氏の講演
3 震災直後のようす
横浜市緑区西八朔町の店舗にて震災の時を迎えました。店内には数人のお客様がおり、
小さな子供を連れた妊娠中の母親が、
レジ前でしゃがみこんで子供を抱きよせていました。
まだ揺れている最中に停電し急に音のない不気味さも加わりました。しばらくすると携帯
も通じなくなりました。そのうち日が暮れて懐中電灯の明かりで水・食糧・電池・トイレ
ットペーパーなど品切れになるまで営業をしました。
私の店舗では当日の夜10時過ぎには停電が解消され、店舗の営業は再開しましたが、
交通のマヒで商品の配送は止まり時々徒歩で帰宅途中の方のトイレの利用はありますが、
おにぎり・パン・弁当は品切れの状態でした。
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4 活動目的
私は宮城県仙台市の生まれです。父親は仙台市若林区荒浜の出身です。昔は半農半漁の
村で小さいころは地引網の手伝いをし、魚をたくさんもらった記憶があります。夏は毎年
実家に泊り家族で遊んだ海が、親せきや隣近所の家々を流してしまいました。
地震・津波、原発事故を受けて、日本中の人たちが「今出来ること」に取り組みました。
ある人は素早く現地に駆けつけボランティア活動に取り組み、ある人は支援物資を送るな
ど多くの人が活動しました。横浜にいる私が今できることは何かと考えたときに、コンビ
ニエンスストアだからできることとして募金活動を行いました。そしてもう一つコンビニ
エンスストアだけどできること、やらなければならないこととして節電を徹底的に行おう
と考えました。
写真1 若林区荒浜 おじ宅にて
5 コンビニ本部との共同活動
多くのコンビニエンスストアは本部と加盟店の共存共栄のシステム、フランチャイズ
システムで運営されております。私が加盟しているサークルKサンクスも、日頃より本
部の環境活動は盛んに行われております。その一部を紹介します。
5・1 プラグインハイブリット車の導入と店舗駐車場での充電スタンドの設置。スー
パーバイザー(店舗巡回指導員)が使用する車両として、2009年12月よ
りプラグインハイブリット車の導入を開始し、一部店舗への充電スタンド設置
も開始しました。
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写真2 サークルKサンクスHPより
5・2 廃棄物の削減とリサイクルの推進
店頭で出される廃棄食品の一部を堆肥や飼料にし、それらを餌や肥料として
育てられた家畜や作物が、再度安全な食品として提供されます。
サークルKサンクスHPより
6 店舗の節電実施状況
当店も24時間営業ですが、今回の節電では24時間営業は継続しつつ、冷凍・冷蔵設
備など節電できないものは従来同様に運転しながら、いかに電力消費を15%以上節約す
るかに挑戦しました。
6・1天井蛍光灯のLED照明への交換
店舗天井部分の68本の蛍光灯すべてが、LEDに交換されました。これは本部
のすばやい対応により震災後1ケ月以内に行われました。
6・2夜間看板照明の消灯
震災後多くのコンビニや外食チェーン、スーパー、百貨店その他、駅、公共施設
も看板照明が消されていきました。当店においても例外なく行いました。
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6・3店内エアコンの使用を制限する
基本的に今シーズンは店内の冷房は使用中止としました。
写真のような小さな扇風機を2ヶ所店内に設置しました。
オープンケースより漏れ出す床付近の冷気を、天井向けて送るだけのシン
プルな方法で夏場を乗り切りました。
写真3 小さな扇風機
写真4 同じく別角度から
写真5 レジ側の様子
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6・4店内照明の節電
オープンケース内蛍光灯も消灯し、節電に努めました。
写真5 オープンケース照明の消灯
7 その効果
4月から8月までの電力使用実績は下表の通りである。
表1 サンクス宮前店電力使用量
月
4月
5月
前年使用KW
10,288
9,452
本年使用KW
7,499
6,309
%
-27
-33
6月
7月
8月
8,404
11,806
11,165
5,812
7,914
8,352
-30
-32
-24
今後の課題
節電は夏季冷房需要に限定するものではなく通年で行うべきですが、無理な節電で
私たちの生活や経済活動に支障をきたしては元も子もありません。企業も家庭も上手
に節電し無理のない市民活動や経済活動を送る必要があります。そのために無駄な電
力使用を抑えることにもっと多くの人たちに関心を持っていただく必要があります。
今後の課題としてコンビニエンスストアなどにおいては、夏期の節電には効果が出
る店内構造ですが、冬季は店内もかなり冷えるために、暖房を強めにする傾向があり、
今後効率的な暖房も考慮していく必要があります。
震災と原発事故の影響で発電電源に変化が生じ、CO2排出量の増加も懸念されま
す。節電を一過性のものとせず、継続した取り組みが求められます。
- 16 -
相模原市自然環境観察員の活動
~活動内容と調査結果~
相模原市自然環境観察員
小川 路人1
1 はじめに
相模原市は、神奈川県の北西部に位置し、北側は東京都、西側は山梨県と接していま
す。相模原市の面積は、2006 年の津久井町、相模湖町との合併と 2007 年の藤野町、城
山町との合併により、90.40km2 から 328.84km2 になりました。東部の旧相模原市(相
模原地域)は、单西側の市境に相模川、北東側の市境に境川が流れています。これらの
河川によって形成された河岸段丘の間の斜面には、市街地には貴重な緑地が連なってい
ます。一方、西部の津久井地域には標高 1,500mを超える山岳地帯があり、森林が広が
っています。
相模原市では、平成 13 年度に市民ボランティアによる「自然環境観察員制度」がス
タートし、自然環境の調査を行っています。この制度は、市内在住、在勤又は在学の中
学生以上の方を対象に、相模原市の広報などで毎年募集を行い、平成 13 年度から平成
23 年度まで毎年 100 人前後の方が登録しています。
この制度の目的は、市民と行政が一体となって自然環境を調査することにより、
・身近な自然に目を向け、自然環境に対する関心を高め、環境保全意識の高揚を図る
とともに、
・大切な自然を監視・保全していくための基礎資料を継続的に集積していくことです。
为な活動には、全体テーマ調査と専門部会調査があります。
2 全体テーマ調査
2. 1 为な活動内容
2. 1. 1 概要
相模原市自然環境観察員制度の活動の中心は、
「全体テーマ調査」です。この調査は、
登録した全ての観察員が行います。年に2回ほど、テーマ(対象動植物)を決めて、調
査を行っています。
2. 1. 2 テーマ
各年度に実施した全体テーマ調査のテーマは表1のとおりです。原則として 5 年目に
同じテーマの調査を行いました。ただし、平成 23 年度は、現地での全体テーマ調査を
実施せず、過去に行った全体テーマ調査のとりまとめ作業を行いました。
1
連絡先: 相模原市立環境情報センター [email protected]
- 17 -
表1 各年度に実施した全体テーマ調査の内容。
年度
平成 13 年度
平成 14 年度
テーマ
年度
平成 18 年度
ツバメ類の巣の調査
テントウムシ類の調査
セイタカアワダチソウとス
スキの調査
セイタカアワダチソウと
ススキの調査
平成 19 年度
春の七草の分布調査
平成 20 年度
野鳥の調査
平成 21 年度
チョウの調査
タンポポ類の調査
野鳥の調査
帰化植物の調査
ブタクサ類とオナモミ類の
調査
平成 17 年度
春の七草の分布調査
セミの鳴き声調査
帰化植物の調査
平成 16 年度
ツバメ類の巣の調査
テントウムシ類の調査
セミの鳴き声調査
平成 15 年度
テーマ
ブタクサ類とオナモミ類
の調査
アメリカオニアザミの調
査
平成 22 年度
ジョロウグモの生息調査
タンポポ類の調査
ジョロウグモの生息調査
2. 1. 3 調査方法
全体テーマ調査ではメッシュ調査を行っています。メッシュは旧相模原市内(現在の
相模原市から旧津久井町、旧相模湖町、旧城山町、旧藤野町を除いた相模原市内)を 500
×500m に区分したものです。メッシュ図は図1に示しました。このメッシュを自然環
境観察員一人ひとりに割り振って、調査を行っています。旧相模原市内の総メッシュ数
は、417 メッシュです。ただし、以下のようなメッシュは、調査を行っていません。
・立ち入ることができない地域が多く含まれているメッシュ
・市境のために旧相模原市が尐ししか含まれないメッシュ
・調査員の都合で調査を実施できなかったメッシュ
- 18 -
相模原市旧市の市境
図1 全体テーマ調査で使用しているメッシュ
2. 2 調査結果
ここでは全体テーマ調査結果のうち、平成 15 年度と平成 20 年度に実施した野鳥調査
結果について報告します。調査対象種はキジバト、ヒヨドリ、コゲラ、シジュウカラ、
カワセミ、ヒバリの 6 種でした。また、調査時期は 4 月中旬から 6 月まででした。調査
を行ったメッシュ数は、平成 15 年度が 309 メッシュ、平成 20 年度が 303 メッシュで
した。この調査では、調査対象種の確認の有無を記録し、個体数は記録しませんでした。
各種が確認されたメッシュ数の全調査メッシュ数に対する割合を、図2に示しました。
キジバトは確認されたメッシュの割合が平成 15 年度から平成 20 年度にかけて減尐し
ていました。また、ヒヨドリやコゲラもやや減尐が見られました。一方、シジュウカラ
はあまり変化がなく、むしろわずかに増加していました。水辺に生息して崖に巣を作る
カワセミや、草原・畑などに営巣するヒバリの確認メッシュの割合はほとんど変化があ
りませんでした。
キジバト、ヒヨドリ、コゲラは为として樹上に営巣する種なので、相模原市内では樹
木を利用する種が減尐傾向にあるのかもしれません。
- 19 -
キジバト
ヒヨドリ
コゲラ
0%
20%
40%
60%
80%
100%
H15 0%
20%
40%
60%
80%
100%
H20
H15
全調査メッシュ数
H15
H20
H15
H20
平成 15 年度:309
H20
H15
平成 20 年度:303
H15
H20
H20
H15
シジュウカラ
確認メッシュ
確認メッシュ
未確認メッシュ
H15
H20
未確認メッシュ
H20
H15
カワセミ
H15
H20
H20
ヒバリ
H15
H15
H20
H20
図2 野鳥 6 種の確認メッシュ数の割合(%)の変化。平成 15 年度と平成 20 年度に
おける、
「全調査メッシュ数に対する確認メッシュ数の割合」を示しています。
3 専門部会調査
3. 1 为な活動内容
3. 1. 1 概要
相模原自然環境観察員制度には、現在、
「植物調査部会」
・
「湧水調査部会」
・
「野鳥調査
部会」
・
「河川生物相調査部会」の4つの専門調査部会があります。専門調査部会には希
望者がいくつでも参加でき、より専門的な調査を行っています。
3. 1. 2 調査方法
調査地や調査方法は、各調査部会で異なりますが、ここでは一例として野鳥調査部会
での調査方法を紹介します。調査は平成 19 年度から 23 年度にかけて行い、1地点につ
き、1 年間の調査を行いました。調査時期は以下のとおりです。なお、平成 20 年度は雤
天のため冬季調査を中止しました。
・春季(渡り期:5 月上中旬)
・夏季(繁殖期:6 月中下旬)
・秋季(渡り期:10 月)
・冬季(越冬期:1 月(H23 年度)または 2 月)
調査は以下の二つの方法で行いました。
①線センサス調査法
あらかじめ設定した調査ルート上を、時速 1.5km~2km で歩行し、調査ルートの片
側 50m(両側 100m)幅の範囲内に出現した鳥類の種名、個体数等を記録しました。調
査ルートの数は、旧相模原市内の 11 ルートです。
②定点観察法
あらかじめ設定した調査定点で、範囲を定めずに1地点 30 分間の観察を行い、出現
した鳥類の種名、個体数等を記録しました。調査定点の数は、旧相模原市内の 9 個所で
- 20 -
す。
3. 2 調査結果
2. 2 で述べたとおり、全体テーマ調査ではキジバトの確認メッシュの割合が減尐して
いるので、野鳥調査部会調査で記録されたキジバトの個体数がどのように変化している
のかをみることにしました。
変化をみるために、相模原市が平成 11 年に行った調査結果と比較することにしまし
た。この調査は、自然環境観察員制度の調査に先立って実施された調査で、野鳥調査部
会の調査と同じ調査地点で、同じ調査時期、同じ調査方法によって調査を行っています。
この調査結果は、以下の報告書を参照しました。
・相模原市自然環境基礎調査報告書-平成 10 年~12 年の動植物の調査結果から-
(相
模原市 平成 13 年 3 月)
平成 11 年度の調査(自然環境基礎調査)結果と平成 19 年度から 23 年度の調査(野
鳥調査部会調査)結果の比較は、表2に示した通りです。ただし、平成 20 年度に調査
を行った3ルートと1定点は冬季の調査を行っていません(図3の中のR7、R8、R
9、P8)
。
その結果、キジバトの合計個体数は平成 11 年度の自然環境基礎調査結果に対して、
平成 19~23 年度の野鳥調査部会の調査結果では四季の合計数で 64%にまで減尐してい
ました。
表2 平成 11 年度と平成 19~23 年度のキジバトの個体数の比較。
春季
平成 11 年度(自然環境基礎調査) 45 個体
平成 19~23 年度(野鳥調査部会 44 個体
調査)
平成 11 年度の個体数に対する平
98%
成 19~23 年度の個体数の割合
夏季
59 個体
28 個体
秋季
58 個体
30 個体
47%
52%
冬季
合計
54 個体 208 個体
49 個体 134 個体
91%
64%
調査定点・ルート別の個体数の変動の様子は、図3のとおりです。キジバトの個体数
の減尐率がもっとも大きかった調査定点・ルートは、図3の中のR3で、このルートで
は、平成 11 年度の個体数が 18 個体だったのに対し、平成 19-23 年度の個体数は 3 個体
で、1/6 になっていました。また、R7やR8でも減尐率が大きく、R7では平成 11 年
度の 34 個体に対して平成 19-23 年度は 7 個体(平成 11 年度の 21%)に減尐し、R8
では平成 11 年度の 21 個体に対して平成 19-23 年度は 6 個体(平成 11 年度の 29%)に
減尐していました。これら減尐の大きかった調査定点・ルートは、図3に示したとおり、
旧相模原市内の单西地域に偏在していました。
旧相模原市内の单西側の市境には、相模川が流れています。そして、相模川に沿った
- 21 -
地域は、畑や水田などの緑地が多い地域となっています。キジバトの減尐傾向が大きい
場所は、この地域の一部です。旧相模原市内では、相模川に沿った畑や水田などの緑地
になんらかの変化があったのかもしれませんが、原因は不明です。
平成11年度に比較して平成19
~23 年度のキジバトの個体数
が大きく減尐している地域
相模原市旧市の市境を含
むメッシュの外郭線
図3 平成 11 年度と平成 19~23 年度のキジバトの個体数の変化。個体数の変化は以下の
5区分としました。
・減尐:平成 11 年度に対する平成 19~23 年度の個体数が 1/2 未満
・やや減尐:平成 11 年度に対する平成 19~23 年度の個体数が 1/2 以上 2/3 未満
・変化なし:平成 11 年度に対する平成 19~23 年度の個体数が 2/3 以上 1.5 倍以下
・やや増加:平成 11 年度に対する平成 19~23 年度の個体数が 1.5 倍より大で 2 倍以下
・増加:平成 11 年度に対する平成 19~23 年度の個体数が 2 倍より大。あるいは平成
11 年度の個体数が 0 個体で平成 19~23 年度に記録がある。
自然観察員制度の今後の課題としては、以下のものが挙げられます。
・自然環境観察員制度の中で実施した他の調査結果も合わせて、相模原市の中の自然
の変化の状況をさらに詳細に解析する。
・自然環境の変化の原因を解明する。
これらのことにより、相模原市の自然環境の保全のための提言を行い、市の環境施策
に生かすことを目標としています。また、来年度以降は、相模原市西側の津久井地域に
まで調査範囲を広げ、現在の相模原市全域の自然環境の状況を把握する予定です。
- 22 -
市民による NO2 簡易測定手法の変遷と活用
~市民レベルにおける NO2 簡易測定の意義・効果~
NPO 法人神奈川県環境学習リーダー会大気環境部会
○長村吉洋、猪股満智子
1 はじめに
県内ほぼ全域に在住する神奈川県環境学習リーダー会の仲間で、環境のモニタリング学
習をしようと、平成 12 年に発足した大気環境部会は、当初環境モニタリング部会として
発足しました。大気系、自然系、水質系のモニタリングを模索しながら、平成 16 年に水
環境部会を分離、独立後、大気、自然系のモニタリングに加えて VOC・PRTR(化学物質
移動登録)情報を活用した解析や SPM(浮遊粒子状物質)
・PM(微小粒子)測定体験、
そして大気汚染や地球温暖化防止に向けた環境教育などを展開しています。測定活動 10
年目の平成 21 年には「県環境保全調査活動功労者賞~大気・水・土壌部門」を受賞いたしま
した。本発表では、これまでの大気環境部会において行ってきた二酸化窒素(NO2)濃度の
簡易測定の手法および結果について概観します。
2 活動の概要
地球環境問題が顕著になり、地球規模の環境保全対策が叫ばれ、国では各自治体が環境
保全計画を持つよう定めました。そして平成 9 年に策定された第一次「神奈川県環境基本
計画」の重要課題が大気汚染対策でした。昭和から平成になっても、まだまだ大気汚染の状
況は改善されたとはいえない状況の中で、私たち市民でも簡卖に測定でき、大気汚染の目
安になるものとして二酸化窒素濃度を活動テーマの1つとしました。
二酸化窒素(NO2)は大気汚染の指標として重要な項目の一つであり、燃焼などにより空
気中の窒素が酸化されることによって人為的に生成される成分がかなりを占めています。
近年では工場からの排出よりも自動車排ガスからの排出が多いのですが、どうしても市民
は被害者意識を持つ傾向があるようです。行政機関による種々の大気汚染物質のモニタリ
ングは継続的に行われてきていますが、市民の目線で大気の汚染がどの程度なのかを把握
できることは重要であり、常時監視局だけでは行き届かない地点での測定は大きな意味を
持ちます。
当神奈川県環境学習リーダー会大気環境部会では、平成 12 年から毎年、6月と 12 月の
木曜~金曜日に 24 時間測定を行ってきています。大気環境部会員のいない地域や大気状
況の把握が重要と思われる地点については、部会員外の当会会員に協力してもらったり、
会員が所属する地域グループの方々と連携して測定してもらったりして、県内のかなりの
領域をカバーすることができています。
測定地点は、一般環境大気測定局前、自動車排出ガス測定局前、小中学校前、为要駅前、
为要交差点、住宅地、等を選び、測定者による測定地点の偏りをなくすようにしています。
測定結果は毎年度分データ化、蓄積し、常時監視測定局データとの比較も行い、学習に役
- 23 -
立てています。
3 測定方法
環境省告知及び学校環境衛生の基準に準ずる測定法「ザルツマン試薬を用いる吸光光度
法」に準じて製造認可された機器を採用し、精度の高い、信頼してもらえる測定に努力して
います。吸光光度法とは、光の吸収を利用する分析方法のことを言います。当会で行って
いる二酸化窒素の測定はザルツマン法による天谷式簡易測定法で、ザルツマン試薬及び吸
光光度計を用いて分析を行います。
当部会では、平成 12 年 11 月、定期測定のスタートにあたり、当時普及していた初代天
谷式(開放型捕集管+ユニメーター=A)と第6世代捕集管(フィルター、ろ紙押さえ付
捕集管+エコアナライザー=B)による比較測定を試してみました。測定に際しては、電
柱や壁面を利用し、一箇所の測定地点(1.5m の高さ)にA, B 2種類の捕集管 4 本を並
列に設置し、24 時間暴露しました。一般的に、行政や業者が測定値を求める際、3~4本
の検体を用い、最高値、最低値を除外するのが常のようです。
図1 左から A、B、C 三世代の NO2
濃度測定用捕集管
図2 B および C 方式の測定管を
取り付けている様子
翌日の分析には天谷博士に立ち会って頂きました。結果は、初代天谷式Aは全地点の4
本夫々が2~4倍の測定値になるというバラつきがあり、どの値を採るか判断に悩みまし
た。それに対し第6世代捕集管Bの濃度は各地点の4本中では2~3ppb 程度の違いでし
た。天谷博士の判断は「Aは紫外線の影響を受けて硝酸化しています」ということでした。
市民の測定には1箇所に4本ずつ設置することは費用や手間の点からも難しく、簡卖な
ろ紙押さえで紫外線を遮断し、濃度値がダイレクトに採れる(第6世代捕集管+デジタル
表示のエコアナライザー方式)Bを採用し、測定開始することにしました。
エコアナライザー方式での測定が 10 年経過した頃、メーカー側から特許権、採算面等
を理由に製造中止の連絡があり、以降の増設や調整等メンテナンスが難しくなってきまし
た。そこで平成 22 年 12 月度測定からはB方式による継続に加え、
(紫外線遮断型捕集管
+設置型分析機に利用されているセル方式を導入し、検体吸引の個人差が出難い構造にな
ったエコチェッカー方式)Cを採り入れ比較測定を続けているところです。
- 24 -
図3 エコアナライザーB 方式(左)およびエコチェッカーC 方式(右)による分析風景
4 測定結果
図4に平成 23 年 6 月および 12 月に測定した B(エコアナライザー方式)による NO2
濃度マップを示します。この時は 6 月も 12 月も雤が降りましたが、いずれの濃度もかな
り低めで、ほとんどの地点で環境基準 60ppb 以下の値となっています。特に 12 月は激し
い雤が降ったことが影響しているのかどうかわかりませんが、全地点でこれまでにない低
い値となりました。ここ数年の NO2 濃度は低い値で推移している状況に変わりはないよう
に思われます。
図5は図 4 と同日の一般大気測定局および自排局(自動車排気ガス測定局)で測定され
たデータをマップ化したものです。これら常時監視局の NO2 濃度も全般的に低めで、すべ
ての地点で環境基準値を下回っていることがわかります。
これまで測定に用いてきた B(エコアナライザー方式)に加えて、平成 22 年 12 月から
始めた C(エコチェッカー方式)について検討するために、横軸を B による濃度、縦軸を
C による濃度をとってプロットし相関を調べました。
- 25 -
(ppb)
60
50
40
30
20
平成 23 年
6 月 2 日~3 日夕方
24 時間計測
天気 雨
気温 15~24℃
風向 北
MANDARA ソフト使用
(ppb)
60
50
40
30
20
平成 23 年
12 月 1 日~2 日夕方
24 時間計測
天気 雨のち曇り
気温 8℃
風向 北
MANDARA ソフト使用
図4 平成 23 年 6 月度および 12 月度の NO2 簡易測定(エコアナライザーB 方式)によ
る濃度マップ
- 26 -
(ppb)
60
50
40
30
20
平成 23 年
6 月 2 日~3 日夕方
24 時間計測
天気 雨
気温 15~24℃
風向 北
MANDARA ソフト使用
(ppb)
60
50
40
30
20
平成 23 年
12 月 1 日~2 日夕方
24 時間計測
天気 雨のち曇り
気温 8℃
風向 北
MANDARA ソフト使用
図5 平成 23 年 6 月度および 12 月度測定時における常時監視局の NO2 濃度から得られ
たマップ
- 27 -
H23年6月度 分析値の相関
エコチェッカー
平成 23 年 6 月度について相関
図を描いたものを図 6 に示しま
す。平成 22 年 12 月度について
も、ほぼ同様の相関が得られて
おり、両者の間にはかなりのば
らつきが存在するように見うけ
られます。図7は、B および C
方式によって得られた分析値が、
常時監視局で測定された値とど
れくらいの相関があるかを平成
23 年 6 月度についてプロット
したものです。これを見ると、
B(エコアナライザー方式)の
方が C(エコチェッカー方式)
より、よい相関を持っているよ
うに思われます。また、平成 23
年 12 月度についても同様の相
関図を描いてみると、さらにば
らつきは大きくなっており、新
たな C(エコチェッカー方式)
がどれくらいの信頼性をもって
いるのか、さまざまな面からの
検討が必要であるように思われ
ます。
70
60
50
40
30
20
10
0
0
10
20
30
40
エコアナライザー
50
60
70
図6 平成 23 年 6 月度における B(エコアナライ
ザー方式)と C(エコチェッカー方式)によっ
て得られた分析値の相関図(卖位 ppb)
50
40
C(エコチェッカー方式)
30
分析値
5 まとめ
大気環境部会の活動は 10 年
余りではありますが、NO2 濃度
をはじめ、様々なモニタリング
活動をきっかけにして、丹沢山
地のブナ林衰退の原因究明など、
さまざまな情報や知見を実感す
ることができました。
今後も体験学習から保全活動へ
とつなげていきたいと考えてい
ます。
20
B(エコアナライザー方式)
10
0
0
10
20
30
40
50
常時監視局値
図7 平成23年6月度における常時監視局濃度とB
(エコアナライザー方式)と C(エコチェッカ
ー方式)によって得られた分析値との相関図(卖
位 ppb)
- 28 -
三陸ボランティアダイバーズの活動
~地元の漁師と共に海底の瓦礫撤去~
NPO法人神奈川県環境学習リーダー会
松原 洋一
1. 活動の経緯
2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。そして地震後の大津波により多数の犠
牲者が出ると共に太平洋沿岸地域を壊滅状態にしました。
未曾有の大惨事となったこの震災は、我々日本人だけでなく世界中の人々にとって忘れ
られない 1 日となりました。自然の恩恵を受けてきた私たちは、同時に自然の脅威も見せ
つけられることになってしまったのです。
夏場は岩手でダイビングガイド、冬場のオフシーズンはタイのカオラックでダイビング
ガイドをしている岩手出身の佐藤寛志さんは、タイで津波の一報を受け岩手に残した家族
や親類を案じてすぐに日本に帰国しました。
そして彼の目に飛び込んできた光景はあの凄惨な現場です。恐怖と絶望の中にいる人々
を励ましながら彼は一人で支援を始めました。散乱する瓦礫を掻き分け、タイから帰国す
る時に調達した物資を被災地の人々に届ける活動から始めました。
また、彼のダイバー仲間も彼の活動に賛同し支援を始めました。その友人達は義援金を
集め、救援物資を送ることから始めてくれました。彼の親類や地元の友人と協力し支援の
輪はどんどん広がりました。公的な義援金がうまく運用されず、自治体に集まる救援物資
は分配されないまま山積みになっているなか、規模は小さいながらも彼らの被災者に対す
る直接的な支援は人々の共感を呼び、感動を与えました。
そして彼らの呼びかけにより、全国、いや海外からもダイバーが集まり三陸沿岸の海中
瓦礫の撤去活動が動き始めたのです。
2. 活動内容
2.1 現活動内容
物資不足による生命の危機を脱したのちに取りかかったのが、現在の「三陸ボランティ
アダイバーズ」の基盤となっている海での作業です。
三陸でダイビングをしてきた佐藤寛志さんがかつてから繋がりのあった大船渡市・綾里
漁港の調査を行ったところ、修理し再利用できる漁具が数多く沈んでおり、これらを引き
上げることでダイバー同様に海を愛する漁師の人たちが尐しでも早く漁を再開できるよう、
漁具の回収を重要課題とし潜水活動を開始しました。
- 29 -
岩手への交通網が整備されてからは、日本はもとより、モルディブやタイなど世界各地
からダイバーが集まり、漁具回収・ガレキ撤去・航路確保や沖合魚場での養殖施設整備、
そしてノンダイバーによる海岸や河川の清掃など、幅広いボランティア活動を精力的に行
っています。
綾里漁港から始まった活動は今では周辺漁港へも拡大し、ダイバーによる清掃ボランテ
ィアは漁協の活動計画にも正式に組み込まれるようになりました。
水中活動の様子
活動エリア
2.2 活動エリアと状況(大船渡中心で北は大槌町~单は女川)
2.2.1 綾里漁港(瓦礫撤去率 90%)
三陸ボランティアダイバーズとして最初に清掃活動に取り組んだ漁港。大型瓦礫はサル
ベージ船で撤去しました。
ワカメの釜やミキサーが多く、
船による引き上げが有効でした。
また岸壁沿いの瓦礫は陸上からの引き上げで清掃しました。漁港中心部は小規模な瓦礫は
残っていますが船の航行には問題ない状況です。漁港周辺の陸上部分も清掃し漁港施設は
工事も始まりました。
2.2.2 田浜(瓦礫撤去率 60%)
市街からの瓦礫が溜まりオイルを含む瓦礫が多いようでした。陸上からの引き上げによ
り有害物はほぼ撤去しました。生物の回復率も高く船の航路でもないので、チャリティダ
イブで一般ダイバーも潜水可能なエリアとなりました。
2.2.3 小石浜漁港(瓦礫撤去率 70%)
恋する浜と書き、恋し浜とも呼ばれています。ホタテの養殖が有名で漁港内にもホタテ
がいました。漁港内は大型瓦礫は撤去しました。まだ小型瓦礫が残りますが漁船の航行に
は問題ないレベルとなりました。
- 30 -
2.2.4 浦浜川(瓦礫撤去率 70%)
秋の白鮭遡上に向けて、ボランティアセンターと一緒に河川清掃を実施。海から津波が
遡って来たところまでが対象範囲となりました
2.2.5 大槌町浪板海岸(調査)
サーフポイントのため水中の瓦礫調査のみ実施しました。大型の瓦礫はほとんどなく、
目立つ瓦礫等にブイ付けを行った。地元サーファー達とのビーチクリーンナップを同時開
催しました。
2.2.6 その他活動した漁港
・ 野々前漁港(瓦礫撤去率 70%)
・小路漁港(瓦礫撤去率 80%)
・ 竹の浦漁港(瓦礫撤去率 30%)
・細浦漁港(瓦礫撤去率 50%)
・ 大船渡漁港(瓦礫撤去率 10%)
・浪板海岸(瓦礫撤去率 80%)
・ 甫嶺漁港(瓦礫撤去率 50%)
・吉里吉里漁港(瓦礫撤去率 10%)
2.3 水中、陸上、河川の各ボランティアの活動
2.3.1 水中清掃ボランティア
・ 漁港など沿岸部の瓦礫撤去作業を潜水経験豊富なダイバー同士でチームを組んで進
めていきます。
・ 高度な潜水技術と体力を必要としますので、潜水士としての作業経験がある方にお
願いしています。
・ あるいは業務としてレジャーダイビングに従事したことのある方の中でも、一定以
上の経験者を募集しています。
・ 慎重な審査の上、参加の可否を決定させていただいています。
2.3.2 陸上ボランティア
・ おもに陸上作業を行うボランティアで引揚げ作業などをアシストしていただける方
が対象です。
・ それ以外にも近くにあるボランティアセンターをご紹介して、様々なボランティア
活動に従事することも可能です。
- 31 -
水中瓦礫の引き上げ様子
河川清掃終了後の集合写真
2.3.3 河川清掃ボランティア
・ 为に陸上作業班を中心に行い、河川の瓦礫撤去作業を行います。
・ 水深が深い場所は水中班がサポートします。
2.4 チャリティーダイビング活動
日々、調査・清掃作業を行っている三陸の海がきれいになって行く様子を一般ダイバー
の方々にも見て頂き、海中の復興状況を実感してもらうツアーダイビングを開催していま
す。 まだ瓦礫の残骸は残っていますが、何もいなくなってしまった海から、生物が徐々に
帰って来て元のきれいな海に戻って行く姿を見られる貴重な機会を得ることが出来ます。
またダイビング後は一緒に海中の瓦礫引き上げを陸上で手伝って頂き、ボランティア作業
に参加して頂くことが可能です。
この活動の参加費の一部を漁協に寄付しています。
2.5
サーモンスイム
河川清掃で奇麗になった川で遡上する鮭を観察するツアーを行っています。
開催期間: 2011 年 10 月 22 日 ~ 11 月 30 日
この活動の参加費の一部も漁協に寄付しています。
2.6 チャリティーグッズの販売
復興活動資金を得るためチャリティーグッズの販売をしています。
・オリジナル T シャツ
・アクセサリー
・トレーナー
・スポーツタオル
・スポーツキャップ 等
- 32 -
・ステッカー
清掃した河川に遡上してきた鮭
オリジナルTシャツの販売
3. 今までに取り上げていただいた掲載メディア
3.1 TV
・ 2011.04 NHK「おはよう日本」にて特集
・ 2011.05.11 日本テレビ「NEWS ZERO」にて特集
・ 2011.05.12 日本テレビ「Oha!4」にて特集
・ 2011.05.12 日本テレビ「ZIP!」にて特集
・ 2011.05 テレビ岩手「ニュースプラス 1 いわて」にて特集
・ 2011.05 フジテレビ「めざましテレビ」にて特集
・ 2011.05 フジテレビ「とくダネ!」にて特集
・ 2011.05 TBS「みのもんたの朝ズバッ!」にて特集
3.2 新聞
朝日新聞/日経新聞/産経新聞/毎日新聞/スポーツ報知新聞/高知新聞/京都新聞
/ 神奈川新聞/信濃毎日新聞/熊本日日新聞/佐賀新聞/日本海新聞 など
3.3 雑誌
・ 月刉マリンダイビング 2011 年 7 月号に掲載
・ 月刉ダイバー2011 年 8 月号に掲載
・ 週刉文春に掲載
3.4 WEB
・ ダイバーのためのウェブマガジン「WEB-LUE」にて特集
・ スキューバダイビング.jp に掲載
・47NEWS
・ YOMIURI ONLINE(二回に分けて動画にて特集)
- 33 -
・日経電子版
・asahi.com
・産経デジタル
以上、2011.6 現在
4. 協賛いただいた皆様
4.1 企業様・団体様(敬称略、順不同)
東亜潜水機株式会社/Ocean&Beyond Inc./Diver‘s PRO IRON/OLYMPUS
Maldivian Stars/Big Blue Diving/株式会社森製綿所/アクアキャット
ロビンソン/アルケロン(八丈島)/マナティーズ /Web-lue /Zero/LazyDays
遠井保険事務所 /アド・コンドル/日本財団 /のんちゃんラーメン
中央共同募金会(赤い羽根共同募金) /バークレイズ・キャピタル証券株式会社
ご支援いただいた個人の皆様は省略いたします。
5. 支援ご協力のお願い
<支援金口座はこちら>
三井住友銀行 日比谷支店
普通 8647230
クマチヤンギエンキン ダイヒヨウ サオトメユウキ
<応援メッセージ・お問い合わせはこちら>
[email protected]
6. 今後の展開
ニーズのある限り清掃活動を継続していくことはもちろんのこと、一般ダイバーも楽
しみながら参加できるよう、2011 年 6 月よりファンダイビングとボランティアを組み合わ
せた「チャリティダイブ」を開始しており、収益を復興活動と漁協寄付に充当しています。
また、震災前の 2010 年秋より開催している鮭遡上観察ツアー(サーモンスイム)でお
世話になった北上川流域の鮭マス協会と協力し、河川の清掃を行い、秋の遡上時期に鮭を
迎え入れる環境を整備します。
私たちは三陸の漁業再興を応援し、美しい海、河川を取り戻すために活動を続けていき
ます。
- 34 -
人と森林の間に立って
~神奈川県森林インストラクターの活動について~
NPO法人かながわ森林インストラクターの会
久保 重明
1 はじめに
神奈川県は 1990(平成 2 年)から森林インストラクターの養成を始めました。その
当時は養成する方も研修を受ける側も手探り状態でスタートしたようでしたが、その後、
森林インストラクターのあるべき姿を検討する委員会などを経て方向づけができ、養成
機関も変わりながらも 2 年毎に新たな会員も誕生し、20 年経て会員数も現在 270 名に
達しております。この間の経緯と現在の活動内容を紹介致します。
2 成り立ちと組織
県知事認定の森林インストラクター1 期生が誕生したのは 1992(平成 4 年)で、ほゞ
同時に森林インストラクターの会も設立されております。誕生から 3 年後の 1995(平
成 7 年)に「神奈川県森林インストラクター検討委員会」で森林インストラクターの会
のあり方が検討され、そこで「県民参加による森林づくりの推進」の一翼を担うものと
位置付けられました。すなわち森林づくりは、①森林・林業専門家や組織、②市町村・
学校・企業・団体等、③森林財団、そして④かながわ森林インストラクターの会、の4
者が連携したネットワークで推し進める必要があるというものでした。現在もその考え
方は活動の中に生きております。
森林インストラクターの会の役割は具体的に次の 4 つ挙げられております。
1)森林づくり・森林の保全育成のためのボランティア活動の指導
2)森林と林縁の自然観察を通して森林・林業の果たす役割についてのガイド
3)森林文化やそれを育んできた山村の人々の生活や歴史の紹介
4)都市に住む県民に対して森林の現状や課題および都市住民と林業従事者との関わり
の説明
1996(平成 8 年)からの 5 年間はこれらを具体的にする期間として、役割に沿う 4
部門、すなわち森林づくり部会、自然観察部会、森林文化部会、そして普及啓発部会を
明確にし、さらに事務局と広報機能を強化し活動分野の拡大に努め、これに続く 10 年
を乗り切ってまいりました。2009(平成 21 年)には特定非営利活動法人となり、活動の
範囲も広げ、以前にも増して社会的責任を負う立場になってまいりました。森林インス
トラクターの派遣件数も 1997(平成 9 年)には 30 件でしたが、2011(平成 23 年)に
は 150 件近くになっております。現在、当会の実際の活動に関わる部門としては 5 つの
部会と 1 つの事業部会から構成されており、上記の 4 部会に森林癒し部会そしてやどり
き事業部会が加わったものになっております。この他、会員の技術レベルを高めるため
技術委員会、作業の安全を担保するため安全管理委員会、そして新規事業の企画を担う
事業企画委員会があります。
なお森林インストラクターの養成機関は発足当時には「森林財団」次いで「森林づく
- 35 -
り公社」そして現在は「かながわトラストみどり財団」と変わって来ておりますが、2
年毎に 35 名前後の新たな森林インストラクターが誕生しております。
3 さまざまな活動について
森林インストラクターの活動にはさまざまなものがあり、活動の場も当初やどりき水
源林が中心でしたが、いまや活動は県下全域に及んでおります。活動は大きく分けて「か
ながわトラストみどり財団」が为催し、年間契約の下で会が支援する「県民参加の森林
づくり」
「森林づくり体験講座」
「森の案内人活動」
、
「森林探訪」および財団を通して企
業、団体、学校などから派遣依頼のあるものに分けられます。
3.1 やどりき水源林での活動
やどりきでの森林インストラクターの派遣件数は記録に残っているもので平成 23 年
度では 37 件(264 名)で、行事等でやどりきを訪れる人は 3,300 名を超えております。
以下やどりきでの为な活動を紹介いたします。
3.1.1 水源林パートナーと学校の活動支援
やどりきでの活動は県下全域のものとはやや違っており、限定された水源林パートナ
ーと学校の活動の支援が対象となっております。水源林パートナー(企業や団体)とは、
県が水源林内に専用の場所を設定し、そこで森林づくり活動に参加してもらうもので、
現在 7 社と 2 団体が登録しております。これらの企業や団体は、水源林内で間伐、枝打
ち、植樹そして森林づくりに理解を深めて貰うための自然観察(図1)そしてやどりき
沢の水中生物観察、森林の持つ癒し
の効果を実感して貰う体験講座など
幅広い活動を行っております。森林
インストラクターはこれらの活動の
指導や安全管理そしてさまざまな支
援を行っております。インストラク
ターの数は活動内容と人数(3~15
名)により違います。小学校の活動
としては川崎市の小学校の 2 校の 5
年生 100~200 名が毎年秋~冬にや
どりきを訪れます。総合学習の一環
図1 親子自然観察会 (写真:井出恒夫)
で予めテーマを決め、それについて
勉強し質問など用意し参加しています。勿論インストラクターとして案内しながら動植
物など、森の成り立ち、森林施業などの説明は欠かすことは出来ません。概ねインスト
ラクターの数は 15~16 名になっております。
その他としては、毎年 1 回開催される水源林の集いや成長の森見学会などの支援も大き
な行事となっております。水源林の集いでは幾つかのアトラクションや出店もあり、賑
やかなもので例年 300 名くらい参加頂いております。
- 36 -
3.1.2 森の案内人活動(含情報収集活動)
財団との年間契約に基づきやどりき水源林内を毎週土曜日と日曜日の午前 10 時と 13
時に厳冬期の 12~2 月を除いて 2 名で案内を致しております。案内するコースは予め定
めた A、B そして林道コースで、その中から選んで頂いております。また水源林内も季
節と共に変化するので、事前に案内ルートの情報を把握する必要があり、3 週間ごとに
ルートを一巡し、その時の動植物の変化を記録し残すと共に管理棟の前の掲示板に張り
出し、水源林を訪れる人に情報提供を行っています。
3.1.3 成長の森の下草刈りおよび成長の森巡回・経路巡回
神奈川県が施行する「水源林管理委託業務(成長の森保守管理)
」を松田町森林組合か
ら受注しております。成長の森は現在 31 区画 1.51ha(19 年度~22 年度)に、その年
に生まれた子供の誕生を祝い寄付された苗木が植栽されています。植栽された苗木が周
囲の雑草やつるに負けないようにある程度成長するまで下草刈りを行ないます。この作
業は、発注時期が 8 月になるので、その暑さと葉の裏に巣を作るホソアシナガバチには
悩まされます。
成長の森・経路巡回業務は 4 月から毎月 4 回、成長の森の各区画を巡回し植生保護柵・
経路、銘板、案内板、植栽した苗木の生育や下草などの状況を調査して、毎月 1 回各区
画の植栽木と全景写真を写したものを添付して報告しています。またこの業務中には各
区画や経路の軽妙な補修作業も含まれております。
3.1.4 自为活動
やどりき水源林での自为活動は時間的制約から案内ルート周辺に限られることが多く
なりますが、最近では稜線まで水源林という考え方が浸透し、以前より広い範囲で行わ
れるようになってきました。
(1)桧岳での樹木調査とブナ調査
一寸古くなるが 7~8 年前桧岳の山頂付近で樹木調査を行いました。その折木々に付
けたラベルは現在でも残っており、その後の変化を調べるために再度行いたいと考えて
います。また桧岳の山頂には、まだブナが元気で生存しており、5 年前実生の調査を実
施し、実生と思われるものに目印付けましたが、翌年訪れた時には跡形もなく消えてお
りました。この付近には 3~4 年生くらいの矮小化したブナは見られるものの、元気のよ
い幼樹は見掛けられませんでした。この地にもさらに植生保護柵を設け、ブナ衰退を取
り敢えず止める必要性を感じております。この他、近年では毎年 3~4 回シカの食害調査
を兼ねて稜線付近のトレッキングを行っているが、もっと目的を明確にした調査がこれ
から必要になると考えております。
(2)稀尐植物調査
これまでの調査で人工林を間伐後やギャップに思わぬ稀尐植物に出会うことがありま
した。クモキリソウ、タテヤマギク、クマガイソウの群落、ベニシュスラン・ミヤマウ
ズラの群落、イチヤクソウ、ナベワリ、アオフタバラン、エビネなどがその例です。こ
れらについて順次記録を残そうということで、昨年から NFD の助成金を受けられた機
会に稀尐植物調査班が編成され調査観察が進められております。
- 37 -
(3)定着型ボランティア活動
現在、やどりき水源林には 6 つの団体が定着型ボランティアとして登録されておりま
す。6 つの団体は、(財)かながわトラストみどり財団、②やどりき水源林づくり21、③
NPO 法人かながわ森林インストラクターの会・森林部会、④(社)青年海外協力協会、
⑤NPO 法人みろく山の会そして NPO 法人地球緑化センターです。
ここではかながわ森林インストラクターの会・森林部会の活動の状況を紹介します。
現在の活動区域はやどりき水源林内のウシロ沢出会いから沢沿いに約 1 時間登り、さら
にウシロ沢乗越から栗ノ木洞手前までの西側斜面で全体面積は 10.14ha です。
「300 年
後の美しい混交林の森林づくり」という大きな目標を掲げ、水源涵養機能のある森林、
多様な生物の棲める森林、訪れる人に親しみのある森林を念頭に活動を続けております。
下草の繁茂を促す列状間伐やシカの林内侵入を防ぐため切り捨て間伐なども行ってい
ます。前述のようにやどりき水源林には6つの団体が入っておりますが、交流はほとん
どありませんでした。昨年、当会の安全管理委員会から救急搬出研修を他団体にも呼び
かけ、何人かお集まり頂きました。このようなことをきっかけとして交流を図り情報の
交換が出来ればよいと思っております。
3.2 やどりき水源林以外の各地域での活動
県の各地域へ派遣件数は平成 23 年度では 105 件(延人数 578 名)に達しておりそれ
らの行事に参加された人数は記録に残っているもので 6,600 名に達しております。派遣
依頼先の構成を見ると、各種団体 57%、次いで学校 22%、企業 18%そして地方自治体
3%となっております。学校への派遣は小学校から大学までありますが、小学校への派
遣が多くなっております。以下为な活動について紹介します
3.2.1
(財)かながわトラストみどり財団の为催する「県民参加の森林づくり」
「森
林づくり体験講座」
(図2)
財団はこれらの行事を県内の各
地で行っており、平成 23 年度で「森
林づくり体験講座」は年 6 回、比較
的初級者向けで募集人数 40 名と尐
なく、森林施業を丁寧に手ほどきす
ることを为眼にインストラクター6
名を配し、昼休みには森林講話を取
り入れます。これに対して「県民参
加の森林づくり」の方は年9回、
募集人数 100 名、インストラクター
図2 県民参加の森林づくりでの間伐作業
11 名となっています。
(写真:井出恒夫)
これらの行事の内容は一般的に初夏く
らいまで下刈り、秋から冬にかけて除伐、枝打ち・間伐なっております。
3.2.2
県为催のイベント「全国植樹祭の森へ行こう」
- 38 -
一昨年神奈川県で開催された全国植樹祭に引き続き、昨年 5 月 22 日に同じ場所(秦
野戸川公園)で「全国植樹祭の森へ行こう」のイベントがあり、参加者を一昨年の植樹
会場に案内すると共に自然観察会を行いました(15 名参加)
。
3.2.3
愛川ふれあいの村での登山と自然観察/21 世紀の森での自然観察
愛川ふれあいの村では毎年小学校の村内や、近くにある高取山や仏果山への登山を組
み合わせた自然観察が行われています。参加する生徒数は学校によっても多尐違うが、
4 年生と 5 年生との混成で 100 名近くになっているところもあり、学年が違っていても
登山では良く助け合っている姿が見られます。また事前に自然や森の働きなどについて
勉強し、テーマを持って臨む学校も多く、思わぬ質問を受けることもあります。21 世紀
の森の方は森を歩き自然観察が为体であり、受け持つ生徒の数は愛川ふれあいの村と
ほゞ同じです。
3.2.4
学校および幼稚園の新任教員研修
毎年、新たに神奈川県に採用された教員の森での研修を依頼され、森の話(講話)
、自
然観察、そして木工などの指導を受け持っております。平成 22、23 年度は愛川ふれあい
の村で行われ、インストラクター1 名で 10 名前後の研修を担当しています。
3.2.5
川崎市里山ボランティア育成講座―入門編および中級編―
川崎市公園緑地協会は里山ボランティア育成のため講習会を開いており、受講生は 15
~18 名、一般見学者 100 名で、入門編は 6 回開催し 1 回当りインストラクター6 名、中
級編は 7 回開催しインストラクター3~4 名参加している。講習会には応募者および見学
者も多く市民の緑地保全に関心が深いことが伺えるし、協会もこの講習会に力を入れて
おります。スタイルは違いますが、鎌倉市公園協会、座間市公園緑政課、小田原市森林
組合などで市民の啓蒙活動が行われています。
3.2.6
森林探訪
会における森林探訪の歴史は古く平成 3 年ごろから継続しており、毎年3回くらい実
施しおります。普通の自然観察とは一寸趣を異にして、草本の説明は勿論、森林の生態
や施業の話にまで及んでおり、かなり人気のある催しとなっております。募集は 100 名
で、インストラクター14~15 名で対応しております。
3.2.7
森林講話
最近、学校や企業から森林に関する講話の依頼が増えてきています。平成 23 年度に
は 10 件の依頼があり、圧倒的に小学校からのものが多く、そのテーマは森の持つ水源
涵養機能や生態系などの話が多いようです。
3.2.8
街頭キャンペーン
県民との協働による森林づくり実行委員会からの要請で毎年、横浜港開港記念日、秦
野市のたばこ祭り、川崎市市民祭りなどでブースを構え、森林づくりの大切さを訴える
- 39 -
キャンペーンを展開しております。キャンペーンでは、子供たちには丸太切りやどんぐ
り工作などが特に人気があるようです。
3.2.9 自为活動
(1)講演会の開催(図3)
森林環境保全・再生活動の一環
として、3 年前から県民一般から
広く参加を募り
「森林文化講演会」
を毎年開催して来ました。一昨年
は 11 月に農大教授濱野周康氏に
「社叢と企業の森の共通性と森の
すがた」ついて講演して頂き、昨
年も 11 月に元京大教授岩井吉彌
氏に演題「人と森のかかわりー日
図3 森林文化講演会
(写真:内野ミドリ)
欧の比較ー」でお話を頂いており
ます。いずれの講演会も桜美林大学 PFC(プラネット淵野辺キャンパス)をお借り
して開催いたしました。毎回多くの方にお集まり頂き、好評を得てまいりました。
(2)ECO-TOP プログラムへの協力
ECO-TOP プログラムとは自然環境に軸足を置いたジェネラリストを育成する人
材育成・承認制度で、行政、民間、NPO 団体で 20 日間の現場研修を行なうことにな
っております。昨年から桜美林大学から ECO-TOP プログラムの現場研修(7 日間)
を引き受けております。今年は 3 名で、いろいろ経験が出来るようにバラエティに富
んだ活動に参加して貰うことにしております。
4.おわりに
森林インストラクターの大きな仕事は森林のインテタープリテイターであるとよく言
われます。森林を理解するためには、自然観察から入り草木の名前を憶え、森林の生態
を学び、さらに人と森林の関わりから森林施業にまで幅広い知識が必要だと思っており
ます。表題に「人と森林の間に立って」と書きましたが、そうありたいなという筆者の
願望であり、今後も努力して行きたいと考えております。また市民のボランティア活動
を支えるには、これからは以前にも増して森や町の緑地で活動できる中核となる指導者
が必要で、各団体と情報交換をしながら互いにレベルを上げて行きたいものと思ってお
ります。
参考文献
仲野三男他8:10 年のあゆみー設立 10 周年記念誌―、かながわ森林インストラクターの会、2003
神奈川県:やどりき水源林 活動ガイド、2008
村井正孝 10 他:森のなかま No.22~45、かながわ森林インストラクターの会、2010~2011
- 40 -
大学における自然観察と「気づき」の育成
~「自然観察」を中心とした環境教育と気づきについて~
神奈川工科大学 応用化学科
高村 岳樹
1 はじめに〜デザイン教育と「気づき」
1.1 社会人基礎力
大学で学ぶこと,これまでは専門分野における学問の基礎や,それに伴う先端の
科学技術であったり,または技術者としてふさわしい素養であったりと,学問に関す
ることがもちろん为でした。しかしながら,近年では,昨今の就職難を反映し,文部
科学省は 2011 年度から、すべての大学に、キャリア教育(就職支援を行う教育)を義
務付けています。つまり,大学においても学生に就職支援を行う指導を行うことを求
められています。一方,経済産業省は 2006 年から「職場や地域社会で多様な人々と
仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、
「社会人基礎力」を提唱しています。
社会人基礎力は「前に踏み出す力」
、
「考え抜く力」
、
「チームで働く力」の 3 つの能力
(12 の能力要素)から構成されています。また同省は大学のゼミ・研究・授業等の活
動における「社会人基礎力」育成のための取組みを行った学生チームを表彰する「社
会人基礎力育成グランプリ」を開催しています。こうした社会の要請を鑑みますと,
大学に入学して学ばなければいけないことは,
「専門基礎力」
「専門知識」だけでなく
「社会人基礎力」もまた必要であることになります。
1.2 日本技術者教育認定制度(JABEE)
あまり聞き慣れない言葉だと思いますが,日本技術者教育認定制度(以下 JABEE)
という制度があります。この制度は 1999 年に設立されたもので,その内容は大学等
で実施されている技術者教育プログラムが社会の要求水準を満たしているか評価し,
要求を満たしている場合は,その教育プログ
ラムを専門認定する制度です。平たく述べま
すと,きちんとした教育を行って,優れた技
術者(この場合研究者を含みます)を輩出し
ているかどうかを,基準に沿ってチェックし,
評価を行う制度になります。本学・応用化学
科の教育プログラムはこの JABEE の認定を
受けており,他大学にひけをとらない教育プ
ログラムを展開しています。いきなり,
図1:応用化学科の案内の一部,デ
JABEE の話を持ち出しましたが,実はこの
ザイン能力を重要視している
- 41 -
JABEE の認定基準には,
「口頭発表力や討議などのコミュニケーション能力」や「種々
の科学・技術・情報を利用して社会の要求を解決するためのデザイン能力」がありま
す。これらの基準の意味するところは,前述の社会人基礎力で言うところの「チーム
で働く力」や「考えぬく力」
,
「前に踏み出す力」を育成するための技術者教育プログ
ラムを行いなさいということに他なりません。技術者は技術を磨けばよいだけでなく,
社会の要請にそった開発を行い,それを社会に発信することが必要で,それは「社会
人基礎能力」と一緒であるということです。そこで私たちの教育プログラムでは「デ
ザイン能力」の育成 =「社会人基礎力」の育成と位置づけ,それらの能力の育成する
「デザイン教育」に重点を置いています。
1.3 デザイン教育プログラムと「気づき」の重要性
私たちのデザイン教育プログラムでは「コ
ミュニケーション能力を培う」ことから始
め,
「グループで協議し,与えられた課題の
解決をおこなう」を最終目標にしています。
課題の解決には「調査する」
「実際に行って
みる」
「話し合いをする」等のさまざまな能
力が必要になります。これらを体系的に教
育することが望ましいのですが,現時点で
はまだ不十分であり,これは今後改善をし
ていく予定です。応用化学科のデザイン教
育プログラムを図1に示しました。このデ
ザイン教育プログラムの特徴は『調査・実
験系』と『自然観察・フィールドワーク系』
図1:応用化学科のデザイン教育プロ
に大別されることにあります。またこれら
グラム(2011 年度)
は独立してあるものではなく,相互に連繋
をしています。
「調査・実験系」ではある課題を解決するためにグループで討議し,
(科
学的な)実験を行い,その解答を導きだしていくものです。
「調査」
「実験」を繰り返
しおこない,解答を導きだすことで,
「調査能力」
,
「討議能力」
,
「前に踏み出す力」
「考
えぬく力」を養います。そして,こ
の課題を遂行する上で,また最も重
要視されるのが「気づき」です。つ
まり,これまで教科書でしか見たこ
とのない事例や,知っているだけの
ことを実際に行ってみる,
または
「こ
ういうことだったんだ」と納得する
体験をすることにあります。
例えば,
図2:砂糖水に「浮くコーラ」と「沈むコーラ」
,
「コカコーラの中の砂糖の濃度を決
極めて簡易な表現ですが,この「気づき」
定せよ」という課題があります。こ
が重要です。
- 42 -
の課題に対して5〜6名の学生がグループになり解答を導くべく科学的な実験を行い
ます。約20チームがこ課題に一斉に取り組みますが,原理は一緒でもその実験方法
は相互に異なり実に様々です。この課題で実に興味深い実験を行った班(チーム)が
ありました。チームの発想はおそらく「砂糖濃度→密度→重い→沈む」であったと考
えますが,実際に「重い→沈む」を「気づき」さらにそれを表現したところが評価に
値します(図2)
。こうしたちょっとした「気づき」がその後の学習に大きな影響を与
えるのは言うまでもありません。
2 自然観察と気づき
2.1 自然観察ポートフォーリオ
応用化学科のデザイン教育のもう一つの柱として自然観察・フィールドワークが
あります。自然観察は自然をよく観察することにより,なにかに「気づく」意識を育
てることが目標にあります。
「何か変だな?」
,
「これって何だろう?」と「気づく」こ
とで,
「調べてみよう」という動機づけにもなりますし,細かく観察する意識をもつこ
とは,科学実験においても重要です。ただし,いきなり自然観察をしなさいといって
も,
「何を」すればよいか学生は不明です。そこで,教育プログラムでは,教員が为導
して積極的に自然との関わりを学生に持たせるフィールドワークを取り入れた授業
(生活と環境の化学,生物化学実験)と学生が为体となって自ら行動して自然観察を
行う課題形式の授業(応用化学ゼミ)の 2 種類を行っています。
学生为体の自然観察は本年度から,
「自然観察ポートフォーリオ」として実施して
います。ここでの自然観察は長期にわたる課題遂行能力と,そこから何を「気づき」
「学んだか」を記録していくもので,数回行った自然観察を作品集としてポートフォ
ーリオにまとめていきます。実際には広義の自然観察を行うように指導しており,そ
れらは①:統制実験:2つ以上のグル
ープに分けてある要因の影響を調べる,
②:野外実験:小川の水質評価など,
③:設計:あるものに使える何らかの
設計:たとえば健康によい料理方法と
美容によい料理方法の違いなど,④:
2次資料による研究:他者が集めた情
報に基づいた調査,例えば地球温暖化
の原因はなにか?などを課題としてい
ます。この課題は入学前に推薦や AO
入試で合格した高校生にも課題として
図4:自然観察ポートフォーリオの例:
指定しており,一部は極めて完成度の
立体的な周期表
高い観察報告書もあります
2.2 生活と環境の化学
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生活と環境の化学の授業では上述の自然観察とはことなり,フィールドワークを
为体に授業を構成しています。ここでは河川水の化学分析と水生昆虫による分類を为
として行っています。昆虫にさわるのも嫌いという学生はちらほら見られますが,多
くの学生は積極的に動いて採取を行います。大学近隣の河川において採集した水生昆
虫を同定するという作業ですが,学生は細かく観察しないと同定が出来ないため,か
なり真剣にとりくみます。また同時に COD(化学的酸素要求量)
,リン酸イオン,ア
ンモニウム性窒素,硝酸体窒素,亜硝酸体窒素の 5
種類の化学的な分析も行います。この取り組みは1
年生で経験した後,さらに3年生においても同様の
作業を行います。2年前と比べて,河川水はどのよ
うに変化しているのかを肌で感じるためです。例年,
中津川を中心に調査を行っていますが,河川水の状
態に大きな変化はないようです。
2.3 サイエンスコミュニケーション
これらのデザイン教育を成功させるためには,もち
図5.河川水の調査の様子
ろん個人個人が,一所懸命考えることも大事ですが,
場の雰囲気も極めて重要です。グループで活動しや
すい雰囲気を構築すること,これが教員の行う最も重要な仕事です。
上述のフィールドワークや自然観察は,やはりグループで活動することが多くなりま
す。いきなり知らない人と「グループ活動しなさい」といわれてもなかなかうまくい
きません。こうしたグループ活動に必要な態度やコミュニケーション技術を学ぶ機会
をあらかじめ設け,自ずから話しやすい雰囲気,活動しやすい雰囲気を作るにはどう
すればよいのかを学ぶ授業を1年生の前期に「サイエンスコミュニケーション」とい
う授業を設定しています。
「こんな楽しい授業は受けたことがない」と学生の多くがコ
メントするほどの授業ですが,楽しく「コミュニケーション能力を身につける。
」
「チ
ームビルディング」を行うことの出来る授業です。ここでのグループ活動の経験が,
あとのフィールドワークにおけるグループ活動に大きな影響を与えています。
3 まとめ
気づきを育成することは,極めて困難な課題だと思います。本人ですら気づいたかど
うか分からないこともよくあります。私が中学生だった頃,教育実習に来られた先生
は「よく観察すると気づくことがある,それを描きなさい」と教授されました。彼女
は私の描いていた「手」のスケッチをみて「きみ,◯◯に気づいたんだね」と伝えて
くれました。中学生である私には何のことか,何に気づいたのか分かりませんでした
し,他の生徒も同じ様子でした。しかしながら,あれから数十年経過して,今ではそ
の意味を理解しています。すぐに効果は現れませんが,何年かすると「気づくことが
出来た」自分を発見できるように私たち教員がよく学生を観察することが必要です。
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テーブルセッションのご案内
15:55∼16:55
今年は興味、関心のあるテーマについて、もっと詳しく聞いて見たい人や
共に活動してみたいという人のためにテーブルセッションを用意いたしま
した。口頭発表の方も是非ご参加下さい。
<どなたでも自由に参加できます>
テーマ
1
コーディネーター
コーディネーター
テーマ
NPOかながわ環境カウンセラー協議会 上野秀一
NPOかながわ環境カウンセラー協議会 川村卓正
2
テーマ
3
自然観察
NPO神奈川県環境学習リーダー会 荒谷輝正
NPO神奈川県環境学習リーダー会 田口繁雄
4
コーディネーター
大気 (NO2)
NPO神奈川県環境学習リーダー会 飯田富佐江
NPO神奈川県環境学習リーダー会 柳川三郎
コーディネーター
テーマ
東日本大震災
節 電
かながわ環境保全推進会議 近藤菊郎
NPOかながわ環境カウンセラー協議会 岡本正義
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テーブルセッション メモ
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第 18 回市民環境活動報告会実行委員会
委 員 長
柳川 三郎
副委員長
岡本 正義
委
員
荒谷 輝正
委
員
田口 繁雄
委
員
飯田富佐江
委
員
杉浦 弘祐
委
員
上野 秀一
委
員
川村 卓正
委
員
近藤 菊郎
(オブザーバー)
本多 久男
高崎 苗帄
( NPO 法 人 神 奈 川 県 環 境 学 習 リ ー ダ ー 会 )
(NPO 法人かながわ環境カウンセラー協議会)
( NPO 法 人 神 奈 川 県 環 境 学 習 リ ー ダ ー 会 )
( NPO 法 人 神 奈 川 県 環 境 学 習 リ ー ダ ー 会 )
( NPO 法 人 神 奈 川 県 環 境 学 習 リ ー ダ ー 会 )
(NPO 法人かながわ環境カウンセラー協議会)
(NPO 法人かながわ環境カウンセラー協議会)
(NPO 法人かながわ環境カウンセラー協議会)
(かながわ地球環境保全推進会議)
(神奈川県環境科学センター環境活動推進課)
(神 奈 川 県 環 境 計 画 課 環 境 計 画 グ ル ー プ )
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