スマートハウス内センシングを活用した 生活行動推薦システム 中村 笙子1 廣森 聡仁1 山口 弘純1 東野 輝夫1 山口 容平2 下田 吉之2 概要:近年,スマートハウスが実用化されつつあるが,現在のスマートハウスは家庭の電力使用量や太陽 光発電の発電量,電気自動車の電池残量などを統合的に把握,可視化することで電力ピークシフトや家庭 での省エネルギーを目指すものが多い.一方で,センサデバイスの低価格化とコモディティ化により,家 庭内の空調環境(温湿度など)や人々の日常生活行動の検出や記録,解析が可能な環境が整ってきている ため,スマートハウスに行動検出,解析の機能を保持させ,適切な行動推薦を行わせることで,居住者に 対し,省電力を実現しながら健康管理や家族団らんなど生活全体の質を自然に実現することも可能である. 本研究では,従来のスマートハウスで計測されている家電の電力使用量や自家発電量,家庭蓄電池の電力 残量といったエネルギー関連の情報に加え,居住者の生活行動習慣を計測,把握し,電力コスト,健康,快 適度,家族団らんといった複数の生活質基準をなるべく同時に充足するような生活行動を提示するスマー トハウス向けの行動検出・解析・推薦システムの設計と評価について述べる.我々の研究グループで開発 している人の高精度トラッキングシステムや温湿度センシングシステム,エネルギーセンシングシステム 「ひとなび」を活用し,世帯居住者の行動実施頻度や平均実施時間を蓄積・解析し,その結果を元に,現在 の生活習慣から大きく逸脱しない範囲で,電力コスト,健康度,快適度,家族団らん度などの評価基準和 を最大とする行動基準を提示する.典型的な世帯の生活行動習慣からの行動推薦を導出し,その有効性を 確認している. Activity Sensing, Analysis and Recommendation in Smarthouse Shoko Nakamura1 Akihito Hiromori1 Hirozumi Yamaguchi1 Yohei Yamaguchi2 Yoshiyuki Shimoda2 1. はじめに 夏冬の電力逼迫への対応や CO2 排出量抑制への社会的 要求もあり,世帯における節電やピークシフトが重要視さ れている.そのような背景にも後押しされ,売買電や蓄電, Teruo Higashino1 ウスは HEMS(家庭電力管理システム)をその中核とし, BEMS(ビル電力管理システム)のように人の在不在検知 を行う赤外線センサや温湿度センサなどの様々なセンサを 活用した照明空調制御なども想定されている [1]. 一方で,近年ではより高性能で安価なセンサ機器が普及 発電が可能であり,電力量を可視化した家電や PHV/EV し,家庭における人々の行動や生活も従来より詳細に把握 を自動制御する機能を有するスマートハウスの研究が実験 することができるようになってきている.例えば,音声認 的段階から普及段階に移行しつつある.スマートグリッド 識による人検知機能を備えた自走式掃除ロボットが商品化 と密接に連携することを前提としている現在のスマートハ され,居住者への話しかけや情報提供が可能である [2].ま 1 た,電力パターンから非スマート家電の利用状況を判断し 2 大阪大学 大学院情報科学研究科 Graduate School of Information Science & Technology, Osaka University, 1-5 Yamadaoka, Suita, Osaka 565–0871, Japan 大阪大学 大学院工学研究科エネルギー工学専攻 Graduate School of Engineering, Osaka University, 2-1 Yamadaoka, Suita, Osaka 565–0871, Japan たり [3], [4],人感センサによりリビングやキッチンでの人 の立ち位置や行動軌跡を予測する研究もなされている [5]. 生活記録(ライフログ)や健康支援に関する技術では,歯 ブラシやコップ,冷蔵庫やコーヒーメーカーなど,小型機 器や家電に埋込まれた移動検出センサやウェアラブル活動 センサにより個々の行動を推定し,それを日常的かつ詳細 に記録し可視化する技術やサービスが一般化してきてい る [6].我々の研究グループでは測域スキャナを利用した共 有空間での軌跡検出や環境センシングを行う「ひとなび」 を開発し,スマートビルディングやビル電力管理システム (BEMS)における共有空間の人の位置や行動とより密接 にリンクした空調制御の可能性を探求しており [7],オフィ スビルにおける節電効果のシミュレーションも実施してい る [8].今後は家庭生活行動の把握や理解が省エネルギー や家庭での安全安心へとつながる展開が予想される. しかし,健康支援などを目標とした現在のサービスは専 用センサやウェアラブル活動センサを仮定した個人セン シングが主体であり,一方で従来のスマートハウスでは HEMS における電力量制御を主目標とした人物存在検出な どが主流である.しかしながら,家庭においては,エネル ギーのみならず,生活習慣に対する嗜好や防犯などの安全, 健康や家庭内高齢者見まもりなどの安心,家庭内コミュニ ケーション,生活快適性など,様々な観点から最適な行動 や生活が実現されることが望ましく,その意味でスマート ハウスはエネルギーセントリックのみならずヒューマンセ ントリックであることが必要である.そのためには,居住 者の家庭内生活行動を把握し,それに応じて居住者の最適 生活を推薦できる機能が今後のスマートハウスに望まれて いるといえる. 本研究では,居住者の生活習慣の嗜好をセンシング技術 により把握しながら,省電力に加え,健康,団らん,快適 度といった複数の観点において生活の質向上を図ることが できるような生活行動推薦を実現するスマートハウスシス テムを設計する.提案システムでは,我々の研究グループ で開発している人の高精度トラッキングや温湿度・エネル ギーセンシングが可能な「ひとなび」を活用し,世帯居住 者の行動実施頻度や平均実施時間を蓄積・解析することを 前提とする.その結果を元に,外気温や天候,季節,家電 や電気自動車の使用有無など行動に影響を与える要因と家 庭における実際の行動内容との因果関係を解析し,現在の 生活習慣から大きく逸脱しない範囲で,省電力度,健康度, 快適度,家族団らん度などの評価基準和を最大とする行動 基準を提示する. 実世帯の行動データを用いた評価実験により,行動要因 を与えた場合に,居住者が好む生活行動を抽出できること を示した.また,典型的な世帯の生活行動習慣から行動推 薦を導出した結果,それが元の生活行動習慣に近く,かつ 省電力,健康度,快適度および家族団らん度のそれぞれの 基準を向上させることが確認できた. 2. 関連研究 2.1 これまでの HEMS システム 世帯における電力消費を最適化するようなスケジューリ ングシステムは多数存在する.文献 [9] では,温湿度など の環境やバッテリー残量の変化,ユーザの生活履歴等に応 じて,家電の稼働優先度を適応的に更新するスケジューリ ング手法が示されている.この優先度が高い場合は,買電 することになったとしてもただちに家電を稼働させる.優 先度が低い場合は,バッテリー残量に応じて家電を稼働す るか否かを決定する.文献 [10] では,電気料金が時間帯ご とに変動することを想定し,スマートハウスにおける電力 消費をモデル化しており,電気代を最小化するような家電 の稼働スケジューリングを混合整数線形計画問題を用いて 行っている.文献 [11] では,過去の家電利用とそれによる 快適度を参考に家電を制御することにより,消費電力の削 減目標値を達成しつつ,高い快適度を維持し,ユーザの嗜 好に沿った家電制御が行えることを示している.ただし, これらは電力消費の観点のみで生活改善を図っており,本 研究が目的とするヒューマンセントリックな生活改善は考 慮されていない.一方で,文献 [12] では,特別なウェアラ ブルセンサを用いずに健康改善を目指すシステムを提案し ている.消費カロリー,運動量と体重変化の関係をモデル 化しており,1 日 1 回の体重測定と,ユーザに入力しても らった毎日の食事ならびに運動内容から,ユーザの嗜好を 推定しつつ,目標体重までの食事や運動プランを推薦する. 本研究では,このような指標をシステムに組み込むことで, 省エネルギー以外の観点からも生活を評価可能なシステム を目指す. 2.2 家庭内センシングによる行動検出 文献 [13] では,家庭内に配置したセンサからデータを収 集し,構築した確率モデルを用いて睡眠,朝食,夕食,シャ ワーなどの行動を検出する.文献 [3] では,コンセントに 付加した処理回路等を用いて機器の電流波形から大きさ, 形状,時間差などの特徴量を算出し,ホームサーバーへ送 信する.ホームサーバーでは,学習済の特徴量と受信した 特徴量を比較することで,コンセントに接続された機器を 判別している.文献 [14] では,携帯電話の加速度センサと マイクを用いて収集したデータから,掃除機,皿洗い,ド ライヤーの使用等を判別している.本研究においても上記 の文献と同様に家庭内にスマートタップや赤外線センサ等 を配置し,取得した情報から行動検出を行うことを想定し ている. ることへの嫌悪感や不安感などから,特定の時間帯や場所 3. アーキテクチャと動作概要 3.1 アーキテクチャ スマートハウスは,図 1 のように,居住者,スマート家 電などの電力消費源(家電) ,家庭内電力供給源(供給源) の三つの要素から構成される.電力消費は居住者の行動と 家電の稼働により生じ,電力供給は電力会社からの購入電 力および供給源により賄われる.供給源は家庭用蓄電池, 太陽光発電器,蓄電池付の自動車(EV または PHV,以下 簡単のため EV とする)であり,蓄電池と EV は太陽光発 電器からの発電力と購入電力を蓄積できる.また蓄積電力 はグリッドへ売却でき,売却量に応じた金額が得られる. スマート家電は ECHONET[19] が想定するような自動制 御機能により統括管理され,設定した時間帯にユーザの操 (寝室や洗面所など) ,居住者を特定しないことを居住者ら が選択したり,あるいはセンサ配置や推定アルゴリズムの 制限で特定が不可能であることもある.提案システムでは そういった不完全なセンシング情報からの行動解析推薦も 考慮しており,データが欠損している場合においても妥当 性のある推薦結果を提示できることを確認している.詳細 は 6.2 節を参照されたい.また,その他の外部環境情報と して,Web サービスなどから取得可能な天候や花粉飛散量 なども考慮でき,これらは居住者の行動に一定の影響を与 えるものとする.これについては 4.1 節で述べる.最後に, 外出や自動車使用に関しては,居住者に紐付いたスマート フォンの GPS 情報や,自動車のスマートハウスへの接続 状況等から判断可能とする. 作無しに稼働させる予約実行ができるものとする. 図 2 行動解析推薦システムのアーキテクチャ 図 1 スマートハウス概要図 また本稿で想定するスマートハウス内の行動解析推薦シ ステムのアーキテクチャを図 2 に示す.スマートハウス内 では,我々が開発し,現在大阪駅前の大規模商業ビル「グ ランフロント大阪」の展示場「The Lab」で 1 年以上の長 期運用を実施している「ひとなび」システム [8] または類 似のトラッキングシステムが稼働するものとする.現在ひ となびは北陽電機製のレーザー測域スキャナ,T&D 社の おんどとり,および Echonet Lite 準拠のスマートエコワッ 図 3 ひとなびによる人の位置情報の可視化 ト [20] からデータを取得し統合するとともに,位置情報や 電力情報を可視化することもできる(図 3,4).提案シス これらの情報を用いて,行動解析推薦システムは,生活 テムではこれらから居住者の(匿名の)家庭内位置情報, パターンの解析を行い,居住者,家電,供給源が,どの時 温湿度および電力使用情報を取得する.さらにレガシーな 間帯にどのような行動または動作(電力消費(稼働) ,電力 家電については電力量パターンや利用電力系統などから利 供給(蓄電や放電など))を行っているかを推測し, 「スケ 用時間を推定し,在宅情報や前述の家庭内位置情報を組み ジュール」と呼ばれる行動表で表現する.検出された実ス 合わせて,各居住者の部屋レベルの位置(在室情報・例え ケジュールに基づき,様々な生活の質基準を向上させる生 ば「リビング」や「書斎」など)や行動を推定する.なお 活パターンを改善スケジュールとして居住者に推薦・提示 これらの行動は様々な理由から一般には完全に把握できな する.居住者は実スケジュールと改善スケジュールを指標 いとすることが自然である.例えば行動を完全に把握され に,自らの生活パターンを変更し,その新しい生活パター しても機能する.EV は, (1)グリッドからの蓄電(G2V) , (2)蓄積電力のグリッドへの売電(V2G) , (3)蓄積電力の スマートハウス(または外出行動)への供給(V2VH)の いずれかを行うことができる.ソーラーシステムは太陽光 発電器であり,発電量は時間帯により異なる(本来天候に も依存するが本稿では考慮しない) .ソーラーシステムは, (1)生成電力のグリッドへの売電(S2G) , (2)生成電力の 家庭用バッテリーへの供給(S2B)のいずれかを行うこと ができる. 図 4 ひとなびによる温度(左)と電力量(右)の可視化 3.3 センシングによる行動検出 洗濯機や乾燥機など一般的にコンセントの抜き差しが行 ンは継続的な行動検出により新しい実スケジュールとして われない機器については,接続したタップと機器を対応付 反映される.システムはこのサイクルを繰り返すことで生 け,特定のタップから電力消費が検出されれば当該機器が 活向上を促す. 稼働していると判別できる.掃除機やゲーム機など使用時 のタップ位置が不特定な機器については,消費電流の特徴 3.2 スケジュールの設計 量を学習することで検出が可能である [3].本研究において 3.2.1 居住者の行動 は機器の使用と行動の種類は一対一対応させるため(掃除 居住者の行動とは,日常生活で繰り返す食事や労働,余 機が稼働した場合は「掃除」行動,IH クッキングヒーター 暇(読書,テレビ鑑賞等)などを表す.提案システムでは が稼働した場合は「調理」行動など) ,電力消費を伴う人の 時間を単位時間(タイムスロット)で管理し,各居住者は 行動ならびに家電の稼働は消費電力情報をベースに検出可 1 タイムスロット内で 1 つの行動のみを実施するものとす 能である. る.居住者の行動は家庭内行動と敷地外の外出行動に分類 タップからの電力消費を伴わない行動については,位置 し,それらを電力消費を伴うか伴わないでさらに分類する. 情報を元に推定を行う.家庭内行動については,敷地内に 例えば,掃除や調理などは掃除機や IH クッキングヒーター レーザー測域スキャナを設置し,周囲にレーザーを照射し 等の電力消費機器を用いるため,電力消費型の家庭内行動 て歩行者の胴体や足までの距離を測定することにより人 に該当し,睡眠や食事などは電力不用型の家庭内行動に分 の存在と移動を検出する.このとき,スキャナを複数台設 類される.外出行動は,スマートハウスから外部へ移動し 置し,送信されるデータと設置場所を紐付けることで各居 帰宅する一連の行動であり,出社する,買物に出かける, 住者の部屋レベルの位置を特定できるだけでなく,測域ス などが該当する.移動手段は EV またはそれ以外(徒歩な キャナはセンチオーダーで距離を計測することができるた ど)とする. め,部屋の間取り情報と照らし合わせれば室内における細 3.2.2 スケジュール対象とする家電 かい位置情報(ソファの位置に居る,デスクの前に居るな 本研究では,スマートハウスから制御可能でかつ居住者 ど)も検出できる [7], [8], [21].テレビが稼働しておらず, の明示的な介在なく動作可能な洗濯機,乾燥機,エアコン ソファ部分に人が位置しておれば「くつろぎ」行動である などを制御の対象とし,これらをスケジュール可能な家電 といったように,位置情報を元にルールベースで行動を検 とみなす.(自走式でない)掃除機や電子レンジ,オーブン 出する. のように居住者の行動に紐付いたものは人の家庭内行動と また,居住者が所有するスマートフォンの GPS 情報を して扱い,また冷蔵庫のように常時稼働を前提とした家電 用いて,家屋の敷地外に位置している場合に外出行動であ は制御対象としない. ると判別する.勤務先や近所のスーパーマーケットなど頻 3.2.3 供給源の動作 本研究では供給源として家庭用バッテリー,EV,ソー 繁に訪れる場所を登録しておけば,場所に紐付く「出勤」 「買物」などの行動を特定できる. ラーシステムを想定する.供給源の動作とは,供給源の 電力処理状況(買電,売電,蓄電,発電)を表す.家庭用 バッテリーはタイムスロット毎に, (1)グリッドからの蓄 3.4 ユーザーインターフェースの実装 提案するシステムのユーザーインタフェースとして,プ 電(G2B) , (2)ソーラーシステムからの蓄電(S2B) , (3) ロトタイプの実装を行った.プロトタイプの様子を図 5 に 蓄積電力のグリッドへの売電(B2G), (4)蓄積電力のス 示す.各種スマートフォンやタブレット上で動作するよう, マートハウスへの供給(B2H)のいずれかを行うことがで Javascript を用いて実装しており,推薦されたスケジュー きる.EV は内蔵蓄電池を動力とし,家庭用バッテリーと ルをいつでも確認することができる. 分類する.不快指数は式 (1) で算出される. DI = 0.81T d + 0.01H(0.99T d − 14.3) + 46.3 (1) ここで,T d は温度,H は湿度を表す.また,不快指数と 体感の関係を表 2 に示す.「花粉飛散量」は一般的な予報 において「非常に多い」と判別される飛散量 50 個/cm2 以 上を多い,未満を少ないとして分類する. 表 2 不快指数と体感の関係 図 5 ユーザーインターフェースのプロトタイプ 不快指数 不快指数の体感 ∼55 寒い 55∼60 肌寒い 60∼65 何も感じない 65∼70 快い 70∼75 暑くない 合であるといえるが,提案手法はそれらの実スケジュール 75∼80 やや暑い の集合から,天候や曜日といった行動を左右する要因(行 80∼85 暑くて汗が出る 動決定要因)別に,居住者が最も実施しそうと想定される 85∼ 暑くてたまらない 4. 生活パターン解析手法 センシングシステムにより得られる居住者,家電,供給 源の行動および稼働情報はそれ自身が実スケジュールの集 本研究における体感 寒い 普通 暑い 代表的なスケジュールを導出する.本章ではスケジュール を区分するそれらの要因を列挙するとともに,それに基づ き,要因の組み合わせごとに代表的なスケジュールを導出 する手法を述べる. 4.2 行動決定要因組毎の実スケジュール導出 次に,与えられた行動決定要因値とセンシングされた行 動の頻度を計測する.まず,(行動名,体感,曜日,季節, 4.1 行動決定要因 天気,花粉飛散量) の組毎に,当該行動の平均実施時間を 居住者の意思決定や家電の稼働頻度や時間帯等に影響を 及ぼす行動決定要因として,本研究では例として表 1 に示 す項目を考慮するが,手法としてはこれらに限るものでは ない.なお,今回はスマートホームの機能として「自動車 使用」を,空間的要因として「場所」を,時間的要因とし て「時間」 「曜日」 「季節」を,そしてコンディションとし て「体感」「天気」「花粉飛散量」を考慮している. 表 1 行動要因 算出する(例えば, (エアコン,暑い,休日,夏,晴れ,少 ない)の組に対する平均稼働時間は 10 時間,など) .次に, (行動名,時間,場所) の組,もしくは (行動名,時間,自 動車使用) の組毎に,当該行動が実施されたタイムスロッ ト総数を計測する.その総数が総タイムスロットに占める 割合を,その組の行動頻度とする.なお,家庭内行動は, リビングや書斎など実施場所が 1 箇所でないテレビ視聴の ような行動と,実施場所が特定 1 箇所である調理などの行 要因 概要 動に分類する.前者は,(行動名,時間,場所) の組毎に頻 行動名 人の行動,家電の稼働の名称(ラベル) 度を算出し,後者は,(行動名,時間) の組毎に頻度を求め 自動車使用 使用,不使用 る.家電の稼働も同様に,エアコンのように複数箇所に設 場所 行動や稼働を実施している部屋または屋外の名称 時間 朝,昼,夕,夜,深夜 曜日 平日,週末 季節 春,夏,秋,冬 いかで分類し,(行動名,時間,自動車利用) の組毎に頻度 体感 寒い,普通,暑い を算出する. 天気 晴れ,雨 花粉飛散量 少ない,多い 置されているもの,洗濯機のように 1 箇所に設置されてい るものに分類する.外出行動は,自動車を用いるか用いな 行動頻度算出の例を図 6 に示す.例えばテレビ視聴とい う行動のタイムスロット数が,図 6 のように観測されたと すると,夜の時間帯に書斎でテレビを見る頻度は,12/50 「時間」は 1 日を 5 つの時間帯に分類し,1:00∼4:59 を深 夜,5:00∼9:59 を朝,10:00∼16:59 を昼,17:00∼20:59 を 夕,21:00∼0:59 を夜としている.「季節」は 1 年を 3 ヶ月 として得られる. 5. 行動推薦アルゴリズム で分類し,3∼5 月を春,6∼8 月を夏,9∼11 月を秋,12∼ 本システムでは前章で得られた実スケジュールを大きく 2 月を冬とする.「天気」は降水量の有無で晴れか雨かに分 逸脱しない範囲で,複数の生活価値基準を改善するような 類する.「体感」は居住者の外気温・室温に対する不快度 新しいスケジュールを推薦可能な枠組みを提案する.ここ を表しており,温湿度より算出される不快指数 DI を元に ではそれらの価値基準として,エネルギー,安心,コミュ cost′ = n ∑ EPt · (eG2H − etH2G ) t (3) t=0 これより,予め求めておいた電気料金の最大値と最小値 を用いて,電気代削減度を式 (4) で定義する. cost = 図 6 時間,場所と頻度の例 ニケーションの 3 つを対象とし,エネルギーの代表指標例 として電気料金削減度,安心の代表指標例として健康度, コミュニケーションの代表指標例として家族団らん度を用 いる.また,実スケジュールになるべく近いことを表すた めに,生活パターン適合度と呼ばれる指標も定義する.以 下ではこれら 4 つの指標を定義し,それにもとづく改善ス ケジュールの算出方法を述べる. max (cost′ ) − cost′ max (cost′ ) − min (cost′ ) (4) 5.2 健康度 世帯の居住者全員が一日の生活で消費するカロリー数を, 最大消費カロリーを 1,最小消費カロリーを 0 として正規 化した値である.例えば,3 人家族が全員で消費するカロ リーの最大値が 7500kcal,最小値が 3000kcal であるとき, 消費カロリー数 6600kcal は健康度 0.8 に対応する.世帯全 員の一日の消費カロリー数の総和は以下で得られる.消費 カロリーは運動強度を用いており,安静時における酸素摂 取量 3.5(mL/kg/分) を 1MET とし,タイムスロット t に 5.1 電気料金削減度 一日の生活に要する電気料金を,最大電気料金を 0,最 小電気料金を 1 として正規化した値である.ここで,一 おける人 p の消費カロリー数を式 (5) で算出する. ht,p = 1.05 · m(METs) · 0.5(hour) · Wp (kg) (5) 日中エアコンやテレビをつけっぱなしにするなどして最 も電力を浪費するような生活をした場合に支払う金額を 最大電気料金とし,エアコン稼働を我慢するなどして節 電に徹した生活をした場合の金額を最小電気料金と捉え る.例えば,一日に必要な最大電気料金が 2000 円であり, 最小電気料金が 1000 円であるとすると,導出したスケ ジュールの電気代が 1600 円のときの電気代削減度は 0.4 となる.電気料金の算出は以下に従う.本稿では,東京電 力における電力量料金単価 [22] を元に,時間別電力消費 量の差を考慮して新たな電力価格を設定した.タイムス ロットを t ∈ {0.0, 0.5, 1.0, 1.5, . . . , 23.5} とし,東京電力で 現在設定されている電力価格を rmidnight(夜間電力価格) , rmorning(朝晩電力価格)および rdaytime(昼間電力価格) なお,式中の m は行動ごとに異なり,文献 [24] を参考に している.Wp は人 p の体重を表す.これより,世帯全員 の消費カロリーは式 (6) で表される. health′ = n ∑ ∑ ht,p (6) t=0 p∈P 予め求めておいた式 (6) の最大値と最小値を用いて,健 康度は式 (7) で算出される. health = health′ − min (health′ ) max (health′ ) − min (health′ ) (7) 5.2.1 団らん度 本稿では,家族全員が同一タイムスロットに同じ場所に で,一日の電力消費量の比率として中部電力で算出された 居る場合を「団らん」として定義する.これは,団らんと 指数 [23] を It ,指数平均を Iavg で表し,以下の時間別電 は家族全員もしくは大半が揃うことと,場の共有が優先さ 力価格 EPt [円/kWh] を用いる. I rmidnight · t I avg (0 ≤ t < 7, 23 ≤ t < 24) rmorning · It Iavg EPt = (7 ≤ t < 10, 17 ≤ t < 23) I t daytime r · Iavg (10 ≤ t < 17) れていることが団らんであるという認識が定着しているこ とによる [25].このとき,リビングやダイニングのような 特定の部屋に集まることを団らんとみなす家族が多いこと から,特定の部屋において団らんに関する値が大きくなる ように設定している.また,家族全員が揃うことが重視さ (2) 電気料金は,グリッドに対する電力売買の際,時間帯に れていることを考慮し,その場にいる人数が多いほど値が 大きくなるよう設定している. 以上より,一日の団らんに関する値は,場所ごとに定め られた値 fr とその場にいる人数ごとに定められた値 fnum の積をタイムスロットで総和を取った値として定義する. これを式 (8) に示す. よって変動する電力価格と売買する電力量とに応じて発生 する金銭的支出であり,買電による支出 EPt · eG2H と売電 t による収入 EPt · 式 (3) に示す. eH2G t の差としてモデル化する.これを f amily ′ = n ∑ ∑ fr · fnum (8) t=0 r∈R 団らん度も同様に,一日の団らんに関する値の最大値と 最小値を基準とし,どれほど団らんを達成しているかの指 標として式 (9) で算出する. f amily = f amily ′ − min (f amily ′ ) max (f amily ′ ) − min (f amily ′ ) ∑ usr′ = usrp,o + (p,a)∈A (9) 団らんに使用される空間はリビングもしくはダイニング ことから,本稿では,リビング,ダイニング,レジャー施 設における団らん度が大きくなるよう設定している. 5.2.2 生活パターン適合度 生活パターン適合度は,あるスケジュールが別のスケ ジュールにどれだけ合致しているかを表す指標であり,実 スケジュールと改善スケジュールの大きな乖離を抑制する ために定義する.一日のスケジュールに対し,4 章で算出 した行動頻度の総和を取り,最大値と最小値を基準とした (13) ターン適合度を式 (14) で求める. usr = usr′ − min (usr′ ) max (usr′ ) − min (usr′ ) (14) 5.3 改善スケジュール導出のための定式化 5.3.1 目的関数 これまでに述べた式 (4),(7),(9),(14) をなるべく大き くすることが理想的なスケジュールであるといえるが,本 研究では居住者の従来の生活パターンとの適合度を高く保 ちつつ,エネルギー,健康,コミュニケーションの観点か ら行動推薦を行うことを目的とするため,式 (15) を目的関 数と定める. wcost · cost + whealth · health maximize : 指数値として算出する. usre e∈E 式 (13) の最大値と最小値を予め算出しておき,生活パ がほとんどであること,家屋外における団らん行動として, 一家でレジャー施設等への外出も重要であると考えられる ∑ +wf amily · f amily + wusr · usr 4 章でも述べた通り,人の行動や家電の稼働は,行動頻 (15) 度の求め方によって 3 通りに分類できる.場所が変動する なお,wcost ,whealth ,wf amily ,wusr はそれぞれ電気料金 行動や稼働は,時間と場所の組ごとに頻度を算出している 削減度,健康度,団らん度,生活パターン適合度の重みで ため,スケジューリングに際して頻度の和を算出する式は ある. 式 (10) のようになる. 5.3.2 制約式 usrp,a = usre = n ∑ ∑ 行動推薦対象日の月日,天気,花粉飛散量,温湿度の予 f reqt,p,a,r · xt,p,a,r t=0 r∈R n ∑ ∑ 報値あるいは予想値に対し,それに対する各行動の実施平 (10) f reqt,e,r · yt,e,r 均時間が実スケジュールとして得られるため,それを用い て行動推薦スケジュールを導出する.居住者 p の行動 a の t=0 r∈R ここで,xt,p,a,r は人 p の行動 a がタイムスロット t に部屋 実施平均時間を Tp,a として混合整数線形計画問題に与える と,式 (16) で表される制約式に変換される. r で実施される場合に 1 となる 2 値変数である(家電につ いて yt,e,r も同様) .f reqt,p,a,r は人 p の行動 a がタイムス Tp,a − δ ≤ ロット t に部屋 r で実施される頻度を表す.特定場所での n ∑ xt,p,a ≤ Tp,a + δ (16) t=0 み行われる行動や稼働は,時間ごとに頻度を算出しており, 行動推薦は,実施平均時間 ±δ の範囲で行動実施時間を決 その和は式 (11) で示される. 定するため,実生活パターンにおける行動実施時間と比較 usrp,a = usre = n ∑ し大きな変動がないことが保証される.同様に,エアコン f reqt,p,a · xt,p,a t=0 n ∑ のように稼働時間が一定でない家電 e に対しても,実施平 (11) f reqt,e · yt,e 均時間を Te として混合整数線形計画問題に与えると,式 (17) で表される制約式に変換される. t=0 外出行動は時間と自動車使用の組ごとに頻度を算出してい Te − δ ≤ usrp,o = yt,e ≤ Te + δ (17) t=0 るため,その和は式 (12) で示される. n ∑ n ∑ なお,洗濯機や乾燥機のように稼働時間が固定であるもの (f reqt,p,o,U · wt,p,a,U t=0 (12) +f reqt,p,o,N · wt,p,o,N ) については,稼働するかしないかの 2 通りで表現する. この他,人の行動や家電の稼働ならびに供給源の動作の 定式化や,人の生活として妥当であるための制約式につ wt,p,o,U はタイムスロット t に人 p の外出行動 o で自動車 いては本稿では割愛する.詳しくは文献 [26] を参照され を使用した場合に 1 となる 2 値変数,wt,p,o,N は自動車を たい. 使用しない場合に 1 となる 2 値変数である.式 (10),(11), (12) は,すべての行動と稼働で総和を取る.これを式 (13) に示す. 6. 性能評価 本システムの評価に際し,今回スケジューリング対象と した人の行動と家電の稼働の一覧を表 3 に示す.評価に際 を図っている.健康の観点からも,運動行為がスケジュー しては実世帯における生活行動 [27] を参考に,家族 3 人 ルに組み込まれ,消費カロリー数はそれぞれ父,母,子の (父,母,子)の一般的な生活行動パターンを用いて実施平 順に 271.97kcal,372.75kcal,350.96kcal ずつ増えている. 均時間や実施頻度を解析し,それを元に 1 日のスケジュー このときのスケジュールの変化について図 7 に一例を示す. リングを行った.学習データとして与えた日の行動要因に ついて表 4 に示す. 表 3 人の行動,家電の稼働一覧 種別 一覧 人の行動 睡眠,食事,入浴,調理,身支度,家事,掃除, テレビ,仕事,勉強,読書,くつろぎ,PC, ゲーム,室内運動,出勤,学校,買物,レジャー 外出運動(ジョギング,ジム通い,外で遊ぶ) 家電の稼働 洗濯機,乾燥機,炊飯器, 空気清浄機,加湿器,エアコン 表 4 学習データの行動要因 年月日 季節 曜日 天気 体感 花粉飛散量 2014/3/19 春 平日 晴れ 寒い 多い 2014/3/26 春 平日 雨 寒い 少ない 2014/3/16 春 休日 晴れ 寒い 多い 2014/3/30 春 休日 雨 寒い 少ない 2013/7/10 夏 平日 晴れ 暑い 少ない 2013/7/3 夏 平日 雨 普通 少ない 2013/7/7 夏 休日 晴れ 暑い 少ない 2013/8/24 夏 休日 雨 暑い 少ない (2013/7/13,夏,休日,晴れ,暑い,少ない)という 2013/10/1 秋 平日 晴れ 普通 少ない 要因の組では,一家全員が 12:00∼15:59 にレジャー施設に 2013/10/15 秋 平日 雨 普通 少ない 2013/10/14 秋 休日 晴れ 普通 少ない 2013/10/20 秋 休日 雨 普通 少ない 2014/1/24 冬 平日 晴れ 寒い 少ない けるように変更された.また,元々は実施されていなかっ 2013/12/18 冬 平日 雨 寒い 少ない た外出運動も家族全員 1 時間ずつ組み込まれるように変化 2013/12/14 冬 休日 晴れ 寒い 少ない している.休日においても 18:00∼18:59 の間に一家全員で 2014/2/8 冬 休日 雨 寒い 少ない 食事を取り,19:00∼22:59 の間を全員リビングで過ごすな 図 7 スケジュール変化の一例 出かけており,元の 11:00∼15:29 から時間をずらすことで 最も電気料金の高い 15 時台に家庭内のエアコン稼働を避 ど,団らんの時間を確保できていることが分かる. これ以外にも,晴れの日には乾燥機を使用しないが雨の 6.1 シナリオに基づく生活改善 表 4 に示したスケジュールを学習後,これ以外の日の行 動要因を与えてスケジューリングを行った. (2014/1/30,冬,平日,雨,寒い,少ない)という要因の 組では,電気料金削減度が 0.86,健康度が 0.72,団らん度 日には稼働させる,花粉の多い日には空気清浄機を長時間 稼働させるといった傾向を把握し,推薦スケジュールに反 映させている.ただし,雨の日や花粉の多い日に外出しな いという傾向に関しては,健康度の観点から外出運動の時 間を確保するように推薦されている. 0.86,そして生活パターン適合度が 0.91 と高い基準を満た すスケジュールを導出できることを確認した.スケジュー 6.2 センシングデータ欠損時の導出スケジュール ル内容の変化を見ると,団らんの観点から,別の部屋でテ 本システムではセンシングデータを元に人の行動や家電 レビ視聴していた夫婦に対してリビングでテレビ視聴する の稼働を検出し,実施頻度や平均実施時間を学習する.し ようにレコメンドされるなど,19:30∼22:59 の時間帯は家 かしながら,家事(洗濯物の取り込みなど)や食事といっ 族全員がリビングに集まるように変更された.また,リビ た検出そのものが難しい行動や,外出先が分からない行動 ングに集まってテレビを見ることは,テレビの稼働台数を など,一般にセンシングだけではすべての行動を検出でき 抑えるため,電気代削減にも繋がる.この他にも,洗濯機 ない.また,本研究では行動を実施した人が特定可能であ の稼働を 8:00 から 5:30,掃除を 9:00 から 6:30 に早め,電 ると想定したシステムを提案したが,実際には実施された 気料金のより安い時間にシフトするなどして電気代の削減 行動を検出できても,それを行った人が誰であるかまで検 出することは設備的あるいはプライバシの観点から難しい 割り当てを除外することが可能であるため,これらの行動 場合も多い.個人まで識別することが可能であっても,ス を軸にして妥当なスケジュールに収束させることができ マートフォンの携帯が必要とされたり,カメラによる画像 た.休日においては,平日のように特定の人物のみが行う 認識が必要とされるなど,現実性は高くない. 行動が設定されていないため,家族 3 人のスケジュールに そこで,用意した学習データから上記のような行動情報 はほとんど差異がなくなったが,これは家族団らんの観点 や行動を行った人の情報を欠損させた上でスケジューリン からは優れたスケジュールと考えられる.団らん度も 0.85 グを行った場合の結果を確認した. という高い値を達成しているが,仕事や家事といった特定 6.2.1 行動データが欠損した場合 の人物のみが行いやすい行動に関しても,システム側で割 上述のような行動が検出不可能であることを想定し,家 り当てを考慮することで,より居住者の生活パターンに適 事,食事,身支度,くつろぎ,仕事,勉強,読書,買物,レ したスケジュールを導出できるようになると考えている. ジャーの情報を欠損させた.平日の場合における結果の一 例を図 8 に示す.買物に行かなくなる,くつろぎの時間が なくなるなどスケジュールに組み込まれない行動が生じた 他,従来昼に行われていた家事が夜に行われる,休日にお けるレジャー施設への外出時間が 3 時間減少するなど,ス ケジュールの一部に居住者の生活パターンを反映できない 部分が見られた.しかしながら,テレビや睡眠といった他 の行動の制約が満たされていれば,検出不能な行動もスケ ジュールに組み込まれるため,推薦する時間帯は異なれど も行動自体はレコメンドされる結果となった.特に平日で は,睡眠や出勤といった長時間実施される行動が検出でき ているため,推薦スケジュールの妥当性が大幅に欠如する ということはなかった. 図 9 行動データが欠損した場合のスケジューリング結果 7. おわりに 本研究では,エネルギー関連の情報に加え,居住者の生 活行動習慣を計測,把握することで,電力コスト,健康, 快適度,家族団らんといった複数の生活質基準をなるべく 同時に充足するような生活行動を提示するスマートハウス 向けの行動検出・解析・推薦システムを設計した.世帯居 住者の行動実施頻度や平均実施時間を蓄積・解析し,その 図 8 行動データが欠損した場合のスケジューリング結果 結果を元に,現在の生活習慣から大きく逸脱しない範囲で, 電力コスト,健康度,快適度,家族団らん度などの評価基 6.2.2 個人特定データが欠損した場合 行動は完全に検出可能とするが,完全に匿名であると仮 定し,行動頻度や実施平均時間の解析時に,世帯全員分の 情報を統合して解析した場合のスケジューリング結果を確 準和を最大とする行動推薦機構を提案した.典型的な世帯 の生活行動習慣に対してスケジューリングを行い,その有 効性を確認した. 今後の課題としては,より日常生活に溶け込むスマート 認した.平日の結果の一例を図 9 に示す.平日においては, ハウスシステムを目指し,今回のような時空間共有だけで 出勤や学校など特定の人物のみが行う行動について,スケ なく,コンテンツ共有なども考慮した家庭内コミュニケー ジューリング実行前に予めシステム側で特定人物以外への ションや,高齢者や子どもの見まもりサービスとの連動に よる安心安全な生活管理の実現を考えている.また,行動 検出機構を実装し,実際にセンシングによって得られた実 [13] 生活行動に対してスケジューリングを行う実証実験も検討 している. [14] 謝辞 本研究は文部科学省国家課題対応型研究開発推進事業 [15] –次世代 IT 基盤構築のための研究開発– 「社会システム・ サービスの最適化のための IT 統合システムの構築」 (2012 [16] 年度 ∼2016 年度)の助成を受けたものです. 参考文献 環 境 省:HEMS 利 用 の 価 値 向 上 の た め の 調 査 事 業検討会資料. http://www.env.go.jp/earth/house/ conf hems.html. [2] シ ャ ー プ:COCOROBO. http://www.sharp.co.jp/ cocorobo/. [3] 伊藤雅仁, 大亦寿之, 井上智史, 重野寛, 岡田謙一, 松下温 :消費電力波形の特徴を利用した家電機器検出手法と制 御システム,情報処理学会論文誌, Vol. 44, pp. 95–105 (2003). [4] Chen, C., Cook, D. J. and Crandall, A. S.: The user side of sustainability: Modeling behavior and energy usage in the home, Pervasive and Mobile Computing, Vol. 9, pp. 161–175 (2013). [5] 村尾和哉, 藤堂智史, 寺田努, 矢野愛, 松倉隆一, 塚本昌彦 :住宅内に設置した人感センサを用いた住人の移動推定 手法,マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウ ム 2011 論文集, Vol. 2011, pp. 315–322 (2011). [6] ST マイクロエレクトロニクス:Mother,Motion Cookies. https://www.sen.se/. [7] 山口弘純, 廣森聡仁, 樋口雄大, 内山彰, 梅津高朗, 東野輝 夫, 孫為華, 下條真司, 山口容平, 下田吉之:共有空間の 「ひと」 「くうき」 「きもち」を一体化する「ひとなび」の コンセプトとビッグデータ蓄積に向けた実証実験,電子 情報通信学会 信学技報,Vol. 113, pp. 13–18 (2013). 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