[10] フル金型システムのサイクリング解析 はじめに

[10] フル金型システムのサイクリング解析
鹿取事務所 鹿取 貞夫
はじめに
Cast-Designer の最大の経済効果は、設計早期段階に、知識ベースにもとづいてゲート・システ
ムを迅速に設計すること、まず、ゲート・システムとカスティング部に対する解析を短時間で完了するこ
とにある。迅速に得られる複数の方案から最善を選択する。産業の実際のニーズの 90~95%はそこ
にある。間に合わない設計では受注の可能性は無い。間に合わない解析は不良率を下げない。
Cast-Designer の能力はそれにとどまらない。その一つがサイクリング解析である。サイクリング解
析は、フル金型システムを対象とする。アロイ材質、金型材質、熱伝達係数、金型温度、クーリング、
スプレイ、型開き、型閉めの時間等、ダイカスティング・プロセスの全てを解析計算に反映する。得ら
れる結果は、先ず、温度分布と遷移である。それによって、温度サイクルの安定を確認するとともに、
結果にもとづいて改めて充填と凝固を点検すれば、さらに精確な解析結果を得ることができる。
これらの計算には、かなりの時間と手間を要する。日常的に実施することは実際的でない。しかし、
適時に精細な解析を行うことが非常に有益であることは言うまでもない。もし、Cast-Designer のフ
ァスト・シミュレーションを間断なく実施してれば、詳細解析の必要頻度は 5%~10%程度で済むはず
である。サイクリング解析は、技術者がダイカスティングの豊かな経験と知識を蓄積することに多大の
効果がある。ただし、適切なサイクリング解析操作には、カスティングの解析を十分学習し、その上に
最低 3 日間のトレーニングが必須であることをご理解頂く必要がある。
サイクリングには、先ず、メッシュ品質を精査して欠陥を補修し、その後、数十分の短いシミュレーシ
ョンを試行して問題の所在をおよそ把握することを推奨する。充填の予備的シミュレーション、いくつか
のサイクルの試行を通して、操作手順上の過誤、不適正が無いか確認することも必要である。また、
課題と結果をある程度予測した上で最終的な解析を実施することを推奨する。入力データの品質
をはじめ、多数のファクタが関与する計算であるため、一発正解を求めることは危険である。それより、
段階的に、目標とするレベルの結果を最少の手間と時間で得る方法を探るべきである。具体的には、
大型で複雑なモデルか、そうでないモデルか、温度分布のみか、それを充填と凝固の再解析に適用
するか、メカニカル解析を実施するか、それぞれの目的と求める精度に沿ったアプローチが必要であ
る。
サイクリング・シミュレーションには十分なスキルが必要である。Cast-Designer の標準機能による
フロー、凝固、温度移動のシミュレーションに十分な経験を積んで欲しい。その結果解析に相当の自
信を得るまではフル金型モデル・サイクリング・シミュレーションを控えることが望ましい。
なお、フル金型のアセンブリ生成には標準機能の他にアセンブリ・オプションが非常に有効である。
また、計算はシングル CPU オプションで十分可能だが、マルチ CPU/コア を利用するパラレル・オプシ
ョンも考慮に値する。時間を節減できることから、余裕を生じ、解析の成功をより確実にするからであ
る。
図 1 サイクル・プロセス・ステップ基本データ
操作の要点
Cast-Designer のフル金型システムに対するサイクリング解析でも、実戦的なファスト・メッシュが
高い効果を発揮する。そこから、より適切なメッシュ品質を得るために、ロバスト・メッシュ、アドバンス
ト・メッシュを経るというアプローチが用意されている。ファスト・メッシュを利用せず、サーフェス・メッシュか
ら四面体メッシュを得る方法、あるいは、どうしても必要ならば、歴史的な手法として CAD モデルから
2D メッシュを経て 3D メッシュを得る方法も可能である。しかし、後者にさほどのメリットは無い。
サイクリング解析には、指定のオブジェクトに対して四面体メッシュを生成することができる。熱の解
析には四面体メッシュが十分適当だからである。接するオブジェクトのメッシュ・タイプ(六面体または四
面体)が等しい場合の界面と、異なる場合の界面では熱伝達率が異なるので、界面の定義を区別
する。界面のタイプには、界面両側の節点が合致する結合(Connect)タイプ、そうでない非結合
(Disconnect)および元から一体であるオブジェクト間の等価(Equiv)タイプがある。
Disconnect は Connect 生成が成功しない場合がセカンド・チョイスとして温度分布解析に使え
る。また、カスティング部のみ六面体メッシュとする場合 Disconnect となるが、充填と凝固のシミュレ
ーションにはむしろ適している。しかし、Disconnect はストレス・シミュレーションには不適である。(界
面タイプ:メモ1参照)
プロセス・ステップの情報収集
サイクリング解析は、プロセス・ステップの情報収集から始まる(図 1)。情報は計算ウィザードにパラ
メタとして入力する。
高圧ダイカスティングのサイクルは次のステップからなる。タイム・スパンはラフな見積であり、相互依
存関係がある。たとえば:
−
メタル取鍋(コールド・チャンバ・ダイカスティング)、3-5 秒
−
カスティング・ショットとパーツ凝固、6-15 秒
−
必要な場合、コア前進動作 4-7 秒
−
型開き、パーツ排出とダイ空間から除去、2-15 秒
−
パーツ除去その他のステップの検証
−
ダイ・スプレイ、4-16 秒
−
ダイ冷却と乾燥、3-15 秒
−
型閉じ、1-2 秒
−
必要な場合、コア後退動作4-7秒
メッシング
通常、メッシュ作成には先ず実戦的なファスト・メッシュを使う。オブジェクトの設定は標準の通り。カ
スティングの状態は充填済みとする。アセンブリ機能でオブジェクトを選択的に四面体メッシュに変換
する。選択的にとは、充填と凝固には概ねカスティング部を六面体にすることが、要素数を節減でき
るので、むしろ適切である。クーリング・チャネルも六面体でよい。
金型部には大きいメッシュ・サイズで要素数を少なく、カスティング部には均一で高品質のメッシュと
する。要素のパラメタとして、半径当たりの要素数、エッジ当たりの要素数(2~3 くらい)および最小要
素を決める。不良な CAD 図形から微細な図形が多数来る。要素のフリー・エッジ、交差等である。
これは手順に従って修理する。最小要素以下であれば、一旦無視して、後で一括抽出して修正す
る。事前に CAD のクリーニング・ソフトを適用することはある程度有効である。
必要に応じて、ロバスト・メッシュ(試行用で速いが低品質)、アドバンス・メッシュ(三角形または 2D
の四辺形メッシュおよび 3D の四面体メッシュ自動生成機能)、リメッシュ(不良六面体メッシュからの
再構築)、エクスプレス・メッシュ(主に図形チェックに使う三角メッシュ高速生成)の技術を適用して、
メッシュ品質の改善とメッシュ・モデル・サイズの節減をはかる。結果精度をできるだけ高めることと、計
算所要時間をできるだけ短縮することとは、必ずしも矛盾しない。最も適切な方法を選択するスキル
が重要なのである。
解析計算を遂行するためには、金型部、カスティング部それぞれのデータ品質を厳密にチェックする
必要がある。フリー・エッジ、自己交差、面積ゼロの要素、大き過ぎるアスペクト比、Jacobian マイナ
ス要素の除去などが必要である。
大型のパーツ・モデル、複雑なモデルの場合、メッシュ品質チェックには手間と時間がかかる。しかし、
これを CAD 段階で行えば、その数倍、数十倍の手間と時間がかかる。しかも、成功の保証は無い。
Cast-Designer のメッシュ品質チェックは、ユーザーのその労苦を大きく軽減する。手作業は数回の
経験で簡単に馴れを得られる。完全自動化は難しいが、追ってそれに近い自動化がはかられる。
上記諸点の詳細は「事例」の項以下を参照。
界面の定義
サイクリング解析で重要なのは熱伝達のファクタである。金型と
クーリング・チャネル、金型とカスティング部、カスティング部とスリー
ブ等の各オブジェクト間に界面を定義して、それぞれの間の熱伝
達率(HTC)を適用する。前述のように、界面間の節点接触タ
イプに結合(Connect)、非結合(Disconnect)、等価(Equiv)
の違いがあるので、ケースに応じ適用する。
そのための界面定義のインタフェースが用意されている。それぞ
れのオブジェクト・ペアについて接触タイプを指示する。
図 2 界面の定義
界面の熱伝導係数
界面間には熱伝導率(HTC)を定義する必
要がある。(HTC について:メモ 2 参照)。
各界面間の HTC は一定値または時間/温
度の曲線の適用ができる(図 3)。温度曲線は、
経験または計算によって材質に応じて得られた
データから作成する。たとえば、ADC12 につい
て得たデータとその温度曲線は、材質が同じで
ある全てのケースに使用できる。
図 3 温度曲線
(メモ1)
界面の節点コンタクト・タイプ
温度分布と遷移を検出するには、互いに接触するオブジェクト間の熱伝達率を反映する必要
がある。熱伝達は材質、メッシュ・タイプ、界面上の互いの節点位置関係に左右される。節点の
位置関係には 3 つのタイプがある。等価(E)、結合(C)および非結合(D)である。
等価オプション(EQUIV)
ゲートとカスティングのように、2 つのドメインが同じエンティティの部分であるとき、その両方に「等
価」界面 (EQUIV)を設定する。界面全体に連続した温度プロファイルと、連続した速度フィールド
がある。界面の節点(下図で赤色で示す)は、両側の要素によって共有されている。
結合オプション(Connect)
カスティングと金型のような、2 つ別々の材質の界面では、通例温度の低下がある。この場合、
界面の節点は合致界面上でダブルになる。これは界面のそれぞれの側の温度を区分するためで
ある。メッシュ生成のとき、界面には或る節点がある。この段階でその全ての界面節点を再生する
必要がある。再生操作は「結合」(Connect)を選択すると実行される。下図に示した界面は厚さ
0 である。等価から結合に行くこと、またその逆も可能である。
非結合オプション(Disconne
ect)
メッシュを一体
体にして、非合
合致メッシュを生成することも可能である
る(i.e.界面両側
異なるタイプのメ
の要素
素が同じ節点
点を共有してい
いない)。この
の場合は、「非
非結合」(Disc
connect)オプ
プションで、その
の
界面が非合致であ
あることを指定
定しなければな
ならない。
非結
結合メッシュに
に対して、エデ
ディタ・ウィンド
ドウで非結合トレランスを設
設定できる。2 つのトレランス
スを
定義または修正で
できる。特別な
な場合、節点
点の同じ場所(同じ配位)で
で、異なる要素
素タイプのメッ
ッシ
ュを使
使用するこが可
可能である。た
たとえば、カス
スティングに六面
面体、金型に
に四面体であ
ある。これでメッ
ッシ
ュ・モデ
デル・サイズを
を節減できる。
。
(メモ
モ 2)
熱力学、メカニカ
カル、ケミカル
ル・エンジニアリ
リングで使われ
れる、熱伝導率
率が熱伝達の
の計算に使わ
われ
る。代
代表的には対
対流または液相
相と固相の間
間の遷移である
る。
そこ
こでは、
Q
Q= 入力熱フ
フローまたは喪
喪失熱フロー。 単位は J/s = W
h== 熱伝達係
係数。単位は W/(m2K)
A
A= 熱伝達サ
サーフェス面積
積。単位は m22
= 固相サー
ーフェスと周囲
囲の液相エリア
アの間の温度差
事例で説明
オブジェクト・モデルの準備
事例として新規オブジェクトを作成する。
この説明では、「シンプル金型」を例に取る。界面節点間が結合しているケース(Connect)を先に
述べ、その後、非結合(Disconnect)にも触れる。
モデルとして図 1 を示す。
図 1 (左)CAD からのカスティング・モデルとクーリング・チャネル
(右)シンプル金型を追加
図 2 ピストンを追加
特例処理として、このモデルにあるベンティングは非常に薄いため解析に適さないから、これは削除
または、厚さを増やす。追加したオブジェクトを元のカスティング・システムと複合させ、一体のオブジェク
トとする。在来の方法と異なり Boolean 演算をする手間は不要である。元の CAD データの品質も
それほど高くなくてもよい。
金型ボックスは可動型と固定型のそれぞれのオブジェクトに分割する(図 3)。分割平面は実際の
パーティングと異なっていても良い。
図 3 金型を可動、固定に分割(シンプル金型)
カスティング部にメッシュ作成
先ず、カスティング・パーツに何度かテストを実行する。詳細なメッシュ・パラメタを得るためである。サ
イクリング・シミュレーションには、小さいフィーチャは重要ではない(注意:小さい要素の品質を無視す
る意味ではない)。モデル要素数を妥当な数まで極力減らす。Cast-Designer の「粗いメッシュ」の
技法がこの際有効に働く。また、パーツには比較的小さいメッシュを使うが、ピストン、メイン・ランナ、オ
ーバフローなどには大きいサイズの要素を使ってよい。「ローカル・メッシュ」の技法も利用することができ
る。このとき、オーバレイも使える。その定義は精密を要しない。
金型セットにメッシュ作成
金型セットの CAD オブジェクトに「ファスト・メッシュ」で 3D メッシュを生成する。この事例でのオブジ
ェクト群はクーリング、スリーブ、固定型、可動型である。これらには四面体メッシュを生成する(クーリ
ング・チャネルは六面体でよい)。図 5 参照。四面体メッシュを生成する理由は熱伝達の解析には十
分だからである。(さらに詳細はメモ 2 を参照)。
必要箇所には細かいローカル・メッシュを作成する。オーバレイも可能である。精細に定義する必
要はない。円滑化は自動的に行われる。
結合(Connect)タイプの事例
金型“アセンブリ”に 3D メッシュを生成
カスティング部を先頭にして、グループを形成する。ここで、アセンブリ・ページに行く。金型セットにパ
ラメタを設定して、全てのオブジェクトを四面体要素に変換する。このケースではクーリングは六面体の
ままでもよい。カスティング部以下四面体なので、各オブジェクト間の界面は Correct タイプである。
この結果フル金型セットのメッシュは下記のようになる。
Partmesh1 
クーリング・チャネル
Property1 
カスティング
Property2 
スリーブ 四面体
Property3 
可動型 四面体
Property4
六面体
四面体
固定型 四面体
図 5 メッシング
カスティング部分のメッシュの品質チェックとスキン抽出
ここで、重要なのがメッシュ品質のチェックである。不良なメッシュを補修しない場合、計算が完了し
ないことや、結果にノイズが生じることがある。Cast-Designer は適切な補修手順を提供する。大
型・複雑モデルでは、CAD の欠陥に由来する不良要素の修正に手間取ることがある。メッシュ・サイ
ズを大きくする(例 2.5 を 3 に)ことで、メッシュ数を減らし、その結果手作業を減らすこともできる。
カスティング・パーツのメッシュは均一でなければならない。特に中央部はチェックを要する。カスティン
グの断面をチェックした結果、品質が良くないことが判った(図 6)。メッシングのパラメタを増やし、手動
で再生成する。
適切な品質のメッシュを得るには、それに備えた十分なトレーニングが欠かせない。
図 6 カスティング・パーツのメッシュ品質チェック
3D カスティング・メッシュを表示し、3D メッシュ・アドバイザで四面体メッシュを実行した後、2D サー
フェス・メッシュ・チェックの画面で、フリー・エッジ、ゼロ面積要素、交差フェースのチェックを実行して、そ
れぞれの不良個数を知る。これらの不良要素を「節点マネジメント」を通じて手動で修正することにな
る。四面体メッシュが不良要素の無い状態で完成している場合は、修正ステップは不要だが、通常、
元の CAD に多数の欠陥があるため、大型、複雑モデルでは先ず全ての場合に補修が必要である。
3D メッシュ・パラメタ定義ページで簡単なパラメタを設定する。最大要素エッジを適宜設定。レイ
ヤ・オプションとアドバンス・レイヤをアクティブにすることで、メッシュを最適化する。3D メッシュ実行のペ
ージで、3D メッシュ・ファイルを生成する。このファイルは不良要素の検出と修正のためのものである。
(スキンの抽出)3D カスティング・パーツのメッシュだけを表示して、「ソリッド要素のスキン」ページで
メッシュのスキン要素をもう一つのメッシュ・オブジェクトに抽出する。
図 7 スキンの抽出
(2D 要素の歪みチェック(
)2D 要素のチェック・ツールバーを使って、歪角度 をチェックす
る。最大角度と最小角度を指定する。結果はヒストグラムで表示される(図 8)。コンタ抽出機能で
限界値を指定し、それを越えるものを抽出する。抽出されたものと、元の 3D カスティング・パーツ・メッ
シュを比較表示すると修正すべき、要素の場所を簡単に探索できる。修正は手動でする。”3D 要
素”を直接消去して修正する(2D ではない)(図 9)。
図 8 2D 歪みチェックによるメッシュの品質チェック(上記のヒストグラムは合格状態を示す)
図 9 赤色が不良箇所である。節点マネジメントを起用し、一個一個手動修正する。
金型ボックスのメッシュ品質チェックとスキン抽出
金型ボックスに対しても、品質チェックを行い、体積がゼロ以下のメッシュ、大き過ぎる 3D アスペク
ト比の要素、ゼロ以下の Jacobian 値は修正または消去する必要がある(図 10)。さらに、各コンポ
ーネント間のダブル節点を除去する(図 11)。
図 11 ダブル節点を除去
図 10 金型ボックス
金型ボックスのスキンを抽出する。スリーブ、可動型、固定型を表示して、これらオブジェクトからサ
ーフェス・スキンを抽出する(図 11)。
図 11 選択ツール(中)で外側サーフェスを選択、他の要素を消去する。結果(右)を得る。
クーリング・チャネルからサーフェス・スキン抽出
クーリング・チャネルだけを表示して、サーフェス・スキンを抽出する。
このモデル(Connect タイプ界面)の使い道
このモデルは次の使用にベスト:
1, サイクリング・シミュレーション金型温度分布
2, 金型とパーツ両方のストレス・シミュレーションに唯一のソリューションである。
このモデルは次の使用に非常によい:
カスティング・パーツの充填シミュレーション金型の不均一温度分布を考慮する。
(メモ 3)
アセンブリのメッシング
カスティング・パーツの「充填と凝固の解析」には六面体要素のほうが四面体要素より良い。しか
し、「熱解析」にはいずれも殆んど同等である。むしろ、四面体要素は金型メッシングにはメリットが多
い。たとえば:
a)
b)
c)
d)
モデルサイズを節減。金型の体積はカスティング・パーツより大きいから、四面体は六面体
より大きな要素比を持つことが容易である。FDM ソフトウエアの場合は、金型で大量の要
素を食われる。Cast-Designer は四面体要素で、金型に少量の要素を使い、モデル・サ
イズを節減する。
クーリング・チャネルと他の部品に対する良好な図形記述ができる。サーフェス三角要素か
ら生成された四面体要素は高い曲率のエリアで良好な図形記述ができる。
四面体は熱シミュレーションの適切な結果を得られる。
金型サイズが経済的なので、シミュレーションの CPU 時間が節減できる。
(混合メッシュ)Cast-Designer はスキンから迅速解析目的の混合メッシュを作成できる(図)。カス
ティング・パーツには六面体、金型には四面体を設定することができる。さらに、Cast-Designer には
特別な技術がある。カスティング・パーツと金型の界面の同じ位置に接触節点を維持する。したがっ
て良好な熱変形を表わす。
(註:節点位置は同じで良質だが、界面結合(Connect)タイプと同品質ではない。)
図 12 混合メッシュ技術(金型に四面体、パーツに六面体)節点位置は同じ
非結合(Disconnect)タイプの事例
CAD データに対しファスト・メッシュを作成する。フル金型モデルを読み込んで、非結合
(Disconnect)メッシュを生成する。
カスティング部を先頭にして、グループを形成する。ここで、アセンブリ・ページに行く。カスティング部と
クーリング・チャネルを残して、他のオブジェクトを四面体要素とする。カスティング部を六面体とすること
は、温度分布解析と、充填凝固解析には適当である。
この結果フル金型セットのメッシュは下記のようになる。
Partmesh1  カスティング六面体
Partmesh2 クーリング・チャネル 六面体
Property1 スリーブ 四面体
Property2 可動型 四面体
Property3 固定型 四面体
要素品質のチェックと不良要素の修正、スキン抽出は Connect のケースと同じである。
図 13 節点マネジメント
図 14 ダブル節点削除
以下、金型外側サーフェス(可動、固定金型とスリーブ)からスキンを抽出、同じくクーリング・チャネ
ルからも抽出。
図 15 金型ボックスの品質チェック
このモデルは次の使用にベスト:
1, カスティング・パーツの充填シミュレーション金型の不均一温度分布を考慮する。
2, サイクリング・シミュレーション金型温度分布結合(Connect)が生成できなかった場合のセカ
ンド・チョイスである。
このモデルは次の使用にはよくない:
1, 金型とパーツ両方のストレス・シミュレーションには使えない。
サイクリング解析の一つの事例
この事例では、Cast-Designer CPI シミュレーションを 5 サイクルで行う。充填シミュレーションは最
終のサイクルでする。カスティング部とクーリング・チャネルは六面体、スリーブ、可動型、固定型は四
面体である。不良メッシュとは修正し、オブジェクトのメッシュの間にあるダブル節点は除去する必要が
ある。検出と修正、削除のツールが用意されている。オブジェクトとその界面は次の通り:
マスタ・パーツ:カスティング部 3D
ターゲット・パーツ:金型部 3D
界面の種類:非結合(Disconnect)
非結合界面のトレランス:デフォルト使用
熱の界面定義
各コンポーネント同士で接する界面の熱伝
達係数(HTC)を定義する。金型とカスティン
グの間の HTC はサイクリング・タイプを使う。境
界条件を HTC をクーリング・チャネルと金型に
設定する。HTC ウィザードから参考値を得るこ
とができる。金型と金型の間は標準でもよい。
Cast-Designer は HTC を温度に対する
曲線として定義することを推奨する(図 A1)。
通常、これがより正確な結果をもたらす。詳細
については界面熱伝達係数に関する各種資
料を参照して欲しい。
図 A1 温度に対する HTC
結果解析:温度分布
サイクリング解析の最大関心
結果は金型の温度分布である
(図 A2)。
サイクル・条件として、サイクル
回数、サイクル継続時間、型開
き時間、排出時間、スプレイ開
始と終了時間、型閉じ時間を
入力する。コントロール・パラメタ
図 A2 温度分布
として、ステップ数、最終プロセス
時間、採取温度を入力する(図 A3)。
計算結果は次の通り:
最初のカスティング・プロセスの金型温度分布(図 A4):
A, ~31.8 sec, 金型内部でパーツ冷却
B, ~41.5sec,
パーツは排出されている。スプレイの前。
3, ~56.8 sec, スプレイの後
4, 70 sec, 次のサイクルを開始
図 A4 最初のカスティング・プロセスの金型温度分布
5 番めのカスティング・サイクルの金型温度分布(図 A5):
A, ~311.5 sec, 金型内部でパーツ冷却
B, ~41.5sec,
パーツは排出されている。スプレイの前。
図 A3 サイクル
3, ~336.5 sec, スプレイの後
4, 350.0 sec, 次のサイクルを開始
図 A5 5 番めのカスティング・サイクルの金型温度分布
指定節点の温度対時間の曲線プロット
節点温度について詳細な解析をする。ParaView の選択インスペクタを使う。その選択機能を使
って、たとえば、クーリング・チャネルに近い節点を選択してプロットする(図 A6)。必要に応じ、たとえば、
カスティングのある部分に近い点を選択し、その点または複数の点の温度曲線をプロットする(図 A7)。
クーリング・チャネルに近い節点の温度は常に低下することをプロットが示す。
図 A6 クーリング・チャネルに近い節点を選択して、その点の温度曲線を時系列でプロットした例
カスティングの一点の温度曲線をプロットする例では各サイクルはかなり安定している。複数の点の
プロットでは 2 サイクル目以降が安定している(図 A7)。
図 A7 カスティング・パーツ上の一つまたは複数の節点を選択して温度曲線をプロット
充填シミュレーションのためにサイクリング温度をピックアップ
結果から温度をピックアップして、充填シミュレーションを行う。充填シミュレーションの「ピックアップ法」
と呼んでいる。標準的なサイクリング・シミュレーションの方法とも言える。
先ず、5 サイクルでシミュレーションを実行する。そこから温度を抽出して、新たに充填と凝固のシミ
ュレーションをする。この方法は、どの時点の温度を取るかを自由に選択でき、かつ、最終メッシュはも
とのメッシュと異なっていてもよい。そのため、弾力的で便利なときがある。
(手順)
新しいモデルを作成する。サイクル解析メッシュ・データを読み込む。パーツ・メッシュ・タイプは六面
体で、フロー・シミュレーションに適する。ピストン・トップの節点を選択して Inlet の節点データ・ファイル
を作成する。ここで CPI を設定する。HPDC を選択。テンプレートとして  充填と凝固。そして、充
填と凝固シミュレーションを通常通り定義する。
この事例のメッシュは Disconnect タイプである。手動でカスティング部と他のオブジェクト(可動・固
定ダイとスリーブ)の界面を「界面追加のインタフェース」を使って手動で挿入する。HTC は温度曲線
として定義できる。(図 B1)は以上の各ステップ)。
対象のオブジェクト・セット
新しいモデルを作成。
界面を手動で追加
ピストンの節点データ・ファイ
温度設定を設定
ルを作成
HTC は温度曲線可能
図 B1 Disconnect タイプの解析準備ステップ
以上の設定の結果を下記のチェックリスト(図 B2)で確認して、サイクリング解析を開始する。
図 B2 チェックリスト(カスティング部の Disconnect 関係に注目)
(新しいシミュレーション)
サイクリング・シミュレーション終了後、そこから金型温度を抽出し、新しいシミュレーションに使用す
る。手順の説明は省略。
サイクリング・シミュレーションの結果である熱ファイルを選択し、時間を選択すればその時点の温度
がピック・アップされて、温度分布が判る(図 B3)。通常はサイクルの終了時間を指定する。
図 B3 可動型の温度分布
画像を指定すると初期温度が範囲で示される。図のように、たとえば可動型は 39~171(図 B4)
が初期温度である。他の金型コンポーネントにもこの指定を実行すると、充填シミュレーションに採用
されるサイクリング温度が示される。このプロジェクトを保存して、新しいソルバ・デッキを生成する。これ
で、サイクリング温度を考慮した充填と凝固のシミュレーションができる。
図 B4 各コンポーネント(オブジェクト)の初期温度
以上
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