PRESS RELEASE 疑 存 島 —他者なき世界の地図作成法— ¦ 会期 ¦ 2014 年 3 月 8 日|土|- 4 月 6 日|日| ¦ 時間 ¦ 11:00 ∼ 19:00 (月曜休廊) ¦ 入場 ¦ 無料 ¦ 会場 ¦〒135-0042 東京都江東区木場 3-18-17 2F gallery COEXIST-TOKYO 1 gallery COEXIST-TOKYO では、2014 年 3 月の企画展として構想計画所(コウソウケイカクショ)による「疑存島—他者なき世 界の地図作成法—」を開催することとなりました。構想計画所は、2009 年より始動した、前野智彦が所長を務めるゆるやかな 活動体です。構成員は活動内容により異なり、今回の展示は大塩紗永・小林耕二郎・酒井一有・前野智彦・三田健志で構成さ れています。 「ゆるやかな活動体」とあるとおり、構想計画所は“イズム”や傾向のもとに集まった団体ではありません。彼 / 彼女らは、 これまでの活動履歴が示すように、複数人で作り出す単数の「もの」を美術のフィールドから提示することを基本フォーマッ トとしてきました。そしてその単数の「もの」の細部は、各々アーティストに委ねられています。私たちは日頃、整合性や一 貫性を見出すことで物事を理解しようとしますが、核が複数で形成された、いわば核が不在のこの空間=フォーマットでは、 視点が散漫になり、焦点を定めることの困難さを感じずにはいられません。 彼らがこれまでつくり出してきた単数の「もの」。それは時にその存在すら不明な人物であり、人造湖という場所であり、更 新という出来事であり、同時に美術作品でありました。それらはいずれも「いまここにあるもの」を越えようとして抱く信念 や欲望によって駆動する「現在」と「未来」の狭間を提示しています。それは「現実」と「虚構」の狭間と言い換えることも できるでしょう。 美学者の寺尾勇は、「虚構」を「不条理な意識の追跡」と言います。一本の線を引く時、完璧な線を描くことはできない。線 は不在が次の線を招くことによって生まれる。「線の美しさは、不在による空虚な虚構によって描き出され」る、と。(※1) 構想計画所が作り出す世界には、この「虚構」によって生まれる独自の美しさがあります。ある人物の存在を証明しようとす ればする程その存在は空虚なものとなり、むしろその不在を強調してしまうように「在ること」と「無いこと」は未決定のま ま永遠を漂うのです。 2 PRESS RELEASE 本展で彼らは、他者との繋がりを強いられている今日の状況のなかで、あえて他者と隔絶した人物、あるいは他者と隔絶した 世界を思い描くことを試みます。無人島という他者がいない世界を夢想する一人の人物と、彼の棲まう世界。そして、これら に応答した複数の人物によって生み出された複数の成果。会場には、構想計画所によって「再制作」されたこれらオリジナル 不在の成果物が、大型の構築物を中心として、空間を埋め尽くすかたちで「再構成」されます。 彼らは「再制作」というフォーマットで展開するこの美術展を通して、他者との繋がりが必然となったこの世界から、他者と 繋がることを通して立ち現れる「繋がりを前提にしないバラバラな世界」の生成プロセスを提示します。 海図上に記載されているものの、実在の確認されていない島のことを、海図用語では「疑存島」(※2)といい、その大部分は 人の想像力や勘違いの産物として生み出されたものと考えられています。タイトルの「疑存島—他者なき世界の地図作成法—」は、 他者なき世界という立証不可能な世界の地図を作成する行為と、私たちの棲まうこの世界に「疑存島」を書き加える手続きを 示しています。 本展では大型の構築物の他に、出品作に関連した絵画、写真、彫刻も併せて展示販売し、展覧会に合わせて制作した書籍『疑 礁—他者なき世界の地図作成法—』を出版いたします。さらに、会期中には哲学者や脳科学者をゲストに招いての関連企画を行 いますので、多くの方にご覧いただけますよう広報のご協力をお願い申し上げます。 (※1)寺尾勇 「美の論理:虚と実のあいだ」 創元社 1971 年 (※2)長谷川亮一 「地図から消えた島々」より 吉川弘文館 2011 年 ◆ゲストを招いてシンポジウムを開催します◆ ●2014.3/21 金曜 / 祝日 17:00 から 〈哲学ー無人島 = 超越論的経験論にとっての原初の光景〉ゲスト : 哲学者 國分功一郎 高崎経済大学 経済学部 准教授 ●2014.3/30 日曜日 17:00 から 〈脳科学ー主体的な脳ー〉ゲスト : 脳研究者 荒牧勇 中京大学 スポーツ科学部 スポーツ健康科学科 准教授 参加費 ¥500(1drink 付 ) 席数 :30 ※受付申し込みは、開始 30 分前より、先着順。満席の際は、立見になる場合がございます。 4 3 5 1./ 4.「Laboratory / drifter」(部分)2013 年 神奈川県立相模湖交流センター ギャラリー 撮影:神宮巨樹 2.「Sail ‒ on the contour line」2012 年 3.「One room / islanding」(部分)2012 年 女子美術大学美術館 撮影:神宮巨樹 出品作品(部分)2013 年 5.展示予定作品(部分)2013 年 PRESS RELEASE <活動履歴と概要> 2013 「Impact 8 - International Printmaking Conference」 (Duncan of Jordanstone College of Art & Design /スコットランド) 構成員:大塩紗永・小林耕二郎・酒井一有・前野智彦・三田健志 間接表現についての国際的なカンファレンス・展示に参加。匿名の冒険家を設定し、彼/彼女の旅の足跡をたどる形式 のブック作品を出品。テキスト・映像・写真・詩・ドローイング・彫刻作品からなる。 2013 「秘密の部屋」 (東京/小石川 ヘルシービル旧外国人労働者シェアハウス) 構成員:酒井一有・前野智彦・三田健志 旧外国人労働者が暮らしていた脱法シェアハウスで開催された展覧会に出品。経験しえぬものの象徴的なモチーフとし て知られる「死」を巡る思考を軸に、性交後の虚脱感覚(日本で言われるところの「賢者タイム」。フランス語で「微 かな死」とよばれる)をモチーフとして、少年的な性表現と現実味のない死を思わせる様々な素材・ガジェットを用い てインスタレーションを展開。展覧会初日にはポエトリーリーディングを行う。 2013 「水源地の芸術 Direct Access Method」(神奈川県立相模湖交流センター/神奈川) 構成員:加藤慶・小林耕二郎・酒井一有・神宮巨樹・庄司朝美・鷹野健・久村卓・tani×tanaka(田中智美・谷美桜里) ・ 前野智彦・三田健志 ゲスト:橋本公一 相模湖交流センター主催、構想計画所企画の展覧会。相模湖の畔に建つ文化施設でのギャラリーにて展覧会を開催。相 模湖にまつわるもの、ことを出発点としながら、どこでもない人造湖にまつわる物語を綴る。 シンポジウム(ラウンドテーブルトーク)を開催。 2012 「版の時間 - Age of Prints」 (女子美アートミュージアム/神奈川) 構成員:酒井一有・三田健志・前野智彦 女子美術大学主催の展覧会に出品。今日の「版」にまつわる諸相をとらえる目的で開催された展覧会に参加。架空の冒 険家を設定し、その住まいを再現した作品。映像・写真・テキスト等を含むインスタレーション。 転写や翻訳のアイデアをフックに「経験」について扱った。シンポジウムに前野智彦が登壇。 2012 「風 - 景 - 観 見逃した世界・ここにある世界」(アートラボはしもと/神奈川) 構成員:小林耕二郎・前野智彦 「棲まう」ことを巡る建築的、或いは彫刻的アプローチ。下部構造を小林が担当し、上部構造を前野が担当。 上部と下部が解離した構造を通じて、棲まい直すことの潜在性をインスタレーションのフォーマットで展開。 2010 「更新に憑く―可塑的な無人島―」(アーツ千代田 3331 AKIBATAMABI 21 /東京) 構成員:小林耕二郎・酒井一有・神宮巨樹・庄司朝美・鷹野健・久村卓・田中智美・谷美桜里・前野智彦・三田健志・ 村田峰紀多摩美術大学主催、構想計画所企画の展覧会。「更新」を巡る思考を軸とした映像・彫刻・写真・ドローイング・ インスタレーション等で構成。オープニングでは村田峰紀によるパフォーマンスを実施。 2010 シンポジウム「可塑的な無人島」(アーツ千代田 3331 AKIBATAMABI 21 /東京) ゲスト:國分功一郎・千葉雅也(司会 前野智彦) 展覧会「更新に憑く―可塑的な無人島―」の関連企画として開催。 フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの無人島を巡る論考を紹介するとともに、他者の効果を考察し、主体や自我をアプ リオリなものとしない眼差しが捉える世界を哲学する試み。 2009 「鼠の口笛と、猿の咳」 ( 相模湖所長アトリエ/神奈川 ) 構成員:三田健志・前野智彦 相模湖の畔に建つ前野智彦の旧アトリエにて展示。ささやかで(鼠の口笛)、気付かなければ危険すら感じない(猿の咳) 出来事。作者以外の鑑賞者が不在の展覧会。契約を解消すると取り壊しになる小さな平屋で、画像等を用いたインスタ レーションを展開。 ■この件に関するお問い合わせ■ gallery COEXIST-TOKYO 〒135-0042 東京都江東区木場 3-18-17 2F TEL 03-5809-9949 MAIL [email protected] URL http://www.coexist-tokyo.com 担当: 島津
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