3 締付けトルクの 検査 Inspecting Tightening Torque 40 東日トルクハンドブック Vol.8 3-1 増締めトルク法 増締めトルク法 3-2 42 新しい増締め法 (T点法) の提案 新しい増締め法 (T点法) の提案 43 技 術 資 料 締付けトルクの検査方法 締付けトルクの検査方法 締付けられているねじが、どの位のトルクで締付けられたか推定し、締付け Chapter 作業の検査を行います。 主な検査方法には、次の4種があります。 3 ■ 戻しトルク法 ■ 増締めトルク法 ■ マーク法 ■ T点法 (新しい増締め法) 締 付けトルクの検 査 表 3-1. 締付けトルクの検査方法 方式 測定方法 測定トルク =α 締付けトルク メリット・ デメリット 戻しトルク法 増締めトルク法 マーク法 T点法 締付けたボル トをトルクレ ンチで緩め、 ボルトが回り 出す時のトル ク値。 締付けたボル トを更にトル クレンチで締 付 け、ボ ル ト が再び回り出 した時のトル ク値。 締付けたボル トにマークを 付けてから一 度 緩 め、再 び マークの位置 まで締付けた 時のトルク値。 締付けたボル トを更にトル クレンチで締 付 け、ボ ル ト が再び回り出 した時のθ-T 波形から演算 で求めた締付 けられていた トルク値。 0.6 ∼ 0.9 ※(0.8) 0.9 ∼ 1.2 ※ (1.05) 0.9 ∼ 1.1 ※ (1.0) 0.9 ∼ 1.1 ※ (1.0) 比較的容易に 測定できる。 緩めたボルト をもう一度締 めなければな らない。 M4 以 下 で は よく使われる。 回り出すのが 明確にわかる 場 合 に、 正 確 に測定できる。 検査後そのま までよい。 手間がかかる。 検査後、同じ 締付け状態に できる。 ボルトが締付 けられている ワークが固定 されている場 合に正確に測 定 で き る。検 査後そのまま で よ い。個 人 差がない。 ※実験による概略値 図 3-1.締付けトルクと戻しトルクのバラツキ 締付けトルク Tm:測定トルク値 Tt :推定締付けトルク α :係数 戻しトルク Tm=α・Tt TECHNICAL DATA │技術資料 41 Chapter 3-1 締付けトルクの検査 増締めトルク法 ■増締めトルク法 増締めトルク法は既に締付けられているねじにト ① A点法 ルクレンチでトルクを加え、ねじが再び回りはじめ ねじが再び回りはじめた時のトルク。比較的容 る時のトルク値を増締めトルクとして測定するも 易に測定できる、また個人差があまりない。しか のであり、通常のねじにおいて しこの方法は静摩擦でのトルク値であるので、 締付けトルク( Tt)より高くなり、バラツキが大 ねじの静摩擦に打ち勝つトルク(A 点) きく、関連性も薄い。 ねじが連続して回りはじめるトルク(B 点) また静摩擦による極大値( A点)が存在しないね この測定での最大トルク(C 点) じもある。 (図3-3) があります。 ② B点法 図 3-2. 増締めの典型的なトルク変化 T 増締めトルクが一時的に下がった点を読み取る ため測定するには技能が必要であり、読み取り C点 A点 精度は低くなるが、この値は一番締付けトルク ( Tt)に近い値であるといえる。しかし明確な極 Tt 小トルクが存在しないねじもある。 (図3-3) B点 T:トルク θ:角度 ③ C点法 置き針などによって、最大値を読み取るために θ 測定が容易である。しかしねじが再び回りはじ これらの測定法は必要な精度によって使い分けら めたことを測定者が感知してどこで止めるかで れています。 測定値が大きく変化してしまい、測定者による 個人差は大きい。通常増締めトルクとは漠然とC 図 3-3 T 点法を指す。C点はA点を示すこともある。 T:トルク θ:角度 Tt θ 42 東日トルクハンドブック Vol.8 3-2 技 術 資 料 Chapter 締付けトルクの検査 新しい増締め法(T点法)の提案 Chapter ■新しい増締め法 (T点法) の提案 増締めトルクは、当初の頭部のみの回転からやがて 新しい増締め法(T点法)は、従来の増締め法(A、B、 ねじ部の回転になり、静摩擦から動摩擦へと移行 C点法)に比較して測定のバラツキは少なく、しかも その中心値は、ほぼ締付けトルクと一致します。A、 B、C点法のようにオフセットによる補正値を必要 この直線は基本的には締付け時のトルク角度線図 としません。緩みやかじりのない場合の各増締め法 の延長上にあります。 との締付けトルクのオフセットとバラツキを図3-5 に示します。 図3-4. 新しい増締め法(T点法) T 図 3-5. 増締めトルクの分布 Tt ≒ TT 締付けトルク 締付け工程 増締め検査工程 Tt T点法での増締めトルク (CTBでの増締めトルク) ボトム法での増締めトルク (B点法) ピーク法での 増締めトルク (A、C点法) TT θ 不安定 安定 θ 特長 誰でも締めたトルクを容易に測定できる 測定トルクに個人差が出ない 測定時間の短縮 データのバラツキが少ない TECHNICAL DATA │技術資料 43 締 付けトルクの検 査 し、フリクションホイップも収まって、安定した直 線になってきます。 (図3-4) 3
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