母親と赤ちゃんを共に見守る「光の庭」

母親と赤ちゃんを共に見守る
「光の庭」
東京マザーズクリニック(東京都世田谷区)
設計は建築家・伊東豊雄氏。
1970年代から活躍する世界的な建築家。
せんだいメディアテーク
(宮城)
や多摩美術大学図書館(東京)
を手掛けている
一
待合室。
自然光を生かした明るさと白を基調にした内装が印象的
右手階段は病棟へと続く。
左手壁には伊東氏の絵が掛かる
中庭。
出産時、
家族が待ったり、
家族が歓談したりできる
入院室
(特別室)
。
応接セットで家族もくつろげる
洗面所。
利用者の立場に立ったくつろげる空間。
アメニティーはオリジナル
入院室
(個室)
。
全室個室。
調度品の一点一点にもこだわりがある
目見たら忘れられないデザイン。東京・世
母親の体を管理することに主眼があった。だが、
むような暖かさを感じる。林氏をはじめ、スタッフ
層は全体の6割に及ぶ。だが、国内で対応できる
田谷の閑静な住宅街の一角で2012年1月
赤ちゃんが健康に生まれてくることも同様に大事だ。
が目指す医療のコンセプトを形にしたものだ。
医療機関は数%。要望はあっても、それに応えら
に開院した東京マザーズクリニック。無痛分娩と胎
先天的な異常や生まれながらの病気で救急車で
リラックスできる空間は好評を得ている。もちろ
れていないのが現状だ。潜在的なニーズはある。
児ドック
(出生前診断)
に特化した産科診療所だ。
運ばれたり、手術を要したりすることもある。
ん、医療の質が維持されてこその環境。これまで
「東京の場合、海外赴任などで無痛分娩を経験
「ベースとしてそもそもお産をする場が少ない。地
「生まれる前から赤ちゃんも患者だととらえていま
に訪れた妊産婦の75%は東京都内から。残りは
された方も多い。ただ、地方では
『聞いたことはあ
域医療への貢献を担い、多様化する出産方法の
す。お母さんと合わせて二人の健康管理をする。
神奈川県をはじめ東京圏外という割合。都内とい
るけど、周りに経験者がいない』
という人が少なくあ
一つとして無痛分娩へのニーズに応えることを目指
もし、病気があれば治療に当たり、必要ならばほ
っても範囲は広い。世田谷を中心に江東区にも及
りません。中には
『お産は痛いのが当然』
『 痛みを
しています。クリニックとして一つの分野に特化し、
かの医療機関を紹介する。出生前診断は今までに
んでいる。足の便だけで選んでいるわけではない。
味わってこそ母親になれる』
とおっしゃる年配の方
専門性と質を高め、満足していただける医療を提
ないユニークな妊婦管理の手段だと思います」
「無痛分娩や胎児ドックという総合的な医療内容
もおられる。普及はまだまだです」
供していきたい」
(林聡院長)
お産をする場とあって、設計に当たっては光の
を見て、遠くても来られた方が大半です」
マンパワー不足が続く周産期医療。
「やりたい医
従来の周産期医療は分娩を無事に終えること、
あふれる明るい雰囲気を重視した。照明も包み込
無痛分娩という言葉を知り、関心を持っている
療」
を実現する場はやがて2年目を迎える。
2013.1
2013.1
Art in Hospital