ブタの日本脳炎抗体保有状況 -2015年速報第9報-

ブタの日本脳炎抗体保有状況−2015年度速報第9報
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ブ
感染研年報
国際協力
(2015年9月11日現在)
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスに感染したヒトのうち数百人に一人が発症するとさ
れている重篤な脳炎である 1)。ヒトへの感染は、蚊(日本では主にコガタアカイ
エカ)が日本脳炎ウイルスに感染したブタを吸血し、その後ヒトを刺すことにより
起こる。
1960年代までは毎年夏から秋にかけて多数の日本脳炎患者が発生しており 2), 3)
、ブタの感染状況から日本脳炎ウイルスが蔓延している地域に多くの患者発生がみ
られた。Konnoらは当時調査したブタの半数以上が日本脳炎ウイルスに感染してい
ると、約2週間後からその地域に日本脳炎患者が発生してくると報告している 4)。
現在では、日本脳炎ワクチン接種の普及や生活環境の変化等により、ブタの感染状
況と患者発生は必ずしも一致しておらず、近年の日本脳炎患者報告数は毎年数名程
度である。しかし、ブタの抗体保有状況から日本脳炎ウイルスが蔓延あるいは活動
していると推測される地域では、ヒトへの感染の危険性が高くなっていると考えら
れる。
病原微生物検出情
報 (IASR)
感染症流行予測調
査 (NESVPD)
院内感染 (JANIS)
実地疫学専門家養
成コース (FETP-J)
刊行・マニュアル・
病原体検出マニュ
アル
抗体保有状況
(月別推移)
本速報は日本脳炎ウイルスの感染に対する注意を喚起するものである。また、それ
ぞれの居住地域における日本脳炎に関する情報にも注意し、日本脳炎ウイルスが蔓
延あるいは活動していると推測される地域においては、日本脳炎の予防接種を受け
ていない者、とくに乳幼児や高齢者は蚊に刺されないようにするなどの注意が必要
である。
なお、本年度の日本脳炎定期予防接種は、第1期(初回2回、追加1回)については
標準的な接種年齢である3~4歳、第2期(1回)については標準的な接種年齢であ
る9歳と特例対象者(1995~2006年度生まれ)のうち年度内に18歳になる者(19
97年度生まれ)に積極的勧奨が行われているが(※自治体によって積極的勧奨を
行う特例対象者の年齢が異なる場合あり)、それ以外に日本脳炎ウイルスの活動が
活発な地域に居住し、接種回数が不十分な者は日本脳炎ワクチンの接種を受けるこ
とが望まれる。
HI抗体
2-ME
感受性
抗体
都道府県
採血
月日
HI抗体
陽性率
※1
◎
6/15
◎
6/15
沖縄県
8/21
0%
(0/20)
◎
8/17
◎
8/17
鹿児島県
9/1
◎
8/3
◎
8/24
宮崎県
◎
7/13
◎
8/28
大分県
2-ME感受性
抗体陽性率
※2
コメント
50%
(10/20)
40%
(4/10)
HI抗体陽性例はすべて抗体価1:40
以上であり、そのうち4頭から2-M
E感受性抗体が検出された。
8/24
36%
(4/11)
25%
(1/4)
HI抗体陽性例はすべて抗体価1:40
以上であり、そのうち1頭から2-M
E感受性抗体が検出された。
9/7
90%
(9/10)
38%
(3/8)
HI抗体陽性例のうち8頭は抗体価1
:40以上であり、そのうち3頭から
2-ME感受性抗体が検出された。
基準
JJID 感染研発行の
国際学術雑誌
抗体保有状況
(地図情報)
感染症流行予測調査事業では、全国各地のブタ血清中の日本脳炎ウイルスに対する
抗体を赤血球凝集抑制法(HI法)により測定し、日本脳炎ウイルスの蔓延状況およ
び活動状況を調査している。前年の秋以降に生まれたブタが日本脳炎ウイルスに対
する抗体を保有し、さらに2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体(IgM抗
体)を保有している場合、そのブタは最近日本脳炎ウイルスに感染したと考えられ
る。下表は本年度の調査期間中におけるブタの抗体保有状況について都道府県別に
示しており、日本脳炎ウイルスの最近の感染が認められた地域を青色、それに加え
て調査したブタの50%以上に抗体保有が認められた地域を黄色、80%以上に抗体
保有が認められた地域を赤色で示している。
サーベイランス
感染症発生動向調
査週報 (IDWR)
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◎
8/10
◎
8/10
熊本県
9/7
60%
(9/15)
22%
(2/9)
HI抗体陽性例はすべて抗体価1:40
以上であり、そのうち2頭から2-M
E感受性抗体が検出された。
9/2採血分(15頭中8頭陽性)の調
査において、HI抗体価1:40以上の
6頭のうち5頭から2-ME感受性抗
http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/2075-disease-based/na/je/idsc/yosoku/sokuhou/5919-je-yosoku-rapid2015-9.html[2015/09/12 22:10:06]
ブタの日本脳炎抗体保有状況−2015年度速報第9報
バイオリスク・ガイ
ダンス
生物学的製剤基準
感染研・学友会出
版書籍
体が検出された。
◎
7/7
◎
8/4
長崎県
9/1
100%
(10/10)
0%
(0/9)
HI抗体陽性例のうち9頭は抗体価1
:40以上であったが、2-ME感受性
抗体は検出されなかった。
◎
7/22
◎
7/22
佐賀県
9/2
100%
(10/10)
25%
(2/8)
HI抗体陽性例のうち8頭は抗体価1
:40以上であり、そのうち2頭から
2-ME感受性抗体が検出された。
◎
8/10
◎
8/10
福岡県
8/24
100%
(10/10)
0%
(0/10)
HI抗体陽性例はすべて抗体価1:40
以上であったが、2-ME感受性抗体
は検出されなかった。
◎
6/23
◎
6/23
高知県
9/1
100%
(10/10)
0%
(0/10)
HI抗体陽性例はすべて抗体価1:40
以上であったが、2-ME感受性抗体
は検出されなかった。
◎
7/7
愛媛県
8/24
0%
(0/10)
◎
7/6
香川県
8/17
100%
(10/10)
0%
(0/2)
HI抗体陽性例のうち2頭は抗体価1
:40以上であったが、2-ME感受性
抗体は検出されなかった。
◎
7/30
徳島県
9/3
0%
(0/10)
広島県
8/5
0%
(0/10)
島根県
8/21
8/28
0%
(0/20)
◎
7/1
◎
7/6
◎
7/24
◎
7/27
◎
7/16
◎
7/16
◎
7/21
◎
8/20
◎
8/20
鳥取県
7/22
50%
(5/10)
兵庫県
8/21
0%
(0/10)
滋賀県
8/24
8/31
0%
(0/20)
三重県
9/7
100%
(10/10)
愛知県
9/7
0%
(0/10)
静岡県
8/17
90%
(9/10)
山梨県
8/17
0%
(0/10)
石川県
9/1
0%
(0/10)
富山県
8/20
8/25
0%
(0/25)
新潟県
9/7
0%
(0/10)
神奈川県
9/1
0%
(0/20)
千葉県
9/3
0%
(0/10)
群馬県
8/7
0%
(0/10)
栃木県
8/17
0%
(0/14)
8/27採血分(10頭中2頭陽性)の
調査において、HI抗体陽性例はす
べて抗体価1:40未満であった。
HI抗体陽性例はすべて抗体価1:40
未満であった。
7/1採血分(10頭中10頭陽性)お
よび7/15採血分(10頭中8頭陽性
)の調査において、HI抗体陽性例
はすべて抗体価1:40未満であった
。
10%
(1/10)
HI抗体陽性例はすべて抗体価1:40
以上であり、そのうち1頭から2-M
E感受性抗体が検出された。
83%
(5/6)
HI抗体陽性例のうち6頭は抗体価1
:40以上であり、そのうち5頭から
2-ME感受性抗体が検出された。
8/6採血分(10頭中3頭陽性)の調
査において、HI抗体価1:40以上の
3頭のうち2頭から2-ME感受性抗
体が検出された。
8/20採血分(10頭中3頭陽性)お
よび8/27採血分(10頭中2頭陽性
)の調査において、HI抗体価1:40
以上の4頭から2-ME感受性抗体が
検出された。
http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/2075-disease-based/na/je/idsc/yosoku/sokuhou/5919-je-yosoku-rapid2015-9.html[2015/09/12 22:10:06]
ブタの日本脳炎抗体保有状況−2015年度速報第9報
◎
8/24
◎
8/24
茨城県
8/24
10%
(1/10)
◎
8/4
◎
8/4
福島県
9/1
0%
(0/10)
秋田県
8/6
0%
(0/10)
宮城県
8/19
0%
(0/20)
青森県
7/27
0%
(0/20)
北海道
8/5
8/20
8/25
0%
(0/25)
100%
(1/1)
HI抗体陽性例は抗体価1:40以上で
あり、2-ME感受性抗体も検出され
た。
調査したブタのHI抗体陽性率が80%を超えた地域
調査したブタのHI抗体陽性率が50%を超え,かつ2-ME感受性抗体が検出された地域
調査したブタから2-ME感受性抗体が検出された地域
◎
調査したブタからHI抗体または2-ME感受性抗体が検出されたことを示し、日付は今シーズ
ンで初めて検出された採血月日を示す
※1 HI抗体は抗体価1:10以上を陽性と判定した。
※2 2-ME感受性抗体は抗体価1:40以上(北海道・東北地方は1:10以上)の検体について検査を行い
,2-ME処理を行った血清の抗体価が未処理の血清と比較して,3管(8倍)以上低かった場合を陽性
,2管(4倍)低かった場合を疑陽性,不変または1管(2倍)低かった場合を陰性と判定した。なお,
2-ME未処理の抗体価が1:40(北海道・東北地方は1:10あるいは1:20も含む)で,2-ME処理後に1:
10未満となった場合も陽性と判定した。
1. Southam, C. M., Serological studies of encephalitis in Japan. II. Inapparent infection by
Japanese B encephalitis virus. Journal of Infectious diseases. 1956. 99: 163-169.
2. 松永泰子,矢部貞雄,谷口清州,中山幹男,倉根一郎. 日本における近年の日本脳炎患者発生状況
-厚生省伝染病流行予測調査および日本脳炎確認患者個人票(1982~1996)に基づく解析-. 感
染症学雑誌. 1999. 73: 97-103.
3. 新井 智,多屋馨子,岡部信彦,高崎智彦,倉根一郎. わが国における日本脳炎の疫学と今後の対
策について. 臨床とウイルス. 2004. 32(1): 13-22.
4. Konno, J., Endo, K., Agatsuma, H. and Ishida, Nakao. Cyclic outbreaks of Japanese enc
ephalitis among pigs and humans. American Journal of epidemiology. 1966. 84: 292-30
0.
国立感染症研究所 感染症疫学センター/ウイルス第一部
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http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/2075-disease-based/na/je/idsc/yosoku/sokuhou/5919-je-yosoku-rapid2015-9.html[2015/09/12 22:10:06]