4 私の大予言 - ミュージカル研究所

平成21年度卒業ミュージカル「私の大予言」
キャスト
ともみ
さおり
先生
神様1・2・3
お父さん
お母さん
ガイド
友達
1幕
1場 A 組
○大仏殿前
修学旅行に来ている。子供たちは大仏殿の前で迷子になっている。先生は、舞台 下で、子供たちを探している。
先生「さあみんな、あれ? みんなどこいっちゃったのかしら。ちゃんとついてくるようにって言ってたのに、もう本当
に困っちゃうわ」
客席から、ロープでつながった子供たちが文句を言いながら舞台に向かって歩い て来る。
1「まいごになっちゃったよ」
2「先生どこかしら?」
3「班長しっかりしろよ」
4「それにしてもすごい人ね」
5「あれじゃない、大仏殿」
6「あ、先生だ!」
先生「こっちこっち、何やってたの」
7「だって、先生足、早いんだもの」
先生「なんか先行き心配になってきたわ」
8「だいじょうぶだって。僕たちを信じてよ」
9「一泊二日にかける青春。それが僕らの」
全員「修学旅行」
歌「僕らの旅」
A組
僕らの旅は、今始まったばかり 絵葉書のような町で
見知らぬ人に声かけながら 新しい風を歩く
ひとりで部屋にいるよりも 扉を開いて飛び出そう
そこには僕らのまだ見たこともない世界が広がる
Have a nice trip ! すてきな旅を Have a nice trip ! 未来へ Let’s go !
B組
僕らの旅は 今始まったばかり 時間の凍った町で
だれもがみんな夢を求めて 高い空をあおぐ
遠くを見つめているよりも 翼を広げて飛び立とう
そこには僕らのまだ見たこともない世界が呼んでる
Have a nice trip ! すてきな旅を Have a nice trip ! 未来へ Ready go !
Have a nice trip ! すてきな旅を Have a nice trip ! 未来へ Let’s go !
ガイド「こんにちわ」
全員「こんにちわ」
ガイド「今日、みなさんのお世話をさせていただく、奈良観光教会の○○です。」
全員「よろしくお願いします」
ガイド「それではこちらへどうぞ、中は少し暗いですから、足元にお気を付けください」
2場A組
○大仏殿の中
全員舞台の上に上がる。SE1大仏
ガイド「こちらが、有名な東大寺の大仏様です」
全員口々に歓声をあげる。
ガイド「高さ14.9M。重さ454トン。お顔の長さだけでも3.2Mございます」
10「でっかい顔だなあ。おまえの顔をでっかいけど、くらべものにならないぜ」
11「何を! おまえだって。鼻の穴はまるで大仏様でございます」
12「こいつ、いわしておけば、すきかってなこといいやがって・・・」
先生「やめなさい。静かにしなさい」
1
ガイド「この大仏様は、宇宙全体を表しておられます」
13「宇宙か、宇宙にしては小さいわね」
14「それはちょっと違う。小さなチリの中にも、とても大きな宇宙がある。ぼくたちの体の中にも巨大な宇宙が入って
いる。そんな宇宙を表しているんだ」
15「○○君、さすが!お寺の子供ね」
14「人間は、無限の宇宙を持っていて、そのひとつひとつの宇宙は見えない糸でつながっているんだ」
16「こんな風に?」
つながっているロープを持つ。
17「先生もうやめてくれよ。歩きにくくてしかたないよ」
18「幼稚園じゃあるまいし」
先生「そうでもしないと迷子になるでしょう」
19「先生、ロープが引っ掛かって動けない」
全員、わざとロープに絡っている。
20「やめろ、ひっぱるな。首がしまる」
先生「わかった。わかった。みんなを信じましょう」
全員、ロープをほどいてはしゃぎ回る。
先生「ストップ! それがいけないっていうのよ。忘れないで、みんなは先生の見えない糸でつながっているということ
を」
全員「はーい」
ガイド「それでは、つぎは奈良公園の方にまいります。こちらへどうぞ」
全員上手に移動する。ともみは万華鏡をのぞいている。
ともみ「人間は、無限の宇宙をもっていて、そのひとつひとつは、見えない糸でつながっている」
さおり「ともみ、それどうしたの?」
ともみ「そこのお土産屋さんでかったのよ」
ともみはさおりに万華鏡を渡す。さおりは万華鏡をのぞきながら、
さおり「まさに無限の宇宙ね」
先生「なかよし2人組さん。急ぎなさい。みんなで記念写真撮るわよ」
ともみ・さおり「いきます」
先生、ともみ、さおりは上手に移動する。
SE2前奏曲、鹿に煎餅をやっているような様子。
3場B組
○旅館(夜)
下手に女子、上手に男子が寝ている。
21「私、トイレに行きたいんだけど、一緒に行ってくれる?」
22「私も行こうと思ってたところよ」
つぎつぎに「私も」と女子全員トイレ(下手)に行く
男子はお互いに起こしあって、女子の部屋の様子に耳をそばだてる。
23「やけに静かだな」
24「女子はいないんじゃないのか」
25「真っ暗で何も見えない」
26「見えないものを見る方法? 何かいい手はないか」
27「見えないものを見るためには何かをぶつけてみればいいんだ。ぶつけた 方向から反応があればそこには何かがあ
る」
28「なるほど、それで何をぶつける?」
29「あるじゃないか。手ごろないいものが」
29はマクラを手に取る。
全員「マクラ」
音楽マクラ投げ
30「修学旅行といえば」
31「見学」
32「記念写真」
33「お土産」
30「違う違う、これだ」
歌「マクラ投げ」
旅行の楽しみはいろいろあるけれどなんたって一番はマクラ投げ
しーんと静かな真夜中に 楽しいひとときをむかえよう
旅行の楽しみはいろいろあるけれどなんたって一番はマクラ投げ
たくさん見て歩いて おみやげいっぱい買って
旅館についたらすぐ「早く寝なさい」
こんなに素敵な夜なのに 静かに寝てなんていられない
旅行の楽しみはいろいろあるけれどなんたって一番はマクラ投げ
34「投げろ!」
2
男子は女子の部屋に向けてマクラを投げる。
35「何も聞こえない」
36「あまりに静かだ」
37「不気味だな」
38「しまった。こちらのマクラのなくなるのを確認して、いっきに反撃する作戦かもしれない」
39「急いで女子の反撃に備えろ」
40「布団で壁を作ってはどうでしょう。布団を3つに折りたたんで、それを重ねればいいと思います」
41「それは名案だ。すぐ実行にうつそう」
42「それは無理です」
41「なぜだ」
42「このふとんの長さが2M。それを3つに折りたたむ。つまり2M÷3=0.66666666666・・・・」
41「しっかりしろ」
42「3つに折りたためません」
43「難しく考えるな。3つに折りたためばいいんだろ。3つに」
43は簡単に3つに折る。
43「ほら」
42「2が3で割り切れた」
44「不可能を可能にする男。さすが算数のテスト平均30点だ」
43「そんなにほめられると照れるな」
45「おい、急いで壁を作ろうぜ」
男子は布団の壁を作っている。女子はトイレから帰ってくる。
46「何これ?」
47「ここにもマクラ」
48「ここにも」
49「男子の仕業じゃない」
50「投げ返してやりましょうか」
51「私にいい考えがあるわ」
女子は相談して、マクラを持って男子の部屋の後に回りこむ。
52「それ!」
女子は男子にマクラをぶつけて自分の部屋に帰る。
音楽マクラ投げ2
歌「マクラ投げ2」
旅行の楽しみはいろいろあるけれどなんたって一番はマクラ投げ
しーんと静かな真夜中に 楽しいひとときをむかえよう
旅行の楽しみはいろいろあるけれどなんたって一番はマクラ投げ
マクラを投げ合う
旅行の楽しみはいろいろあるけれどなんたって一番はマクラ投げ
53「先生よ!」
全員タヌキ寝入りをする。先生は上手に入る。
54「よし、これからが本番だ。女子め、今に見てろ」
55「ひとあわふかせてやろうじゃないか」
56「男同士が手と手をつなぎ」
57「女子のやろうをぶっとばせ」
全員「お!」
58「女がなんだ」
全員「女がなんだ」
59「女はおとなしく寝てろ」
全員「女はおとなしく寝てろ」
その間に先生は男子の後に立っている。それに57が気付く。
60「ちょっとちょっと」
61「なんだよ」
62「うしろうしろ」
63「うしろ? うしろがどうかしたか」
全員後をふりむき先生に気付く。ゆっくりタヌキ寝入りをする。
先生「気をつけ!」
全員マクラを持って立ち上がり、舞台前に出る。幕を閉める。
先生「番号」
全員「123456・・・」
64「先生、全員集合しました」
先生「手に持っているものは?」
65「トマホーク」
66「アパッチヘリコプター」
67「F15」
68「ステルス戦闘機」
3
69「パトリオット」
70「いやマクラです」
先生「子供が簡単に戦争の武器の名前を遊びに使っていいと思ってるの」
71「子供? 先生、今、戦争やっているのは大人だよ。ぼくらは遊びだけど、大人は本当に人を殺しているんだ」
72「どっちが正しいかなんて分からないんだから」
73「強いほうが英雄、弱い方が悪者にされてしまうんだ」
先生「むずかしい問題ね。でもこれだけはいえると思うの。世界中がみんなそんな考えを持っているとすれば」
74「人類は滅亡する」
75「ナストラダムスの大予言」
全員「ナストラダムスの大予言。2027年2月、空から恐怖の大王が降りてきて、地獄の大王を復活させる。そして火
星は地球を支配し、人類は滅亡する」
3回繰り返す。
ともみ「やめて!」
4場A組
○教室
先生「将来の夢の作文書いてきましたか」
女子「ハーイ」
先生「それでは発表してもらいましょうか」
女子「はい」
音楽私の夢
女子前に出てくる。
歌「私の夢」
私の夢はボールの中のホイップクリームみたいに甘く流れていくのよ
私の夢はかわいいお花屋さん ピンク色のエプロンをつけて
白赤黄色緑に囲まれて おいしい水をさして回るの
今日はバラがきれいですよ お誕生日の贈り物ですか?
なんてお話して
私の夢はミュージカルのスター スポットライト浴びて歌うの
私の夢はファッションデザイナー パリミラノトウキョウニューヨーク
カーテンコールが待っている 町は私のプレタポルテ なんて素敵でしょう
全員拍手。
先生「男子は宿題してきた人いないの? ☆☆君は」
76「はい。ぼくの夢。ぼくは将来科学者になりたいと思っています。科学者になって環境汚染やエネルギーの問題を解
決して・・・・」
先生「どうしたの?」
77「夢はあるんだけど、時々不安になるんです。ぼくが研究をはじめるにはあと10年はかかる。あと10年でこの地
球は取り返しのつかないところまでいっちゃうんじゃないかって」
78「ナストラダムスの大予言のこともあるしね」
79「あんなのうそだよ どうして未来のことがわかるんだ」
80「未来にいって見てきたって本に書いてた」
81「未来というのはこれから起こることだろう。行けるはずないじゃないか」
82「でもこれまでだって、いっぱい当たってるんだよ」
83「こじつけだよ。あんな予言どうにでも言えるよ」
84「でももし何時何分何秒に何が起こるって決まっているとしたら?」
85「ふつうの人には見えないなのかもしれないけど、特別な人には見えるのかもしれない」
86「未来は決まっているって言うの?」
87「決まってないとも言えないんじゃないの」
88「私は決まっていないと思う」
89「決まってないんだったら、どうしてうらないなんかするのよ。あなただって、修学旅行の時、おみくじひいていた
じゃないの」
88「あれは遊びよ」
SEチャイム
先生「今の話し合い。すばらしかったわ。みんな自分の意見をしっかり言えたわね。来週この続きをやりましょう」
89「起立 礼」
90「今週のミミの世話係だれ?」
ともみ「私」
91「もうエサがないから買っといて」
ともみ「わかった」
92「さっきの続きやろうぜ。来週なんて遅すぎる」
93「何やるんだ」
92「大予言大会」
全員「大予言大会?」
4
94「なにそれ」
92「あしたの朝、その日に起こることを予言するんだ」
95「だれが」
92「未来が決まっていると思っている人。それぞれが信じている占いで予言するんだ」
96「それで?」
92「もし半分以上当たらなかったら、未来は決まっていないというわけだ」
96「当たればどうする」
92「逆立ちして学校一周してやるよ」
97「そこ言葉忘れるなよ」
92「当たらなかったら同じことをしてもらうからな」
97「よし分かった。明日のおまえの困った顔が楽しみだな」
92「それはこっちのせりふだ」
ともみ「ミミのエサ、どれを買えばいいか分かるかしら?」
98「この袋を持っていって同じものを買ってくればいいよ」
ともみ「やぶれちゃんて、品物の名前が分からないわ」
98「ほら、ここにバーコードがついてるだろう。このバーコードでわかるんだ」
ともみ「これね」
5場B組のともみとさおり
○ともみの家
上手がともみの家になっている。ともみの家では父が本(易経)を読んでいる。
ともみ「おとうさん、何読んでるの?」
父「これか? これは易経といって中国の古い本だ」
ともみ「バーコードみたいなものがたくさん書いてある」
ともみはミミのエサのバーコードと見比べている。
父「バーコードか、確かにバーコードとも本数が同じだな」
ともみ「そのバーコードみたいなものは何?」
父「未来を表している」
ともみ「未来? 未来のことが書いてあるの」
父「ああ、興味があるんだったら読んでみろ」
父は本をともみに渡して、上手に消える。
ともみ「未来が書いてある本」
○さおりの家
さおりの母が編み物をしている。
さおり「おかあさん、うらないとか予言信じる?」
母「いきなり変なこと聞くわね。予言ね。どっちかっていうと信じる方だったわ」
さおり「じゃあ、未来は決まっていると思う?」
母「でもね。あなたが生まれる前に、よく当たるって言う占い師にみてもらったの。そうすると男の子が生まれるってい
うもんだから、男の子の名前ばかり考えてたの。だからあなたが生まれて大変だったのよ。あれからうらないをあんまり
信じなくなったわね」
さおり「あんまり? どのくらい」
母「そうね。天気予報ぐらいかな」
さおり「未来は決まってないのね」
○ともみの家
易経をもったともみが立っている。
ともみ「未来は決まっている。しかもあした大変なことが起こる」
6場B組
○運命決定所
さおりの夢の中。運命決定所
神1「おじょうさん。どうしたんじゃ」
さおり「おじさんここはどこ?」
神1「運命決定所じゃよ」
さおり「運命決定所?」
神1「人の運命を決めるところじゃ。人が生まれる前にその人の運命を決定しておくんじゃよ。ほらあそこで今日の当番
の神様があした生まれる子の運命を決めておられるわ」
神2・3が運命希望調査票を持って話をしている。
神2「えーと今度生まれてくるのは・・・・ 山川啓介・規子夫妻の長女。」
神3「親の願い。やさしい子になってほしいか」
神2「今日準備できている運命はこの3つしかないな」
神3「なになに、1 大学を卒業し、地元企業に就職。3年間勤務。会社の同僚と結婚。ふたりの子供に恵まれ、85歳
で死ぬ」
神2「2 一流大学卒業後、アメリカ留学、帰国途中に拾った宝くじが大当たり。10億円を手にする。そのお金をもと
に起こした会社はどんどん成長して大企業に。アメリカでの研究が認められ、ノーベル賞受賞。76歳で死ぬ」
5
神3「3 大学受験に失敗。ショックでアルコール中毒になる。5年間の入院後結婚。競馬に熱中し全財産をなくす。な
けなしの貯金を株に注ぎ込んだが、株は暴落。会社倒産。アルコール中毒再発、病気を苦に一家・・・」
神2「やめろ。これ以上聞きたくない。あまりにひどい人生だね」
神3「人間の人生ってむなしいね」
神2「でもおれたちはちゃんと決めてんだから、しかたないよ」
神3「それじゃやるか」
神2「あまり気は進まないけど」
神2・3「どれにしようなかな天の神様のいうとおり、てっ ぽううってどんどんどん。もひとつおまけにどんどんど
ん。」
1の箱になる。
神2「あぶなかった。もう少しで3になるところだった」
神3「それじゃいくか。今日は割りといい運命ばかりだったな」
神2「そうだな。それじゃお祝いに一杯きゅっとやるか」
神3「おっ、いいね。やっぱりあつかんとおでんに限るね。おでんは厚揚げがいいな」
神2「おれはダイコンだ」
神2・3は上手に入る。
神1「あそこを見てみなさい。運命の糸にあやつられている子供たちじゃ。ああやって、あやつり人形に自分の姿をみて
いるんじゃよ。おまえさんだって、自分で動いているように思っているかもしれんが、見えない糸でうごかされている
んじゃよ」
さおり「私は自分で動いてるもん」
神1「だれでもそう思っているだけなんじゃ。事実おまえさんがここに来ることもすべて決まっていたことなんじゃ。さ
おりさん」
さおり「どうして私の名前を知ってるの? ね、どうして」
ともみが仮面をかぶって歌っている。
歌「マリオネット」
マリオネットぼくは 運命の糸にあやつられるピエロ
マリオネットぼくは 見えないネットの中で踊る
鳥のように歌い 風のように踊り 花のように笑い 雨のように泣く
それもみんな 決められたゲームの中の出来事
ぼくは運命の川に流されていく小舟
マリオネットぼくは 見えないレールの上を歩く
子供たちはマリオネットになっている。
マリオネットぼくは マリオネットぼくは マリオネット
さおり「あなたともみでしょう」
さおりはともみの仮面をはぎ取る。
7場A組
○教室
タロット占いをしている。
99「ようし集まれ。約束通り大予言大会を始めるぞ」
100「おう、やってやろうじゃないか」
101「どうやるの?」
99「予言は身近な問題ひとつにしぼる」
102「みんな同じことを占いのね」
103「どうせくだらないことだろ」
99「くだらない。それどころかおれたちにとってはたいへん重要なことだ」
104「もったいぶらないで早く言ってよ」
99「それでは発表しよう。それはうちの先生が結婚するかどうかだ」
全員「結婚!」
105「そんなことどうして分かるんだ」
99「実はな、昨日先生がお見合いをしてたんだよ」
全員「また?」
99「みんなも知っての通り、今月だけでも4回、週1回のペースでお見合いを続けてるつまり、かなり焦っているとい
うことだ」
106「だけどすぐには分からないんじゃない? 昨日お見合いしてすぐ結婚するかどうかなんて」
99「それが分かるんだよ」
106「なるほど、そうか!」
107「なんで分かるの?」
106「よく思い出してください。先生のお見合いのあった次の日のことを。何かあるでしょう、いつも」
全員「抜き打ちテスト!」
106「抜き打ちテストがあれば、お見合いはうまくいってない。もしなければ」
108「先生もいよいよ結婚か」
6
109「ということは、抜き打ちテストして、お見合いの失敗のくやしさを私たちにぶつけてるわけ?」
99「まあ、そういうことだ。さあ予言してもらおう。未来が決まっているという人はこちらへどうぞ」
歌「ぼくの占い」
ぼくの占いはよく当たるって評判 コインの裏表ですべてが分かる
こんな小さなコインでも、人生の裏表教えてくれる
ぼくの占いはよく当たるって評判 コインの裏表ですべてが分かる
110「裏が出れば、テストなし。表がでればテストあり。勝負! 裏」
111「テストなしね」
99「それでは次の人」
私の占いはよく当たるって評判 カードの色と数字ですべてが分かる
こんな薄い紙切れでも 人間の運命を教えてくれる
私の占いはよく当たるって評判 カードの色と数字ですべてが分かる
112「赤がでれば、テストなし、黒が出ればテストあり。どれでもひいて」
113「赤 テストなし」
114「先生は結婚だ」
99「それでは次の人」
私の占いはよく当たるって評判 空の星の動きですべてが分かる
生まれた月の星座が その人の将来を教えてくれる
私の占いはよく当たるって評判 空の星の動きですべてが分かる
115「先生は乙女座よ」
116「乙女座ね。おおーこれは。この星のもとに生まれたものに幸せが近付いておる」
117「またテストなし」
118「先生は結婚」
119「3人とも同じ結果というのが恐いわ」
120「未来は決まっている」
121「まだ分からないわ」
ぼくの占いはよく当たるって評判 コインの裏表ですべてが分かる
122「花占いは?」
123「テストなし」
124「こっくりさんは?」
125「同じくテストなし」
126「タロットカードでもテストなしよ」
127「おれは手相が得意なんだが、先生の手相がないんじゃなあ」
128「図工の時間に作った先生の手形があるわよ」
手形を見ながら
127「結婚運は小指の下、結婚線で調べる。先生の場合は、お! これは」
全員「何?」
127「ゴミがついてた」
全員崩れる。
127「結婚線が太陽丘までのびているということは、熱烈なプロポーズで結婚を申し込まれる」
全員「うおー」
129「抜き打ちテストなしね」
130「次、ともみ」
ともみ「ミミが死ぬ」
13 1「抜き打ちテストがあるかないかだよ」
ともみ「あすの夜明けまでにミミが死ぬ」
さおり「ともみなにいってんの。だいじょうぶ?」
132「ともみ、おまえ何で占ったんだ」
ともみ「バーコード占い」
133「あんまり聞いたことないわね」
ともみ「昨日当番でミミのエサを買いに行ったの。それで買ってきたのがこれ。ここにバーコードがあるでしょう。この
線を易経という未来のことが書いてある本で調べると、山が崩れていく、しのびる危険。つまりこの不吉なエサを食べ
たものは死ぬ」
134「食べなきゃいいじゃない」
さおり「私、今日の朝、食べさせた。でも心配しないで、そんなバーコード占いなんか当たるはずないもの。こんなばか
らしい大予言大会なんてもうおしまいよ。未来は決まっていない。決まってないわ」
135「でももしともみの予言が当たったら?」
136「やめてよ。そんなこというの」
7
さおり「じゃあこうしましょう。私がこのエサを食べてみる。ミミと私が死ねば、この予言は当たったことになる。でも
平気よ。未来は決まってないんだから。予言なんてあたるはずないわともみ、かして」
ともみ「だめよ、食べさせない」
さおり「ともみ、そんなばかみたいな予言をするあなたは嫌い。たった今から絶交よ」
さおりは上手に消える。
8場A組ともみとさおり
○さおりの家
下手にさおりの家。
さおり「万華鏡をこうやってちょっと回すと、中は全然違う世界に変わってしまう。こんな風にちょっとしたことで、未
来は大きく変わってしまうのね」
母「何が見えるの」
さおり「きれいな模様」
母「回してみれば」
さおり「また別のきれいな世界がつぎつぎに見える」
母「いつもきれい?」
さおり「時々へんな模様になる」
母「そんな時どうするの?」
さおり「また回してみる」
母「きれいな世界が見えたらその次にどうするの?」
さおり「ずっとこのままでいたいと思うけど、また回してみる」
母「次に見えるのが、どんな世界でも?」
さおり「どんな世界でも」
○ともみの家
父「ともみ、易経おもしろかったか?」
ともみ「おもしろくない」
父「どうして」
ともみ「もう変えられないことだから。どんなすてきな未来でも、決まっているのはおもしろくない」
父「易経は、そんな本じゃないよ」
ともみ「えっ」
父「易経は変えることのできない未来を教えてくれるものじゃない。自分の未来を見付けるためのヒントを与えてくれる
本だ。もっとよく読んでみろ」
ともみ「山がくずれ、しのびよる危険。やがて山はなだらかな平地となり、平和がおとずれる」
○ともみとさおりの家
さおり「ともみ!」
ともみ「さおり!」
さおり「世界を回してみる。次に見える世界がどんな世界でも」
ともみ「見えないものを見るために」
歌「赤い糸」
言葉のしずくが今、ふたりに落ちて 何度も結んだ目を赤くにじませた
何も見えない暗くさみしいそんな未来でも 私の道とあなたの道がつながらなくても
あなたの世界へ続くひとすじの赤い糸で
真っ白な雪道を灯す赤いマフラー編んであげたい
くもったガラスにふとあなたが映る いそいで追いかけても小さく遠ざかる
たまらず呼んだ私の声が闇につつまれても 私は歩くあなたの姿みえなくなっても
あなたの世界へ続くひとすじの赤い糸で
真っ白な雪道を灯す赤いマフラー編んであげたい
9場
○夜の教室B組
ともみとさおりは夜の教室に忍び込んでいる。
さおり「ともみ!」
ともみ「さおり!」
さおり「どうしたの? こんな夜中に」
ともみ「あなたこそ」
さおり「どうやら私たち同じことを考えているようね」
ともみ「ミミは?」
さおり「動かないわ」
ともみ「寝てるんじゃないかしら」
さおり「そうだといいんだけど。篭に鍵がかかってる」
ともみ「ミミ ミミ」
8
さおり「やっぱり動かない。私がエサをやったからだわ」
ともみ「さおり、何いってんの。予言なんか当たるはずないっていったのは、あなたよ」
さおり「でも少し心配だわ。全然動かないもの」
ともみ「だいじょうぶよ。予言なんか当たらないわ。未来は決まってないんだから」
さおり「いや、分からないわ。未来は決まっているのかもしれない。
二人は顔を見合わせて笑う。
さおり「私たち反対になっちゃったわね」
ともみ「とにかく、暖めればいいじゃないかしら」
さおり「そうね」
ともみ「ミミ、がんばって」
二人は篭をかかえて眠ってしまう。
○ともみとさおりの夢の中
子供たちはミミを連れ去ろうとしている。
ともみ「ミミをどこへ連れていくの」
さおり「あなたたちだれ?」
137「ミミはいただいていく」
ともみ「ミミは私たちの宝よ」
さおり「ミミを返して」
138「無理を言っちゃいけない。ミミは、今日23時59分59秒99に死ぬことになっているんだ」
ともみ「何を証拠にそんなこと言えるの」
139それがミミの運命なんだ。時間がない。急ぐぞ」
さおり「そんなこと絶対にさせない」
140「運命に逆らうことはできないんだ」
ともみ「運命が何よ。そんなもの私が変えてあげるわ」
141「いつまでも君たちの話に付き合っているわけにはいかない。いくぞ」
さおり「いかせない」
ともみ「ミミの運命の糸は私たち二人の宇宙をつないでいる」
さおり「今、ミミが死んでしまったら、私たちは糸の切れた凧のように、離れ離れになってしまう」
ともみ「だから、ミミは絶対に渡せないのよ!」
子供たちとともみ・さおりの戦い。
さおり「見えない。何も見えない。ともみ」
ともみ「さおり、どこにいるの? どこ」
さおり「ともみ! あなたが見えない」
ともみ「さおり! どこにいるのよ」
神1「心の目を開いて見るんじゃ。二人は赤い糸でしっかりつながっていることを」
ともみ・さおり「赤い糸? これね」
歌「赤い糸2」
あなたの世界へ続くひとすじの赤い糸で
真っ白な雪道を灯す赤いマフラー編んであげたい
子供たちは去っていく。
さおり「ミミ」
ともみ「ミミ、無事だったのね」
さおり「ともみ」
ともみ「私、眠い」
さおり「私も」
二人は眠る。
10場
○朝の教室
子供たちが登校してくる。
142「ともみ、さおり、早いわね」
さおり「もう朝?」
143「7時半よ」
ともみ「ミミ、ミミ、おきて」
さおり「ミミ、ミミ。動かない。ミミが死んじゃった」
ともみ「ミミ!」
144「なんだ、なんだ」
145「ミミが死んだ」
146「うそでしょう」
147「ミミが死んだって」
148「だれが鍵をかけたんだ」
149「おれしらないぜ」
9
150「ともみの予言が当たったわね」
151「きのうまであんなに元気だったのに」
152「未来は決まっていたのね」
153「私こわい」
154「先生に知らせなくっちゃ」
155「おはようみなさん。今日も元気で給食がうまい。今日給食、おれの予言では、わかさぎのフライかな」
156「何ひとりではしゃいでんの。ミミが死んだのよ。ミミが。本当にのんきなんだから」
155「ミミ?」
155はミミをふところから出す。
157「何それ」
155「これか、ミミ」
全員「ミミ」
158「これがミミで、あれもミミ」
159「どうなってんだこれ」
155「これか、実はな、きのう当番おれだっただろう。寒くなりそうだったから家に連れて帰ったんだ」
160「じゃあ、あのミミは?」
155「あれか? ぬいぐるみだよ。よく見てみろ」
ともみ「本当だ」
さおり「どうりで動かないはずよ」
161「どうしてぬいぐるみなんか入れてあるのよ」
155「朝、みんながきてミミがいなかったら、大騒ぎするだろう」
162「おまえのせいでな、みんな大騒ぎだぜ。ていねいに鍵までかけやがって」
155「妹のぬいぐるみだから、なくなると困るんだ」
163「ミミこんなに元気よ」
164「結局、ともみの予言ははずれたわけね」
SEチャイム。先生が入ってくる。
165「起立。おはようございます」
全員「おはようございます」
165「着席」
先生「みんな元気そうね。それでは国語の教科書だして」
166「先生、授業の前に質問があります。先生は未来は決まっていると思いますか」
先生「そうね、よく分からないけど。先生、未来のことが全部書いてある本を持っているわ」
全員「ええ!」
167「先生、それ易経ですか?」
先生「ううん、これよ。国語辞典。みんなの未来は全部この中に書いてあるわ」
168「なんだ、国語辞典か」
169「確かに、国語辞典の中には、人間の行動の可能性が書かれていますからね」
先生「でも、その無限の可能性の中からたったひとつの未来を選びとるのは」
170「私たち」
171「見えない私たちの未来を見るために」
172「何をぶつけてみようか」
173「マクラはないよ」
全員笑う。
174「じゃあ、先生に質問をぶつけます。先生、今日抜き打ちテストないんですね」
先生「ないけど? それがどうかしたの」
175「それではみんなで予言します。せいのうで」
全員「私たちの大予言、先生は結婚します」
先生「なんでわかったの」
全員「ひみつだよ」
全員で先生を冷やかす。
10