基本概念で読む連結会計基準

2013 年 4 月
役員のための財務税務会社法ニュース
太陽 ASG マネジメントリポート
今回のテーマ: 基本概念で読む連結会計基準
連結決算作業における規範である我が国の現行の「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第 22 号、以下
「基準 22 号」という)を連結の基本概念である親会社説と経済的単一説の観点から概観してみましよう。
親会社説(連結財務諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位置づけて、親会社の株主の持分のみを反映させる考え方)
経済的単一説(連結財務諸表を親会社とは区別される企業集団全体の財務諸表と位置づけて、企業集団を構成するすべ
ての連結会社の株主の持分を反映させる考え方)
連結の範
親会社説では法的支配が重視されますが、経済的単一説では、企業集団の業績を重視しますので
経済的単
囲
支配力基準(基準 22 号 6 項、7 項)を取る現行基準は、経済的単一説と考えられます。
一説
少数株主
少数株主損益調整前当期純利益に少数株主損益を加減して当期純利益を表示する(基準 22 号 39
親会社説
損益
項(3)③)。この処理は、親会社の株主に帰属する持分の増加を示しますので親会社説です。
少数株主
親会社説では、資本の部に親会社株主持分のみを計上し、少数株主持分を負債又は負債と資本の
持分
部の中間に計上します。しかし、基準 22 号では、少数株主持分を純資産の部の中に含める処理を
親会社説
要求しています。この処理は親会社説ではないように思われますが、当該処理については、「少
数株主持分を純資産の部に記載することとしても、連結財務諸表の作成については、従来どお
り、親会社の株主に帰属するもののみを連結貸借対照表における株主資本に反映させる親会社説
の考え方による」として親会社説の立場を維持しています(「貸借対照表の純資産の部の表示に
関する会計基準」(企業会計基準 5 号)32 項)。
未実現利
親会社説では、親会社持分のみの未実現利益を控除しますが、経済的単一説では企業集団を構成
経済的単
益
するすべての連結会社の株主の持分を反映させる考え方から次の方法で処理されます。
一説
売手側の子会社に少数株主が存在する場合には、未実現損益は、親会社と少数株主の持分比率に
応じて、親会社の持分と少数株主持分に配分する(基準 22 号 38 項)。
子会社の
親会社説では、子会社の資産・負債のうち親会社持分のみ評価する方法が採用されますが(部分
経済的単
資産・負
時価評価法)、
一説
債の評価
せる考え方から、支配獲得日において、子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価によ
差額
り評価します(全面時価評価法)(基準 22 号 20 項)。
子会社株
経済的単一説では、親会社による子会社株式の追加取得・一部売却(親会社と子会社との支配関
式の追加
係は継続)・子会社の時価発行増資等は、同じ株主持分内での変動であるため損益は認識されず、
取得等
資本取引と処理されます。しかし、(基準 22 号 28~30 項)では損益取引とされています。親会
経済的単一説では企業集団を構成するすべての連結会社の株主の持分を反映さ
親会社説
社説の立場からは、親会社株主と少数株主との持分取引は損益取引となるため、当該処理は親会
社説といえます。
現行「連結財務諸表に関する会計基準」は、「基本的に親会社説による考え方を踏襲」していますが(基準 22 号 50
項)、連結実務の影響から上記のとおり一部に経済的単一説をとりいれています。
お見逃しなく!
企業会計基準公開草案第 50 号「連結財務諸表に関する会計基準(案)」(平成 25 年 1 月 11 日付)では、親会社説で
損益取引であった子会社株式の追加取得・子会社株式の一部売却(親会社と子会社との支配関係は継続)・子会社の時価
発行増資等による親会社持分変動額と対価との差額が資本剰余金と処理されます。基準は、親会社説を踏襲する立場で
すが、IFRS の動向に合わせ親会社説(損益取引)から経済的単一説(資本取引)へ変更したわけです。実務面ではこの
処理の変更で、従来、子会社株式の追加取得により発生していた「のれん」・「負ののれん」がなくなります。
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