有機質資材「スーパー響土」がカンキツ苗木の生育に及ぼす効果の検討

有機質資材「スーパー響土」がカンキツ苗木の生育に及ぼす効果の検討
静岡県農林技術研究所果樹研究センター
生産環境科 吉川公規、中村明弘
試験年度:平成25年(試験期間 平成25年~平成28年)
1.目的
カンキツでは改植後の未収益期間を短縮できる早期成園化技術開発が求められている。このため、
苗木の育成に適した資材を検討し、早期成園化のための有機質資材等の利用技術が必要がある。こ
こでは、有機質資材である「スーパー響土」の施用が苗木の生育に及ぼす影響を調査する。
2.試験方法
(1)試験場所:果樹研究センター (静岡市清水区駒越西)
(2)供試樹:‘青島温州’1年生、各区5樹供試、平成25年4月27日植栽
(3)用土及び植栽資材:淡色黒ボク土に有機質資材を混用し、10号菊鉢に植栽
(4)試験構成:
処理区
有機質資材
資材施用量
年間施肥量(g/樹)
(v/v%)
N
P2O5
K2O
SKN 区
スーパー響土
25
14
6
10
SKD 区
スーパー響土
25
4
3
10
BRN 区
樹皮堆肥
25
14
6
10
GPN 区
牛糞堆肥
25
14
6
10
NON 区
無施用
0
14
6
10
注)用土 120 リットル当たり熔リン 300g を混用した。
施肥は、硫安、重焼リン、硫加を用い、6 月 7 日、7 月 5 日、8 月 2 日、9 月 11 日、
11 月 15 日に年間施肥量の 1/5 量ずつを施用した。
(4)調査項目:
・新梢新葉の発生状況は、7月23日に春葉の葉色をSPAD502で測定し、新梢発生程度を0~2(無
~多)段階で達観調査した。
・樹体の幹径(接ぎ木部上5cm)、枝長、枝数、葉数生育は、10月28日~11月5日に測定した。
・土壌は、混用した用土と2月17日に採取した表土を分析した。採取した土を風乾篩別し、交
換性塩基と可給態リン酸をそれぞれ抽出後、ICP発光分光分析装置(SII)で分析した。土
壌の可給態窒素は16時間80℃抽出法(農研機構)で抽出し測定した。
・春葉を11月5日に各樹5葉採取し、風乾粉砕後、窒素をNCアナライザーで測定した。
3.結果の概要
(本年度の試験結果の概要)
(1) 混用した土壌の可給態窒素含量は、有機発酵資材を用いた土が高かった(第1図)。可給態リン酸
含量、交換性塩基含量も資材により異なり、有機発酵資材は交換性Kが、樹皮は交換性Caが、
牛糞は交換性Kと交換性Caが多かった(第2図)。
(2) 7月の葉色(SPAD値)は、SKD区とSKN区が高かった(第3図)
。新梢発生は、SKD区とSKN
区が多かった(第4図)。
(3) 苗の生育では、総葉数や総枝長はSKN区とBRN区が高く、枝数はGPN区が多く、幹径はSKN
区が大きかった(第4図〜7図)。葉中窒素含有率は、SKN区とGPN区が高く、SKD区が低かった
(第8図)。
(4) 10か月後の鉢内土壌の可給態窒素含量は、SKD区が高かった(第9図)。
第1図 混用土の可給態窒素含量
第3図 7月の葉色の違い
z)同符号間に5%水準で有意差無し
第6図 樹当たり総枝長
z)同符号間に5%水準で有意差無し
第2図 混用土の可給態リン酸含量と交換性塩基含量
第4図 7月までの新梢発生程度
第5図 樹当たり総葉数
発生量を無0~多2に達観で調査
第7図 樹当たり枝数
z)同符号間に5%水準で有意差無し
第8図 接ぎ木部5cm上の幹径
第9図 葉中窒含有率
z)同符号間に5%水準で有意差無し
第10図 土壌中可給態窒素含量
(植栽10か月後)
4.新資材利用上の問題点
特になし。
5.次年度設計
鉢植樹を地植えにして、調査を継続する。
6.要約(まとめ)
有機発酵資材「スーパー響土」は混用土中の可給態窒素含量が多く、7 月では他資材よりも生
育が早かった。しかし、肥料成分を減らした処理区では、秋季の葉中窒素含有率が低かった。11
月までの生育では、葉数や枝長は樹皮堆肥と同程度の生育状況であった。このため、
「スーパー
響土」は施用時から含有する肥料成分が効くため、苗木の初期生育を促進すると考えられるが、
夏季以降は通常どおりの施肥が必要と考えられた。