脆性材料の超精密研削用砥石の開発

脆性材料の超精密研削用砥石の開発
指導教員:金井 彰 助教授
研究者:M99007 五十嵐 博
稲葉 文夫 助教授
M99013 今泉 一識
研削した。実験装置を図 1 に、実験条件を
表 2 に示す。
1.
研究目的
近年、脆性材料の研削に関する研究が進
められている。既存のダイヤモンド砥石に
は、メタルボンド砥石、レジノイドボンド
砥石、ビトリファイドボンド砥石の 3 種類
がある。現在、脆性材料の精密研削にはレ
ジノイドボンド砥石、ビトリファイドボン
ド砥石が使われているが、シリコンウェハ
の超精密平面研削には表面精度だけでなく
形状精度や加工能率も求められるため、既
存の砥石ではこれらの条件を満たす加工は
難しい。そこで、前年度の研究ではシリコ
ンウェハの超精密平面研削用の新しい砥石
の開発を目的としてカーボンを結合剤に用
いた砥石を考案し、可能性を調べるための
基礎実験を行いカーボンがシリコンウェハ
表面に損傷を与える可能性がないことを確
認した。よって、本研究では前年度の研究
を引継ぎ、カーボンを結合剤に用いたダイ
ヤモンド砥石を作成し、研削実験を行った。
また、ビトリファイドボンド及びレジノイ
ドボンド砥石を低温焼成したものや添加剤
を変えた砥石を作成し研削実験を行った。
2.ドレッシング、ツルーイング
ウェハ研削まえに砥石面を整形するため
にツルーイングを行った。図 1 の実験装置
を使用し主軸にラッピングフィルムシート
を取り付け、砥石を押付ける形で行った。
3.カーボンボンド砥石によるシリコンウェ
ハの研削実験
本実験では、カーボンボンドダイヤモン
ド砥石の性能を測定するために、スティッ
ク状のカーボン砥石φ6.8×L63.4mm(粒径
2∼3μm,粒度 4000 番)を用いて、湿式研
削実験を行った。実験には 2 軸 T 形の超精
密横軸加工機を用いた。送り運動は X 軸テ
ーブルによって行われ、工作物は Z 軸上の
主軸に取り付けられた真空チャック上に固
定される。加工機の主要な仕様を表 1 に示
す。実験方法としては回転するシリコンウ
ェハに一定の圧力で砥石を押し付け、X 軸
方向に砥石3個分の往復運動を 10 回させ
表 1:加工機仕様
X 軸テーブル駆動範囲
0∼254mm
Z 軸テーブル駆動範囲
0∼150mm
10nm
運動分解能
主軸回転数
100∼
10000rpm
主軸
往復運動
シリコンウェハ カーボンボンド砥石
X 軸テーブル
X
加工圧力
Z
図 1:実験装置
表 2:実験条件
工作物周速度
10.0 ㎧
10,20,30,40N/cm2
加工圧力
工作物
シリコンウェハ
(①ラップ加工面)
直径φ150 厚
さ.t0.65 ㎜
(①平均粗さ
Ra133.1 ㎚)
送り速度
30 ㎜/min
今回試作したカーボンボンドダイヤモン
ド砥石では、目詰まりが多くシリコンウェ
ハを研削することができなかった。これは、
ダイヤモンド砥粒が 2∼3 ㎛と小さすぎた
ためだと考えられる。
4.ビトリファイド及びレジノイド砥石によ
るシリコンウェハの研削実験
本実験では 8 種類の焼成方法や添加剤を
変えた砥石の性能を測定するために、ステ
ィック状砥石、約 4.5×約 4.5×約 12.0mm
1
を用いて湿式研削実験をした。カーボン砥
石の実験と同じように回転する工作物に一
定の力でスティック状の砥石を押し付け、X
軸方向に砥石3個分の往復運動を 10 回さ
せ研削した。実験条件を表4に示す。8種
類の砥石の減耗量とシリコンウェハ研削量
を求め、研削比を計算した。図2にシリコ
ンウェハの研削量を示し、図3に研削比を
示す。尚、砥石を砥石 A∼H の記号で記し、
詳細を表3に示す。
1000
研削比
800
600
400
200
0
A
B
C
D
E
F
砥石の種類
G
H
シリコンウェハの研削量 (m
m)
図 3:研削比
シリコンウェハの研削ができ、研削比を
表3:砥石
求められた砥石は高温焼成のビトリファイ
砥石A ビトリファイドDIA#7000J
ド砥石 A,B であった。低温焼成での砥石は
砥石B ビトリファイドDIA#7000K
砥石C DIA1/2㎛(7000)Dially/phthalate resin 脆く本実験条件での加工圧力だと、砥石 D
はシリコンウェハを研削するための加工圧
砥石D DIA1/2㎛(7000)1K(低温ビト)
力に耐えられずデータがとれなかった。砥
砥石E DIA1/2㎛(7000)2K(低温ビト)
石 E は減耗量が非常に多く 1 往復もできな
砥石F DIA1/2㎛(7000)Acryl Resin
かったためにデータが0となってしまった。
砥石G DIA2/4㎛ Acryl Resin
砥石 F∼H では本実験の加工圧力では低か
砥石H SCM2/4㎛ Acryl Resin
ったためかシリコンウェハを研削できず研
削量が0となり求められなかった。
表4:実験条件
5.まとめ
工作物周速度
10.0 ㎧
本研究では、結合剤にカーボンを用いた
5,10,15N/cm2
加工圧力
カーボンボンドダイヤモンド砥石とビトリ
工作物
シリコンウェハ
ファイド及びレジノイド砥石を改良したも
(①ラップ加工面)
直径φ150 厚
のを作成し、それぞれの砥石について基礎
さ.t0.65 ㎜
特性を調べた。まず、カーボンボンドダイ
(①平均粗さ
ヤモンド砥石とシリコンウェハとの研削実
Ra133.1 ㎚)
験では研削できなかった。これは、ダイヤ
送り速度
30 ㎜/min
モンド砥粒が 2 ㎛と小さいことやドレッシ
ングの方法に問題があると考えられる。ビ
トリファイド及びレジノイド砥石とシリコ
ンウェハとの研削実験では、低温焼成した
砥石A 砥石B 砥石C 砥石D
砥石E 砥石F
砥石G 砥石H
ものは強度が低いことがわかった。何種類
かは研削比に良い数値がみられ脆性材料の
300
超精密研削用砥石としての可能性を確認す
200
ることができた。また、レジノイド砥石で
100
研削できないことについては、本実験条件
0
下によるものなので加工圧力など加工条件
5 10 15
を変更し再度実験をすることが望ましい。
加工圧力(N/cm )
2
図 2:シリコンウェハの研削量
2