臨床検査の立場から :「今、日本で対応が必要な耐性菌」

2012/8/29
耐性とは
今、日本で対応が必要な耐性菌
神戸大学医学部附属病院
感染制御部
吉田弘之
広義;その薬剤に抵抗性を示すか、
効果が期待できない。
本来感受性のある抗菌薬が効かなくなること。
薬剤耐性菌の略語
薬剤
耐性菌の略語
①
②
③
④
⑤
⑥
MRSA
VRSA
PRSP
VRE
V
ESBL
MBL
⑦ MDRP
⑧ BLNAR
⑨ MDRTB
a)
b)
c)
d)
e))
f)
g)
h)
i)
WHO の感染対策
PABL
KPC
KOXY
NDM
NDM--1
MRAB
MRMP
XDRXDR-TB
PRGBS
PPNG(
PPNG
(MDRNG
MDRNG)
)
• Emerging infection
新興感染症
• Reemerging infection
再興感染症
• Drug resistant infection
薬剤耐性菌感染症
多剤耐性菌の定義(CDC)
•
•
•
•
•
•
•
•
Staphylococcus aureus (MRSA)
Enterococcus spp.(VRE)
Enterobacter cloacae
Escherichia coli etc.
etc (ESBLs)
Acinetobacter baumannii
Burkholderia cepacia
Stenotrophomonas maltophilia
Ralstonia pickettii
1
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ところがアメリカでは
日本では
略語
VRE
日本における耐性菌の認識菌種
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(
MRSA)
)
‹
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(
VRSA)
)
‹
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE
バンコマイシン耐性腸球菌(
VRE)
)
‹
グラム陽性球菌
‹
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP
ペニシリン耐性肺炎球菌(
PRSP)
)
グラム陰性桿菌
‹基質拡張型
基質拡張型β
β-ラクタマーゼ産生菌(
ラクタマーゼ産生菌(ESBL
ESBL)
)
‹メタロ
メタロβ
βラクタマーゼ産生菌(MBL
ラクタマーゼ産生菌(MBL)
)
‹多剤耐性緑膿菌(
多剤耐性緑膿菌(MDRP
MDRP)
)
MRSA
MRSE
MRCNS
VRSA
赤痢
O-157
結核菌
HBS
メチシリン耐性表皮ブドウ球菌
メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌
グリコペプタイド系薬中等度耐性黄色ブドウ球菌
PISP
ペニシリン中等度耐性肺炎球菌
PRSP
ペニシリン耐性性肺炎球菌
BLNAR
βラクタマー非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌
10~
10
~30
30%
%
ESBL
基質拡張型
基質拡張型β
βラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌
PABL
プラスミド関連
プラスミド関連AmpCβ
AmpCβラクタマーゼ産生菌
ラクタマーゼ産生菌
ごく稀
メタロ
メタロβ
βラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌
0~3%
多剤耐性緑膿菌
0~3%
MBL
⇔ HA-MRSA : hospital-acquired MRSA
・米国、英国、フランス、スイス、オーストラリアなどで多数報告。
アジアでも問題が拡大している
ESBL
PABL
麻疹
水痘
HCV
稀
30~
30
~70%
・CA
CA--MRSA
MRSA感染症は
感染症は1981
1981年に
年にCDC
CDCが初めて報告
が初めて報告
MBL
クロストリジウム
ToxinA/B
ノロウイルス
・重篤な軟部組織感染症や壊死性肺炎を生じ、健常な若
院内感染
感染症法
チフス
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
市中感染型MRSA
MDRNG
VRE
MRSA
VRSA
MDRP
MDRTB
頻度
(CA-MRSA: community-acquired MRSA )
BLNAR
PRSP
称
GISA
MDRP
薬剤耐性菌
名
バンコマイシン耐性腸球菌
者でも致死的となる
・刑務所収容者、スポーツチーム、学校、ヘルスクラブ、男性同性愛者
のようなコミュニティー内で起こっている
のような
コミュニティー内で起こっている
・Panton
Panton--Valentine Leukocidin (PVL)
(PVL)を産生する
を産生する
・IV
IV型
型,V
,V型のメチシリン耐性遺伝子領域(
型のメチシリン耐性遺伝子領域(SCC
SCCmec
mec)をもつ
)をもつ
Bacillus cereus
2
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VRE
感染症法による届出基準
(バンコマイシン耐性腸球菌)
(バンコマイシン耐性腸球菌
)
(vancomycin
ancomycin-resistant
VRE感染症は5類、全数把握の対象・・診断から
VRE
感染症は5類、全数把握の対象・・診断から1
1週間以内に届出
◎ 報告の基準
enterococci
nterococci)
)
1)VanA
VanA、
、VanB
VanB型
型
●病原体の検出
血液、腹水等無菌的な材料からの分離
(当面は便、尿からの保菌も含む)
●検査室判断基準
VCM MIC値
MIC値≧16㎍
16㎍/ml
/mlあるいは
あるいはvanA、 vanB遺伝子
の検出
の検
出
腸球菌はヒトの消化管や膣に常在し、糞便から検出
腸球菌は
ヒトの消化管や膣に常在し、糞便から検出される。
される。
保菌は消化管。
2)VanC
VanC型
型
易感染患者には尿路感染症、創部感染、敗血症など
の日和見感染を起こす
血液、腹水等の無菌的材料から分離し、vanC遺伝子
が検出されたもの
が検
出されたもの
ESBL産生菌の確認方法
ESBL
産生菌の確認方法
同定菌名:
感受性:
E.coli
Klebsiella sp.
P.mirabilis
E.coli
Klebsiella sp.
P.mirabilis
CPDX≧2μg/ml
or
CEZ≧16μg/ml
DDST ダブルディスクシナジーテスト
ダブルディスクシナジーテスト)
)
DDST(陽性)
DDST
(陽性)
DDST(陰性)
DDST
(陰性)
阻害帯なし
CAZ CTX
CTRX
CPDX
A/C
で
ABPC
ビクシリン
R
PIPC
ペントシリン
R
CEZ
セファメジン
R
CTM
パンスポリン
リ
R
CTX
セフォタックス
R
CFPM
マキシピーム
R
CMZ
セフメタゾン
S
AZT
アザクタム
R
IPM
チエナム
S
メタロβ
メタロ
βラクタマーゼ
AZT CFPM
矢印の様な阻害帯が見られれば
矢印の様な阻害帯
が見られればESBL
ESBL産生菌と
産生菌と
判断。
メタロβ
メタロ
βラクタマーゼ産生菌
β-ラクタマーゼの種類
◆ 染色体上
染色体上に遺伝子が存在する細菌
に遺伝子が存在する細菌
Stenotrophomonas maltophilia、 Bacillus cereus、
cereus、
β-ラクタマーゼ
セリンβ
セリン
β-ラクタマーゼ
メタロβ
メタロ
β-ラクタマーゼ
Aeromonas hydrophila
hydrophila、
、Chryseobacterium indlogenes 、
Chryseobacterium meningosepticum・
meningosepticum・・・
◆ プラスミド上
プラスミド上に遺伝子が存在する細菌
に遺伝子が存在する細菌・・・感染対策が必要
ClassA
Class
A
ペニシリ
ナーゼ
染色体
プラスミド
K.pneumoniae ESBL
K.oxytocaなど KPC
ClassC
Class
C
ClassD
Class
D
セファロス
ポリナーゼ
染色体
腸内細菌
ClassB
Class
B
カルバペネマーゼ
プラスミド
E.cloacae
PABL
C.freundii
S.marcescens
M.morganiiなど
OXA型
OXA
型
染色体
プラスミド
Escherichia
E h i hi coli、
coli
li、Klebsiella
Kl b i ll pneumoniae
pneumoniae、
i 、Klebsiella
Kl b i ll oxytoca
oxytoca、
、
Serratia marcescens、Enterobacter cloacae、
cloacae、Enterobacter
aerogenes、
aerogenes
、Citrobacter freundii
freundii、
、Providencia rettgeri
rettgeri、
、
Morganella morganii
ブドウ糖非発酵菌
MBL
Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas putida、
putida、
Acinetobacter baumannii、Burkholderia cepacia
cepacia、
、
(NDMNDM-1)
Achromobacter xylosoxidans、
xylosoxidans、Alcaligenes faecalis
faecalis・・・
・・・
S.maltophilia
B.cereusなど
3
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Klebsiella pneumoniae Carbapenemase
(KPC)
1996年に米国ノースカロライナ州から、 ICARE
1996年に米国ノースカロライナ州から、
ICAREサーベイラ
サーベイラ
ンスプログラムの結果、最初の分離株が報告された。この
酵素はもともとKlebsiella pneumoniaeやE.coli から分離さ
れていたものであったが、腸内細菌科のグラム陰性桿菌か
れていたものであったが、
腸内細菌科のグラム陰性桿菌か
らも分離されている。
らも分離されている
。
NDM-1産生腸内細菌
KPCはクラスAβ
KPCはクラス
Aβ--ラクタマーゼに分類される。プラスミド
によって伝達され、β
によって伝達され、
βラクタム系薬全てを分解する。
確認試験としてはClinical
確認試験としては
Clinical and Laboratory Standards Institute
(CLSI
CLSI)
)より変法 Hodge testが推奨されている。
testが推奨されている。
NDM--1(ニューデリーメタロ
NDM
(ニューデリーメタロβ
βラクタマーゼ)
ラクタマーゼ)--①
★
NDM‐1産生菌の重要なポイント
2009年
2009
年にインドから帰国したスェーデン人からはじめて分離された
(Antimicrob Agents Chemother 53:5046
53:5046--54, 2009)
2009)
★
NDM-1の名前の由来は、
NDMの名前の由来は、ニューデリー
ニューデリーで分離された
で分離されたメタロ
メタロβ
βラクタ
マーゼ(
マーゼ
(New Delhi metallo
etallo--β-lactamase
lactamase--1)
★
インドに旅行した人が持ち込んだと思われるNDM--1産生菌がイギリス
インドに旅行した人が持ち込んだと思われるNDM
国内で拡散し、大きな社会問題となった
★
インド、パキスタン、米国、オーストラリア、カナダ、ベルギー、バ
ングラディッシュ、香港、シンガポール、カナダ、ケニア、フランス、
ドイツなどでも分離が報告されている
★
国内では2
国内では
2例報告
例報告(
(1例は国内発生?)
1)この酵素を産生する菌が大腸菌や肺炎桿菌から分離
されている。
2)これまでのメタロβラクタマーゼ産生菌は、主に緑膿菌
やアシネトバクターなどの日和見細菌に認められていた
やアシネトバクタ
などの日和見細菌に認められていた。
3)大腸菌や肺炎桿菌はこれら日和見細菌に比べ病原性
が高く、市中の免疫能が保たれた患者の感染症の起因
菌としてしばしば分離される。
4)大腸菌や肺炎桿菌は腸内細菌としてヒトの腸管内に
常在している。
NDM‐1産生菌が院内だけでなく、市中感染と
して蔓延していくことが懸念されています。
MDRP(多剤耐性緑膿菌)
MDRP
(多剤耐性緑膿菌)
(multi
ulti--drug resistant Pseudomonas aeruginosa)
あらゆる薬剤耐性機構を同時に獲得した緑膿菌。
あらゆる薬剤耐性機構を同時に獲得した緑膿
菌。
感染症法におけるMDRP
感染症法における
MDRPの判定基準
の判定基準
感染症法 5類基幹定点
5類基幹定点では以下の条件をすべて満たし
では以下の条件をすべて満たし
た場合で、感染症の起因菌となった場合に報告が必要。
た場合で、感染症の起因菌となった場合に報告が
必要。
IPM(チエナム)
IPM
(チエナム) MIC ≧16
16μg/ml
μg/ml
&
AMK(アミカシン)
AMK
(アミカシン) MIC ≧32
32μg/ml
μg/ml
&
CPFX(シプロキサン)
CPFX
(シプロキサン) MIC ≧4μg/ml
4