塩酸にアルミニウムがとけにくい理由

Q&A 水溶液の性質(小学校6年)において、塩酸にアルミニウムがとけにくい理由
「塩酸にアルミニウムを入れても、なかなかとけません。とけはじめてもとけるのに 30 分以上かかるため、
授業時間内で終わりません。」
といった質問を先生方からよく聞きます。そこで、実験を成功させる方法を紹介します。
《考えられる原因と実験成功のポイント》
◎アルミニウムの性質を知っておく必要がある
アルミニウムは、表面に酸化アルミニウムの被膜(不動態被膜)を作って、安定な状態になって
いるため、すぐに塩酸とは反応しにくい。この性質を利用してアルミニウム製品がいろいろなとこ
ろで使われている。
すなわち、アルミニウムの表面の酸化アルミニウムの被膜がとれないと塩酸と反応しない。
また、アルミ箔は表面にコーティングがされているため、反応しにくい。
この表面の酸化被膜などをとる方法としては、紙ヤスリなどで除去するか、比較的濃度の大きい
塩酸を用いることが考えられる。
しかし、アルミ箔は薄いため紙ヤスリが使えない。また、板状のアルミニウム板であれば、紙ヤス
リが有効であるが、多くの学校で購入している円状の小さなアルミニウム板は小さすぎて紙ヤスリ
が使えない。
そこで、実験の日の朝、または、実験の前日に、ビーカーに入れた約 15%塩酸(水:塩酸=1:1:)
に、アルミニウム(アルミ箔や円状の小さなアルミニウム板)を入れ、反応が始まったら直ちに、
流しで塩酸に多量の水を加え、反応を止めた後、上澄み液を捨てて、別のビーカーに入れた水の中
でアルミニウムを保存しておく。これで酸化被膜がとれる。
これを実験に用いると、水中では酸素の量が少ないので酸化アルミニウムになりにくいため、塩酸
と反応しやすい。このとき、アルミ箔は水に浮くので、写真のように上から小型のビーカーを重し
としておくとよい。
アルミニウムを 15%塩酸でいったん反応させる
アルミ箔の処理後
塩酸を捨てて水の中で保存
水に浮くので、ビーカーの重しで水中へ
表面の酸化被膜を除去する前処理を行ったアルミニウムの塩酸との反応
(塩酸と反応しにくかったアルミ箔もすぐに反応が始まる)
注意:アルミニウム粉末は反応が激しいため、爆発の危険があるので絶対使わない。
Q&A 塩酸にアルミニウムをとかした液を加熱するとき、刺激臭で気分が悪くなる理由
「塩酸にアルミニウムをとかした液を加熱して結晶を取り出すときの刺激臭で気分が悪くなった。
」
《考えられる原因と実験成功のポイント》
塩酸にアルミニウムをとかした液を加熱しているとき、未反応の塩酸が多く残っていると、塩化水
素が発生し、その刺激臭がひどい。
→塩酸と反応させるアルミニウムの量を計算して、アルミニウムがとけた後の液に、あまり塩酸が
残っていないようにすることが必要である。
2Al+6HCl→2AlCl3+3H2
2mol : 6mol で反応する (Al 1mol 27g
HCl 1mol 36.5g)
9%塩酸5mL:5×0.09=0.45g より、9%塩酸5mL には塩酸が 0.45g含まれている。
今、9%塩酸5mL とちょうど反応するアルミニウムの質量をXとすると、
27×2:6×36.5=Xg:0.45g
よってX=0.11g
9%塩酸5mLとちょうど反応するアルミニウムの質量は約 0.1gなので、そのくらいの質量のア
ルミニウムを実験に用いて反応させると、未反応の塩酸がほとんどなくなる。
また、9%塩酸5mL と反応する鉄の質量を計算すると、
2Fe+6HCl→2FeCl3+3H2
2mol : 6mol で反応する (Fe 1mol 55.9g
HCl 1mol 36.5g)
9%塩酸5mL:5×0.09=0.45g より、9%塩酸5mL には塩酸が 0.45g含まれている。
今、9%塩酸5mL とちょうど反応する鉄の質量をYとすると、
55.9×2:6×36.5=Yg:0.45g
よってY=0.23g
9%塩酸5mLとちょうど反応する鉄の質量は約 0.23gなので、そのくらいの質量の鉄を実験に用
いて反応させると、未反応の塩酸がほとんどなくなる。
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