「CT colonography(CTC)の現状」 ‐Screening 検査の実際と今後の課題− 医療法人 山下病院放射線科 山崎 通尋 1. はじめに CT 装置を用いた大腸検査 CT コロノグラフィ(CTC)は、マルチスライス CT(MSCT), 高性能ワークステーション(WS)の開発により、大腸がんのスクリーニング検査を CTC で行なうことが現実味をもって語られるようになった。 大腸がんの画像診断法である大腸内視鏡検査(CS),注腸検査(BE)は、前処置や検査自 体に少なからず苦痛を伴うこともあり、便潜血陽性者の精検受診率は約 60%と決して十分 とは言えないのが現状である。当院では精検受診率を上げることを目的として、比較的低 侵襲で苦痛が少ない検査法である CTC を用いた大腸がんスクリーニング検査を 2003 年 6 月より本格的にスタートした。当日の会場では、スクリーニング検査の実際(検査方法, 成績)と今後の課題でついて述べる。 2. スクリーニング検査の実際 ① 検査方法 当院の CTC では等張法を用いた前処置を行っている。しかし、検査当日の等張法では残 液が多量となり、大腸が不連続となるためその後の画像構築,画像解析に支障が生じるた め、当院では前日に等張液を服用することで、全般的に良好な結果が得られている。 撮影は、検査直前には BE や CS 同様に腸の蠕動を抑制するために、抗コリン剤またはグ ルカゴンを筋注後、ゾンデを挿入し、仰臥位(または左側臥位)で炭酸ガス(または空気) を自動注入器にて一定圧かつ緩やかに持続注入している。撮影範囲は肝上縁から肛門縁ま でとし、描出不良部分を相互に補完させるために腹臥位,仰臥位の 2 体位撮影を基本とし ている。息止めは腸管を体軸方向に伸展させるために、呼気での撮影でおこなっている。 ② 解析画像(図1) CTC は、ボリュームデータを WS で画像処理することで、一般的な CT 画像である Axial 像や MPR 像だけでなく仮想注腸像(VR)や仮想内視鏡像(VE)など多様な画像が得られ、 多くの情報を読影医に提供することが出来る。その反面、画像解析時間は長時間を要し、 スクリーニング検査として大きな問題であると共に、CTC 普及の大きな妨げでもあった。 この問題を解決すべく大腸専用の新しい解析ソフトが開発された。その代表的画像が仮 想切除標本展開像(VGP)と VE+MPR 像である。従来の画像構築とは異なり、短時間で 画像構築が可能で、解剖学的盲点が少なく,解析効率に優れたこの画像は CTC スクリーニ ング検査に欠かすことのできない有用な画像である。 a b c d a :VR 像。2 型進行がんの周堤が大腸内へ陥凹として、潰瘍は相対的に突出している。 b:VR 像。オパシティーカーブを調整することで、BE の二重造影近似の表示となる。 c :VE 像。境界明瞭な周堤を持った潰瘍性病変が描出されている。 d:Axial 像。大腸壁の均質な軟部組織濃度を呈す限局した肥厚を認める。 f e g e:オーバービューとして全大腸粘膜面を1画面表示した VGP。病変の有無をチェック f:VE+MPR。腸管粘膜面と壁情報を同時に観察することで病変と残渣の識別を行なう。 g:Fish Eye 像。自動走行により壁背面も描出可能で、盲点の少ない VE 観察画像である。 3. 今後の課題 CTC の診断能向上には、前処置の良否と大腸の拡張具合が重要なポイントとなるため、 今後、消化管造影剤であるバリウムやガストログラフィンを用いて残渣を標識する fecal tagging と、安定した腸管拡張を得るための CTC 専用自動注入器の開発が望まれる。 4. おわりに 術者技量に依存する CS や BE とは異なり、CT 装置を用いた大腸がん スクリーニング検 査は腸管走行や術者技量に依存することはない。苦痛な前処置,被曝線量の低減など改良 すべき点はあるが、今後検査対象が増加することが予想されるため、被検者が苦痛を伴わ ない安全な検査方法として発展することを期待する。
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