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い た ずら 実 験 工 作 室
AM放送の電波でLEDを点灯
AM放送の電波でLEDを点灯!
!
電波ホタルを作る
村上 光司
電池なしでLEDを光らせてみましょう.といいましてもさすがに電源がないとLEDは光りませ
ん.ここではその電源にAM放送局の放送電波を使います.
分けて四つの回路に分けられます.それぞれの回
鉱石ラジオは電池が
いらない不思議なラジオ
路の役割も図1 を参照してください.
その昔,ラジオ放送が開始された初期のころは,
検波に方鉛鉱などの鉱石が使われていました.そ
鉱石ラジオは,電池などの電源を用意せずとも
の後,鉱石に代わってゲルマニウム・ダイオード
AM ラジオ放送を聞くことができるので,一見,
を用いたゲルマニウム・ラジオというシンプルな
無電源で動作するかのように思われがちです.し
ラジオもあります(写真1).今回の実験では,現
かし,実際には立派に電源が存在します.実はア
在入手が容易なショットキー・バリア・ダイオー
ンテナで捕まえた放送電波の持つエネルギーを電
ドを使用したので,ショットキー・ラジオという
源にしているのです.
呼び名で呼ばれることもあるようです.
AM ラジオの電波は,音声信号の強弱によって,
鉱石ラジオは,ラジオ受信機としての最低限と
電波の強さに強弱をつけることで作られています.
も言える構成でできています.もっと簡単化しよ
鉱石ラジオでは,このエネルギーを音に変換し,
うと思っても,これ以上はどのブロックも省くこ
イヤホンからの音を耳で聞き取ります.今回の実
とができないほどです.
これらすべての回路は,アンテナで得られた高
験では,イヤホンで音に変換することに代わり,
周波信号をすべての動力源としています.電池な
LED で光に変換します.
鉱石ラジオの基本的な構成を見てみましょう.
とてもシンプルな構成です.図1 のように大きく
どの電源がないので,増幅して受信信号を大きく
する増幅回路の使用が不可能です.このため最終
アンテナ
送信所から来た電波を捕まえて,電波
を高周波の電気信号に変換する
同調回路
いろいろな周波数の高周波信号
(放送局の電波)の中から,目的
の周波数(放送局)を選び出す.
コイルとコンデンサの共振を利
用して,目的周波数の信号を優
先的に取り出す
検波回路
高周波の電気信号(交流)を整流し
て,音声信号(直流や脈流)に変換
する.鉱石ラジオでは,この回路
に方鉛鉱などの鉱石を使う
イヤホン/
ヘッドホン
音声信号を音に変換し,
その音を耳で聞けるよ
うにする
図1 鉱石ラジオの構成
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写真1 検波にゲルマニウム・ダイオード(○印)を使うラ
ジオ.無電源で動作する
的にイヤホンで得られる音量はとても小さくなっ
てしまいます.鉱石ラジオで音を大きくしたいの
であれば,各回路の動作の効率を高める以外に方法
はありません.
写真2 100 円AM ラジオの部品を流用する
身近な物から部品を用意
バー・アンテナやバリコンなどの主要な部品は,
今回の実験では,イヤホンの代わりに LED を
取り付けてホタルのように点灯させます.LEDを
光らせるために回路動作の効率を高める必要があ
100 円ショップで入手できたAM ラジオから取り
外して使用しました(写真2).
近所の100 円ショップでAM ラジオの入手がで
きないのであれば,電子部品の通信販売を利用す
るので,部品もそのような観点から選びます.
ることも可能です.または,電池が液漏れするな
C
(必要に応じて)TP
外部
アンテナ
100p
LED
TP
D
C
D
ど故障して使えなくなってしまったトランジスタ・
TP
D
C
ラジオでもあれば,そこから部品を調達するのも
いいでしょう.
D
TP
C
バリコン バー・アンテナ
C
:セラミック・コンデンサ0.01μF∼0.1μF
接地
D:ショットキー・バリア・ダイオード
(必要に応じて)
1SS108など
図2 電波ホタルの回路
表1
電波ホタル製作のため
の部品
表1 が使用部品です.
組み立てる
図2 が電波ホタルの回路です.部品をつないで,
実験回路を作ります.今回は実験的要素が大きい
部品名
バー・アンテナ
バリコン
値/個数
ダイオード(D) 1SS106,1SS108 など.4個
コンデンサ(C) 0.01 ∼0.1 μF
LED
ブレッドボード
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備 考
100 円ラジオより部品取り
100 円ラジオより部品取り
その他,検波に適したダイオードなら可.100 円
ラジオからも検波に適したダイオードが取り出せる
数個
点灯のようすがわかりやすいものが良い
ユニバーサル基板,ラグ板の使用も可能