2016年2月14日-16日太陽研連シンポジウム@国立天文台 P12 分光計: 岩井一正、久保勇樹(NICT) 謝辞:(株)エレックス工業 要旨 分光観測は波長を問わず観測的天文学の研究にとって必須の観測手法である。近年、AD変換器で信号をデジタル化し、数値的にスペクトル解析 を行うデジタル分光計の性能が飛躍的に高まっている。しかし、高い生産コストや開発の難しさから、その潜在能力ほどに普及していないのが現状で ある。NICTではFPGAを用いたデジタル信号解析装置OCTADの開発を行ってきた。この装置はFPGA部のプログラミングを変えることで、簡単に相 関器や分光計など様々な能力を付加できる。更にAD部やFPGA部をモジュール化することで、低コストにハードの改造を行えるという特徴がある。本 研究ではFPGA部で高速フーリエ変換(FFT)を行うデジタル分光計OCTAD-Sを開発し、開発した分光計のダイナミックレンジや処理能力を評価した。 本装置は高分散性能や高時間分解にデータを記録する必要がある観測対象にとって強力なツールであるといえる。 背景:電波分光観測 主な分光方法 • 回折(主に可視光) • フィルターで分解 • 挿引式スペアナ • 音響光学式分光 デジタル分光の原理 信号処理するのはデジタル 化した後だけ 高い安定性 100%の再現性 • デジタル分光 最も安定・高速・高分散 な分光方法 アナログ信号をデジ タルサンプル 黒:生波形 赤:デジタル波形 デジタル信号をFFT して実部を取り出す (自己相関処理) 信号処理部分で情報のロス (S/Nの劣化等)が一切ない 理論上、最も高感度な分光 処理が可能 左図:OCTADの内 部の模式図 OCTAD-S • VLBI用に開発されたプラットフォーム (OCTAD) • マザーボード上にモジュール化された ADボード、FPGAボード、イーサネット インターフェイス等を配置 • ADやFPGAを交換可能 • 複数のADを搭載可能、ADとDAを1個 ずつ等の構成も可能 評価試験結果 OCTAD-S • 改造が容易なことを利用し、2つのタイプを実装 • FPGAのカスケード接続によって処理の高速化を 実現 • 内部メモリにスペクトルを積算し、8ms毎に外部に 積算スペクトルを記録(デッドタイムなし) • 積算スペクトルのメモリ(32bit)から任意の16bitだ けを抜き出して記録(データの圧縮)。 • FPGAデバイスはXilinx系で開発環境はVivadoに 対応 左図:2G32K@420MHzの入 出力特性 (赤、青:高調波) 上図:4G2K@420MHzとその折り返しの線 形性。 *:420、 ◇:3676MHz、 △: 4516MHz、 □:7772MHz 左図:2G32K@100MHzの入 出力特性 (赤:無入力とした 900MHzのレベル) • 異なる帯域特性のバンドパ スフィルタの後段に同じAD を並べるだけで広帯域観測 が可能 • 左図:この原理を応用した NICT新望遠鏡の受信系の 模式図 OCTAD-S(32k) OCTAD-S(2k) 課題と将来計画 • 高分散化には?:FFTの演算量は分光点数によって増 加。FPGAの処理速度を上げるか、演算に工夫が必要 • 高時間分解化には?:演算時間は十分早い。データの ダンプ速度が現在のリミット。高速記録計の開発が急務 タイプ2(2G32K) AD:10 bit / 2 GHz (帯域1GHz) FPGA:Vertex 7 2個 分光点数:32768点 データダンプ:8ms ADの折り返し特性 • AD変換の折り返し(ナイキス トサンプル以上の周波数は エイリアジングを起こすが、 これを逆手に取る) • 4回目の折り返しまで性能劣 化が無いことを確認 CWへの応答 • 線形性のあるダイナミッ クレンジ:85dB程度 • 理論上のダイナミックレ ンジ(87dB)とほぼ同等 • 高調波比で約30dB 広帯域白色雑音への応答 • ダイナミックレンジで約 30dB • 線形性を無視すれば約 40dBは可能 タイプ1(4G2K) AD:10 bit /4.096 GHz (帯域2.048GHz) FPGA:Vertex 7 1個 分光点数:2048点 データダンプ:8ms (構想中) 観測周波数 2GHz 4.096GHz 4GHz 時間分解能 周波数分解能 分光点数 0.08 s 32 kHz 32768点 0.08 s 1000kHz 4096点 0.0001s 15kHz 12万点
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