洗剤の研究4 ~地球に優しい洗剤の使い方~ 岐阜市立岩野田中学校 1 研究の動機 昨年までの研究から,洗剤水は植物の成長に悪影 3年 加藤 聖子 ・水,2分の1倍,標準量は正常に成長しているも のが多い。 響を与えるが,液体石けんは標準使用量で育つこと ・標準量の2倍は,4日目に茎が倒れたが,5日目 などがわかった。今年は,添加物を含まない石けん に再び茎が立ち始めた。 が「正義」で合成洗剤は「悪」の考えでよいのかと ・標準量の3倍は,発芽までは成長するが,4日目 考え,洗剤の種類と洗剤が植物に与える影響を中心 以降になると,根が上を向いているものや葉が黒く に研究を進めた。 なっているものがあった。 ・カイワレダイコンの成長を比べると,「水,2分 2 研究の内容 の1倍,標準量」と「2倍,3倍」の2つのグルー (1)液体石けんの溶液を使ってカイワレダイコン プに分けられる。 を育て,その成長を観察しよう [まとめ] [実験方法] 石けんのの濃度を濃くするほど,植物への影響が ・カップの中に脱脂綿をしき,その上にカイワレダ 大きい。洗剤を使うときは,決められた量以上にな イコンの種を10個まく。 らないように使うことが大切である。 ・濃さの違う液体石けん(水のみ,標準使用量,2 [疑問] 分の1倍,2倍,3倍)を使って湿らせる。1つの 濃さごとに3つ(シール無し,緑シール,赤シール) 植物の成長を妨げるのは洗剤だけなのか。 (2)食品の溶液を使ってカイワレダイコンを育て, のカップを準備する。 その成長を観察しよう ・1週間成長の様子を観察する。(茎の長さを測定 [実験方法] する。) ・液体石けんの代わりに,日本茶,紅茶,スポーツ 飲料,酢,しょう油を使う。 ・5日間,成長の様子を観察する。(茎の長さを測 定する。) [結果と考察] 品名 [結果と考察] pH 液性 発芽 成長 日本茶 pH 7 中性 ○ × 紅茶 pH 6 中性 ○ ○ スポーツ飲料 pH 4 弱酸性 × × 酢 pH 2 × × しょう油 pH 5 弱酸性 × × 液体石けん pH 7 ○ ○ 酸性 中性 ・紅茶は,一番よく成長したが,水のほうがよく成 長する。 ・スポーツ飲料は,食塩が影響を与えると考えられ る。 ・発芽率は, どの濃さ ・酢としょう油は臭いがきつい。殺菌作用があるた の時も93~ 100% め,カビは生えないがカイワレダイコンの成長を妨 と高く,発芽 に水溶液 げる。 の濃度は関係ない。 ・紅茶と日本茶はカテキンが含まれる。成長に差が 出たのは溶液の濃さに問題があるのではないかと思 [実験方法] われる。 ・布にいろいろな汚れをつける。 [まとめ] ・容器に,汚れた布と洗剤,水を入れて400回ふ ・酸性の食品は,植物の成長を妨げることから,洗 る。 剤だけが悪影響を与えるわけではない。 ・布を取り出し,排水の汚れをパックテストで測定 ・植物は,水に近い中性の溶液で育てる必要がある。 する。 (3)いろいろな洗剤を使ってカイワレダイコンを ・排水がきれいになるまで,水を加え続ける。 育てよう [結果と考察] [実験方法] ・どの洗剤も石けんも,排 ・液体石けんの代わりに,界面活性剤ゼロの洗剤, 水1リットルをきれいにす 界面活性剤入り粉末洗剤(アメリカ製)を使う。 (標 るためには,24リットル 準使用量) の水が必要となる。 ・一週間,成長の様子を観察する。(茎の長さを測 ・排水の汚れについては, 定する。) 洗剤による違いは見られなかった。 [結果と考察] 界面活性剤ゼロ 界面活性剤入り 3 研究のまとめ 植物への影響があまりないと思っていた石けん も,標準量以上の濃度の溶液を使うと,カイワレダ イコンは育たなくなる。また,濃度を薄くすればす ・3日目まで は,同じ るほど,正常な成長に近づいた。「地球に優しい」 ように発芽し たが,4 という観点で考えると,標準量を守ることが大切で 日目以降は成 長に差が あると改めて考えることができた。 界面活性剤ゼロの洗剤は,重曹と炭酸塩を主成分 出て,界面活 性剤入り の洗剤で育てたカイワレダイコンはくさった。 としている。ほとんど泡立たず,すすぎが1回です ・界面活性剤ゼロの洗剤は,水や石けんに比べると むという良いところがある。洗浄力も合成洗剤と同 成長がよくない。 じくらいである。必要以上にすすぎに水を使う必要 [まとめ] もない。エコのことを考えると大変に良い洗剤であ ・界面活性剤が成長をはばむものではないか。 るが,高価であるために普及には時間がかかると思 (4)いろいろな洗剤を使って汚れの落ち方を比べ った。 合成洗剤は,少量でどんな汚れにも対応できる。 よう (3)で使用した界面活性剤ゼロの洗剤,アメリ 汚れた水をきれいな水にするには,20倍以上の カ製の洗剤について洗浄力を確かめようと考えた。 水が必要であり,驚いた。4年間の研究から得た, [実験方法] 洗剤の良い面やそうでない面を生活に生かしたい。 (指導者 ・白い布に円を描き,いろいろな汚れをつける。 岩野田中学校理科部) ・容器に,汚れた布と洗剤,水を入れて400回ふ る。 [結果と考察] 4 審査評 洗剤の研究の出口として,環境に着目した研究に ・石けん以外は水 なっています。目的に合った方法で丁寧な実験が行 溶性,油性の汚れ われています。写真やグラフを効果的に使って結果 をよく落とす。 をわかりやすくまとめ,標準量以上の洗剤を使用し ・石けんは,洗浄 ないことの大切さをデータを基に見出すことができ 力がおちる。 ました。今回,界面活性剤が,植物の成長を妨げる ・界面活性剤ゼロの洗剤は,泡立たないが汚れは落 のではないかと予想し,界面活性剤のない洗剤を使 ちる。 うなど,洗剤の種類だけでなく,成分にも注目でき (5)排水の汚れを比べよう た点がよかったと思います。
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