健プロ誌第8巻第1号 浜名湖SUPプロジェクト活動報告

浜名湖 SUP(Stand Up Paddleboard)プロジェクト活動報告
宮村 司1) 吉田 早織2)
佐野村 学2)
星川 秀利2)
1)健康柔道整復学科 2)心身マネジメント学科
The Activity Report from Lake Hamana SUP (Stand Up Paddleboard) Project
Tukasa Miyamura1), Saori YOSHIDA2), Manabu SANOMURA2), Hidetoshi HOSHIKAWA2)
要旨
Stand Up Paddleboard(以下 SUP)はサーフボードの上に立ってパドルで漕ぎながら水上を移動するマリンスポーツである。この新しいス
ポーツを通じて「環境」「健康」「地域」づくりを推進させることを目的として浜名湖 SUP プロジェクトは 2010 年発足した。
「健康」についての活動は、SUP の健康運動として強度を定量化するための研究の実施である。スピード、姿勢、ピッチを変えることによ
り目標とする運動強度を設定することが可能であることが示唆された。また、傷害調査では、SUP 競技の特性として経験 3 年以下の初心者は
頚部、肩関節周辺部痛、3 年以上の経験者は腰、背部痛の発症が認められた。さらに、競技中の心拍数の変動調査ではスタート直後に最大心拍
数に達する事例が確認され、今後中高年の愛好家に対しては、特にレース参加への準備は万全を期して臨むべきであることも示唆された。
浜名湖という自然環境に恵まれた地を生かし、非日常的な海上での運動習慣を身につけるひとつのアプローチとして SUP は有効であり、浜
名湖 SUP クラシックなどイベント開催することで会場周辺整備や、自然を見直すきっかけとなった。海岸のごみや海岸へ流されるごみの現状
を知り、海岸清掃活動を行う動機となっている。
今後 SUP のさらなる健康運動としての効果の検証と、SUP を通じた地域イベント等による環境を考えた普及活動を進めていきたい。
キーワード:SUP(Stand Up Paddleboard)、運動強度、傷害調査、競技特性、浜名湖 SUP プロジェクト
Abstract
Stand Up Paddleboard (SUP) is a marine sport that one can transport oneself on the water surface while paddling with the paddle
standing on a surfboard. Lake Hamana SUP project was launched in 2010. The purpose of the project was that it aimed to promote
"environment", "health" and "regional" development through this new sport.
Activities for "health" are conducting studies to quantify the intensity of SUP as a fitness exercise. It was suggested that one can set the
exercise intensity targeting by varying speed, paddling posture, and pitch. In addition, from the injury survey, participants who have
three-year or more experiences suffered from upper and lower back pain, however beginners had pain in their neck and shoulder because
of doing SUP. Moreover, some cases showed that it was reached the maximum heart rate immediately after start paddling at the begging of
the race. Therefore, it is suggested that recreational SUP users should be prepared carefully for the race.
Utilizing the land blessed with natural environment of Lake Hamana, SUP is effective as one approach to have the exercise habits in the
extraordinary environment such as on the water. It is also beneficial for the venue development around there by the events held, such as
Lake Hamana SUP Classic, and it created a chance to review the nature. It has become a motivation to know the current status of waste
flows to the coast and dirt out of the coast, to carry out beach cleanup activities.
This project will be continued to verify the effect of SUP exercise as a health and fitness excises, and to promote the dissemination
activities through the SUP local events considered environment matters.
Keywords: SUP(Stand Up Paddleboard)、instensity of exercise、injury survey、characteristic of SUP、
Lake Hamana SUP projec
背景
最大速度(Smax)を計測し、その後、速度条件(50%Smax、
浜名湖 SUP プロジェクトは 2010 年、SUP を通じて
「環
75%Smax)、パドルのピッチ条件(高ピッチ:40 回/分、
境」「健康」「地域」づくりを推進させることを目的とし
低ピッチ:20 回/分)
、姿勢条件(立位、膝立ち位)を変
て、浜松市北区地域自治体やマリンショップ、大学等の
化させ、
湖面でのパドリング運動を実施させた(写真 1)。
活動メンバーが中心となり、浜名湖周辺地域を活動拠点
その際の心拍数は心拍計(RS400、Polar 社)を用いて
とした任意団体である(図 1)。
記録した。
膝立ち位
立位
写真1
図1 本プロジェクトのコンセプト
姿勢条件
実験場所:浜名湖大崎海岸
ハワイが発祥である Stand Up Paddleboard(以下、
心拍数の計測:パドル運動中の心拍数の変化についてス
SUP)は、サーフボードの上に乗りパドルで漕ぎながら
タートからの通過時間から、200~250m に相当する区間
水上を移動する新しいスポーツである。水上移動すると
を推定し心拍数を平均した(図 2)
。
いう非日常的な経験ができ、サーフボードから落ちても
ケガの危険性も少ないことから、年齢や性別を問わず楽
しめ、日本においても現在普及しはじめている4)。
「健康」
「地域」についての取り組みについて報告する。
[
浜名湖 SUP プロジェクトのキーワードである「環境」
心
拍
数
]
拍
/
分
1.「健康」づくり
①SUP の健康運動としての運動負荷定量化の試み
時間[s]
目的:SUP は、サーフボードの上に乗るためバランス能
図 2 パドル運動中の心拍数の算出
力が必要であり、バドルで水をかくことにより体幹を中
結果:測定日は 2010 年 8 月 27 日、測定状況は気温
心として上肢から下肢まで全身の筋を用いる有酸素運動
33~38℃、湿度 48~56%、風速向かい風 3~7m/s、最大
であると考えられる。したがって、SUP を通して、バラ
速度(Smax)は平均 7.4±1.0(6.2~8.6)km/h であった。
ンス能力、筋力、有酸素能力の改善が期待でき、単なる
なお、4 名の被験者であったが、規定速度から大幅に外
レクリーションスポーツにとどまらず、健康づくりとい
れたデータは結果より除いた。
う観点から考えてもメリットの多いスポーツであると言
える。
SUP 運動中のスピードと心拍数については、立位・高
ピッチ条件で、50%Smax が 132bpm(49%)に対して 75%
さて、健康づくりの運動で最も大切なのが運動強度の
Smax では 159bpm(69%)であった(図 3)
。姿勢と心拍
設定である。適切な運動強度で実施しなければ得られる
数の変化については、75%Smax・高ピッチの条件では、
効果が少ないばかりか、逆に身体を危険な状況に追い込
立位が 147bpm(63%)に対して膝立ち位は 133bpm
むこともある。さらに、上記の想定される SUP の効果を
(52%)であった(図 4)。さらに、パドルピッチと心拍
検証していく上でも、運動強度が定量的に扱えることが
数について、高ピッチでは 147bpm(62%)に対して低
必要となる。しかしながら、SUP をこのような科学的な
ピッチ 129bpm(49%)であった(図 5)。なお、括弧内
観点から検討した研究はなされていない。
の数値は心伯予備量の相対値を表す。
そこで、本研究では、SUP がどの程度の運動強度があ
るのか、さらに運動条件を変えることで運動強度が変化
実験のまとめ:今回の実験でスピードの増加により心拍
するのかを検討することを目的とした。
数も増加し、姿勢の変化では立位から座位にすることに
方法:健康な男子学生 4 名に、全力でパドル運動を行い、
より心拍数は減少する。さらに高ピッチにすることによ
り心拍数が増加することが分かった。これは健康づくり
ャッジが波乗りのテクニックを採点するものである。
に効果のある心拍予備 50~60%が運動強度として姿勢
結果:競技者の年齢は、レース参加者では 40 歳代が全体
やピッチを変化させることで、実現可能であることが示
の 47%で、次に 30 歳代 25%、50 歳代 14%であった。
唆されたものである
1)2)3)
。なお、以上の内容について
は 2010 年第 69 回日本公衆衛生学会で発表した。
ウェーブ参加者では 30 歳代が 39%、40 歳代 32%、20
歳代 22%であった。
性別は、レース参加者のほとんどが男性であった。女
性は計 8 名(20 歳~50 歳)であり、この内 4 名は 41~
心
拍
数
50 歳代であった。ウェーブ参加者も、女性は 4 名 20~
[
拍
/
分
]
132
(49%)
159
(69%)
40 歳代であった。
競技活動歴は、
レース参加者では 3~4 年未満が 38%、
次に 5 年以上が 24%であった。2 年未満の参加は 28%を
占めた。ウェーブに関しては 1 年未満が 50%を占め、3
50% Smax
図3
75% Smax
SUP 運動中のスピードと心拍数の関係
年以上が 13%であった。
SUP のここ 1 年間の活動時間(1 週間平均活動時間)
は、レースでは 1 時間以内 5%、3 時間以内 15%、5 時
間以内 39%、10 時間以内 17%、15 時間以内 10%、20
時間以内 14%であった。
ウェーブでは 1 時間以内 25%、
心
拍
数
3 時間以内 34%、5 時間以内 20%、10 時間以内 17%、
15 時間以内 2%、20 時間以内 2%であった。
[
拍
/
分
147
(63%)
]
立位
図4
133
(52%)
膝立ち位
SUP 運動中の姿勢と心拍数の関係
他のマリンスポーツの活動の有無については、レース
参加者についてはアンケート回答者 71 名中 68 名が他の
マリンスポーツを行っていると回答、内訳はサーフィン
48 件、ウインドサーフィン 29 件、カイトサーフィン 3
件、カヌーなどのパドルスポーツ 7 件である。ウェーブ
では回答された 41 名中 35 名が他のマリンスポーツを行
っていると回答、内訳はサーフィン 19 件、ウインドサー
フィン 8 件、カイトサーフィン 7 件、カヌーなどのパド
心
拍
数
ルスポーツ 5 件であった。
[
147
(62%)
129
(49%)
SUP を開始してからの身体変化、違和感、痛みについ
て、レースおよびウェーブ参加者でいずれも約 50%に違
]
拍
/
分
和感やはり、痛みを感じた経験があることが分かった。
高ピッチ
低ピッチ
図5 パドルのピッチと心拍数の関係
傷害部位についてアンケートでは複数回答 144 件中、肩
関節周囲 27 件、背部 19 件、腰部 17 件、肘関節周囲 15
件、頚部 12 件、上腕部 10 件、腹部、膝関節周囲がそれ
ぞれ 8 件であった。
(図6)
。
②SUP 競技会における傷害調査
目的:SUP の競技参加者について傷害調査アンケートを
実施して、運動特性からの傷害の現状を調査することで
今後安全な健康運動としての予防対策としてのデータと
することを目的とした。
方法:平成 24 年 11 月 10 日~11 日に静岡県湖西市白須
賀潮見ビーチで開催された第 1 回全日本 SUP 選手権参加
者を対象に調査目的を説明し了承を得た 113 名(レース
部門 72 名、ウェーブ部門 41 名)に傷害アンケート調査
を実施した。
レースは決められたコースでそのタイムを競うもので
あり、ウェーブは制限時間内で規定回数を波乗りし、ジ
図6
SUP で発生する傷害部位
SUP による大きなケガ(2 週間以上の運動中止)につ
のストレスとなって現れる。すなわち体幹、下肢の支持
いては、90%以上で受傷歴は無かった。外傷の例として
性、安定性を基礎として、上肢の回旋運動連鎖を活かし
は肋骨骨折、膝関節靭帯損傷、下腿三頭筋肉離れ、フィ
たパドルワークの習得が重要であると思われる。
ンによる裂傷が挙げられた。
まとめ:今回の SUP 競技会での傷害アンケートにより、
現在 SUP による慢性的な痛みの継続(1 か月以上の症
活動歴 3 年未満の群と 3 年以上活動経験がある群での、
状の継続)の有無については、95%以上で慢性障害が認
傷害部位の特性が明らかとなった。初心者に多く見られ
められなかった。慢性障害として現在、膝関節、肩関節、
がちな「手こぎ」による肩関節周囲の痛み。経験者に見
腰部、肘関節の痛みを有する参加者が見られた。
られる腰背部を中心とした痛みである。それぞれ、SUP
特記事項として以下のようなコメントがあった。SUP
実施前のウォーミングアップでストレッチングの実施が
をはじめてから、ウエストが細くなった。腰痛が治った
重要である。また、体幹、下肢でのしっかりとしたバラ
(再発も無く身体の動きが良くなった)。体重が半年で
ンス保持能力を備えた上での上肢パドリングは、投球動
12kg 減。体幹が強くなった。肩、腕上半身が大きくなっ
作に例えられるように機能的な運動連鎖が必要な技術と
た。脂肪が減少して筋肉が増えた。背筋が伸び姿勢が良
して重要である。従って、下肢から体幹・上肢をスムー
くなった。3 カ月で 10kg 痩せた。
ズに動かせるよう協調性をもった無理のないパドリング
考察:本アンケートより SUP 競技者の活動歴 3 年以上の
技術を陸上で習得した後に、不安定な水面でのパドリン
群 45%と活動歴 3 年未満の群 55%に大別される 2 極化
グに移行することが、SUP を安全に楽しく実施するため
がみられた。なかでも今大会において活動歴が 1 年未満
に必要であると考えられる。
の参加者が約 25%含まれていることは特記すべき点で
③SUP 競技会における心拍変動についての調査。
あると思われる。普及著しい SUP 競技会においてその半
目的:SUP 競技会での運動強度の指標として競技者の心
数が、競技歴が 3 年に満たない選手が日本選手権へ出場
拍数変動を調べることにより、現在普及しつつある SUP
している。彼らの傷害件数は 79 件(65%、複数回答)
の、健康運動としての安全性を考える資料とする。
であり、肩関節周囲の痛みが 19 件(24%)と多数であ
研究方法:平成 24 年 10 月 13 日、浜名湖の北北西に位
る。次に頚部 10 件(12%)、上腕部と背部がそれぞれ 9
置する猪鼻湖で開催した、第 2 回浜名湖 SUP クラシック
件(11%)である。これらの傷害については、SUP の特
参加者より、本研究に賛同された男性 6 名と女性 2 名の
性である水面でのバランス保持能力が影響していると思
計 8 名に対して、心拍計(Rs400、Polar 社)を装着して
われる。SUP ボードのバランスを保持させるため、体幹、
競技スタートよりゴールまでの心拍変動を記録した。
下肢でのバランス機能が重要となるわけであるが、これ
結果:大会当日は快晴であり、1 周約 3km のコースを 3
がうまく保持できないと、いわゆる「手こぎ」と呼ばれ
周、約 9km のコースで実施した。
8 名中 6 名のデータを回収することができた(図7)。
る、上肢だけのパドリングを行うことで、肩関節周囲に
負荷が加わっているのではないかと予想される。頚部に
回収データでのトップは 55 分 45 秒、最終者は 1 時間 14
ついても体幹、下肢バランスが不安定であるために、姿
分 53 秒であった。心拍 4 が女性であり、他男性を含めた
勢がいわゆる腰が引けた状態により、脊柱の後湾(猫背)
年齢構成は 40 歳代である。スタート直後に心拍数は急激
に伴う首のすくみが起因するものと考えられる。これら
に上昇し 5 分前後から安定し定常状態が 50~60 分まで
の予防として体幹、下肢のバランス機能を向上させるト
つづく、その後徐々に低下をたどり、ゴール直前終盤で
レーニングの必要性を感じる。パドリング時の立位姿勢
低下傾向が無くなり、やや上昇がみられた。
を脊柱がしっかり伸びた状態でお腹を引き締め(適度な
腹圧を保つ)、体幹、下肢をしっかり固定して腰の回旋運
動を伴うパドリング技術の習得が有効であると思われる。
また 3 年以上のキャリアを持つ選手の傷害件数が 65 件
みがそれぞれ 10 件(15%)みられ、続いて肩関節周囲
拍
/
分
]
が 8 件であった。これらの傷害については、競技歴が 3
[
(76%、複数回答)であった。背部、腰部、肘関節の痛
心
拍
数
年以上と比較的水面上でのボードバランスコントロール
に慣れている選手と考えられるため、パドル推進力を増
すため、腰、腰背部にパドルストロークとしてのストレ
スが負荷となってかかっていると推測される。十分な体
幹や腹圧の支持がなされていないパドリングは腰背部へ
競技時間 [s]
図7
レース中の心拍数の変化
考察:健康づくりという観点から運動強度を考えた場合、
ゼミ生、アスレティックトレーナーサークル生を中心に
脂肪燃焼に効果があるとされる運動強度は心拍予備の
実施している。また、その年、第 2 回浜名湖 SUP クラシ
60~70%であると言われている 。カルボーネン法[目
ックをその会場を猪鼻湖東岸に移動して開催した(写真
標心拍数={
(220-年齢)-安静時心拍数}×運動強度
3)6)。第 1 回大会に引き続き、会場周辺海岸のビーチク
+安静時心拍数]2)を用いて、この運動強度を実現させ
リーン活動をアスレティツクトレーナーサークル生が中
るための心拍数を算出すると、今回の参加選手の平均年
心となって実施し、大会運営に協力した。また、イベン
齢を 45 歳とした場合、105~122bpm となる。一方、心
ト開催の際に、浜名湖 SUP プロジェクトの活動テーマで
肺機能向上させるためには、心拍予備の 70~80%で運動
ある「環境」について、さらなる自然環境への関心を持
3)、同様にカ
っていただけるようなディスカッションや、ゴミ持ち帰
ル ボー ネン法 を用 いると、 運動 中の心 拍数が 122~
り等を参加者に協力を求め、賛同を得た。実際に大会イ
140bpm であることが必要となる。今回被験者の平均年
ベントに参加した選手からは、浜名湖水の透明感や周辺
齢が 45 歳でレース中の心拍数が平均 170bpm 前後で推
景観を実際に見て感じる機会となり、改めて自然と一体
移していることを考えると、レース開始直後のスタート
となることの素晴らしさを再認識したというコメントが
3)
強度が推移することが効果的であるとされ
ダッシュでは最大心拍数(45 歳では 175bpm と推定され
る)に相当するような、かなり強い運動負荷が加わって
いたことが明らかとなった。
健康運動としてメリットの多い SUP であるが、中高年
の競技会においては急激な心拍数の上昇のリスクを考慮
して、段階的にペースを上げていくようにおこなうこと
が重要であると思われる。
「健康づくり」のまとめ
SUP によるパドリング運動は、有酸素運動として十分
写真2
ビーチクリーン活動の風景
な運動強度があることが明らかとなった。心肺系、脂肪
燃焼系などのトレーニングとして心拍数による運動強度
を設定することで簡単にその効果を期待できる。傷害に
ついても比較的発生頻度が少ないスポーツであり初心者
においては頚部、肩関節、経験者については腰背部の重
点的なウォーミングアップやコンディショニング、さら
に体幹を意識したパドリングにより傷害を減らすことが
可能になると思われる。
写真3
2.「環境」
「地域」づくり
SUP の大会風景
得られた。
SUP は、動力を用いない、環境にやさしい乗り物(ボ
ード)であり、SUP を通じた水との触れ合いから「環境」
に対する意識を高めることができる。また、海岸のみな
今年平成 25 年についても第 3 回浜名湖 SUP クラシッ
クの開催を予定している。
らず、SUP で水上のゴミを収集するなどの「クリーン活
「地域」づくりとしては、普及活動や競技会を中心と
動」を推進し、浜名湖の環境改善に役立てることが可能
したイベントの開催を通して、健康づくり、レジャー及
である。
び競技として SUP を実施する人が増加し、浜名湖を訪れ
平成 23 年に第 1 回浜名湖SUPクラシックを開催し、
る人の増加に繋がる。これらは、地域経済に良い効果を
大会会場スタートゴール地点となる猪鼻湖西岸地区のビ
もたらし地域活性に貢献できる。特に海岸線はサイクリ
ーチクリーン活動を、大会協賛の企業とともに、浜松大
ングロードや遊歩道が整備されており、イベント開催す
学健康プロデュース学部心身マネジメント学科アスレテ
ることでさらに有効利用され、郷土の自然を見直すきっ
ィツクトレーナーサークル生約 20 名で実施した(写真 2)
かけともなる。
5)。
平成 24 年は、SUP の運動強度の定量化実験の機会を
最後に
もち、その折には浜名湖大崎地区の実験研究の拠点を中
浜名湖を中心とした河川や遠州灘等も利用できる立地
心としてビーチクリーンを被験者学生や研究に参加した
条件で SUP は健康運動として用いることが可能である。
子供の体力向上から、中高齢者の健康維持、特に高齢者
の転倒予防まで、幅広い効果が期待できる。その取り組
みにより周辺環境についても考え、クリーン活動等への
積極的な参加を期待できる。また自然と触れ合う環境の
中での SUP はメンタルヘルスにも効果的であると思わ
れる。
今後 SUP のさらなる健康運動としての効果の検証と、
SUP を通じた地域イベント等の開催での普及活動を、浜
名湖 SUP プロジェクトとして進めていきたい。
謝辞
浜名湖SUPプロジェクトの主旨に賛同し、イベント
の準備、運営に協力していただきました関係者、奥浜名
湖ウインドサーフィンスクール、藤原図案、浜松大学(現
常葉大学)AT ゼミ生、ボランティアサークルサンダーバ
ードメンバーに心よりお礼申し上げます。
文献
1)財団法人健康・体力づくり事業財団編:健康運動実
践指導者用テキスト、南江堂、2007 年、154-159
頁
2)アメリカスポーツ医学協会編:運動処方の指針―運
動負荷試験と運動プログラム-、南江堂、1989 年、
38-50 頁
3)外岡立人、Heart Rate Training 心肺トレーニング-
その理論と実際-、枻出販社、1989 年、10-16 頁
4) 浜名湖SUPプロジェクトホームページ
事業コン
セプト http://www.hamanako-standuppaddle.com/
5)中日新聞
平成 23 年 8 月 25 日付朝刊
6)中日新聞
平成 24 年 10 月 14 日付朝刊