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2016 年 8 月 30 日
豪州経済に楽観的な 7 つの理由
要点
>
豪州経済についての懸念を耳にすると、まるで豪州
が長い間危機の中にいるような錯覚を覚えます。
>
しかしながら、豪州経済は深刻な景気後退に陥る
ことなくリバランスに成功し、資源ブーム崩壊後の
最も厳しい時期は過ぎ去り、公共投資への支出は
増加傾向、個人と企業の景況感は長期的にみても
高水準で、企業収益は底入れするなど、豪州経済
は決して暗い状況ではありません。
> 本レポートでは、豪州の経済と投資対象資産につい
て楽観的に見ている理由について論じています。
はじめに
資源ブームによる好況が終わりを迎えた数年前から、豪州
経済についての懸念する声が頻繁に聞かれるように
なりました。一方で景気後退を巡っては、市場でも様々な
意見が絶えず飛び交っています。今回のレポートでは、豪州
経済について楽観的に見ている 7 つの理由を論じています。

第一に、経済は巡航速度での成長が続いています。
今年の 1-3 月期の経済(GDP)成長率は 3.1%(年率)と
決して悪い数字ではなく、4-6 月期も同様の成長率に
なると予想されています。これは、豪州 GDP 成長率の
長期的な平均と同水準です。多くの先進国の GDP 成長
率を上回っています。直近の各国の GDP 成長率は、
米国が 1.2%、ユーロ圏が 1.6%、日本が 0.6%です。
また、豪州では前年比ベースの GDP で 25 年間連続
プラス成長を維持しています。

第二に、豪州経済はリバランスが進みました。資源関連
投資の大幅な減少と輸出価格の急落による国民所得の
減少は、住宅建設と堅調な個人消費、サービス輸出の
回復、数量ベースでの資源関連輸出の回復などによって
相殺されました。
豪ドル安がサービス輸出を下支え
輸出12ヵ月移動平均
100万豪ドル単位
教育
観光
経済には悩み事はつきものです。
完璧な経済など存在せず、豪州経済も弱点を抱えています。
失業率は 5.7%、活用されてない労働力の割合は 14%以上
に達しています。シドニーとメルボルンの住宅価格は非常に
高く、住宅市場には過熱感があります。また、アパートの供給
が過剰になる懸念があり、家計の債務負担は高水準です。
豪州の歴史のなかで最も好況な時期は終わり、投資と国民
所得は打撃を受けました。豪ドルは依然として高すぎる水準
で推移しており、2015 年 7 月-2016 年 6 月期の上場企業の
業績は、7%の減益となりました。
賃金成長やインフレーションも緩慢な動きが続いています。
また、与党が過半数に満たない上院で法案を通すのは困難
を伴い、政治は適切な財政運営や抜本的な構造改革を実行
する力を持ち合わせていません。このような懸念が繰り返し
叫ばれています。もちろん経済には悩み事はつきものですが、
終わることのない懸念の追求は、危機的状況が絶え間なく
続いている印象を与え、良いニュースへの関心を遠ざけて
しまっています。
豪州経済に楽観的な 7 つの理由
豪州経済を楽観的に見ているいくつかの理由があります。
出所:ABS、AMPキャピタル
この結果、西オーストラリア州とノーザンテリトリーの資源
ブーム終焉による成長鈍化は、ニューサウスウェールズ
州とビクトリア州の堅調さによって相殺されています。
州別に見る主な経済指標
前年比(%)
小売
売上高
建設
許可
件数
不動産
最終
需要
住宅
価格
雇用
失業率
順位
ノーザンテリトリー
3.3
4
1.5
0.5
3.1
4.7
-1.3
-3.1
4.2
-2.4
-34.4
26.5
-28
0.7
3.9
3.2
-1.8
-4.2
0.5
2.1
-16.8
9.1
7.5
3.9
-5.6
4.8
6.2
-7.6
2.4
3.2
1.1
-0.1
1.6
-1.9
0.6
5.2
5.9
6.1
6.3
6.4
6.2
3.5
2
1
6
8
4
5
7
オーストラリア
首都特別地域
3.8
-2.3
2.9
2.9
2
3.6
3
ニューサウスウェールズ州
ビクトリア州
クイーンズランド州
西オーストラリア州
南オーストラリア州
タスマニア州
出所:ABS、コアロジック、AMPキャピタル
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

第六に、豪州上場企業の業績が底打ちしつつあります。
2015 年 7 月-2016 年 6 月期、豪州上場企業の一株
当たり利益(EPS)は、8%減少となりました。資源関連
企業の 47%の減益と銀行の 4%の減益が大きく影響を
及ぼしました。一方で、全体の 62%の企業は 1 年前と
比べて利益が増加し、利益増減の中央値はプラス 4%と
なっています。54%の企業で決算発表日に株価が
アウトパフォームする結果となっており、業績の内容が
事前予想よりも悪くない評価であったことを裏づけて
います。資源関連企業の減配が影響し豪州企業全体
では 10%の配当減となりましたが、全体の 86%の企業
は配当額を維持もしくは増配をするなど、資源以外の
他セクターにおいて、配当方針はさほど悪くない状況で
す。
(%)
豪州企業の配当結果(前年比)
←
増
配
↑
横
ば
い
→
第三に、コモディティ価格と資源セクターにおける投資
減少の最悪期は、過ぎ去ったと見られます。過去 10 年
で最も高い水準に達した後に急落に転じた鉄鉱石や
金属、エネルギーなどの資源価格は、需給の均衡化と
米ドルの上昇トレンドが一服したことから、安定化に
向かっています。コモディティ価格が次の本格的な上昇
トレンドを迎えるのは、まだまだ先になると見られるもの
の、市場の安定化は交易条件と国民所得を幾分か回復
させるでしょう。
資源ブームのピーク時は GDP に占める資源投資の
割合は 7%にも達していましたが、約 3 年間の調整を
経て、現在は長期の平均的水準である GDP の 1-2%
相当となっています。
注目すべき点としては、エンジニアリング関連の建設が
長期的なトレンドの下限近辺にあるため、資源関連の
投資減少の最悪期が過ぎ去った可能性を示唆しており、
来年からはマイナスの影響が幾分緩和されるでしょう。
これは、資源関連の投資減少が過去 3 年間に渡り GDP
成長率(年率)を 0.5-1%程度押し下げていたことを
踏まえると、非常に重要でポジティブな進展と言える
でしょう。
減
配
決算発表シーズン
出所:AMPキャピタル
資源企業の利益が底入れし、非資源企業は引き続き
成長が予想されることから、2016 年 7 月-2017 年 6 月
期の豪州企業は巡航速度での成長が期待されます。
2016 年 7 月-2017 年 6 月期の利益成長はプラス 8%
程度と予想されます。
豪州株式市場EPS成長率


豪州企業全体
第四に、公共インフラ投資が大幅に増加しています。
これは、ジョー・ホッキー前財務大臣が提唱したアセット
リサイクル・イニシアチブによるものです。特に、
ニューサウスウェールズ州とオーストラリア首都特別地
域において、既存の公的インフラ施設を売却、民営化し、
その資金にて新たなインフラ投資を行うという動きが
活発化しています。来年予想される住宅建設ブームの
鈍化は、資源関連投資の底打ちとインフラ投資の増加に
よって相殺されるものと見ています。
第五に、経済への不透明感にも関わらず、個人と企業の
景況感はそれぞれ過去の長期的な平均水準に位置して
います。理想としてはもう少し高い水準を期待しますが、
決して悪くない水準です。
豪州における消費者と企業の景況感
NAB企業景況感
(左軸)
ウェストパック/メルボルン
消費者信頼感
(右軸)
(年)
コンセンサス
予想
資本財
金融除く
(年)
出所:AMPキャピタル、UBS

最後は、社会的な観点から豪州に楽観的な理由です。
豪州は、より健康で長寿な社会となりつつあります。豪州
は、平均寿命の長さでは世界第 4 位となっています
(82.8 歳)。ある調査によると、世界で最も暮らしやすい
都市ランキングで、シドニーが 10 位、メルボルンが
15 位にランクインするなど、生活のしやすさの面でも
高い評価を得ています。豪州は移民の受け入れに成功
し、多くの先進国とは異なり人口の増加が続いています。
英国や米国では格差の拡大が顕著ですが、豪州では
著しい格差の拡大は見られません。
2016 年リオオリンピックにおける各国のメダル獲得数に
おいて、人口百万人あたりのメダル数は、豪州が 1.2 個
(英国が 1 個、米国は 0.4 個)と、メダル獲得総数上位
10 位の国を人口当たりのメダル数で上回っています。
出所:オーストラリアナショナル銀行、
ウェストパック/MI, AMPキャピタル
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想定される投資家への影響
低いインフレ率と豪ドル高の是正のために 豪州準備銀行
(RBA)は追加の利下げが必要ですが、豪州経済の堅調さを
踏まえると、弊社としては次の利下げが最後になると見て
います。いずれにしても、豪州においてゼロ金利や量的緩和
が必要になることはないでしょう。弊社は、様々な理由を基に
豪州資産(シドニーとメルボルンにおける住宅市場が過熱
している地域を除いて)に対し楽観的な見方をしています。
グローバル経済における不確実性によって豪州株式は短期
的に不安定な展開となる可能性はありますが、長期的な
トレンドとしては上昇傾向が続くと見ています。
シェーン・オリバー博士
インベストメント・ストラテジーヘッド&チーフ・エコノミスト
AMP キャピタル
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