民主党大学プレイベント 第1部 パネルディスカッション「尾木ママと語る

2014 年 5 月 11 日(日)17:30~19:19
京王プラザホテル5階「コンコードA」
民主党大学プレイベント
第1部 パネルディスカッション「尾木ママと語る若者論」
開会のあいさつ
○栗山雅史(民主党青年委員会委員長代理・兵庫県議会議員)
皆さん、こんにちは。たくさ
んの方にこのようにお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。全国から、そし
て多種多様なお仕事あるいはお立場の方々が、きょう 300 人を超えてお集まりいただいており
ますことにまずもって御礼申し上げます。ありがとうございます。(拍手)
本日は「民主党大学プレイベント」ということで、本日から秋にかけまして民主党大学の講
座を進めていくことになっております。きょうは初回、尾木直樹先生、いわゆる「尾木ママ」
ということで、先ほどごあいさつさせていただきました折に「尾木先生、と呼んだらいいんで
すか?」と聞きましたら、
「尾木ママで結構」ということでございますので、ぜひ親しくパネル
ディスカッション、また質疑応答もしていただければと思っております。
きょうのプレイベント、司会を務めさせていただきます、民主党青年委員会委員長代理の兵
庫県議会議員の栗山雅史と申します。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
それでは、第1部といたしましてパネルディスカッションを進めさせていただきたいと思い
ます。最初に、このたびの民主党大学の学長に就任いただきます泉健太衆議院議員よりごあい
さつをいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
○泉 健太(民主党大学学長・衆議院議員) 皆さん、こんにちは。この日曜日、主に関東を中
心に全国から申し込みをしていただいたたくさんの皆さんに集まっていただいて、本日の民主
党大学プレイベントを開催させていただきます。学長の衆議院議員泉健太と申します。どうぞ
よろしくお願いいたします。(拍手)
既に海江田民主党代表も到着しておりますし、そして青年委員長の津村啓介衆議院議員初め
青年委員会の役員もみんなそろっていますが、私たちは政党に所属しているメンバーなんです
ね。政党の役割というのは、もちろん議会の中で議案を審議し、政府をさまざまに監視する、
こういう仕事があるわけですが、一方では、国民の皆さんの税金をいただきながら仕事をして
いるという立場でもあります。そういった意味では国民の皆さんと対話をする、そして一緒に
考える、自分たちから発信するだけではなく、皆さんから知恵をいただく、こういうことも含
めてさまざまなイベントをしながら皆さんに情報を発信し、また皆さんから吸収する。そうい
う取り組みをしたいと思い続けてきました。
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特に青年委員会というのは、党の本部、中央がなかなか全部できないきめ細やかなことや新
しいことを大胆にやっていこう、そのために存在しているような組織でもありますので、今回
の民主党大学プレイベントでは尾木さんを呼んでパネルディスカッションをすることを考えて、
実行委員会みんなでつくってこの企画をさせていただくことになりました。またシリーズで毎
月1回程度、いろいろな体験を皆さんにしていただけるような企画を考えているところです。
ぜひきょうのプレイベントを通じて皆さんが自分自身が成長するつもりで、自分自身がいろ
いろなものを吸収したり、気づきを得るつもりで、この民主党大学に参加していただきたいな
と思います。この民主党大学に参加することが、もう民主党以外の政党には出入り禁止になる
とか、そんな話ではありません。この場を使って皆さんが学んでいただくこと、そして私たち
自身も学びになるということ、そう思ってこの企画をさせていただきました。
あらためて皆さんに紹介したい我々のこの企画の中心人物がおります。津村啓介青年委員長、
登壇をお願いします。
[津村青年委員登壇、拍手]
○泉
私は今、民主党の国民運動委員長という仕事をさせていただいていて、そして青年委員
会の顧問をしているわけですが、今回、ぽっと学長にはさせていただきましたが、実質的なリ
ーダーは津村議員で、仲間たちを引っ張ってやってきてくれました。せっかくですので一言皆
さんにごあいさつをお願いします。(拍手)
○津村啓介(民主党青年委員長・衆議院議員)
過分なご紹介をいただきました、民主党青年
委員長を務めております津村啓介と申します。
この民主党大学プレイベントの意義は、今、泉学長からお話のあったとおりです。
「大学」と
いう名前がついておりますが、偉い先生が皆さんに教訓を垂れるというよりは、むしろ十数年
を経た民主党、ちょうど1年前のきょうは、私たちは「民主党大反省会」を開いておりました。
それから1年たって私たちも新しい綱領のもと、新しい歩みを始めております。そんな今、皆
さんと同じ目線で、皆さんから若いセンス、新しいご意見をしっかりといただき、受け止めな
がらそれを形にしていく。きょうはその第一歩と考えております。
第1部は尾木ママはじめいろいろなお話をまずみんなで聞きながら、第2部が大事です。第
2部には 91 人の地方議員・国会議員が、きょうご参加の 200 人、300 人の皆さんと一緒に一つ
のテーブルを囲んでお話をさせていただきます。ぜひ最後まで残ってたくさん話をして帰って
ください。よろしくお願いします。(拍手)
○泉
ありがとうございます。
「政治家と話す機会がない」「政治家なんて話をしてもどうせ聞いてくれない」、そんなイメ
ージだけの政治はもう要りません。皆さんが主役です。ぜひきょうこの機会にさまざまな勉強
をしてもらって、そして政治家と思い切って交流していただきたいなと思います。
それでは民主党大学プレイベント、スタートさせていただきます。どうぞよろしくお願いい
たします。(拍手)
○栗山
泉学長、そして津村青年委員長、ありがとうございました。
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代表あいさつ
○栗山
この民主党大学プレイベントにきょうは海江田万里民主党代表もお越しいただいてお
ります。ごあいさつをいただきたいと思います。代表、よろしくお願いいたします。(拍手)
○海江田万里(民主党代表・衆議院議員)
皆さん、民主党大学へようこそいらっしゃいまし
た。ありがとうございます。
実はこの民主党大学を始めるに当たりまして、少し心配していたんです。最近、民主党はあ
まり人気がありませんから。特に若い人たちに人気がないんですね。せんだってゴールデンウ
ィークに幕張メッセで、ニコニコ動画が主催します「ニコニコ超会議」というのがありました。
この中で、参加された方いらっしゃいますか。
[参加者が挙手]
お~、いたね、やっぱりね。全国から 22 万人というんですね。民主党もブースを出しまして、
他の政党もそれぞれブースを出していましたが、私もそこで少しお話をさせていただいたんで
すが、やはり他の政党、特に自民党はたくさんの人が来ていましたね。民主党は少なかったん
です。少なかったけれども、ずっとそこで私の話や、あるいは他の人の話を聞いていた人たち
は大変熱心な人たちですから、決して数の多さ少なさを云々するわけではないんですが、ただ
私は、民主党というのは若い人たちのことを本当に考えている政党だということ、このことが
やはりまだまだ伝わっていないんだなぁということをつくづく思ったんです。
民主党は昨年、綱領を定めました。先ほど津村さんあるいは泉さんからもお話がありました
が、一昨年 12 月の総選挙で大敗北を喫して、もう一回民主党の立て直しをしなければいけない
ということで、そのとき、民主党というのはどういう考え方を持った人たちが集まるのか、そ
の集まった人たちが何をしていくのかということを、政党ですから「綱領」」という形で明らか
にしたわけです。民主党の目指す社会というのは「共生社会」、ともに生きる社会です。男性も
女性も、若い人もお年寄りも、障害のある方もない方も、とにかくみんながそれぞれ居場所と
出番のある社会をつくっていこうということ、これが民主党の目指す「共生社会」、共に生きる
社会です。そしてその後に、民主党というのは未来に対して、未来の世代に対して責任を持つ
政党だということも実は書いてあります。今の世代だけではない。
特に、今は参政権がありますのは 20 歳以上、つまり選挙権は 20 歳以上、被選挙権は 25 歳以
上とか 30 歳以上となっています。せんだって憲法改正の国民投票法につきましては、施行から
4年以内に 18 歳以上にしますよと決めましたが、まだ選挙権などは 20 歳のままであります。
20 歳の人たちは選挙の際に自分の一票を通じて政治に対して物を言うことができる。ただ残念
ながら若い人たちの投票率が低い。それから 20 歳以下の人たちは、残念ながらまだ投票権がな
い。しかし私たちは、投票権のない人たちのことも考えて政治をやらなければいけない、政策
を決めていかなければいけないと思っています。
この4月1日から消費税が上がりました。皆さん買い物をするときに8%の消費税を払って
いるんですが、特に私たちは消費税は社会保障の制度を安定させて、充実させる、それこそき
ょうお集まりの皆さん方が 60 歳(?)を過ぎたとき、あるいは 70 歳になったとき、今の制度
は 65 歳からですが、しっかり年金がもらえるようにしなければいけない。だから今 20 歳の人
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は、これから 40 数年後ですが、そのときにもちゃんと日本の国に年金の制度が残らなければい
けない。そのためには安定した税収が必要です。特に基礎年金の2分の1は税金で賄いますよ
ということを言っていたんです。消費税が上がるまで、実は基礎年金の税金で賄う部分は3分
の1でした。じゃあその足りない部分をどうしていたかというと、これは国債を発行して賄っ
ていたんです。国債は今、日本の国は 60 年で返済することになっています。60 年ということ
でいうと、私は自分の年はあまり言いたくないんですが、実はことし 65 歳になったんですね。
「そう見えない」と言う方も多いんですが、実際には 65 歳です。
日本の国、ことしもまた国債を発行して借金をしました。この国債の借金に対して私がおつ
き合いするのはせいぜいあと 20 年じゃないですか。20 年は欲張りだという声も聞こえてきそ
うですが、まあ、あと 20 年ぐらい。だけど、きょうお集まりの若い方たちは、まさにこれから
60 年間おつき合いをしていかなければいけないわけです。だから私たちは、国債で次の世代に
借金を押しつけるよりも、今の世代で何とかこれを賄っていきたいねということで実は消費税
の問題に賛成したという経緯もあるんです。
もちろんそれだけではありませんよ。いろいろな要素がありますが、どういう政策を選ぶか
というときも実は民主党は次の世代のことを考えて政策を選んでいかなければいけないなとい
うことをいつも考えている政党である。このことはぜひご理解をいただきたいんです。
そういう思いがあるから、若い人たちに民主党は人気がないというのは非常に残念なことで
ありまして、今回も実は私は内心、心配していました。一体何人ぐらい集まるのだろうかと。
そうしたら今、栗山さんからお話がありましたが 300 人以上。本当はもっと希望者はいたんで
す。だけど申しわけありませんから抽選でということで、どういう抽選をやったのか私、よく
わかりませんけれども、きょうここにこれだけの方にお集まりをいただいた。しかも北は北海
道、南は九州・沖縄から。しかもいろいろなご職業の方、高校生もいらっしゃいますね、何人
かいらっしゃる。それから美容師の方もいらっしゃる。きょうがあるので、きのうちゃんと美
容院に行ってきました。それから弁護士の方もいらっしゃる。デザイナーの方もいらっしゃる。
介護の現場で働いている介護士さんもいらっしゃる。いろいろな立場の方々、いろいろなご職
業の方々に集まっていただいた。私は大変うれしく思っています。
きょうがキックオフです。最後が9月になりますね。春香クリスティーンさんと一緒にディ
スカッションをやりますが、月1回ぐらいのペースでこの民主党大学、開催しますので、でき
たら毎回参加していただいて、そして最後は全部参加した人にはしっかりとした卒業証書も差
し上げようかなと思っております。
きょうは私が長い話をするよりも尾木ママ。なんで“ママ”なのかちゃんと知っていますよ。
さんまさんが名づけたそうです。それから大和さん。それから民主党のホープの細野さん。そ
ういう人たちのパネルディスカッションがありますので、限られた時間でありますが、どうぞ
有意義な時間を過ごしていただきますよう私から一言ごあいさつを申し上げました。重ねて御
礼申し上げます。きょうはようこそお集まりいただきました。ありがとうございました。
(拍手)
○栗山
海江田代表、ありがとうございました。海江田代表は次の公務がございますのでこれ
で退場されます。それでは皆さん、大きな拍手でお送りいただければと思います。(拍手)
[海江田代表退出]
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出席国会議員を紹介
○栗山
それでは、次のパネルディスカッションに向けまして舞台の設営をさせていただきま
すので、しばらくお待ちいただきたいと思います。その間に国会議員の皆様のご紹介をさせて
いただきたいと思います。
まず、民主党幹事長代行をお務めいただいております菊田真紀子衆議院議員でございます。
(拍手)
そして民主党広報委員長をお務めの白 眞勲参議院議員でございます。(拍手)
最後に、あらためまして、先ほどごあいさつもさせていただきました青年委員長の津村啓介
衆議院議員でございます。(拍手)
パネルディスカッション 「尾木ママと語る若者論」
○栗山
それでは、これから 19 時ごろまで皆さんにおつき合いいただきたいと思います。最後
のほう 15 分程度、質疑応答もさせていただく予定でございますので、よろしくお願いいたしま
す。
進行につきましては泉学長に行っていただきますが、私のほうからパネラーの皆さんのご紹
介をさせていただきたいと思います。それでは後方をごらんいただければと思います。
まず、私たちの仲間でございます国会議員の若手代表として、先ほど“ホープ”とご紹介い
ただきました細野豪志衆議院議員です。どうぞお入りください。
[細野議員入場、拍手]
続きまして、若者の代表ということで「僕らの一歩が日本を変える。」代表、青木大和さんで
す。どうぞお入りください。
[青木氏入場、拍手]
教育評論家で法政大学教授の尾木直樹さん、尾木ママ、どうぞお入りください。
[尾木氏入場、拍手]
あらためまして、パネラーのお三方でございます。どうぞきょうはよろしくお願いいたしま
す。(拍手)
それでは、以降の進行は泉学長にお任せいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○泉
それでは大切な時間、せっかくですのでなるべくパネラーの皆さんにお話をしていただ
きたいと思いますが、かわいいいですね、尾木さん(笑)。入場したときになんかホッとします
ね。とてもいい雰囲気、オーラを持っておられる方だなと思います。既にたくさんカメラが構
えられていますが、発信も
どんどんしていただきながら、楽しいシンポジウムにしていきた
いなと思います。
まず、このプレイベントですが、尾木ママ、細野さん、そして青木大和さんに来てもらいま
した。
「尾木ママと語る若者論」ということです。僕ら、と言っても僕はもう若者じゃなくなっ
ているのかもしれません。自分の実感としてはまだ若者のつもりですが。日本に生まれて幸せ
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だなぁと思うんです。考えてみたら、今世界では学校が襲撃されて少女たちが拉致される、そ
ういう国もあります。物を言えない国もあります。通学に 20km 通わなけなければいけない国
もあります。世界あまたある国の中で、こんなにいい環境で生活できている日本。それはそれ
ですごいことだと思わなければいけないですね。
だけど、みんな幸せですか?どれぐらい自分のやりたいことをやれていますか?
本当の幸せとか、本当の生き方とか、自分の可能性とか、人から言われたものではなく、自
分のものって何ですか?生きづらさはないですか?
こういうところを考えてみると、まだまだいろいろな、自分自身の課題というのが見えてく
るのではないかな、そう思っています。そんなそれぞれの課題を見つけられるようなきょうの
シンポジウムにしたいなと思っています。
まずはお三方に自己紹介をしていただきながら議論を深めていきたいなと思います。それで
は私に近い順からで恐縮ですが、早速尾木ママ、自己紹介をお願いいたします。(拍手)
○尾木直樹(教育評論家・法政大学教授)
すみません、立ちますね。立ってもあまり変わら
ないんですが(笑)、自分の職業柄、立たないとなんか気合が入らないの。これでも気合入って
きたのよ(笑)。
教育評論家の尾木ママです。正式には法政大学の教職課程センター長で教授の尾木直樹と申
します。なぁんて、全然違うように聞こえるでしょう?そうなのよ(笑)。
僕は 26 歳で高校の教師になりました。ことしで実に 40 年なんですよ。いやいや、若く見え
るんだけどね、僕、67 なの。ウーン、元気で困ってます。今の年寄りは元気なんですよ。これ
活用してください、どんどん、ええ。
とにかく 63 で“尾木ママ”になっちゃったんですよね。夢にも思わなかったです、まさか“マ
マ”になるなんて。きょう「ママの日」だから、カーネーションつけてきたのよ。(拍手)
なかなかねぇ、世界の人々が自分を祝ってくれる。うれしいです。
そんなんで“ママ”になってから、
「それはもともとのキャラなのか、いろいろなことをつく
っているのか」とか言われるんですが、素のままなんですよ。僕、34 からずっと NHK なんか
の番組に出ていたんですが、これまでがつくっていたんです。つまりオフィシャルなスーツ着
てネクタイ締めて、
「三つ重要な問題点があります。第1に、第2に、第3に」って、こうやっ
てたの。だからそのころは僕、頭を使っていたんですよ。頭で考えたことを音声に出してしゃ
べる、頭で考えたことを書いて岩波新書になる、こういう生き方だったんです。
ところが、さんまさんに“ママ”と言われたとたんに、みんながママ、ママって僕のこと言
うもんですから、
「素のままでいいんだな」ということを人生で初めて、63 になって、
「え?素
のままで受け入れてくれるんだ」というので、喜びでした。だから何も気を使わなくていいの
よね。チョー楽よぉ、女房としゃべってるままですもん。それで味をしめてしまって、どんど
んママ度がエスカレートしてるの。
何が言いたかったのかというと、
「ありのままに今を輝く」という生き方ができるようになっ
たのが 63 からなんですよ。それまでは自分の頭で考えたことを音声とか文字にしてきたんです
が、今立っていてもそうなんですが、皆さんに失礼になったら大変なんですが、頭全然使って
ないの。どこを使っているかというと、心なんですよ。心だけ動かして、それを今、音声にし
ているんです。だからこのごろ書く僕の本はほとんどが心で動いたことを文字にしていってい
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るもんですから、ママ的なの。句読点のかわりにハートマークが付いているのよ(笑)。ちょっ
とやり過ぎだと本人も思っているんですけれども。
こんなぐあいにして、今、日本の子どもたちや若者たち、生きづらさということが言われる
んですが、「ありのままに今を輝いて」、それで十分なんだという社会になればいいなぁという
のが僕の願いです。
ちょっと長い自己紹介になりましたが、終わります。元気です。(拍手)
○泉
そういえば、きょうはママの日でしたね。
それでは細野さん、お願いします。
○細野豪志(衆議院議員)
皆さん、こんにちは。細野豪志と申します。きょうは尾木ママの
引き立て役をやろうかなと思ったんですが、引き立てる必要は全然ないことが今よくわかりま
した(笑)。
自己紹介ということですが、私は 42、もうすぐ 43 ですね。
「若者」というと、青木君が今幾
つかな?
○青木
20 歳です。
○細野
20 歳になったか。高校生のときから知っているので、「青木君」ということで申し上
げたけれども、彼より倍以上生きているので、若者と言えるか、若者からそろそろ脱している
というか、若者と言えないか、きょうはそういう微妙な年の人も多いような気がしなくもない
ですが、そういう年に当たります。
初当選したとき 28 だったんです。かれこれ 15 年ほど時間がたちます。その間、若い人たち
とできるだけ一緒に考えながら政治をやりたいと思ってきたんですが、実は結構、失敗を繰り
返してきましたね。なかなか自分の考えていることが若い人に届かないとか、若い人たちが何
を考えているのかわからないとか、そういうことを繰り返してきて、その努力は継続してきた
んですが、そういう形で 15 年間政治をやってきました。
去年、幹事長をやめましてもう一回、3年ほど震災、政権ということがあったので、それに
とにかくかかわらなければならない時間だったから、もう一回若い人たちと正面から向き合お
うと思いまして、いろいろな人と話をしました。そして気がついたことは、若い人は、と一ま
とめに言うのはちょっと失礼なんだけど、私が出会った若い人は、自分たちが 20 年前とか 20
数年前、10 代とか 20 代の前半を生きていた時代以上に、社会のことに関心がある人が多い。
個人的な幸せとか、自分がどれぐらいお金持ちになるかとか、そういったことへの関心よりも、
むしろ社会の中でどう生きていくかということに向き合っている人が非常に多いなと。最近は
そういう意味で、若い人と接することで何かこちらから伝えるというよりは、若い人たちから
なるほどな、と思う話を聞かせてもらうことが多いんです。きょうはそういう機会になれば本
当にいいんじゃないかなと思っています。
もう一つだけ自己紹介を兼ねて申し上げると、私は学生のときに政治家になりたいと思った
んです。一番大きなきっかけは阪神・淡路大震災でした。大学4年生のときにあの大きな地震
がありました。2ヵ月現地でボランティアをして、その中で政治がもっとやれることがあるん
じゃないか、自分は政治家になるべきではないか、そんなことを感じてこの世界に入りました。
きょう来ておられる方は、政治や社会に関心がある方が多いと思うので、おそらく東日本大震
災のことにいろいろな形でかかわっておられるのではないかと思うんですが、ぜひ若い人には
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そこはかかわってもらいたい。なぜならば、今の東北、特に福島の問題というのは、残念なが
ら間違いなく 20 年、30 年、もしかしたら 50 年後まで残る問題なんです。そのことを考えたと
きに、若い人たちにそのことにかかわってもらうことで、大変な問題があるけれども、それを
乗り越えるきっかけになるのではないかな、なんて思っています。
ですからきょうは、若い人たちとの交流もそうですが、東日本大震災のことについてもお互
いに触れて、何がこれからできるかを考えるきっかけにもなればいいかなと思っています。ど
うぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
○泉
はい、それでは青木大和さん、お願いします。
○青木大和(「僕らの一歩が日本を変える。」代表)
皆さん、こんにちは。たぶん、ここにい
る皆さんと同年代だと思うんですが、今 20 歳で、青木大和と申します。慶応義塾大学の法学部
に通っていて、「僕らの一歩が日本を変える。」という、若い人と政治をつなぐ団体の活動を約
3年になりますが行っています。それ以外にも別の NPO で、今、結構議論が盛んになっている
18 歳選挙権の実現とか、そういうことを高校時代から活動してきました。
僕は 15 歳のときに一人でアメリカに渡りました。2009 年だったのでオバマ政権が誕生した
直後で、自分自身がアメリカに飛び込んだときに、政治というものを身近に感じるきっかけが
アメリカの中ではすごくありました。留学を終えて日本に戻ってきたときに、日本にはそうい
う環境がまだまだ不足しているなということを切実に感じて、じゃあ自分自身が何かできない
かなと思って、若い人と政治の架け橋になれればなと思って活動してきました。
きょうはお二方がメインで、僕はどちらかというと若者代表みたいなところで来ているので、
僕の自己紹介はここら辺にして議論のほうに入れればなと思います。僕は2部の交流会にもい
るので、同世代の皆さんと対面でお話しするほうが得意なので、1対1とか2対1とか小さい
ところで皆さんとゆっくりとお話しできればなと思っています。きょうはよろしくお願いしま
す。(拍手)
今の若者をどう見ているのか
○泉
ありがとうございます。今、お三方からご紹介いただきましたが、おそらく会場から見
れば、並んでいる3人の方々は相当自分らしい生き方をしている人たちと見えるかもしれませ
ん。だけど、人間ってそんなに変わらないんですよね。みんな可能性を持っているはずだと思
います。
その上で尾木ママ、今の若者をどう見ているのか。いろいろなところでお話しされていると
思いますが、せっかく「若者論」ですから、今の若者をどう見ているのか、また、どうしてそ
う見えるのか、その辺をまずは語っていただきたいと思います。
○尾木
今気がついたら、青木さんが 20 代でしょう、細野さんが 40 代でしょう、私が 60 代。
青木さんは僕の3分の1しか生きてないのよ、おかしい~(笑)。でも、おっしゃったとおりで
すよ、心の中は 25 ですもの、変わってないの。
「今の若者」論なんですが、本当に僕、一時期苦しみました。2年前、3年前までぐらいは
僕は若者の気持ちがすごくわかる立場にいると思ってたんですよね。ところが見えなくなって
きて。入社式が終わってその日のうちに辞める子が出てきたり、去年あたりは、なんと午前中
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で辞める子の話を2人も聞いたり、これは一体どうなっているのかと。30 代、40 代の人に「自
信がない。どうすればいいのか」と聞かれても、僕も見えないというので相当苦しんでいたん
です。それで実際に若者たちと座談会をやって、一体何を考えていて、何が苦しいのか、じか
でガチでぶつけてもらって、そして探り始めたぐらいなんですね。
探ったときの本が後ろで売られているんです。出て左手です(笑)。あのね、何というんだっ
け。
○泉
○尾木
『生きづらいのは「ゆとり世代」だから、と思っている君たちへ』
という本にまとまってるの(笑)。自分の書いた本が言えないなんて、この~、おかし
いの~(笑)。
それで苦しんできたんですが、わかりましたね。実は先週、BS11 というテレビ局で、寺脇研
さん、「ミスター文科省」と言われた方ですが、「ゆとり教育」を生み出した人というので社会
的に大変なバッシングを受けた方なんですね。その寺脇研さんと尾木ママが生放送で1時間近
く、
「ゆとり教育」って何だったんだろうというテーマで議論しました。今ようやく見えてきた
んですよ。社会的にも若者のすばらしい側面、今まで悪口だけいっぱい言われたんですよ、
「ゆ
とり」
「ゆとり」だからというので、まるで枕ことばのようにして若者へのバッシングがあった
んですが、何が転機だったと思われますか。
急激に変わったのは、ソチオリンピックなんです。もちろん体操の世界選手権で「シライ」
をやった白井健三選手の出現なんかも相当強烈なインパクトがあったんですね。19 歳でしたか
ね。それから水泳の萩野公介君。6種目もエントリーして、メダルを本当に取ってしまう。こ
の間の世界水泳選手権も、なんと 40 分後に泳いで日本新記録を連続で出すわけですよ。それか
ら日ハムの大谷翔平投手ね。彼なんかも、皆さん覚えておられません?「ピッチャーとバッタ
ーと両方やりたい」と言って、メジャーに行くかどうするかというのを相当悩んだ時期があっ
て話題になりましたが、僕は本当に正直いって「何考えているのかい」と思ったんです。そん
なことをしたら野茂英雄投手とか佐々木主浩投手とかイチローに失礼だろうと思ったんですよ。
一本で一生懸命やっている選手、それでもプロは通用するかどうかのギリギリのところじゃな
いですか。ところが彼は日ハムに入って見事にやっているでしょ。この間もホームラン打った
し、150 ㎞以上でスパンスパン投げるんですよ。あの姿を見ていて、若者を見る社会の目が変
わり始めたんです。
そこに決定打を与えたのは、ソチオリンピックの羽生結弦選手です。あの柳腰みたいなので、
4回転サルコウなんてパーンと決めるんですから、すばらしい。彼が金メダルを取りましたで
しょう、国民的な期待を背負って金メダルを見事に取ったんですが、そのときのテレビカメラ
に向かっての第一声が何だったかというと、「すいません」だったんです。
これに大きな衝撃を受けたんですよ。金メダルを取って「やりましたよ!」と言うのならわ
かる。だけれども「すいません」と言った。それは何に対する「すいません」かといったら、
自分の思っている演技が、ショートはパーフェクトで 100 点以上の世界新記録を出しましたが、
フリーのほうは最初のサルコウから失敗してしまったでしょう。パトリック・チャンがそれよ
りも下手だったから金メダルがもらえただけ。だけ、というのは変ですけれども、相対評価で
金だったんですよ。それでもめちゃくちゃ立派なのに、
「すいません」と言った、あれが衝撃を
与えました。
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それから浅田真央ちゃんも、ショートでは自分の表現が全くできなかったのを、フリーで完
璧な演技をして、天を仰いで号泣しましたよね。あれにまた国民もみんな感動したわけです。
この間の世界フィギュア選手権では金メダルを取りましたよね。フリーもショートもいい演技
ができた。バンクーバー以来のいい演技ができた。彼女も記者会見で何と言ったかというと、
「自分らしい演技ができました」と喜んだんです。そして、
「結果がついてきました」と言った
の。
これまでは私たちは、メダルを目指して頑張ってきて、取れたら「やった!」というので喜
んだんですよ。
“レジェンド”の葛西紀明選手 41 歳、
「やった!」と言って銀メダルを見せまし
たよね。この心情だったわけ。それを一歩乗り越えたような構えに今の若者はなってきてしま
ったと。葛西選手もすばらしいんですよ、間違えないでください。すばらしいんですが、枠が
広がってしまったんです。投手とバッターと両方やるかいと。
「シライ」という名前が付いたの
で、世界選手権に初めて出て金メダルを取っちゃうかいと。それからこの間の 15 歳の女子ゴル
ファーの勝みなみちゃんもおにぎりを食べながらホイッと。やるかい、という感じ。今の若者
のスケールの大きさ。
そこに共通しているのは、自分と向き合っているんですよ。メダルと向き合っているのでも、
点数と向き合っているのでもなくて、自分と向き合っている。そして自分らしい目標が達成で
きたときに、「やった!」と思っているんですよ。
ここがものすごく強みで、だから桐生祥秀選手なんか 100 メ-トルの世界的なスプリンター。
桐生選手の(高校時代の)京都の学校もいわゆる受験校の大変な学校ですが、グラウンドは直
線距離が 100 メートルないんですよ。80 メートルしかとれない学校なんです。そこでだってあ
れだけのスプリンターは生まれてくるんですよ。そういうこれまで私たちが考えられなかった
枠の広さ、そしてそこにあるのは自分と向き合っていて、自分らしい個性を活かしたアプロー
チの仕方をしている。
まさに「ゆとり教育」が求めていたのは、よく 3.15、あれっ?
3.12?
3.11?
3.11 じゃな
い。3.14 ですよぉ。3.11 は震災よ。3.14、円周率(笑)。3.14 を3と教えているだとか、台形の
面積(の公式)を教えないだとか、授業時間が何割になったとか、完全5日制になったとか、
そういう枠組みのところで社会はゆとり教育をバッシングしたんです。だけれども、あの理念
は何だったかといいますと、基本線は、これまでの一斉教育を排除して、個の教育に入る、個
性の教育に入るというのがポイントだったんです。だけれども、小学校はまあまあうまくいっ
ていたんですが、中学校はほとんど失敗したんです。失敗したのは間違いないの。でも、理念
は間違いじゃないし、グローバルに見たときに世界じゅうがそれでいっているんです。中国も
それでいっているわけです。韓国なんかもそういう方向に行こうとしている。日本だけが逆戻
りしちゃったんです、「脱ゆとり」というので。
失敗したのは確かなんだけれども、政策的にはどこで失敗したのか。だって、40 人学級でや
れっていうんですもの、行けるわけがないんです。現場の教師はものすごく頑張っているんで
すよ。こういうのを放置したまま、行くわけがないんです。
しかも GDP 比でいえば国家の教育予算は最低のラインしか出していない。34 ヵ国の OECD
の中で4年連続最下位なんです。そういうところが問題なのであって、理念は間違っていなか
った。でも、その中でアスリートというのははっきりメダルとか数字で出るもんですから、そ
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この層から見事に成果を出し始めてくれているんです。これが文化の面とか思想とか、いろい
ろなところでこれからジワッと出てくるんじゃないかなと僕は期待しています。
だから今の若者は、戦後の中では全然けた外れの可能性を生み出してくれていて、ようやく
個に向き始めたな、自分と向き合って戦い始めてくれたというのがポイントですね。だから希
望を持ってください。若者をじっと見てみたら、そういうのが見えてきますよ。だってきょう
の青木君そのものがそうでしょう。どうしてこんなことをやり始めます?
彼も、僕のところに「メッセージが欲しい」とか言って来たんですよ、1年前でしたかね。
○青木
高校3年生のときです。
○尾木
それを僕は断らずに、ちゃんと言いました?
○青木
はい。
○尾木
よかったぁ(笑)。
○青木
ほとんど断られる中で唯一、もう少ない中、お返事をいただいて。
○尾木 「唯一」というのがいいわねぇ(笑)。そうなんですよ、こういう若者が生まれてきて
いるんですよ。こういうところもやはりしっかり見ていかなければいけないなと思っています。
可能性がこれからどんどん開けてくるのが現在の若者の特徴だと思っています。ようやく、で
すね。10 年かかりましたけれどもね。
○泉
きょう会場には 20 代、30 代が多いんですが、お三方は三世代に分かれているようなも
んですから、細野さんと青木さんに聞いてみたいなと思うのは、細野さんは受験世代のある意
味“異端児”というか、よくチャレンジしたなというところもある。青木さんは青木さんで、
「ゆとり世代」のチャレンジャー。じゃあみんなが細野さんや青木さんのようなことまででき
ているか、足を一歩踏み出せているかというところだと思うんですね。
そういう意味で細野さん、青木さんに一言ずついただきたいと思うんですが、自分は自分と
の戦いにたぶん入っていると思うんですが、自分の周りの世代を見て、自分との戦いに踏み出
すために何が必要なのか。もしかしたらそれぞれ世代で違うかもしれない。
青木さんからいきましょうか。
○青木
僕自身も、今こんなところに立ってしゃべっているんですが、中学3年生とか高校1
年生のころは、まさか5年後とかに自分がこんな場所で人の前でしゃべるなんて想像していな
くて。尾木ママは法政大学で教えておられますが、僕は法政二中と法政二高というところに通
っていました。付属校なんですごい変わった学校です。僕は中学受験でかなり勉強して、偏差
値だけがすべてだと思っていたんです。本当は早慶とかもっと上に行きたかったんですが、法
政以外どこも受からなくて。
法政に入ったら、法政って甲子園の優勝経験もあるぐらいスポーツの強い学校で、隣に野球
の日本代表の子がいたり、後ろには今すごいテレビドラマに出ている俳優の子がいたり、その
端っこに最近メジャーデビューしたラッパーの子がいたり、そういうやつらがいて、みんなな
んかよくわからないんですよ。ラッパーのやつとか昼休みずっとみんなの前でして、わけのわ
かんないラップ聞かされて、頭おかしいんじゃないかなと思っていたんです。でも、それを貫
いていたら結局、最近メジャーデビューしてすごい売れている。俳優の子も、顔はカッコいい
けど売れるかどうかもわからないのにずっと俳優を貫いてきたら、最近、開成高校の野球部が
モデルになっている、二宮和也君が主演をやっているところにもナンバー2みたいな役で出て
11
いたり。
そういう子を目のあたりにしてきて、僕自身は勉強がすべてだと思っていたのに、入ってみ
ると意外と勉強だけじゃなくて、スポーツやっているやつとかも部活するために学校に来てい
るから、そいつらみんな授業中は寝ているんだけれども、いきなり2週間とかいなくなってヨ
ーロッパ遠征に行ったり。そういう彼らを見て自分は刺激を受けてきたかなという部分があっ
て、今までだと受験だったり成績一辺倒だったのが、自分の強みというものをひたすら活かし
てそれで突き進んでいくことができる時代になってきたのかなと思っています。
僕自身も、慶応っていうとすごい賢いように思われるんですが、あまり成績がいいわけでは
なくて、高校のときに「僕らの一歩が日本を変える。」という活動を始めて、若い人と政治との
架け橋になったり、若い人に政治を身近に感じてもらいたいなみたいなことを実績として言っ
て、AO 入試というシステムで慶応に入ったんです。実際に社会の中での活動だったり、自分
自身がやりたいこと、志みたいなことをしっかり訴えて、そこに一本の線を導いて歩むことが、
実は評価されるポイントに変わりつつあるのかなと思っています。
自分自身あまり勉強もできるわけじゃないし、正直スポーツもあまりできないし、見てのと
おりルックスも全然いいわけじゃない。そういう中で、政治という部分だったらアメリカで 15
歳で経験できたし、自分にしかない経験がアメリカでできたからこそ日本でこうやって活かせ
ているのかなと思っています。たぶん人それぞれ、人にはなくて自分にしかない、本当に些細
なこと、小さなことがあると思うんです。そういうのをひたすら伸ばすと実はその世界ではナ
ンバーワンになれたり、珍しがられてこういう場所に呼んでもらえたり、そういうことがある
のかなと思っています。
○細野
私はちょうど葛西選手と同世代になるんですね。そういう意味ではある種世の中の一
定の基準みたいなものがあって、それを意識する世代なのかもしれません。
ただ、自分自身どうだったかなと思うと、実は私そういうことに正直関心がなくて、小学校
は非常に小さい学校だったんですが、まあ、本当にいろいろな子がいるおもしろい学校でした
ね。1学年1クラスしかない学校だったのだけれども、その中にはスノボのプロになったやつ
もいるし、障害を持っている子もいたし、造園屋で大成功しているやつがいたり、ちょっと田
舎なんだけれどもおもしろい学校で、そういういろいろなやつがいたほうが楽しいと。野球で
もチームをつくってやっていたのだけれども、みんな三拍子そろっているチームって、お互い
にライバルだし、足の引っ張り合いなんかもあるじゃないですか。そうじゃなくて、ライパチ
(ライトで8番)もいて、そいつが出るとまず打たない、みたいなやつもいるんだけど、なん
とか補い合って勝つと喜びがあるよね。そういうところで育ったので、ちょっとそういう感覚
が私にはなかったんですね。
私よく、エリートだろう、受験は失敗したことないだろう、と言われるんだけれども、実は
高校受験も失敗しているし、大学も慶応は1回も受からなかったな、現役のときも浪人のとき
も。早稲田も受からなかったし、最後たまたま京都大学に受かった。たまたま、というのは言
い方があまり適切じゃないかもしれないけれども、京大に入りたいと思ったので、そこだけは
受かったのだけれども、2勝8敗ぐらいなんですね。
ただ、何かそれで挫折したという思いもなくて、大学に入って政治家を志して今ここまで来
たんですね。なので、私の世代の中でいうと珍しい感覚がもしかしたらあったのかもしれませ
12
ん。
会社に入るときも、当時の我々でいうと、津村さんなんか同世代だけれども、やはり商社と
か銀行とかが給料が高いと言われていて、そういう道を選ぶ。もちろん官僚とか弁護士という
のもあるのだけれども、そういう道じゃなくて、私、政治家になりたかったので、政治家にな
るために自分が何をやるかということを考えて、民間の研究機関に勤めようということで、5
年間サラリーマンをやってから選挙に出たんです。
給料もあまり高くなかったけれども、やりがいはあったし、自分はそれを選んで政治家に出
てよかったなと。政治家に出るときは、
「おまえ、アホか」と言われました。落下傘候補で伊豆
半島で出て、誰も勝つとは言わなかったし、家族も誰も勧めてくれなかったし、みんなに反対
されたんだけれど、自分で出て、本当に運に恵まれてここまで来たというのが私の人生。
今、43 になって、ちょうど人生折り返しじゃないですか。たまに同窓会なんかをする。中学
校とか小学校、高校の同窓会もするけれども、人生ってわからないな、と思うんですよね。学
歴があるとかいい会社に入った人間が幸せとは全然限らない。そうじゃなくて、例えば小学校
のときにおよそ勉強はできなかったし、およそ間抜けな、例えば修学旅行のときに山を登った
のね。山を登るときに絶対に忘れちゃいけないものはカロリーメイトとかっぱだと言われたん
だけれども、この二つだけ忘れてきたやつとか(笑)。ある女の子が違う靴を履いていた。大き
い靴が残っていて、それを履いたのね。先生が「同じ種類の靴を履いている人、いませんか?」
と言ったら、そいつだったの。そいつは丸一日その2センチきつい靴を履いて山を登った。そ
れが今、私の田舎のほうで一番大きい造園屋の経営者をやっていたりする。
なので、人生の幸せと学歴とか勉強ができるかどうかというのは関係がない。逆に、京都大
学の法学部を出て一流企業に勤めていて幸せでないやつはいっぱいいる。そうじゃなくて、自
分が何のために生きているのか、何が好きなのか、それを本当にちゃんと考えて、それに向か
って努力した人間が幸せというのをつかめるのではないかなと思うんです。
政治の役割は何かというと、そういうことを考えられる環境、家の経済的な状況とか、親が
いるかいないかとか、障害があるかないか、そんなことで左右されずに、できるだけ全員がそ
ういったことを考えて幸せをつかむ権利をちゃんと行使できるようにするのが政治の役割では
ないかなと私は思っているんですね。
最後にもう一つだけ言うと、私は尾木ママが言われたこと、すごく真理だと思っている。今
の若い人は、我々の世代よりも、自分に向き合っている。社会にも向き合っている。それは我々
がもっと見習わなければならないと思います。
ただ、一つだけ向き合っていないものがあるとすると、政治となかなか向き合ってくれない
んです。これは変えたい。やはり、私が今あらためて若い人とちゃんと話したいと思ったのは、
単に選挙で勝つためだけの政治にしたくないのね。だって、普通で選挙を戦うだけならば、そ
りゃあ 60 代、70 代にウケることを言うわけですよ。人数が倍近くいて、投票率が倍だから、
4倍影響力があるわけだから。
それでどうなったか。これだけ財政赤字ができて、人口減少で社会保障が持続するかどうか
わからないのに、それでもそれを放置し、エネルギー問題もとりあえず今やるということにな
っちゃっている。これはものすごい損失なんですね。だから、今、若い人に、どうしたら政治
に向き合ってもらうか。政治というのがそれぞれの人生の選択の幅を広げることでもあり、社
13
会を変えることでもあり、みんなの将来を少しでもいいことにすることなので、そのことに気
がついてもらえるかをこれから、とにかく時間がかかっても私はやりたいなと思っています。
○泉
細野さんから今ありましたけれども、自分と向き合うって、たぶんやれているようでや
れていないことじゃないかなと思うんです。尾木さんの本ですごく印象に残ったのが、
「少しの
時間でいいから、その人のことだけ考えてみて。そうすることであらためて相手のことが見え
てくるから」というのがある。きょうは母の日ですけれども、本当にじっくり「お母さんって
何をしてくれたんだろう。お母さんってどんな存在だったんだろう」と考えるときはなかなか
ないですよね。あるいは恋人のことかもしれないし、仲のいい友だちのことかもしれない。そ
の中の一つに自分自身というのがたぶんあるんですよね。
今のお三方の話を聞いていると、自分のことをじっと考えたり、人のことをグーッと分析し
たり、あるいは物を分析したり、世の中の事象を分析する。こういうことをやっていくと、今
まで見えていないことが見えてくるような、そんな気がしますよね。そういうことも皆さんそ
れぞれがやっていくとおもしろいんじゃないのかなと思います。
政治と向き合っていく
○泉
実はこれ打ち合わせをほとんどしていないところもあって、パネリストの皆さんにはい
きなり振るような話も出てきますけれども、さっき細野さんが「政治となかなか向き合わない
んですよね」という話をしました。一方では「今の若者って、ネットとかで右傾化しているん
じゃないか」みたいなことがニュースやうわさだけで出てきているところもある。政治という
のは、打たれたら打ち返せばいい、批判されたら相手を攻撃すればいい、そういう簡単なもの
じゃなくて、忍耐とか譲歩とか妥協とか、そういう難しいやりとりをしなければいけない分野
であると思います。
今の若者たちが政治と向き合っていく、そして望まれる「向き合う姿勢」というのはどんな
ものなんだろうか。いきなりムチャ振りですが、尾木ママ、どんなふうに思いますか。
○尾木
若者が政治に無関心だとよく言われます。それに対して、例えば北欧の国なんか若者
の投票率は 80%を切ったことがないというのは有名な話です。僕も、若者がどうして政治に無
関心なんだろう、若者が右傾化しているんじゃないかという論に対して、それはそうなってい
るのかもわからないという思いを抱いた時期もあるんです。でも、よく考えてみたら、政治が
日本のこれから進むべき方向を明確に打ち出していないんですよ。そういう中で、政治に無関
心なのじゃなくて、まず向き合うもの、守るべきものは自分であるし家族だというところへグ
ーッとシフトを変えてきているんです。今、中学生も高校生もそうです。大学生もそうです。
それが、私たち大人から見ると「今の若者は何を考えているかわからない」という見え方をし
てしまうんです。
特徴的なのは、思春期の子どもたちの様子が激変してきたんですよ。よく大学の入学式なの
にお父さんお母さん一緒に来ちゃうよと。あるいは就職試験の説明会に親が来てしまうとか、
いろんなことが言われましたよね。法政も日本武道館で2回入学式をやっております、あふれ
てしまいますので。ある大学は入学式の案内状に「一家庭ご一名様に限定させていただきます」
と書いてあるの。名だたる大学であったりすると、お父さんが来、お母さんが来、おじいちゃ
14
んが来て、おばあちゃんが来て、一族親戚まで来ちゃうんですよ。もう旗を上げて来るような
勢いなんです。そうすると入れなくなったりする。ことし地方の国立大学などでおもしろいこ
とが起きましたね。駅から大学までピストン輸送で入学式用に学生を運んでくれるバスが、な
んと父ちゃん母ちゃん、じいちゃんばあちゃんに席を占められてしまって、肝心の新入生が乗
れなくて、式に間に合わない。これでニュースにもなる。東大もそうだし、京都大学、同志社、
立命館、全国の大学で皆そういう現象が起きてきたんです。地方のあまり名前が知られていな
い短期大学までそういう現象が起きてきたんですよ。これはいかがなものかと。
いろんなことが言われるんですけれども、僕は大きな背景があると思っています。一つは、3・
11 であれだけの震災を経験してしまったら、やっぱり家族で結束しなきゃという思いは非常に
強まりましたよね。そこへもってきて 30 年以内に大きな地震に見舞われる確率が 70%とか言
われたら、まず家族で守り合わなければ、連絡をとり合わなければ、と考えるのは当然なんで
すよ。舛添都知事さんもいろいろ考えておられるみたいなことも報道にありますけれども、そ
れに期待はするかもわかりませんが、
「とりあえず家族で守り合わなければ」という傾向が非常
に強くなってくる。
もう一つは、やはり終身雇用制がほとんど崩壊したということです。1991 年にバブルが崩壊
しました。97 年に山一証券がなくなるという事態。そこら辺で衝撃を受けて、
「失われた 10 年」
「失われた 20 年」と言ってきたんですが、リーマンショックが決定打でした。最後の後押しで
国際的な影響も受けて、
「こんなふうにして日本の経済も立ち行かなくなるんだ」と言われる中
で、
「一流大学に入って一流の会社に入ったら幸せになれるんだ」という幸せのプランニングと
いうか、このモデルは完全に崩れたんですよ。自分のキャリアは自分自身で切り開かなければ
いけない。そういう力とは何か、ということを考えなければいけなくなってきた。そして、な
んと 2002 年に法政大学のキャリアデザイン学部が生まれたの。あくる日、僕が教授になったん
ですよ(笑)。そうつながるんですよ。
それから 2004 年から文部科学省は小学1年生からキャリア教育を始めたんです。ダーッとそ
ういうふうに社会が変化していったんですね。しかもそれはグローバル化の中で変化してくる
という状況。これが決定的だと僕は思っています。
そこで本当は政治がものすごく重要なんですよ。政治、それは政党さんはどこであってもい
いんです。僕は教育評論家だからフラットでないといけないのよね。民主党さんなんか本当に
頑張ってほしいと内心思っているのよ。でも、あまり応援しているみたいなの、ちょっと嫌ら
しいでしょ(笑)。
○細野
ここに来ていただいているだけで十分勇気ある行動だと思っています。
○尾木
だから、僕、ビジョンをピシッと示すことがものすごく大事だと思っているんですよ。
そうしたら家族は大事にするけれども、同時に地域のことや国のことや、みんなもっと視野が
広がると思うんですよ。そこに入れていない中では、中学生あるいは高校生が悩み事が出たと
きに誰に相談するか。ここにおられる年配の方が相談していたのは誰ですか?
ほとんど友だちでしょ。お母さんに相談なんかしないでしょ。クソババア、クソオヤジとか
言ってたぐらい。それが思春期の特徴だったじゃないですか。親のところを離れたからこそ友
だち世界に依存していくという傾向が心理的にあるわけですね。
ところが、今は「友だちに相談する」と「ママに相談する」がほとんど拮抗してしまったん
15
です。急激な変化です。NHK の放送文化研究所は 25 年前から経年調査をやっているんですが、
数値がガンガン「ママ」に近寄ってきてしまったんです。この間あるところが調査したんです
が、
「コミュニケーションうまくいってるよ」というご家庭のうち、男子中学生がママと一緒に
お風呂に入っているのが 20%なんです。それから二十幾つの超有名な女優さん、人気ナンバー
ワン、ツーと言われる人もまだお父さんと一緒にお風呂に入っていたり。それが全然不思議じ
ゃなくなって、きょうだって「あ、私もよ」という人がいると思うから、僕こんなふうにして
人権を尊重しながら今話しているんですけれども、本当にそういう方がふえてきてしまった。
発達段階から言うと、ことし1月の成人式のデータが発表されました。20 歳の子たちで「今
つき合っている相手がいない」は、男性は 80%、女性は 74%いましたね。「今までつき合った
ことがない」は、なんと男性は 54%なんですよ。「生まれてから今まで女の子を好きになった
ことがない」という方が 24%です。これは少子化問題の根本のところですよ。つまり「草食系
男子」と言われるんですが、草食系じゃなくて「植物男子」なんです。
そして家族主義にはまり込んできた。
「家族主義」という言葉でとらえたほうがわかりやすい
んじゃないかと思っているんです。これはね、政治の責任は大きいと思います。ビジョンが出
ないからです。だからみんな結束していくんです。これは必然的な姿であって、それを非難す
る、あるいはやゆするのはとんでもないと思っています。
○泉
細野さん、質問行きますよ。
今お話を聞いていると、我々も会場のメンバーも一緒にその辺は気をつけなければいけない
ですね。うちも今子ども3人ですけれども、どうしても子どもがむちゃくちゃかわいくなっち
ゃいますよね。今の親って、我慢せずにそのかわいさをそのまま伝えてしまったり、かわいさ
をそのまま世の中にぶつけてしまうところがある。そこは親としては気をつけなければいけな
いし、これから親になる人たちも同じように気をつけなければいけない。
みんながみんな家族をちゃんと持てて、あるいは幸せな家庭を築けるわけでもない。本当に
自分のせいではない形で家族が壊れてしまったり、あるいは世の中の道から外れてしまったり、
あるいは会社を辞めてしまったり、いろんな局面ってあると思うんです。政治ってたぶんそう
いうところに役割がある。なのに、今尾木ママが言ったように、政治がメッセージを発信して
いないのも大きいよって話があります。これは、やっているけれど伝わっていないのか、やっ
ぱり民主党がやっていないのか。両方あるかもしれませんけれども、細野さんから、何をやっ
ているのかその説明をしてほしいと思います。
○細野
私もそこは尾木ママと同じことを感じていて、私の子どもは今、中3ですが、同級生
の話とか聞いていても、家族で旅行したり親の話をしたりとかしていますよね。我々は、中学
生のときは父親とはほとんど口をきかなかったよね。学校で父親の話をするなんていうのは、
「避けなければならないこと」という意識がありました。そこは確かに変わりましたよね。こ
れは家族が仲よくなるという意味ではいいことであると考えていいものですか、それとも……。
○尾木
仲よくなること自体は全然後退ではないと思うんですね。それと、この2年ぐらい急
速にそれが強まったのは SNS ね、LINE とか言われてもいいと思うんです。誤解がないように
言っておきますが、僕はそれに反対しているわけではないんですが、それでみんなものすごく
つながっちゃっているんです。そうすると安心してしゃべれるのがお母さんしかいない。そう
いう新たな変化もあるとは思います。
16
○細野
なるほどねぇ。逆に青木君なんか見ていると、我々が学生のときと比べてはるかにネ
ットワークが広いよね。これは SNS を見事に使っているからだと思うんですよね。高校生とか
大学生ぐらいになると、それがすごくプラスに、いい方向に出ているなという気がするけれど、
中学生とか小学生とかになると、じかに友だちと信頼関係をつくってコミュニケーションをと
るのが難しくなっている面があるのかもしれないね。
○尾木
便利になり過ぎて。
○細野
それで逆に「家族が一番安心」ということになるんですね。
尾木ママが言われたように、政治がそこにメッセージを発することができていないじゃない
かというのは、すごく反省が必要ですね。15 年やってきて、諦めずに若い人に訴えかけてきた
つもりだけれど、政治集会をやっても 20 代とか 30 代の人はほとんど来ない。だから、どうし
ても言葉が 60 代、70 代向けになる傾向はあると思う。きょうはたぶん選挙に出ている人がた
くさんいると思うけれど、そういう意味では反省が必要だと思いますね。
ただ、私、大学生とか高校生、場合によっては小学生にいろんな話をしてきて難しいなと思
うのは、やはり政治ってその人が「自分事」とできるかどうかにすべてかかっているじゃない
ですか。どういう言葉を使えば、何をテーマにすれば、自分の問題なんだと思ってくれるかと
いうのが難しいんですね。例えば 20 代後半とか 30 代になって家族ができたり子育てに入った
りする。給料が上がるよりも税金が上がるほうが勢いがよくて、所得が減っちゃったり、そう
いうことになってくるとちょっと耳を傾けようとする。それよりも下の世代で具体的な政治テ
ーマとひっかかりのない人に、何を情報として発すれば、メッセージを発すれば受けとめてく
れるのかは永遠のテーマなんです。
今の段階での私の思いとしては、一番伝わるのが自分のことをしゃべること。つまり自分の
人生なり自分の考えてきたことを話すことで、まず、人間として少しでも関心を持ってもらう。
その上で、例えば 10 代とか 20 代前半の若い人たちにとって、今政治はこういう状況なんだよ
と話すことで伝えていくしかないかなと思っているんですけれどね。これは私の本当に浅はか
な考えから出てきたやり方なので、どういうやり方をとれば一番ひっかかるんだろう、考えて
くれるんだろうということを青木君からちょっと話してくれるといいなと思うんだけど。
○泉
青木君ね、今細野さんから水が向いたと思いますけれども、確かに結婚したり子どもが
生まれたら世の中の制度と向き合わなければいけない。それがいいとか悪いとか、いろんなこ
とが出てくると思うんだけれど、だけどもっと若いうちから政治が自分事であったらいいよね
と思う。車にも法律があるし、ダンスホールにも法律があるし、本当はもっといろんなかかわ
りがあるような気がする。青木君がいろんな若者たちからいろんな話を聞いていて、どういう
分野で関心が持てる可能性があったりするというのを、ちょっと教えてもらえないかな。
○青木
そうですね、自分たち生きている中で、僕も 20 年しか生きていなくて、そうすると社
会保障とか言われてもあまり感覚はない。自分たちの世代でたぶん一番話しやすいテーマは教
育。小学校、中学、高校と来て、教育って常に身近に受けながら、
「あの先生、おかしくねぇか
な」とか、
「おれだったらこうできるのにな」みたいな思いはある。教育というところがまず一
つ話しやすいポイントなのかなと思っています。
あとちょっと厳しいことを言わせていただくと、SNS がこれだけ浸透してきて、若い子とか
みんなツイッターとか Facebook とかやっているわけじゃないですか。ここに来ている子たちと
17
かって意外と議員さんのツイッターをフォローしていると思うんですけれど、ツイッターとか
議員さんのを見ていても、とにかくつまらない。特に4月とか僕見ていてイラッとしたという
か、ちょっと違うなぁと。ここにいたら申しわけないんですけれど、
「入学式でごあいさつしに
行きましたよ」みたいなことを秘書さんに写真を撮らせてツイッターを上げたところで、あな
たが入学式でごあいさつしたなんて、そんなのおれらは興味ないですよ。
僕きょう細野さんのツイッターを見てきたんですけれど、すごいよかったなと。まあ、上か
ら目線で申しわけないんですけれど(笑)、細野さんが奥さんと皇居周りを自転車で回っていま
したよとツイートしていたんですよ。あ、細野さん意外と奥さんと自転車で回ったりする時間
があるんだと、ちょっとホッとしながら来たんですよ(笑)。
○細野
すごい意外感を持って受け止めたと思う。
○青木
たぶんみんなもそういう気持ちはあるのかなと思って。何かイベントに出るとか、小
学校に呼ばれましたとかは別に興味がない。意外とパーソナリティー的なところは興味がある
のかなと思う。例えばお昼何を食べてるとか。あ、意外と議員さんでも吉野屋とか行くんだぁ、
なんかそういうのがまず政治を身近に感じさせるポイントなのかな。高級料亭とかに毎日行っ
ているイメージがあるんですよ。僕たちは絶対行けないわけじゃないですか。きょうもお昼吉
野屋食べた、みたいな、本当にそういう生活をしていて。あれっ、議員さんも意外と吉野家に
足を運ぶんだぁとか。この議員さんラーメンの写真を上げているけどラーメン好きなんだとか。
そういうのがまず議員さんとの距離を近づけて、そうするとフォローしてみようと思って。そ
うしたときに、いろいろとタイムラインに、あ、こういうことをやっているんだ、ああいうこ
とをやっているんだと流れてきて、初めて政治とドッキングされるのかなって。
なんか政治というものとの距離を感じて、僕たちも歩み寄る必要性があるとは思っているん
ですけれど、やっぱり政治側からも歩み寄っていくことが今足りていない。それが一番大事か
なと。ちょっと厳しいことを言うと、そう思っていますね。
○泉
結構政治がイメージだけで捉えられていることがあると思うんですよね。だけど今の青
木君の話はすごく参考になって、きょうは政治家が 50 人以上ここにいますから。でも、毎日ご
飯のことばかりアップしてもだめですからね(笑)、気をつけてくださいね、それは。
だけど意外性を求められているというか、
「あ、政治家ってこんな場面もあるんだ。自分たち
と同じなんだ」という共感を持ってもらえるということは、政治家としてはとても大事ですね。
どうしても権威づけをしたくなっちゃうんですよね、政治家の心理ってね。自分はしっかりや
っています、みたいなことを示したくなっちゃう。少しくだけて、本音を語っていくというの
は、政治家の参加者は大事じゃないかなと思います。
もう一つ青木君が言ってくれた教育、皆さん結構知っているエピソードかもしれませんが、
尾木ママは高校のときに、体罰をした体育の先生に抵抗しまくって、体育の授業をボイコット
して単位を落として、転校先に編入しようと思ったら、2年生に編入までできなくなっちゃっ
て、その原因は全部その体育の授業をボイコットしたからだと。
「あんたは学校の成績もいいし、
編入試験も大丈夫だったんだけれど、単位がないからゴメンね」と言われて、それは真っ当だ
なといって1年生からまた始めたというエピソードがあるわけです。
そういう意味では、誰もが受ける教育の場面で受け身になって、みんなそれを当たり前のよ
うに受け止めてしまったら、
「世の中ってそういうものだ」で終わっちゃうんですね。だけど尾
18
木ママがたぶん今あるのはそういうこだわりがあったからじゃないのかなと思うんですよね。
一つ一つのことに善悪にこだわりを持つことはとても大事じゃないのかなと思います。
尾木ママはご自身であのエピソードから何を学んだ気がしますか。
○尾木
本人は何を学んだかとか、そんなことは全然思っていなかったんですよね。
「週間文春」
に「私の履歴書」という昔から続いているコーナーがあって、どこにどう住んで、そのときの
間取りはどうだったかという淡々とした取材のされ方をしていて、僕は実は 14 回も引っ越して
いるんですよ。ここではこうでと。そのときはなんでここに行ってとかね。そんなことを話し
ていて、それが文章にまとまったら、入学試験はなんと6回も落ちているんですよ。高校入試
に失敗し、編入試験を失敗し。大学受験全部落ちて、細野さんと同じなんですよね。それから
教員採用試験、これもまた落ちるんですよね。内地留学の試験も、試験は受かったんですけど
面接で落ちるんですよ。面接官とけんかして、フフフ。落ちている理由がみんな滑稽なんです
よ。バカみたいな理由で落ちるんです。
今評論家になって、“尾木ママ”になって、「尾木さんはブレないですね」とよく言われるん
ですよ。ブレないって……、そう言われればブレないなぁというのは自分でも感じるんですね。
不器用なんです。
体罰を振るう教師というのは、自分が振るわれるんだったらいいけれども、友だちが振るわ
れて、しかも指導の手段として蹴られているのを黙って見ていられなかったですね。だから「憲
法違反です!」と言ったんです。
憲法違反じゃなかったの、学校教育法違反だったんですよ(笑)。第 13 条の但し書きだった
んですね。知らずに言ったら、
「じゃあ、オレの授業なんか受けなきゃいいだろう!」と言われ
て、6月だったと思いますけれども、「じゃ、受けません」と受けなかったら、30 点が合格点
だったのが 29 点、赤字でつけてきたの。まあ、いいですけど。そんなことがあってずっとそう
いう感じで来ちゃっているんですね。
その話を横に置いておいて、なんでブレなかったのか。それまでの間にいろいろな誘いがあ
ったんです。お金に物を言わせたようなとか、地位を出されたり、いろんなことがあったんで
すが、それ譲ったら終わりだろう、自分の生き方として、というのがあったのと、うちの女房
がね、とってもいい人なんですよー。素朴というかね、
「そんなことしたら、これまでの人、誰
も信用しなくなるよ」とかズボッと言うんですよね。だから女房にも支えられたというのが実
はすごく大きいと思います。入れ知恵じゃなくて、女性の勘で「あんた、それおかしいわ」と
かいうようなことがあって、女房のおかげだと感謝もしているんですけれども。
僕ね、若者の政治参加のところでは、ヨーロッパ諸国はなんでそれだけ投票率、政治参加が
すごいのかというと、もちろん政治の側の配慮もあるんですよ。例えば地方の市議会などは会
議をやるのも夕方4時以降でしか開かないとか。あるいは職業を持ちながらボランティアだと
か、いろんなシステム上の違いだとか。例えばストックホルム市議会は 50%が最初から女性の
指定席です。女性の社会参加がきちっと保障されている状況とかいろんなことがあります。
あるけれども、決定的に教育とリンクしてすごいなと思ったのは、例えばノルウェーなんか
高速道路をここに通したいというプランが生まれると、地域の小中学校にその地域の白い地図
がダーッと配られるんです。
「君たちオールシーズンで遊んでいるところは赤で塗ってください。
ウィンターに遊んでいるところは黄色で。夏場遊んでいるところは青で塗ってください」と。
19
ダーッと塗らせる。そしていったん市や国が集めて、みんなが遊んでいるところを迂回して高
速道路を造ったりするわけです。
それを見て、あっ、本当にここ迂回してくれた、というのが目に見えるわけです。それが政
治への信頼、大人への信頼感につながるんです。だから強烈なメッセージなんです。何をやっ
たかということよりも、メッセージ性が政治にはすごく大事だなと思っているんです。だから
見事に大人を信頼し、市長さんを好きになるし、そして自分たちにも責任感が出てくるんです
よ。
「自分たちが言ったら本当にそうなっちゃったよ。冗談で地図なんか書いちゃいけないんだ」
というようなこともね。
それからデンマークは学校運営理事会があります。そこの人数は 13 人です、小学校からそう
なんです。児童は日本でいうと5年生、6年生が7人参加です。校長さんや教頭さんや PTA 会
長、もちろん地域の方も入っていますけれども、子どもたちがしめし合わせれば、好きなよう
に学校を運営できちゃうんでよ。日本だったら絶対そんなこと許さないと思うんですけれども。
どんなことが決まっていくのかといったら、向こうの学校長や教育委員会の方は「大胆に提
案すればいいのに、よけい慎重になって、私たちよりもかたい案を出してくるんだ」と言うん
です。これがやはり自己責任感だと思うんですよ。やはり参加すること。子どもたち、若者が
政治に参加する。それは議員になるという意味でなくても、青木君がやっておられるような形
でもいいし、あらゆるところで最低でも子どもたちの声を聞く。何かをしなければいけないん
じゃなくて、子ども参加で、子どもの声を聞くといろんな提案を出してくれます。
これは例えば滋賀県の近江八幡市でもやっておられます。児童公園をつくろうという提案、
市が空き地を探してきて勝手にやっていくのかと。そうじゃなくて、子どもたちが空き地を見
つけるところから始めて、そしてプレゼンをするわけです。業者も競争入札をやるわけです。
自分たちはこれだけの予算でこんなモデルプランでと、出すでしょ。子どもたちが選んだのは、
実は千何百平米とか大きな空き地にすごく近代的な公園をつくる業者の案ではなくて、わずか
300 坪ぐらいしかない日当たりの悪い町の真ん中の空き地を選んだんです。投票でそこに決ま
っちゃった。どうしてかというと、せっかく地元のおじいちゃん、おばあちゃんたちが見つけ
てそこを推薦してくれて、一生懸命公園を応援してくれている。おばあちゃんたちを裏切れな
い、という人情論からですよ。
こんなあったかいものがあって、それで幾つか公園ができているんですけれど、絶対に汚さ
ないです。お金が足りなくなってくると、自分たち人足で出て、石を積んだりいろんなことを
して働いてつくり上げるわけです。
やはり子ども参加で十分だ。これだけ IT が発達して情報化社会で、子どものほうが私たちよ
りすぐれているんですよ。私たちじゃなくて、僕よりも、ね。むちゃくちゃすぐれているわけ
で、そのスキルをもらわない手はないですよ。発想もむちゃくちゃすごいです。
だから子どもとパートナーシップで私たち大人、政治家が生き合っていくんだ、日本をつく
るんだという、この視点が一番大事で、子どもたちは必ず応えてくれるというか、自分たち以
上のことを言い始めたりやり始めてくれると信じていますし、それは諸外国や日本のあちこち
を見た場合、既にあるんです。
○泉
なるほどねぇ。
20
質問タイム
○泉
あっという間の話で、一応 19 時までには終わるようにと言われています。しかし議論は
盛り上がったところという感じがします。
せっかくなので会場の中で質問したい方があったら、お二人ほどの枠はあるかなと思ってい
ます。質問してみたいなという人、おられますか。
オッ、二人いましたね。では、その二人に決めましょう。
○参加者A
私、千葉県から参りました。経済学の教授をしております。実は千葉の「ニコニ
コ超会議」に初めて行ってまいりまして、そこでチラシをいただいてこちらに参りました。す
ごぉく若い皆さんばかりかなと思っていたんですけれども、そうでもなかったので、行ってホ
ッとしました。
質問は体罰のことで、大変関心があったんですけれども、先ほど尾木先生は体罰について、
言い方的に正しいかどうか、法律の面も駆使して闘った、ではないですけれども、意見を述べ
られたご様子ですが、それについて今のお考えをお聞かせいただきたいんです。体罰について
たくさんテレビなどでも今でも問題になって、どこまでが体罰かと。確かに死亡するのはいけ
ないと思いますし、私も体罰は反対ではございますが、子どものころチョークを投げられたこ
とは確かにあります。ぜひご意見をお聞かせください。
○泉
もう一方、質問をいただきます。
○参加者B
尾木先生が「ゆとり教育は結果としてはよかったんじゃないか」と述べられてい
たと思うんです。これから先の教育は「脱ゆとり」に向かっている。お三方の話では、皆さん
「いろんな人がいた」とか、
「自分がどうあるべきか」というのをすごくおっしゃっていたので、
「脱ゆとり」にしてしまったら、またそういった人たちが生まれないんじゃないかと思って、
これから先の教育はどうあるべきか、どう考えていらっしゃるのかをお聞きしたい。もしお時
間が許せば、世代の違う3人の方から意見をいただきたいです。
○泉
○尾木
では、尾木さん、お願いします。
最初の方のお話ですけれども、「ニコニコ超会議」、僕も出ていたの。ハーイ、すごか
ったですね、熱気がね。
体罰の件ですけれども、僕どうしてそんなにこだわって体罰と闘ってしまったのかと。それ
は闘おうと思ったんじゃなくて、もう生理的に受け付けなかったのね。それは私の父親が明治
45 年生まれの古い人なんですけれども、自分の父親に叩かれ続けた。父親は教員をやっていた
んですけれども、「叩かなくてもわかるのに。なんで親や大人は叩くのか」と思っていたから、
「直樹、お父さんは絶対に手を上げない。だから、言うことをよく聞いてね」というのを耳に
たこができるぐらい僕たち子ども3人は聞かされてきて、3人とも一度も叩かれたことがあり
ませんでした。それの影響があったんだと思うんです。中学3年生のときに間違えて叩かれた
ことが1回あるのね。やっぱり体育の先生なんです。そのときは父親が激怒して、すぐ教育委
員会に連絡をとって、明くる日その先生が「間違えていて申しわけなかった」とおわびされた
から、それはしこりにはなっていないんです。
今度高校に行ったら、ボンボン蹴るわけでしょう。自分がつらくなったんですよ。僕は一度
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も蹴られていないんです。結構僕は運動神経がいいんですよ、実は。だからいつも模範演技を
やらされていたんですが、その僕が急に「先生、やめてください。憲法違反だ!」と言ったも
のですから。先生のほうも「かわいがっているのに、なんだ、こいつ」と思った気持ちはわか
らないわけではないの。大人になってみたら、そりゃあ失礼だなと思ったんですけれども、で
もそうなっちゃって、売り言葉に買い言葉みたいになって。若かったものですからボイコット
してしまうということになったんです。
やはりね、体罰というのはなぜ間違いなのか。僕も「体罰」の授業をやってきましたけれど
も、明治の学制以来ずっと日本では体罰は禁止なんです。戦前から一貫して体罰を認めたこと
はない。戦前の一時期、感化院という今でいう少年院的な、その前身ですけれども、そこで体
罰を認めた瞬間があっただけなんです。日本の歴史の中では認めていませんし、江戸時代も体
罰はしていない国だということで海外の宣教師の評価が非常に高い国なんです。わが子をすご
く愛している国民ということで世界に評価されたんですね。
それがやはり戦前の軍国主義教育の中で、教練というので軍人さんが学校に入ってきた。あ
れからですね、日本で体罰が横行し始めたのは。教育現場の体罰というより、外から入ってき
た体罰で汚染されたと思っていいと思うんです。
体罰は、人権侵害は当たり前ですけれども、これは人への虐待行為です。常に強者から弱者
への、評価する側から評価される側へ。反対の暴力が振るわれたらどうなるかというと、事件
になるんです。先生への暴力というので大問題になるでしょう。そういうことが続いてきたし、
一般社会で校門の外でバカッと殴ったりしたら、これ、事件ですよ。おまわりさんに捕まりま
す。それが学校の中だから許されるということはあり得ないし、法的にも全然あり得ないこと
が、
「愛のムチ」論という言い方でこれまで横行してきたの。つまり教育の愛であればいいんじ
ゃないかと。だけれども、これは全然違いますよね。例えば親が暴力を振るって死に至らしめ
てしまうという不幸な事件が子ども虐待としてありますけれども、警察の調書ではもうほとん
どと言っていいぐらいが「それはしつけでした、愛情でした」と言われます。殺そうと思った
なんて、最近ではないわけではないけれども、非常に少ないと思います。
暴力は指導力がない人が振るうことです。ところが、僕、今法政の教員をやっていて、スポ
ーツ推薦で入ってきた学生たちは、先生に体罰を振るわれてでも、
「管理的にビシバシやられた
おかげで、スポーツ推薦で入れました」と言うんですよ。
「だから尾木先生、私の恩師をバカに
しないでください」と、講義を終わると抗議されるんです。そういう学生さんに対しては僕は
「それはよかったね、法政に入れて。でも、あなた、体罰振るわれなかったらもっと伸びてい
て全日本クラスだったかもしれないよ。オリンピックに出ていたかもしれないのに、そこには
気づかないんですか」と言うと、初めて目からウロコなんです。
これは心理学や脳科学でもそうですけれども、体罰を振るって伸びるということはあり得な
いんです。科学的にそういうことも解明されてきましたから、これは 100%間違いです。それ
は指導力のない教師や指導者が振るうことであって、一旦それを使い始めると、麻薬と同じで
す、やめられなくなってくる。受けたほうも、暴力を受けていることが快感になってくるとい
う怖さがあります。これはどうしても 2020 年のオリンピックを迎える前に脱出しなければ、国
際的にチョー恥ずかしい現象だと思っています。
二つ目の、今後のゆとり教育はどうなるのかという問題です。ゆとり教育の実践そのものは
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失敗しました。理念は間違いじゃない。だから本当は政策をもうちょっと変更するなり軌道修
正するなり、いろんな手を加えなければならなかった。条件改善だとかね。それが条件整備も
しないままで、びっくりしてボーンと元に戻ってしまったんです。
これは実はこれからの日本の子どもたちだけではなくて、社会にとって大変不幸なことだと
思っています。なぜかというと、皆さんもご存じのとおり OECD の PISA 調査(Programme for
International Student Assessment)がありますね。日本の順位がだいぶ上がってきたというふ
うにして 2009 年の結果あたりは 2012 年ごろ言われたと思います。どういうことかというと、
全国一斉学力テストも復活して今やるようになりました。小学校は国語と算数をやっているわ
けです。中学は国語と数学をやっているんです。小学校も中学校も同じですけれども、中学校
の3年生で1時間目に国語のA問題をやるんです。2時間目、国語のB問題をやるんです。3
時間目に数学のA問題。4時間目に数学のB問題。給食を食べて5時間目に生活実態調査をや
るんです。
皆さんどうでしょう、国語と数学、小学校では算数、それぞれA問題、B問題と2種類やっ
ていたということをご存じの方は、手を挙げてください。
[ 挙
手 ]
ほら、わずか8人ですよね。これはショックですよ。文科省がなぜA問題、B問題と分けて
いるかというと、A問題は古い世代……フフフ、「古い世代」と言うと気持ちいいわぁ(笑)。
古い世代が受けてきた暗記中心の、いかに正解を時間内で出せるかといういわゆる受験学力、
暗記型の学力です。これはそれなりに意味があって、60 年代、70 年代の高度経済成長を遂げて
きたわけです。それはそれでその時代には合っていたけれども、今はそうではなくなってきた
んです。やはり IT の進歩が世界を相当変えましたから、今求められている学力は実はB問題な
んです。
ところが、B問題は文科省のあの問題でも極めて点数が低い。PISA 調査では 50%を超えな
いんです。極めて低い。しかも学習意欲は、65 ヵ国・地域が参加した中で日本の子どもたちは
最下位なんです。実はB問題が解けないというのを教育界はみんな悩んでいるんです。文科省
もここにてこ入れをして、これからの学力はB問題なんだというのを現場の先生方や社会にも
わかってもらうために、B問題をわざわざ2時間目に置いてやっているのはそこのメッセージ
があるんです。伝わっていませんね。文科省もメッセージを伝えるのはチョーへた。
それほど変わっちゃったんです。つまり活用力と言われています。生きていくのにいかに力
を活用できるか、その力を試す。これが学力だと言われているんです。
でもメディアの方がまたこれを誤訳しちゃうんです。「応用力」と言っちゃう。「応用力」と
文科省は一度も言ったことはないんですよ。
「応用力」というのは基礎問題に対しての応用なん
です。問題集の中のデスクワークで処理できちゃうんです。
「活用力」というのは、生活の中に
子どもたちを社会参加させる、いろんなボランティアでも地域に参加させる、インターンシッ
プにも出かける。今度駅舎ができると言ったら、そのモデル案をみんなが応募してやるだとか、
いろんな中でついてくるものなんです。机上のトレーニングじゃないんです。だから5割をな
かなか突破できないのは当たり前なんです。
それが実は 2018 年にまたコロッと変わるんです。その学力からもう一つ進んで、グローバ
ル・コンピテンシー(Global Competency)と言います。翻訳はしないことに決定しました。グ
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ローバル・コンピテンシーとそのままですので、皆さんネットで一回調べてください。あえて
翻訳すれば「世界市民としての力」、この多文化共生時代をどう生きていくのか、正解のない解
をどう出せるのかという人材を育成していこう。そういう時代に入ってきて、そこへ学力移動
するんです。そのために 2015 年、来年の PISA の問題から練習としてそれが少し入り始めるん
です。
実はこの間 PISA の事務局が日本の文科省に対して、そういう問題を日本と共同開発してつ
くりませんかと言ってきて、文科省は受ける方向にあるみたいです。そういう時代に来ている
んです。すっかり変わっている。今のA問題、B問題は変わっているのまで国民に伝わってい
ないんです。この教育の、何というんですかね、上滑り現象というの?文科省は文科省で一生
懸命やっておられる。なんで伝わらないのかという問題。かなり僕きょうショックを受けたん
ですよ。ここのところに来られる方がこうだと思わなかったから、すごいショックです。みん
な頼むよー、もう。教育を見捨てないで。
ということで「生きる力」と文科省は言っていますけれども、このグローバルな時代を想像
力、発想力、思考力、それから、文科省の訳でいうとプレゼン能力、それから管理能力、比較
管理能力という五つぐらいに分けておられます。これに定着するかどうかまだわかりませんが、
そういう方向でガラッと変わっていきます。今世界が求めている学力とは何かという問題、こ
こに変わろうとしていますので、ぜひネットで調べてください。お願いします。
む
○泉
す
び
ありがとうございます。人柄が出ていますよね、皆さん。心ですよね、尾木さんの。こ
れだけ質問に丁寧に答えていただいて。進行も延びていますが(笑)。本当は会場の皆さんもい
ろんな質問をされたいんじゃないかと思いますが、きょうは大事な交流会もあります。そろそ
ろ第1部を終了しなければいけません。
最後に、1分ずつか 30 秒ずつお三方にお願いしたいと思います。きょういろんな言葉が出て
きましたけれども、これだけいろんな違う立場の皆さんが集まって、議員たちもたくさんいて、
ほかの職業の皆さんもたくさんいます。そういう場で一堂に会してこの後の交流会にぜひ活か
してほしいなと思うんです。積極的にいろんな人と話をしてほしいと思います。この後の交流
会と、これからの民主党大学のイベントにぜひ我々としては参加してほしいなと思うわけです。
そういった意味で、
「皆さんこうしたほうがいいよ」ということも含めて、お三方から結びのご
あいさつといろんなお知恵をいただければと思います。
細野さんから行きましょう。
○細野
先ほど「教育について」とおっしゃったので一言だけ申し上げると、今ちょうど教育
委員会の改正の法案をやっているんです。私、文科委員会なのでかなり質問してきました。責
任の所在をどうするかはすごく大事な問題ですが、私はちょっとむなしさを感じるところがあ
って、やはり教育というのは地域でどうやっていくか。コミュニティスクールはその一つの姿
だと思うけれど。学校に地域の人が参加してもらうことで地域の核にもなるし、多様な経験を
子どもたちができる。これが一番根本的じゃないかと思っているので、そこに賭けたいなと思
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っています。
あと二つ簡単に申し上げますと、一つは、さっき尾木ママがおっしゃった、近江八幡でどこ
に児童公園をつくるかという話をしているというのはすごくうれしいんです。私は近江八幡で
育ったので。教育現場が現実の選択なり政治なり行政なりからちょっと逃げてきたというか、
避けてきた。政治の側もそこにはあまり立ち入らないほうがいいかなとやってきたけれど、こ
れは間違いですね。そうじゃなくて、現実の問題を子どもたちに考えてもらうきっかけをつく
るというのがこれから大事になってくると思います。
最後に一つだけ。これは青木君にぜひその後をつないで言ってもらいたいけれど。これから
18 歳に投票権が下がります。このためにも今言ったような教育現場に添える機会を提供するこ
とはものすごく大事だし、それによって子どもたちが考えてくれることが大事だ。そして我々
が考えなければならないのは、はたして投票するほうだけでいいんだろうか。私はそうじゃな
くて、立候補する側の年齢も下げるべきじゃないか。自分が投票することができますと。しか
し自分が納得して投票する人がどうしてもいないのであれば、自分も出られるんですよ、もし
くは仲間からも誰か出てくれることができるんですよという選択があってこそ、初めて 18 歳の
若者が政治について本気で考えてくれるんじゃないかと思っているんです。これは私が言うよ
りも青木君が言ったほうが説得力があると思うので、ちょっと言ってください。
○青木
僕自身も、選挙に出たり政治を志す人がふえればいいなと思っていて、そういうこと
を考えたときに自分はあるニュースを目にしまして、小学生か中学生に聞いた将来の職業ラン
キングみたいのが先日どこかのニュースで流れていたんです。国会議員って皆さん何位ぐらい
だと思いますか。順位忘れちゃったんですけれども、かなり低かったんです。国会議員の1個
上の人気職業が入れ墨師だったんです。本当です。これニュースになっていたんです。小中学
生が目指す将来の職業って、国会議員さんは入れ墨師より人気がないわけです。今の日本の中
ってそういう現状になっちゃって、もはや政治家なんて選択肢にはないわけです。
○細野
入れ墨師は選択肢にあるの?
○青木
入れ墨師もどうなのかというところはあるんですけれども。
○細野
それはショックだよね。
○青木
自分自身も活動してきた中でいろんな議員さん、いろんな人たちとお話しさせていた
だく中で、真摯に向き合って政治を何とかしていこうと思っている人が大多数だと思うんです
が、それが社会に対してまだ多く出ていないのかなと思っていて。だからこそ、こういう機会
に実際に政治家の方だったりパーソナリティー的なところをちゃんと見て、この人はどういう
ことを考えて、この人は何をやろうとしているのかを引き出して、さらに自分たちが次を担っ
ていこうというところがこれからの時代は重要になってくるし、自分自身もそこでひとつ担っ
ていければと思っています。
○泉
○尾木
それでは尾木さん、最後に会場の皆さんに一言お願いします。
僕、まだ現役の教師の時代にあるタイトルの本を出したら、仲間の先生から「これは
ないだろう」と批判されたんです。その本のタイトルが『子どもに頼るのもいいんじゃない』
(『子どもに頼るのもいいんじゃない。「子どもの権利条約」時代を生きる教師』)
。そこには教師の指導性のかけ
らも感じられないと総スカンを食ったんです。1992 年のころです。
でも、僕はこれまで中学、高校の教師をやってきて、あるいは大学生と今向き合っていて、
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わからないことは子どもたちや学生に聴くというのが基本です。どうしてなの?なんであの子
荒れて窓ガラスすぐ割っちゃうの?どうしたの?と聴くんですよ。だから僕のニックネームは
「どうしたの?先生」だったの。僕が悪いことをしている子のところに近寄っていくと、本人
から「どうしたの?」とか言うんですよ。それで理由を述べて、自分で解決したりするんです
けれども。そんなふうにしてわからないことは子どもに聴けばいいと。
「聞く」ではなくて「聴
く」。心で聴くということ。受け止める聴き方、これが基本です。
さらにもう一歩進んで、先ほどから強調していますけれども、子ども参加で、あるいは子ど
も参画という概念を使ってもいいかと思いますが、子ども参画でいろんな子どもの問題、教育
の問題も考えていこう。それから政治の問題から、あらゆる問題ね。子どもの力を借りなきゃ
損ですよ。使わなければ、というと失礼な言い方になるかもわかりませんけれども、そういう
時代に来ている。
そうすると見事に解決しますよ。僕、現職の教師時代、子どもに頼って解決できなかった問
題はほとんどありません。だからぜひ社会全体の問題も子ども参画で、子どもと大人がパート
ナーシップを営む世紀に入っていきたいなあと思います。
それは歴史を振り返れば、人種差別だとか男女不平等の問題とかいろんなことがありました。
出自の問題とか差別がいろいろありました。最後残ったのが、大人と子どもの関係性が確立で
きないんですよ。これはやはり民主主義の熟成度によって、国によって違うなあと思います。
そういう点で言えば、わが国はまだまだ進んでいる国とは言えない。その民主主義の熟成とい
う視点からしても、子どもと大人の関係性がパートナーシップが営めるような、そういう関係
になったときに日本社会は変わると思っています。(拍手)
○泉
ありがとうございます。すみません、進行が拙いものですから、時間も超過して、なか
なか最後一つにまとまるような話ではなかったかもしれません。ただ、あえてまとめないとい
うことも一つかなと思っていまして。皆さん、きょうお三方からあったメッセージをそれぞれ
で受け止めて、また活かしていけるんじゃないかなと思いますし、ぜひこの後の交流会でもこ
の第1部のパネルディスカッションが皆さんのいろんな交流のネタになればいいなと思います。
次回もまた楽しい企画をやっていきたいと思いますので、まずは第1部、このパネルディス
カッションを終了させていただきます。皆さん、ありがとうございました。
大きな拍手をお送りください。(拍手)
[パネラー退出]
○栗山
青木さん、細野議員、そして尾木ママ、ありがとうございました。コーディネーター
の泉学長も本当にお世話になりまして、ありがとうございました。(拍手)
閉会のあいさつ
○栗山
第1部のパネルディスカッションはこれにて終了でございますが、最後に青年委員長
津村啓介からごあいさつさせていただきます。
○津村啓介青年委員長
皆さん、本日はご参加本当にありがとうございます。
先ほどのパネルディスカッションの中で、若い皆さんが政治に向き合っていないというお話
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がありました。それは政治家のほうがメッセージやビジョンをしっかり示せていないというお
話もありました。全くそのとおりだと思います。おそらくその理由は、私たち政治家がそもそ
も若い皆さんに向き合ってこなかったからだと、そう思っております。
今回私たちは、冒頭にも少し触れましたけれども、皆さんに何かを伝えたいと思って民主党
大学を開いたわけではありません。私たち自身が皆さんからもっと多くのことを学びたい、そ
ういう思いでこの民主党大学を開かせていただきました。
学長はいますけれども、教授も准教授もおりません。私たち政治家も含めて全員が学生だと
いう思いで、このイベントを開かせていただいております。
二つの工夫をいたしました。きょうは3時間半のイベントですけれども、最初の1時間ちょ
っと、3分の1をパネルディスカッションに充てて約2時間、少し押しておりますので2時間
弱、交流の時間を多く持とうというのが一つ。
そしてきょうは国会議員、地方議員 91 名参加しております。一般の方の募集は当初 120 名と
しておりました。基本的に1対1でじっくり話せる場にしようと考えました。幸い多くの方に
申し込みをいただきまして、枠を広げてきょうは一般の方も 200 名余り来ていただいておりま
すが、それでも比率は1対2であります。2時間あります。ぜひきょうのこの教育論の続きを
皆さんからしていただいても結構ですし、あるいは政治家という職業についてでも、皆さんの
これからの就職や、今職場あるいは学校の現場で起きていることでもいいです。ぜひ皆さんの
ほうから私たちにいろんなことを叩き込んでいただければと考えております。
時間が惜しいので、これでごあいさつを終わります。よろしくお願いします。(拍手)
○栗山
ありがとうございました。それでは第1部のパネルディスカッション、これにて終了
とさせていただきます。2時間近くなりましたけれども、おつき合いをいただきましてありが
とうございました。またどうぞよろしくお願いいたします。本日はまことにありがとうござい
ました。(拍手)
(以上)
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