『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) 連載「科学技術コミュニケーションを問う」第 8 回 ナノテクノロジーの 光と 影 -その 2- ナノテクの光と影に向き合う社会 五島 綾子(サイエンス・ライター) 1.はじめに ある科学技術政策がメディアで大きく取り上げられる場合は,世間では よく知られていることであるが,事実上,ひとつの方向にそろって眼をむ けるように誘導されてしまう。大方,最初の段階として推進派のお役人, 専門家や有力な一握りの科学者たちが,自分たちが重要と考える分野をメ デ ィ ア で 語 り , ト ッ プ ダ ウ ン で 巨 額 の 資 金 を 投 入 す る 1 )。 こ の 巨 額 の 資 金 に産業界,研究資金獲得を目指す科学者,投資家が群がり,一つの方向に 向かう。 ところが,さらに看過できない問題が発生してくる場合が多い。巨額の 資金が投入されたはずの科学技術政策が社会の大きな期待に沿うような結 果がだせていないことがしばらくして明らかになってくる。すると,科学 界はもちろんのこと,産業界も議会もマスコミもその事実を確かめ,実際 はどうなってしまったのかという検証をさけて,次なる科学技術に軽やか に 飛 び 移 る こ と で あ る 2 )。 私 が 尊 敬 し て い る あ る 私 立 大 学 の 経 営 史 専 門 の 若い教授は,文科省の科研費のテーマは 9 割の成果をすでにだしており, 研究完成上,最も重要な研究の山場である 1 割を採択された場合の研究資 金でじっくり研究する計画をたて,申請すると言われていた。このような 教授の姿勢は稀であろう。見込みで研究資金を申請した研究では,地道に 継続していこうという動きは尐なくなるであろう。競争にさらされる科学 技術だから,過去の失敗をあれこれ考えるより見切りをつけて未来の明日 に向かわねばというがごとく,ふりかえることはない。 今回は,かって,狂乱の渦の中にあったナノテクのその後をたどり,ナ ノテクが光とともに影を抱えることがはっきりしてきた時の産業界,科学 界の対応を見ることによって,私たちの果たすべき役割を考えてみたい。 1 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) 2.ブームの後のナノテクノロジー アメリカから導入されたナノテクノロジーも,お役人,経済界,有力な 専 門 家 ,科 学 者 た ち が メ デ ィ ア を 通 し て 21 世 紀 の 産 業 革 命 と 煽 り ,ナ ノ テ ク を 巟 る 狂 乱 の よ う な ブ ー ム が 20 0 2 年 を 中 心 に 起 き た 。こ の 背 景 に は ,お 役人と一握りの科学者たちが巨額の投資の正当性を伝えるために,納税者 で あ る 市 民 に メ デ ィ ア を 通 し て 煽 り 立 て る 必 要 が あ っ た か ら だ 3 )。 こ れ が アメリカと同様,わが国のナノ・ハイプ(ナノの誇張)の土壌をつくった と も い え る 。し か し 2 00 3 年 後 半 に な る と ,こ の ブ ー ム も 徐 々 に 冷 め ,い ま や ほ と ん ど の メ デ ィ ア が ナ ノ テ ク に は 無 関 心 の よ う だ 。次 な る 太 陽 光 発 電 , 省エネの科学技術政策に目がすっかり向けられているようである。 何 故 ,ナ ノ テ ク に 無 関 心 に な っ て し ま っ た の だ ろ う 。答 え は 明 解 で あ る 。 ナノテクに対する期待が語りつくされたにもかかわらず,それに見合う成 果が市場にでていないからである。つまり,ナノテクの研究開発が従来の 科学・技術を突破できるようなブレークスルーをまだ生み出していないか ら だ 4 )。 それでは,ナノテクの研究開発はもうすっかり冷えて遠ざかってしまっ たのであろうか。あるいは水面下で実は秘かに進んでいるのであろうか。 いやむしろ,市場に着実に本物のナノテクが生かされた商品が登場してい るのであろうか。この答えを探ってみよう。 3.わかりにくいナノテクコマーシャルの氾濫 20 03 年 10 月 の 日 経 ナ ノ テ ク フ ェ ア ー に お け る ド レ ク ス ラ ー の 講 演 で 印 象 に 残 っ た 話 が あ る 。彼 は ア メ リ カ で の ナ ノ 商 品 の コ マ ー シ ャ ル , “こぼし てもしみがつかないナノパンツ”を例にとって語った。このパンツは,ア メリカでは小さなコンピュータを組み込んであって,シミを消してしまう というふうにコマーシャルされていたという。ところが,実際は,このパ ンツにはナノマシンも超小型コンピュータも組み込まれておらず,ナノレ ベルの薄い膜で覆われているだけである。このナノ薄膜に水をはじく性質 があったからだ。これは単にしかけが水をはじく薄い膜ではないか。これ がナノテクの意味するものなのかというドレクスラーの問いかけであった。 日本にはこのような世間のナノテクの誤解に対して問いを投げかける有力 な科学者は尐なかった。 わが国でも,ナノテクブームのピーク時には,ナノテクは何でも解決し てくれる道具のような響きがあり,新聞紙上に見出しが躍った。そしてこ れに答えるコマーシャルがアメリカをはるかに凌いで消費者の目を奪った。 2 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) 家電,食品,化粧品など幅広い分野にわたり,ナノのついたコマーシャル は枚挙に遑(いとま)がない。 「ナノテク加工により汗じみなどの汚れが落ちやすい,ナノ加工(超撥 水 ・ 防 汚 加 工 ),ナ ノ テ ク 除 菌 ,ナ ノ テ ク ・ ス ー パ ー ア レ ル オ フ ,ナ ノ チ タ ン触媒とナノプラチナ触媒,ナノテク衛生フィルタ,ナノテクよりさらに 1/1 0 の 分 子 の 大 き さ ・ ・ ・ 」 な ど で あ る 。 それぞれの効果は,ドレクスラーが語るナノパンツと同様,加工膜の厚 さやあるいは粒子がナノサイズレベルということであろう。しかしインタ ーネット上のコマーシャルの説明からは具体的なサイズに関する情報は読 み取れない。産業界では「ナノテク」という言葉が,商品のイメージを高 める力があるために広く用いられたからである。消費者にとってはいずれ も科学的根拠がわかりにくいナノ商品である。そればかりか,市場にはナ ノクラスター水,ナノジュエリーなど筆者にはより丌可解と思われるナノ 製 品 も 出 現 し た 。ナ ノ テ ク の 研 究 開 発 が 緒 に つ い た ば か り に も か か わ ら ず , 消費者にはその実態が伝わらないどころか,誤解されたままであった。 4.誇大宣伝のしっぺがえし 本来,ナノテクは,長い時を経て科学者たちが物質とは何かを探り,蓄 積してきた分子の知識から導かれた仮説である。ところが,誇大宣伝によ り真の意味のナノテクをあやしげな意味に変えてしまったようだ。アメリ カではこのような状況に対して,有力な科学者たちが舵取りをし,良識的 な 意 見 を い ろ い ろ な 角 度 か ら 述 べ , 論 争 す る 。 M. ロ コ , フ ラ ー レ ン 発 見 者 の 一 人 と し て ノ ー ベ ル 化 学 賞 を 受 賞 し た R. ス モ ー リ ー ( 1 94 3 - 20 05 ), 日 経 サ イ エ ン ス で お 馴 染 み の M.ホ ワ イ ト サ イ ズ ら が 科 学 界 の オ ピ ニ オ ン リ ー ダ ー と し て 活 躍 し て い た 。例 え ば ,彼 ら は ,今 は ま だ ,SF 社 会 の 中 で し か存在し得ないドレクスラー流分子製造に対して公開で激しい論争を繰り 広 げ た 3 )。 し か し , わ が 国 で は , 科 学 界 に は ナ ノ テ ク の 誇 大 宣 伝 に 警 鐘 を ならし,日本のナノテクの進む方向と現実を伝えるオピニオンリーダーが 丌在であった。 ナノテクに対する過度な期待は常にゆり戻しとしっぺ返しが必ずやって くる。ナノテクのリスク報道が始まると,たちまち,メディアの過熱も冷 え始めた。当然,それに伴い,消費者のナノ商品に対する関心も冷めてい った。商品の効果も実感できず,それを支える科学的根拠もはっきりしな ければ,いずれ消費者は引き潮のごとく引いていくのは当然である。 一方,このブームの盛り上がりで専門家たちは研究開発費の確保に見事 に成功したのである。納税者である市民にナノテクが将来すばらしい技術 3 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) を生み出し,イノベーションに導いて経済効果をもたらすのだという宣伝 が功を奏したのである。科学技術予算の申請書にはなんと“ナノ”の頭文 字のついたタイトルが多かったことか。ナノは企業ばかりか,科学者もお 金を引き寄せるネーミングとよく心得ていたにちがいない。当時,事業仕 分けがあったとして,蓮舫議員がナノはどんな問題を解決してくれる科学 技術なのですかと質問したら,なんと答えるのであろうか。 ところが,このような風潮の中でメディアや,それに乗ったかのように 思 わ れ る 市 民 は ,実 は 大 変 怖 い 存 在 な の だ 。答 え を す ぐ に 要 求 す る か ら だ 。 あれほど大騒ぎしたのだから,はやくお金が儲かる本物のナノテクを生み 出してくれと言わんばかりである。ところが,波及効果の高い筋のいい科 学技術研究開発であればあるほど,時間もかかるものだが,そんなことは お役人もメディアも世間も理解していない。目的を達成するには,コスト はかかるが,常に研究者,技術者のひらめきが最も大切な役目をするから である。 大型予算がついたプロジェクトのリーダーに重くのしかかったプレッシ ャーはいかばかりであったろうか。 5.カーボンナノチューブ研究開発 5.1 カーボンナノチューブ大型国家プロジェクト 「 カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ ( CN T )」 は 昨 年 の 文 化 勲 章 受 章 者 飯 島 澄 男 に よ っ て 1 991 年 に 発 見 さ れ た 。 わ が 国 で は ナ ノ テ ク が 導 入 さ れ た 時 点 で , CNT が ナ ノ テ ク の 中 心 に 位 置 づ け ら れ た 。 CN T は 炭 や ダ イ ヤ モ ン ド の よ う に 炭 素 か ら で き , そ の 並 び 方 が 特 徴 的 で 細 長 い ら せ ん 構 造 を 持 つ (図 1 )。 CNT の 長 さ は 数 m m オ ー ダ ー と 長 い 場 合 も あ る が , 単 層 CN T の 直 径 は , 1nm 前 後 ,多 層 CN T の そ れ は 10 0 nm 以 下 の 何 層 に も 重 な っ た 構 造 を も つ 。 「 軽 く て 鉄 よ り 強 靱 」「 電 気 を 通 す 」 な ど 優 れ た 性 質 が 次 々 明 ら か に さ れ , 『ネイチャー』 『 サ イ エ ン ス 』な ど 一 流 の 国 際 的 な 学 術 雑 誌 に 大 き く 取 り 上 げ ら れ ,世 界 が 注 目 し た 。CN T は 重 金 属 に は な い 性 質 を 備 え た 炭 素 素 材 で あるために,電子デバイスや燃料電池への応用への期待が一気に高まった のである。 4 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) 図 1 単 層 及 び多 層 CNT のコンピュータグラフィックス わが国では飯島澄男率いるナノカーボン応用製品創製プロジェクト (20 03 - 20 06 年 度 )が 大 型 ナ ノ テ ク 研 究 開 発 と し て 注 目 さ れ た 。 特 に 畠 賢 治 ( 産 総 研 ) グ ル ー プ が 開 発 し た ス ー パ ー グ ロ ス 法 は 高 品 質 の 単 層 CNT へ の量産化にめどをたてた。 ところで素材から製品化に至るまでに,以下に示すように,純度の高 い 原 料 づ く り と そ の 材 料 が も つ 性 質 を 明 ら か に す る 第 一 段 階 ,溶 か し た り , 膜にしたりする中間処理の第二段階,さらに製品化の第三段階と,三つの 過程を経る。 材料合成 中間処理 商品化への開発技術 [ 純度の高い単層 CNT の合成と物性研究] 中間処理はナノテクの本領を発揮するステージである。地域の中小企業 がナノ炭素材料をいかにして溶かすのかという壁にぶつかり,匙を投げた 話 が 頻 繁 に 伝 わ っ て き た 。 こ の プ ロ ジ ェ ク ト で も , 単 層 CN T を ど の よ う な 液 体 に 溶 解 す る の か , あ る い は CNT の 配 列 を 工 夫 し て 薄 膜 を い か に つ くるかが求められた。しかし中間処理も製品化もその厚い壁を克服できな かった。これらの過程には,どんな商品化をつくるかを十分議論し,原料 作りの川上から川下に至るまでの異分野あるいは異業種の知恵の出し合い が必要であった。しかし専門家は化学と物理が大半であり,大学型のシス テムであったために,具体的な製品のアイディアが乏しかったのかもしれ な い 5 )。 川端科学技術政策担当相大臣によれば, 「研究開発投資のすべてが成功す 5 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) る わ け で は な い 」と 。そ の 上 で , 「課題を必ず克服しなければならない研究 開発事業」と「失敗が許される創造的な研究事業」とのバランスを強調し た 6 )。 社会の中で着実に積み重ねられていく科学・技術は優れた研究者たちが 地道で,かつ夢中になって追いかけていくものである。したがって極めて 長い時間とコスト,研究人員を要するものであり,付焼刃(つけやきば) ではできない。他方,これらの科学・技術に投資された額は,市民感覚で は莫大であるケースが多い。そのためには,過去に消えてしまった大型科 学技術政策に関しても分析し,納税者である市民に納得のいくように説明 する時代にきている。 5.2 わ が 国 で も 着 実 に 進 む CNT 研 究 開 発 CN T の 研 究 開 発 は そ の 後 ,ど の よ う に な っ て い っ た で あ ろ う か 。ア メ リ カ , そ れ に 続 い て 日 本 が 追 い か け て い た が , い ま や 韓 国 , 中 国 , EU が 猛 追 し て い る 。 そ の 結 果 , CN T の 応 用 研 究 も 多 様 と な っ て き た 4 )。 近 年 , CN T を 溶 解 さ せ る 泥 臭 い 地 味 な 実 験 研 究 の 蓄 積 に よ り , CN T の 溶 解 の 道 筋 が 見 え て き た 。 さ ら に 単 層 C NT に 金 属 と 半 導 体 の 両 者 の 性 質 が混合するという難題も,解決できた。産総研の生物系の田中丈史ら若い 研究者が中心になってアガロースゲル電気泳動の原理により分離に導いた のである。この技術により,金属性のものは稀尐金属の代替品として液晶 ディスプレイや太陽電池パネル用の透明電極への利用が期待されている。 また半導体性のものは透明で折り曲げることができる薄膜トランジスタや 高 感 度 の セ ン サ ー へ の 応 用 が 期 待 さ れ る 4 *)。 大 阪 大 学 教 授 松 本 和 彦 ら は ,C NT チ ャ ネ ル に よ る 高 感 度 セ ン サ ー を 開 発 し,アレルギー疾患診断に応用している 4*) 。産総研の安積欣志らは単層 CNT の 電 極 が 電 圧 に よ り 伸 縮 で き る よ う に し ,医 療 ・ 福 祉 用 途 の ロ ボ ッ ト な ど へ の 期 待 が 高 ま っ て い る 4 *)。 東 京 大 学 工 学 系 教 授 染 谷 隆 夫 ら は 単 層 CNT に よ り 電 気 を よ く 通 し か つ 高 い 伸 縮 性 を も つ ゴ ム を つ く り ,ト ラ ン ジ スタを埋め込んで集積回路を作ることにも成功した。電子ペーパーやロボ ットの間接部を覆うこともできるという 4*) 。 しかし,世界の研究者も猛追しており,これらの研究開発はまだ市場に 直結しているわけではない。 5.3 欧 米 と 日 本 の 企 業 の CNT 研 究 開 発 取 り 組 み の 違 い わ が 国 で は ,現 在 の カ ー ボ ン ブ ラ ッ ク な ど の 炭 素 材 料 の 全 使 用 量 の う ち , 多 層 CNT は 60 - 70 ト ン , 単 層 CNT は 0. 1 ト ン で , あ わ せ て 全 CNT の 占 6 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) め る 割 合 は 0. 1 % に す ぎ な い 6) 。 C NT は “ 宇 宙 と 地 上 を つ な ぐ エ レ ベ ー タ ー”とまで誇大宣伝が激しかった分だけ,しっぺ返しも大きいのかもしれ な い 。CN T の 研 究 開 発 は 地 道 に 進 ん で も ,製 品 化 の 見 通 し が な か な か 立 た な い 状 況 で メ デ ィ ア が 引 き , そ れ に 追 い 討 ち を か け た の が C NT の リ ス ク の危惧であった 7) 。 20 03 年 以 降 , CN T の リ ス ク に 関 す る 論 文 が 急 激 に 増 加 し て い っ た 。 20 08 年 に 国 立 医 薬 品 食 品 衛 生 研 究 所 ( 国 衛 研 ) グ ル ー プ ラ大学グループ 9) 8) およびエジンバ が 多 層 C NT の マ ウ ス の 腹 腔 内 投 不 試 験 か ら 中 皮 種 を 確 認 し た と し て 反 響 を 呼 ん だ 。C NT の 形 状 は ア ス ベ ス ト と 構 造 上 の 類 似 性 が あ る た め に ,そ の 構 造 が 有 害 性 を 決 定 す る と い う 仮 説 は 問 題 と な っ た 。現 在 , この仮説は有力ではあるものの,研究者の間でまちまちである。また,今 のところ,マウスやラットの実験段階であり,体内進入経路が現実的でな いという指摘もある。 し か し こ の リ ス ク は メ デ ィ ア に よ り 大 き く 報 道 さ れ た 。そ の 上 ,2 00 8 年 2 月 に 厚 生 労 働 省 は , CNT の 作 業 現 場 に お け る 環 境 , 健 康 , 安 全 に 対 す る 取り組みや危機管理をうながした。企業の目には,アスベストの二の舞を 恐れたかのように映ったのかもしれない。結果的に,大企業も含め,企業 のマインドは急激に冷え込んでいった。企業はブームによる消費者の熱い 関心が一転して丌安に変わり,商用化に重大な影響を不えると判断したよ うだ。 で は 海 外 の C NT 製 造 企 業 は い か な る 対 応 を し て い る の で あ ろ う か 4*) 。 EU に 本 拠 を 持 つ 3 大 C NT メ ー カ ー Bay e r 社 , Na nocy l 社 ,Arkema 社 は 欧 州 C NT 工 業 会 を つ く り , EHS ( 環 境 ・ 健 康 ・ 安 全 )へ の 取 り 組 み と 社 会 へ の 情 報 発 信 を 行 っ て い る 。 一 方 , B ay er 社 で は す で に ス ポ ー ツ 用 品 , 風力発電用の大きな羽や自転車のフレームなどの応用に積極的に取り組ん で い る 。し か も 日 本 の 企 業 と 大 き く 異 な る こ と は ,CN T と 混 合 し て 作 っ た 材料の安定性や暴露についてホームページや国際学会でその取り組みを公 表していているのである。わが国の企業の秘密主義はもはや国際的に通用 しない段階にきているのだ。 ア メ リ カ の D uPont 社 は , ナ ノ 材 料 の リ ス ク 評 価 ・ 管 理 に 関 す る 技 術 指 針 を 環 境 NGO と 共 同 開 発 し , 自 社 で 製 造 ・ 使 用 す る す べ て の ナ ノ 材 料 に 対して適用することにしている 4*) 。このフレームワークはだれもが閲覧・ ダウンロードできるようにしてある。消費者はきちんととした情報が公開 されていれば,安心するものであるという考え方が基本にある。 7 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) 6.日常生活にひろがるナノテク 6.1 ナノテク産業そのものは生まれていない 今 や 世 界 最 大 と な っ た 「 na no tech 20 10 」 が 今 年 2 月 に 東 京 の ビ ッ グ サ イトで開催される。昨年はヨーロッパやアジア各国がブースをだすその中 で ,産 総 研 ,理 研 な ど の 若 手 研 究 者 に よ る 優 れ た 成 果 が 展 示 さ れ た 。ま た , 地方では大学と周辺の中小の企業が連携して産業クラスターを形成し,着 実にナノ材料を中心とした技術と製品が広がっていた。これらを支えるナ ノスケール画像装置やナノ材料の計測機器などを開発している企業やナノ 材料の製造・分散機器の産業もしっかり根をおろしていた。図2はアメリ カのナノテクを先導するロコらのナノテクの未来の発展を三ステージに分 けて示したものである。明らかに現在の市場は第一ステージに,さらに研 究開発では第二ステージに入りつつある。 しかしアメリカの産業界側はブレークスルーとなるようなナノテク製品 発表に至るシナリオが見えないばかりか,市場はリスクも懸念されるナノ 材料と失望を隠さない。 『 ナ ノ ・ ハ イ プ 狂 騒 』の 著 者 で あ る ベ ル ー べ は ,こ の点に関してビジネスの世界ではナノテク産業が広い応用にまたがる収益 を 生 み 出 す 可 能 性 を 理 解 し て い な い と し , I BM の 例 を あ げ て , 長 期 的 な 研 究開発の5割をナノテクに割き,ナノスケール画像装置やその計測に力を 入れていると強調する。 図 2 ナ ノテ ク ノロ ジーの発 展 プ ロ セスの 予 測 第 3ステージ アセンブラー 第 2ステージ 自 己 複 製 ナノ マシン 第 1ステージ 高 度 ナノシステム ライフサイエンス ナノ粒 子 との融 合 初 期 的 ナノ システム 8 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) 6.2 ナノテクは生活に根づき始めている ナノテクはナノサイズの範囲で新しい機能を見出そうとする科学・技術 である。ナノカーボンや金属ナノ粒子のサイズや組成を制御して極限の性 質をもつ材料の実用化が進めば,省エネにつながるばかりか,生産プロセ スに大きな変革をもたらすというものである。これらはオバマ大統領のグ リーンニューディール政策と融合し,太陽光発電の分野などの研究開発を 推進していくという。したがって,ナノテクは様々な産業の製品の改良ま たは強化するナノテク周辺企業を生み出すのである。産総研の南信次は, 最 近 , We b Jour na l 1 0 ) で ナ ノ テ ク の 基 本 的 枠 組 み を ス キ ー ム で 表 し た 。 ナ ノテクという研究分野の特質としてナノテクは産業技術の幅広い基盤を成 すものであるが,その研究成果が産業界・社会で最終製品として,直接目 に見える形で利用されるケースは尐ない。しかし幅広く活用される新技術 の「縁の下の力もち」的な存在がナノテクであると強調している。現実に このようなナノテクの広がりが日本でも認められる。 東 京 大 学 I2 TA プ ロ ジ ェ ク ト , Team“ Na noGre e n ” は , そ の 広 が り を 認 め つ つ ,光 と 影 の 社 会 的 影 響 の 予 測 に 挑 戦 し て い る 。 20 09 年 1 1 月 8 日 に 開 催 さ れ た“ テ ク ノ ロ ジ ー・ア セ ス メ ン ト :未 来 の 住 宅 へ の ナ ノ テ ク 利 用 ” が そ れ で あ っ た 。I 2T A プ ロ ジ ェ ク ト リ ー ダ ー 鈴 木 達 治 郎 は ,科 学 の 潜 在 的 可能性を信じつつ,その負の側面をどう防いでよいかという問いに対峙し ているという。ナノテクが発揮する物理的及び化学的原理に基づく優れた 機能を利用した住宅関連の製品を調査している。それらが「光・熱・電気 な ど の エ ネ ル ギ ー 分 野 」,「 水 ・ 空 気 ・ 壁 」,「 音 」 や 「 セ ン サ ー 」 の 分 野 に 確実に広がっている実例をつかみつつ,生活への影響と生活者の受け止め 方まで考察を深めている 11) 。I2 TA プ ロ ジ ェ ク ト の 今 後 の 成 果 が 楽 し み だ 。 7.ナノリスク研究 ナノ材料の毒性問題はむずかしい局面を迎えている。ナノ材料に期待さ れる性質が逆にその毒性を上げる可能性もあり,新しい優れたナノ材料は 同時にリスクの面を常に注視しなければならないからである。 まして被膜された人工ナノ材料や粒子は安定に存在する可能性も高く, その毒性は未知だ。ナノ材料はサイズ,形状など様々な因子に違いがある ために,環境及び健康への影響は材料ごとに評価される必要があるとして いる。ナノ毒性研究者のコルビンも、ナノ材料製造の労働者の暴露は短期 的な懸案事項とし,長期的には水,土壌を通じて生態系全体が人工ナノ材 料に暴露される可能性を示唆している 3) 。ナノ材料のリスク評価モデルの 開発は世界の急務である。わが国はナノテクの研究開発への莫大な投資と 9 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) ともに,リスク研究への投資も怠らない点で,先進国の役割を果たしてい る。 NEDO プ ロ ジ ェ ク ト「 ナ ノ 粒 子 特 性 評 価 手 法 の 研 究 開 発( 20 06 .6 - 20 11. 2 )」 の中間報告が中西準子プロジェクトリーダーによりなされた 12) 。わ が 国 で は 最 も ポ ピ ュ ラ ー な 二 酸 化 チ タ ン ,フ ラ ー レ ン ,CN T の リ ス ク 評 価 書 の 作 成を目指している。この中間報告においては,ゴールを目指してまずナノ サイズであればなにが起きるかという問いから出発している。 ① ナノサイズで新しい機能があるのであれば,生体系でも新しい反応 が起きるのではないか。あるいは量子効果と関係する反応があるの ではないか。 ② サイズが小さいことは,比表面積が大きく,粒子の数が多くなり, 生体のあらゆるところに移動して反応しやすくなるのではないか。 ③ サイズがウイルスに近いために,生体の中でウイルスと同じ防御反 応の可能性やあるいは大量のナノ粒子によりウイルスの防御機能 が破壊される可能性はないか。 ④ ナノサイズ故に,生体組織との相互作用が起きやすくならないか。 ⑤ 粒子の残留性はどうか。 ⑥ 繊維状のものはアスベスト様の効果があるのではないか。 過去の科学者たちが経験してきたことから,粒子が小さいことから起き る可能性と,粒子が繊維状から起きる可能性の両面から捉えようとしてい る。実際の実験現場では,研究者たちは泥のような粉を分散し,一定の大 きさにそろえ,動物実験を幾度となく繰り返し,そのリスクの再現性を得 るために格闘しているにちがいない。 このプロジェクトでは,有害性試験の選択については,二軸アプローチ 的 方 法 を と っ て い る 。横 軸 に は ,ラ ッ ト を 用 い た in v iv o 試 験 を 行 い ,ラ ッ トについての吸入暴露の無毒性量をだすことを目的としている。縦軸はラ ットの気管内投不により,限られた時間,限られたデータの制約下で設定 した定量式をもとに全地平を探ろうとしている。最終的にはヒトへの無毒 性量を推定し,作業環境における許容暴露濃度の目安を求めようとしてい る 。そ の 詳 細 は イ ン タ ー ネ ッ ト 13) で 読 む こ と が で き る 。現 在 の と こ ろ ,短 期的に作業現場での酸化チタンに関しては許容暴露濃度の目安の値の提案, フラーレンは参考値の提案を行っている。この中間報告では,事業者が取 り 組 み や す い 暴 露 対 策 を 示 し ,経 済 的 な 方 法 で リ ス ク の 低 減 を 促 し て い る 。 10 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) 8.専門家丌信の時代に ナノテク導入時は,日米欧は国を挙げてナノテクなしでは未来はないと 煽り,一斉に各国,競って莫大な予算をつけ研究開発がスタートした。そ の中で,比較的冷静だったのが英国であった。産業革命以来,一歩先んじ て進んだ技術立国は,科学技術には光とともに影を伴うことを経験してき ており,いち早くナノテクのリスクに警鐘をならし,技術の光と影を管理 する社会科学系研究者の養成に乗り出した。アメリカの状況は『ナノ・ハ イ プ 狂 騒 』 3)に 詳 し く 書 か れ て い る が , ナ ノ テ ク の 光 と 影 の 管 理 に 予 算 も つき,尐しずつ研究も進んでいる。ドイツはどうかというと,ナノテクを 研究しているドイツの化学哲学者との個人的な話の中で, 「日本と同じだよ。 お役人と一部の専門家が踊り,笑ってしまったよ」と冷ややかであった。 しかしドイツではいくつかの酸化チタン製造メーカーが共同体をつくり, リスクの情報交換やリスク対策に力を入れ始めたことが昨年のナノテクフ ェアーで伝えられた。日本の酸化チタン企業も仲間に入れてもらう予定だ と意気込んでいた。 ナノテク政策導入時には,莫大な研究開発予算がついた。さらに欧米と はやや遅れたものの,リスク研究とナノテクの社会受容についても予算が つき,ナノテクを推進していく先進国としての責任も果たしている。しか し先端科学技術政策の導入時には,推進派の科学者は光の面だけを強調す るのではなく,予想される影の可能性も伝える必要がある。しかも議論は 見えるようにしたほうがよい。現代は多くの分野で専門家丌信の時代なの である。背後にメディアの影響があろうが,市民の高い意識がある。この ままでは,市民は専門家に対して丌信を増すばかりである。一方,科学研 究は高度で複雑な段階に入り,確かな成果を出すには時間がかかる。その 上,研究開発の段階でリスクの懸念が出てきたときに,専門家は市民から の信頼やコミュニケーションがなければ,長期的な研究は続けることがで きない。 ではナノテクを巟る専門家への信頼を増すにはどうしたらよいか私なり の意見を述べたい。 私 は 昨 年 ,ナ ノ テ ク に つ い て 関 心 の 高 い 市 民 か ら 質 問 を 受 け た 。 「なぜナ ノ テ ク 研 究 開 発 者 は ,研 究 会 で 一 言 も リ ス ク に 関 し て 触 れ な い の で し ょ う 」 「ナノリスク研究者はナノテクの研究開発についてどのような考え方を持 っているのでしょう。推進してよいと考えているのか,それとも全面禁止 を 願 っ て い る の で し ょ う か 」。こ の 指 摘 は ,と て も 重 要 で あ る 。決 め 手 の ブ レイクスルーを示すことができないナノテク研究者,ヒトへの影響を示す にはまだ時間を要するリスク研究者。彼らが誠実な科学者であればあるほ 11 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) ど,丌確実な科学を語ることは控えるかもしれない。しかし,研究開発者 もリスク研究者も社会に対して自分のナノテクに対する意見を発言しない ことは,一方では,専門家の責任が問われることにもつながる。 リスク報道がでてきた頃は,ナノテク研究者から研究開発がやりにくい と嘆く声が聞かれたが,彼らがリスク情報をどのように考えているか筆者 にも見えにくかった。しかし研究者はリスクを考慮しつつ,ナノテク研究 開発を進めていくのであれば,技術開発の段階でリスクを防ぐアイディア もでてくるに違いない。最近,興味深いナノ粒子の成果が報じられた。京 都大学古屋仲秀樹准教授と上田義勝助教らがナノサイズの二酸化マンガン 粒子を固めて水素ガスを計測できるセンサーの開発に成功したのだ。フッ 素 樹 脂 な ど を 用 い た 従 来 の 方 法 よ り 1 /10 00 以 下 の コ ス ト で 耐 熱 性 も 高 い と い う 6 )。 金 属 ナ ノ 粒 子 が 将 来 発 展 す る 可 能 性 の 高 い 水 素 自 動 車 の 安 全 性 を担う可能性を示しているのである。 リスク研究者は,まだリスクに対する結論がでてない段階で,ナノテク 研究開発推進をコメントしづらいであろう。しかし欧米もアジアもナノテ クの科学・技術を産・官・学が積極的に今でも取り組む中で,彼らがナノ テクの社会受容をどのように考えているのか,本当のところを知りたい。 なによりも,リスク研究者と研究開発者が一堂に会し,率直に議論するこ とによりリスクを乗り越えていく道筋を見せてほしい。研究者の夢と市民 の健康を守るリスク研究者との意見交換は研究の視野をひろげ,市民も一 緒に考えることができよう。最近,リスク研究者がナノテク研究開発を念 頭にリスクを低減する技術への提案も生まれつつある。若い世代の専門家 は世界を見ているはずだ。日本の科学界も,理系の大学・大学院教育に科 学技術社会論,科学技術史を取り入れ,長期的・戦略的視点から先端技術 の普及を考える若い専門家を育てる時期に来ているのではないだろうか。 9.おわりに ナノテクを使った製品が私たちの生活に確実に入り込んでいる。したが っ て ,専 門 家 た ち に ナ ノ テ ク の 光 と 影 を 同 時 に 明 ら か に し て い く こ と が 今 , 問われているのだ。それに答える動きのひとつにナノ材料の標準化の動き が世界的に加速している。標準化とは,品質,安全性,さらには試験法と いった製品に関する国際的取り決めである。例えば,ナノ材料は,つくり かたや試験法によって性能もリスクの程度も異なってくるために,それら を統一的に理解し,取り決めようとするものである。日本はナノ炭素材料 に力を入れている。科学的なデータに基づいてナノテクの社会受容を判断 する重要な取り組みである。 12 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) し か し ,市 民 も 今 ,問 わ れ て い る 。20 世 紀 半 ば 以 降 の 大 量 生 産 ・ 大 量 消 費の時代から抜け出し,私たち社会は新しい価値をもった世界をいかにつ くるかが問われているからだ。生物多様性が失われていく自然破壊の現実 を目の前にし,私たちはどのような生活の質をもって満足すべきかが問わ れているのである。それぞれの場面でどんな生活をしたいのか,つまりど んな技術を選び取るのか,それは私たち市民が主役となって決めることで あるからだ。一方では,ナノテクは光と影の丌確かさを乗り越え,ある見 通しが得られるまでに,かなりの時間がかかることは間違いなさそうであ る。この点の理解も市民にとって重要だ。 そして市民科学研究室は専門家と市民をつなげる重要な役割が今,求め られている。 引用文献 1 ) 滝 順 一 , 日 本 経 済 新 聞 , 2010 年 1 月 10 日 2 ) 松 本 三 和 夫 著 ,『 知 の 失 敗 と 社 会 』, 岩 波 書 店 , 2 0 0 2 年 3 ) D . M . ベ ル ー べ 著 『 ナ ノ ・ ハ イ プ 狂 騒 ― ア メ リ カ の ナ ノ テ ク 戦 略 ― 』, 五 島 綾 子 監 訳 ・ 熊 井 ひ ろ み 翻 訳 , み す ず 書 房 , 2009 年 4 ) 五 島 綾 子 ・ 栁 下 皓 男 ,「 ブ レ ー ク ス ル ー は 予 測 で き な い ー ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー の 場 合 ― 」『 化 学 経 済 』 2 0 0 9 ・ 1 0 月 号 , 2 0 - 2 8 4*)4)の文献に原著論文が記載されている。 5 )a ) A .G o t o , T. Ya g i s h i t a , a n d A . Ta k e n a ka , S t u d y o f R & D P r o g r e s s o f C N Ts i n J a p a n : Vi e w p o i n t s o f N a n o t e c h n o l o g y B o o m a n d R i s k P e r c e p t i o n , N S T I - N a n o t e ch , 1, 597-600( 2007) ;b )五 島 綾 子 , 竹 中 厚 雄 , 栁 下 皓 男 , 日 米 に お け る ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー の 解 釈 と 研 究 開 発 の 相 違 - カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ を 事 例 に し て - ,『 科 学 技 術 社 会 論 研 究 』, 6 号 , 3 8 - 5 4 ( 2 0 0 8 ) 6 ) 日 本 経 済 新 聞 , 2 0 1 0 年 1 月 11 日 7 ) I2ta グ ル ー プ , 多 層 カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ に 関 す る リ ス ク 評 価 ・ 管 理 の 最 近 の 動 向 , 技 術 の 社 会 的 影 響 評 価 , TA N o t e 0 1 , 2 0 0 9 年 3 月 8 ) C . A . P o l a n d , R . D u f f i n , I . K i n l o c h , A . M a y n a r d , W. A . H . Wa l l a c e , A . S e a t o n , C . S t o n e , S . B r o w n , W. M a c N e e a n d K . D o n a l d s o n , N a t u r e N a n o t e c h n o l o g y, 3 , 423-28(2008) 9 ) A . Ta k a g i , A . Hi r o s e , T. N i s h i m u r a , N . F u k u m o r i , A . O g a t a , N . O h a s h i , S . K i t a j i m a a n d J . K a n n o , J . To x i c o l o g i c a l S c i . , 3 3 , 1 0 5 - 1 6 ( 2 0 0 8 ) 1 0 ) 南 信 次 , ナ ノ サ イ ク ル と 二 つ の コ ヒ ー ラ ン ス , We b J o u r n a l , 1 0 2 , ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー 増 刊 号 , 2-7(2009) 1 1 ) I 2 t a グ ル ー プ , 技 術 の 社 会 的 影 響 評 価 , TA N o t e 0 1 , 2 0 0 9 年 8 月 12)産総研 安全科学研究部門,中西準子,ナノ材料リスク評価書策定に際して の 考 え 方 , 中 間 報 告 版 , 2009. 10. 16 1 3 ) h t t p : / / w w w. a i s t - r i s s . j p / 13 『市民科学』第 28 号(2010 年 1 月) 参考文献 1 ) M . ス テ フ ィ ッ ク , B . ス テ フ ィ ッ ク 著 『 ブ レ イ ク ・ ス ル ー 』, 鈴 木 浩 監 訳 , 岡 美 幸 , 永 田 宇 世 共 訳 , み す ず 書 房 , 2006 年 2 ) 五 島 綾 子 著 『 ブ レ イ ク ス ル ー の 科 学 』, 日 経 B P 社 , 2 0 0 7 年 . 3 )F. ダ イ ソ ン 著『 科 学 の 未 来 』は や し は じ め・は や し ま さ る 共 訳 ,み す ず 書 房 ,2 0 0 6 年. 4 ) E . ロ ジ ャ ー ス 著 『 イ ノ ベ ー シ ョ ン の 普 及 』, S E 社 , 2 0 0 7 年 5 ) 中 井 豊 著 『 熱 狂 す る シ ス テ ム 』, ミ ネ ル バ 書 房 , 2 0 0 9 年 6 ) 中 西 準 子 著 ,『 環 境 リ ス ク 学 』, 日 本 評 論 社 , 2 0 0 4 年 7 ) 松 本 三 和 夫 著 ,『 テ ク ノ サ イ エ ン ス ・ リ ス ク と 社 会 学 』, 東 京 大 学 出 版 会 , 2 0 0 9 年 8 ) J . Schu mmer a nd D. Bai rd , Na no te chn ol ogy Ch ell en ges , Wo rld Scien tific ,20 06 14
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