建設分野で利用可能なVR 空間での地形表現 環境システム工学科 増田敦彦 建設プロジェクトの計画段階において、対象地域の地形や、新たな構造物の位置把 握は必要不可欠である。既往研究では、VR 空間に作成した模型を計画段階での合意 形成のツールとして利用することが提案されてきた。VM とは、VR 空間内に作成し た三次元の模型に建設プロジェクトに関する情報(写真、地図、文書等)を電子情報 として統合したものと定義している。本研究では、起伏の大きな地域での建設プロジ ェクトは、平面的な表現による構造物の位置関係の把握では不十分であり、立体的な 地形表現が必要となることから、VR 空間における地形表現手法について検討する。 地形表現の適用事例として、斐伊川放水路事業を例に、切土・盛土等地形の変化を対 象とした VM を作成し、考察を加える。 1. はじめに 現在、VR 技術の利用は、映画やコンピュータゲーム等、特にエンターテイメントの分野で急速に進めら れている。その一方で、建設分野においては、未だその利用が十分になされていない。 既往研究で、VR 空間に作成した模型(Virtual Model:以下 VM)を計画段階での合意形成のツールとし て利用することが提案されてきた。VM とは、VR 空間内に作成した三次元の模型に建設プロジェクトに関 する情報(写真、地図、文書等)を電子情報として統合したものと定義している。これまでの研究で VM は、三次元モデルのリアリティよりも建設プロジェクトのわかりやすさを優先してきた。そのため、例えば、 遊園地建設計画では、航空写真の上にいくつかの構造物を並べることで、十分理解が得られた。また、橋梁 架設工事では、橋の構造に重点を置き、周囲の地形表現は、大まかな山の形がわかる程度で良かった 1)-3)。 このように、都市開発等、空間を平面的に把握し、構造物の位置関係を理解するには非常に有効であった。 しかし、例えば、ダム等、起伏に富んだ地形の上に構造物がある場合、構造物と同時に地形を表現する必要 がある。一般に建設プロジェクトでは、広範囲の地域が対象となり、立体的な地形表現が必要となる場合が 多く、平面的な表現による構造物の位置関係の把握では不十分である。既往の VM 研究では、地形表現が なされていなかったが、それには、幾つかの理由があげられる。 ①地形データを扱うときのファイル形式である dxf ファイルの容量が膨大になってしまうこと ②膨大な dxf ファイルを処理できるようなソフトが見つからなかったこと ③地形データを利用できる形にするまでに幾つかのソフトウェアでデータ変換が必要であること 本研究では、これらの問題を解決しつつ、立体的な地形そのものを対象とした VM を建設プロジェクト の計画段階で一般に利用可能な、計画平面図や縦断面図を用いて作成し、地形表現手法について検討を行う。 1 2.VR 空間における地形表現 2.1 RTA VM とは、VR 技術の機能の一部を用いた電子模型の総称である。VR 技術とは、現実ではないが実質的 な意味では現実あるいは現実以上の効果と意味を持つものである。ここで最も必要なことは、感覚的に現実 を感じさせることであり、それを実現するために必要な VR 技術の特徴的な要素として次の3つがある。 l プレゼンス(Presence):仮想空間内に存在していること l インタラクション(Interaction):利用者とコンピュータとの間に対話性があること l オートノミー(Autonomy):仮想空間内に独自の自立性が存在していること リアルタイムアニメーション(Real Time Animation:以下 RTA)の最大のメリットは、この VR 機能 のひとつであるインタラクションにある。利用者のアクションに合わせて、任意の視点から見た3次元空間 を連続的に可視化できる。そのため利用者は、VR 空間内を自由に動き回り任意の角度からモデルを閲覧し ているように感じることができ、建設プロジェクトの概要を容易に把握できる。しかし、視点移動をする毎 にフレームを生成し直すため相当のハードウェアのグラフィック処理能力が必要となる。近年のハードウェ ア、ソフトウェアの高性能化で、この問題は解決されつつあり、制作者はデータを簡素化してアニメーショ ンを作成することに注意しさえすればよい。 2.2 ソフトウェアの検討 (1)ファイル形式 本研究では、実際の建設プロジェクトでの利用を目的としているため、Windows 対応機を用い、ソフト ウェアも市販品を利用することを前提としている。本研究における dxf ファイルの利用を図-1 に示す。ま ず、MAP3D を用いて、白地図から立体的な地形を作成する(作成については3章で述べる)。MAP3D に よって立体化された地形データのファイル形式は、dxf を用いる。この dxf ファイルは、CAD の標準ファ イル形式でもあるため、CAD で作成された構造物や、建設重機等の既存データが再利用でき、作成の手間 を省くことができる。さらに CAD は、読み込み、書き出しの能力にも優れているため、MAP3D で作成し た dxf ファイルを直接 VR ソフトに読み込むよりも、一度 CAD に読み込んでから、VR ソフトに書き出す ことで、データのやり取りを素早く行うことができる。 MAP3D VRT CAD dxf VRML EON :ソフトウェア :ファイル形式 :プログラミング言語 図-1 dxf ファイルの利用 (2)ソフトウェアの検討 (1)で述べたように、dxf ファイルは大変汎用性があり、多くのソフトウェアで用いることができる。 そこで本研究では、dxf ファイルを利用可能なソフトに限って、リアルタイムで地形表現を行うために最 適な環境を持つソフトウェアの検討を行った。 2 l VRT 既応研究の中で VM は、Superscape 社製の VRT (Virtual Reality Toolkit)を用いて作成されてきた。こ のソフトの特徴を以下に示す。 ○ レンダリング機能は、現在の市販品では最速である。 ○ 空間を平面的に把握する際に、地図や航空写真などを活用できる。 ○ マウス操作により、空間内を移動するため、操作が容易である。 ○ 無償ソフトをダウンロードし、インターネット上で利用可能である。 × 立体的な地形表現は、dxf ファイル容量が膨大で、即時レンダリングに不具合が発生した。 l VRML 近年、VR 空間におけるプログラミング言語として、VRML(Virtual Reality Modeling Language)が注目 されている 4)5)。この言語の歴史はまだ新しく、1994 年 5 月に、スイスのジュネーブで行われた第 1 回 WWW 国際会議の BOF(Birds-of-Feather;特定のトピックスについて興味を持つ人の非公式のミーティング) セッションで、仮想現実情報の 3 次元記述を行うための標準言語の必要性について話し合われたところか ら始まる。VRML の特徴を以下に示す。 ○ WWW で利用でき、ワークステーションや OS の異なるパソコンでも利用できる。 ○ 30 以上の企業が、様々なコンピュータ環境で使用できる VRML ブラウザを開発、発表している。 ○ Ver.2.0 でマルチメディア機能を追加し、ブラウザによってはマルチユーザ間通信も可能である。 ○ 将来的には、VRML が世界標準の 3 次元記述言語となることは明らかである。 × データ量を減らすために、プログラム時に専門的な知識と経験が必要である。 × 自由競争により、各社の VRML ブラウザごとに対応している機能が異なる。 × 制作者と利用者の間でブラウザが異なる場合に元のモデルを正確に表現できない恐れがある。 本研究では、制作者による計画の概要を正確に利用者に知ってもらう必要があるため、今回は VRML を 利用しないこととした。 EON 図-2 は EON Reality 社製の EON studio2.5 のプロ グラミング画面である。画面左側では、ノードと呼ばれ l る細分化されたモジュールを階段状に組み立てることで、 プログラミングを行う。また、画面右側では、各ノード を関連付けてやることで、プログラムの制御を行う。こ の2つのプログラムにより、EON のプログラミングは 完成する。EON の特徴を以下に示す。 ○ 地形データの dxf ファイルを読み込み、スムース にレンダリングできる。 ○ プログラミングにかかる開発工数(延べプログ ラマー数)を減らすことができ、コストを削減 図-2 EON のプログラミング画面 できる。 ○ 機能別に細分化されたモジュラ構造により、プログラムデータの再利用が可能である。 ○ マウス操作でビジュアルにプログラミングが可能で、プログラミングの専門知識を必要としない。 ○ 無償ソフトをダウンロードし、インターネット上での利用が可能である 6)。 これらのことから、本研究では、地形表現に最適なソフトウェアとして、EON Reality 社製の EON studio2.5 を利用する。 3 3. VR 空間における地形表現 図-3 より地形データの作成手順を中心に説明する。 開始 全体計画平面図 S=1/2000 ソフトウェア (A) スキャニング 解像度 400dpi ファイルフォーマット ***.ras Solaris2.5 SUNUltra5 ラスタ・ベクタ変換 ***.map 座標変換 Kirkwood 社 等高線 3 次元化 MAP3D (B) 地物データ入力 (法面、放水路等) ***.dxf ポリゴン発生 Autodesk 社 メッシュデータ読み込み、書き出し AutoCAD R14 ISP 社 正方形メッシュデータ作成 ***.eox データ取り込み (C) EON-Reality 社 ***.eon オーサリング 出力 TN-CONTOUR ***.eoz 図-3 VM 作成フローチャート 4 EON studio 2.5.2 EON viewer 2.5 (A)地形データの電子化 ① スキャンニング スキャナで、白地図(ラスタデータ)を読 み込む。その際、前もってグリッドを 4 点(座 標変換用 3 点、歪み補正用 1 点)加筆してお く。このときの解像度は 400dpi で行う。 ② ラスタ・ベクタ変換 変換精度は、1~10 を選択できるが、今回は、 データ量を極力下げねばならないため、変換精 度は 5 で行った。図-4 はベクタ変換後、MAP3D でデータを読み込んだ状態の画面である。 (B)平面データの立体化およびポリゴン発生 ① 座標変換・歪み補正 図-4 MAP3D の画面 MAP3D を用いて、座標変換を行うため基準 となる 3 点を設定する。1 点目は絶対座標で入 力し、2 点目、3 点目は、1 点目からの相対座標で入力し、実行する。次に、図面複写時の伸縮や歪みを補 正する。歪み補正用の座標を 1 点入力し、実行する。 ② 等高線 3 次元化 地形データに高さを与えて立体化する。はじめは、数値入力で等高線の高さが分かっているところ(数値 が見えるところ)を探し、標高の高い場所から低い場所に向かって等高線を選択し、高さを入力する。また、 高さの自動入力の場合は、高さを持っている等高線と交差するように、標高の高い場所から低い場所に向か って選択し、高さを持っている等高線から、未処理等高線の高さを入力する。 ③ 地物データ(道路、宅地、法面等)入力 道路、宅地、法面等の地物データを立体化する。道路は、道路の輪郭線に沿って選択することで入力する。 片側を入力後、道路の反対側の輪郭線を入力する。道路は後から延長することもでき、道路を接続すること で交差点も表現できる。その後、入力したデータに高さを与える。先に入力した道路の輪郭線を横切るよう に選択し、高さを数値入力する。これを繰り返し、地図上の道路に複数の高さを与える。河川の場合も同様 に道路として認識させるのだが、この時、道路と河川を作成者がきちんと区別出来るように、あらかじめ色 分けをした白地図等を参考にしながら入力を行う等の配慮は必要である。 また、水田、宅地、広場などの平らな場所の高さ(高さ 1)を入力するには、その場所のループをなぞっ て選択し、一周したら、決定して高さを数値入力する。 最後に、果樹園や、切土盛土等の辺の高さが異なる場所(高さ N)の入力をする。ループをなぞって、 一周し、ループが閉じたら、ループ上の任意の場所で、高さを数値入力する。これを繰り返すことで、複数 の高さを入力できる。また、高さの確認もすることもできる。 道路、高さ 1、高さ N については、ポリゴン(三角形)を発生させるときに、それぞれ分けたいオブジ ェクト毎に、属性を変更させる必要がある。それぞれ選択して、“PART”と“SUB”を入力する。 ④ ポリゴン発生 すべてのデータについて自動作成モードで、三角形ポリゴンを発生させる。まず、等高線の高さ幅を入 力する。次に、隙間の空いている部分に三角形を発生させるための三角形の最大辺長を入力する。そこで、 隙間を埋める三角形の属性は、等高線と同じ属性を入力する。その後、ファイルを保管するが、形式は、 (***. dxf)とし、任意のファイル名を入力する。この時、ファイル名の後に拡張子 dxf を必ず入力する。この操 5 作の後、自動的にポリゴンが作成される。これが三角形メッシュデータである。 ⑤ 地形データの正方形メッシュ化 今回の VM 作成にあたり、データの量を抑えることが一つの課題であった。そのため、アニメーション のデータで大半を占める地形データ(10m、30m、50m)を正方形メッシュ化し、データ量を減少させる。 図-5、6 にメッシュデータの違いを示す。この処理には、TN-CONTOUR Ver.4.1 を用いた。 図-6 正方形メッシュデータ 図-5 三角形メッシュデータ (C)EON によるデータ取り込みとオーサリング ① EON データ取り込み 各データを地形、道路、宅地、法面等、オブジェクトごとに分けて EON に取り込む。取り込み方は、EON プログラミング時に、フレームノードの下にオブジェクトノードを付け加え、これと関連付けることで、デ ータを取り込むことが出来る。取り込まれた dxf ファイルデータは、ここで、eox ファイル(***.eox)へ と圧縮され、ファイル容量も小さくなる。この時、コンピュータ内、もしくはイントラネットでつながれた ネットワーク内のデータであれば、ネットワーク内をブラウズすることで、データを取り込むことができる。 ② オーサリング camera ノードをシミュレーションに加えることで、シミュレーションを可視化する。camera ノードの 下に、key_move ノードを取り付けることで、簡単なキー操作によって自由な視点移動が可能となる。更に、 各オブジェクトにそれぞれメッシュデータを割り当て、その下にテクスチュアを(例えば、地形データに草 や砂の写真を)貼り付けることで、オブジェクトにリアリティを持たせることができる。 各ノードを関連付けることで、プログラムを制御し、シミュレーションを実行しながら、微調整を行う。 最後に、一般に利用可能な形式にするため、eoz ファイル(***.eoz)に変換する。 4. ケーススタディ 4.1 斐伊川放水路事業7) (1)斐伊川・神戸川の治水計画 斐伊川・神戸川の治水計画は、以下の 3 つから成り立っている。 ①両河川の上流におけるダムの建設 ②中流の斐伊川放水路事業と斐伊川本川の改修 ③下流の大橋川改修と中海・宍道湖の湖岸堤整備 6 ・ 熊本 ・ ・ 東京 大阪 図-7 斐伊川・神戸川水系流域図 斐伊川・神戸川水系流域図を図-7 に示す。 従来の斐伊川、神戸川の基本高水のピーク流量は、それぞれ 5100m3/s(基準地点:上島、計画降雨確率: 1/150)、3100 m3/s(基準地点:馬木、計画降雨確率:1/150)である。この計画では、斐伊川、神戸川両 水系を斐伊川放水路によって一体とし、上流・中流・下流のそれぞれにおいて治水機能を分担させることで、 流域を洪水から守るというものである。具体的には、斐伊川、神戸川の上流部では、周辺の自然環境に配慮 したダム(尾原ダム、志津見ダム)をそれぞれ建設し、中流部では、神戸川の抜本的な改修を併せた斐伊川 放水路の建設と斐伊川本川の改修を行うとともに、下流部では、松江市街地整備などの周辺整備に併せた大 橋川の改修、中海・宍道湖の湖岸堤整備を行う。 (2)斐伊川放水路事業 尾原ダムによる洪水調整後、斐伊川の計画高水流量は、4500m3/s となる。このうち 2000m3/s を本川中 流左岸の出雲市来原付近から新たに放水路を開削(約 4.1km)して分流し、同市上塩治町半分付近におい て、神戸川に合流させる。 神戸川の合流点から、神戸川の河口までの約 9km の区間については、神戸川の現況の川幅を平均で約 1.5 倍に拡張する。志津見ダムによる洪水調整後の神戸川の自己流量 2400m3/s と斐伊川からの分流量 2000m3/s を合わせた計画高水流量は、合流時差を考慮して、4200m3/s となる。斐伊川放水路事業は、この水量を安 全に流下させるために必要な掘削・築堤および橋梁工事などを行う総事業費 2100 億円の事業であり、2008 (平成 20)年代前半の完成予定である。 主な工事の内容としては、掘削土量が約 1600 万 m3、築堤土量が約 400 万 m3 である。また、橋の架け 替え・新設は、主なものだけでも 25 橋あり、斐伊川分流部の分流施設、神戸堰の改築、新内藤川水門など の河川構造物を建設する。事業に関わる用地面積は約 322ha、移転家屋は 437 戸である。1983(昭和 58) 年から用地買収に着手し、1994(平成 6)年 5 月に起工式を行っている。 現在、用地買収がほぼ完了し、拡張部の築堤、開削部の掘削、橋梁の新設・架け替え、水門の新設工事 など全面的に工事を展開しているところであり、このうち橋梁 1 橋、新内藤川水門が完成している。 この放水路事業では、発生する土砂のうち、約 730 万 m3 の土砂は開削部南側の 3 つの谷に運び、階段状 に盛土し、グリーンステップ事業(緑の階段)として整備する。その跡地は島根県で利用する予定である。 7 また、25 橋にものぼる橋の架け替え、あるいは新設にあたっては、橋全体のバランス、周囲の環境との調 和、さらに出雲地域の特性を考慮し、便利で美しい橋梁群を創造する。 神戸川の拡張部では、川幅が平均で現在の約 1.5 倍に拡張され、河川周辺の自然の様子も大きく様変わり することが予想される。そこで、将来考えられる自然環境への影響をも考慮しつつ「多自然型川作り」を積 極的に進める。 4.2 メッシュの大きさによる比較・検討 この事業では、掘削により発生する 3 表-1 メッシュの大きさによる比較 3 約 1600 万 m の土砂のうち約 730 万 m は、開削部南側の三つの谷、蟹谷、狐廻 谷、大井谷に運ばれ、階段状に盛土(土 メッシュの大きさ dxf ファイル容量 面数、頂点数の比 50m 0.483MB 1 30m 1.36MB 3 10m 12.6MB 25 砂処理)がなされる(グリーンステップ 事業)。このグリーンステップ事業では、盛土をする際の傾斜を 3 割勾配にする現計画案と 5 割勾配にす る代替計画案がある。そこで、盛土完了状況で、各モデルの表示切替機能の付加を行う。 地形を含む VM を作成する際には、地形をメッシュで区切る大きさや、それに対するファイルの容量、 テクスチャや写真の利用等、どの程度まで詳しく作るのかについて検討することが必要である。 まず、基礎となるデータは CAD の標準ファイル形式である dxf ファイルを利用した。次に、対象となる 地域をそれぞれ 50m、30m、10m のメッシュで区切り、それぞれのデータを元に VM による地形表現を試 みた。この時のそれぞれのデータ量を表-1 に示す。ここで、地形を区切るメッシュの大きさが小さくなる につれて、面数、頂点数もそれぞれ増加し、地形データの元となる dxf ファイル容量も同様に 1:3:25 の 比で増加した。図-8~10 は、それぞれ、50m メッシュ、30m メッシュ、10m メッシュの地形データを取り 込んだ時の EON の画面である。 図-8 50m メッシュ 図-9 30m メッシュ 図-10 10m メッシュ 図-8 から、50m メッシュでは、山や平地は確認できるが、谷の部分が飛ばされて山が続いているように 見え、上手く表現できていない。図-9 から、30m メッシュでは、山、平地、谷の位置は確認できるが、谷 の深さや、山の尾根の線までは確認できない。図-10 から、10m メッシュでは、山の尾根の線から、谷間の 深いところまで、地形の起伏の具合が確認できる。ここで、メッシュの大きさの違いによって、dxf ファイ ルのデータ容量は大きくなったが、レンダリング速度が遅くなったり、操作性に対する影響がほとんどなか った。これらのことから 10m メッシュのデータを地形表現に利用することにした。 8 4.3 適用結果及び考察 図-11 3 割勾配案 図-12 5 割勾配案 このようにして作成した VM が図-11、図-12 である。任意の視点移動が可能であるために、利用者が自 由な位置から、モデルを閲覧することが出来る。また、ボタンをクリックすることで、2 つの勾配案を切り 替え可能とした。さらに、幾つかの視点をあらかじめ設定し、ボタンをクリックすることで視点を切り替え る機能を付け、制作者側の意図を明確に利用者に伝えることが出来るようにした。図-11 から 3 割勾配案で は、傾斜が緩やかで、盛土が行われた後でも、地形の起伏がなめらかである様子がよくわかる。また、図-12 から 5 割勾配案では、傾斜が急である分だけ広い平地を確保でき、グリーンステップ事業としての利用も 期待できる。このように、地形を立体的に表示することで、地形の変化、起伏の大小などを容易に見てとる ことができ、2 つの勾配の違いも明らかである。このことから、建設プロジェクトの計画段階での利用が十 分期待できる。 さらに建設 CALS/EC の実用化 8) に対しても VM は、電子データであることからデータの保存が容易で、 再利用も可能である。またインターネットでの利用も含めて、効果が十分期待できるものであると考える。 また、元の地形と施工後の地形をわかりやすくするために、それぞれにテクスチャを張り付けた。プロ グラム時に表示、非表示を切り替えることで、構造物の切り替えを可能とした。 また、今回の事例では、eon ファイル 0.94MB に対して、eoz ファイル 1.71MB となった。これは、2 つ の勾配案の違いをより明確にすることと、写真、テクスチャによる表現の違い、また、昼と夜での見え方の 違い等も検討するために、すべてのデータをひとつのファイルに集約したことによって、データ量は付加し た情報の分だけ大きくなった。しかし、付加情報が単独である場合、それぞれ 1MB 以下に抑えることがで きるため、一般のパソコンレベルでも十分利用可能であると言える。さらに、インターネット上での利用が 可能となるように、eoz ファイルへと変換し、本研究を含めた一連の研究を試験的に WWW 上で公開して いる(図-13 URL: http://gdp.erec.kumamoto-u.ac.jp/CGlink/Vmhp/eon/eon1.html)。 9 図-13 インターネット上での利用 5. おわりに 本研究では、建設分野における地形表現について、構造物と地形を立体的に表現することで、よりわかりや すいモデルの作成に成功した。2章では、建設分野で利用可能な VR 空間について、RTA についてふれ、 インタラクティブに VR 空間を移動することのメリットについて述べ、CAD データの利用と、地形作成時 のファイル形式について、dxf ファイルの汎用性から、これを利用できる VR ソフトの検討を行った。3章 では、VR 空間における地形表現について、地形図から VR ソフトで利用するまでの過程を順に説明した。 4章では、ケーススタディとして、斐伊川放水路事業を例に取り、メッシュの大きさによる地形表現の違い、 また、勾配案の違いによる見え方の違いについて検討し、考察した。 はじめに示したように、地形データを扱うときのファイル形式である dxf ファイルの容量が膨大になって しまうことについては、メッシュを正方形化することで、データを整理し簡素化した。また、膨大な dxf フ ァイルを処理できるようなソフトについては、いくつかのソフトウェアを比較、検討し、現段階で最適であ ると思われる EON を用いた。さらに、地形データを利用できる形にするまでに幾つかのソフトウェアでデ ータ変換が必要であることについては、作成段階をフロー図で表し、作成手順を明確にした。 研究過程で、写真を貼り付けることでリアリティを出すことを検討したが、EON では、モデルを見なが ら写真を貼り付けることが出来ないため、プログラム時に写真の大きさを変化させて、試行錯誤で貼り付け たが、航空写真を立体的な地形に貼り付けたため違和感があり上手くいかなかった。 今後の展望として、今回作成した地形作成手順のフロー図を活用し、他にも多くの作例を作ることで、 問題点、修正点を見出していきたい。また、フロー図はモジュール化しており、各段階で他のソフトウェア の導入も容易であると考える。その際には、今回用いなかった VRML も視野に入れ、インターネットをも っと有効に活用して、研究を進めていきたいと考える。 10 謝辞 本研究を進めるにあたり、終始適切な御助言を頂いた小林一郎教授、星野裕司助手に心より感謝いたし ます。また、広い視野からの貴重な御意見を頂いた(株)鴻池組の福地良彦氏にも厚く御礼申し上げます。 また、EON の操作・モデル作成に関して、親身になって相談にのって頂いた VRC 横浜の須藤レイナさん にも厚く御礼申し上げます。最後に、熊本大学大学院の緒方正剛さん、村岡哲さん、吉澤直樹さん、難波正 幸さんはじめ、施設設計工学研究室の先輩方、共に卒業研究を行った 4 年生の皆には、様々な面でご協力 を頂きました。ここに深く感謝の意を表し、本研究の結びといたします。 平成 12 年 2 月 7 日 <参考文献> 1)緒方正剛他:建設プロジェクトにおける合意形成のためのバーチャルモデルの利用、土木学会第 23 回 土木情報システムシンポジウム論文集、pp81-88、1988 2)難波正幸他:バーチャルモデルの建設分野への展開、平成 10 年度土木学会西部支部研究発表 講演概 要集 pp790-791、1999 3) 熊本大学工学部施設設計工学研究室:熊本大学工学部施設設計工学研究室ホームページ、 http://gdp.erec.kumamoto-u.ac.jp/cggroup.asp 2000.1.13 現在 4)山本精一:VRML2.0 パーフェクトガイド、技術評論社、1996 5)マーク・ペッシ:VRML を知る、プレンティスホール出版、1996 6)VRC Yokohama : VRC Yokohama ホームページ、 http://www.ddd.co.jp/vrc/Eon/download.html 2000.1.13 現在 7)建設省中国地方建設局、出雲工事事務所:斐伊川放水路事業概要パンフレット、1998 8)建設省、建設 CALS/EC 担当:建設 CALS/EC ホームページ:http://www.moc.go.jp/tec/cals/ 2000.1.13 現在 11
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