分子栄養学の理論と栄養条件 突然ですが、 友人が良いと薦めるサプリメントを服用したが、自分には全く効果がなかった という経験はありませんか? アトピー外来では簡単なサプリメントアドバイスも行っていますが、 アドバイス中に1番多く耳にする経験がコレです。 どうしてこのような事がおこるのでしょうか。 この原因を解明するキーとなるのが分子栄養学です。 分子栄養学とは、 「細胞の中にある遺伝子を最大限に活動させるために必要な栄養素と、その量を科学する栄養医学」 分子栄養学では、個人間での個体差※や状況における必要量の差※を考慮に入れ、 栄養素の不足によって機能の低下が引き起こされないような栄養条件を求めていきます。 ※ 個体差=身長、体重、体質など身体的な差。 ※ 状況における必要量=環境の差。例えばストレスが多ければ必要量は多くなります。 つまり、栄養学を科学的に診る事で正確なアドバイスができる。のです。 分子栄養学上で「健康」とは 「60 兆個ある細胞が全体として調和のとれた活動をしている状態」と定義されます。 そして遺伝子を元にしてつくられた生理活性物質の体内濃度により、 健康レベルが大きく左右されると考えます。 です。 古典栄養学との違い 始めに申し上げたとおり、分子栄養学が発展したことにより個体差を考えた栄養療法が可能になりました。 今までの古典栄養学は、摂取カロリーや栄養素の比率の統計上をとり、 その量を目安に食事から摂取するというものでした。 ですので、ビタミンの位置づけも、欠乏症にならない量の摂取しか考えられていません。 古典栄養学の問題点はここにあります。 なぜなら、ビタミンには摂取量に応じて作用が変わり、 また、高濃度になると薬理作用が見込めるものもあるからです。 ただし、人によって薬理作用を発揮するために必要なビタミンの量には大きな違いがあります。 ですので、個体差と状況差をカバーするために、 どの栄養素をどれくらいの量摂取していくかを戦略的に考えていく必要があります。 細野周作流 分子栄養学の Point① 分子栄養学の登場で、栄養に関する戦略的なアドバイスが可能となった。 専門的にみた分子栄養学 もう少し専門的にみてみましょう。 そもそも個体差とは何故おこるのでしょうか? 端的に申し上げれば、個体差は、各酵素の反応効率の違いにより引き起こされていきます。 酵素反応とは何か 「酵素反応」という言葉は聞きなれないかもしれません。 酵素反応率とは、車に例えれば燃費効率にあたります。 その酵素反応をあげるものにビタミンやミネラルなどの栄養素があるので、 酵素反応とは、簡単に申し上げれば、サプリメントの効果を測るものということもできます。 生体内では,たくさんの酵素が働いています。それらの酵素は場合によっては単独でも働きますが,多くの酵素はタ ンパク質以外の成分を必要と必要としています。 生体内では,たくさんの酵素が働いている。それらの酵素は場合によっては単独でも働くが,多くの酵素はタンパク質 以外の成分を必要とする(補助因子)。補助因子の中でも補酵素は特に重要なものである。 体内での一連の化学反応を経路と呼ぶ。例えば,グルコースからピルビン酸や乳酸に到る経路は解糖と呼ばれる。 一連の化学反応は,ある特定の個所で制御することにより,全体の経路を制御できる。このような特定の個所には, しばしば,アロステリック酵素などの特有の性質を持つ酵素が使われている。 酵素反応は少々難しい概念ですが、栄養を語る上では非常に重要です。 酵素反応が起きるためには、酵素の元となる基質(タンパク質)に補酵素(ビタミン)が結合することが必要 になります。 サプリメントの効果(=酵素反応)に個人差があるという事は、この結合効率に大きな差があるという事なの です。 その為、必要となるビタミンの量には大きな個人差があるのです。 細野周作流 分子栄養学の Point③ 体内で起こる酵素反応の結合率は人それぞれ異なり、その為必要な栄養素の量は個人個人で大きな開 きがある。 この結合効率のことを専門的には親和力といいます。 著明な研究者によると、この親和力の違いは、およそ数十倍から百倍程度の違いがあります。 つまり、ある結果をだすために1という単位あれば十分な人もいれば、その 100 倍を摂取しないと効果がで ない人もいるのです。 ところが本来 100 必要な人が 10 しか摂取していなければどうでしょうか? 当然サプリメントを飲んでも結果がでないということになるのです。 特に何らかの症状が出ているということは、その人にとって必要な栄養素を満たせいないことになります。必 要となる酵素反応が起きず、生理活性物質が作られないために、 症状が起きているのです。 また同じ個人でも状況によって栄養素の必要量は異なります。 一般的にストレスの少ない普通の生活をされている方と、毎日徹夜をして激しく仕事をされている方やスポー ツ選手を比較してみると、必要となる栄養素の量は大きく異なります。大切なことは、状況に合わせて、その 方にとって必要な栄養条件を満たしていくことが大切なのです。 巷で行われているサプリメント治療では、全くといっていいほど栄養条件を考えて治療がなされていません。 だからこそ、ある人で効果が出たので試したけれど、自分では少しも効果がでなかったということになるので す。 「○○だけを使用してアトピーが治った」とあるひとつの商品での改善例をうたっているところは、個体差を 考えていない典型例でしょう。 栄養療法では、効果が出やすい人と出にくい人がいることを前提に、その人にとっての栄養条件を求め、個人 個人にあった治療をしていきます。 だからこそなかなか治らないといわれているアトピー性皮膚炎を完治に導いていくことができるのです。 細野周作流 分子栄養学の Point④ 真のオーダーメイドは、栄養条件なくしては考えられない。個体差と状況をふまえたアドバイスがで きずして、栄養は語れない。
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