第1章 電子デバイスの基礎

アナログ回路
第1章
第1章 電子デバイスの基礎
電子デバイスの基礎
私たちの身のまわりは、ラジオ、テレビ、パソコンをはじめエレクトロニクス(電子
工学:electronics)によってささえられている。エレクトロニクスを理解するためには、
その主役を演じる電子の姿をしっかりと把握することが必要である。
1.1
電子回路とは
「電気回路」と「電子回路」の違い
・電気回路は、電気を熱エネルギーや機械的エネルギーのように『エネルギー』として
利用するための機能を果たす回路。
・電子回路は、電気を情報量を運ぶ信号と見なし、その信号に各種処理を行うインテリ
ジェントな機能を果たす回路。
電子回路の定義:ダイオードやトランジスタなどの電子素子(電子デバイス:electron
device)を用い、信号に対して能動素子として動作させ、ある機能をもつ回路と考えら
れる。
電子回路の部品構成
電子回路は、いろいろな電子デバイスを電気的に接続し組み合わせることで一定のま
とまった機能を果たすように構成されている。
抵抗
受動素子
電子デバイス
コンデンサ
コイル
能動素子
ダイオード
トランジスタ
「受動素子」
:他からの働きかけに対し、
「抵抗する」
「蓄える」などの受け身的な仕事
をする。線形特性を示す。
「能動素子」
:電子回路の中で電気信号の増幅や変換などの積極的な役割を果たす。非
線形特性を示す。
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アナログ回路
第1章 電子デバイスの基礎
アナログとデジタル
● アナログとデジタルとは?
アナログ(Analog)
「物理量や情報を連続的に変化する物理量として表現すること」
デジタル(Digital) 「物理量や情報を離散的な数字・文字などの信号として表現すること」
物理量:長さ、時間、速度、加速度、温度、エネルギーなどのように物質系の物理的な性質・状態を表現す
る量で測定可能なものを物理量という。物理量の大きさを表すには数値と共に単位を付ける。
● 例: アナログ時計とデジタル時計
アナログ時計とデジタル時計は代表的な例である。
「時間」は連続的に変化する物理量であ
り、それを「針の角度」として表現しているのがアナログ時計である。そして、時間を「数
字」で表現しているのがデジタル時計である。時と分が表示されるデジタル時計の場合、1
分毎にしか数字が変わらないので離散的に時間を表している。12時1分1秒も12時1分
59秒も12時1分と表示される。つまり表示されている時間は実際の時間とは多少ずれる
ことになり、このデジタル時計では最大で1分の差が生じる。このようにデジタル表現をし
たときに生じる誤差のことを量子化誤差と言う。この量子化誤差をなるべく少なくするため
には桁数を増やせばよい。デジタル時計であれば、秒、1/10 秒、1/100 秒と表示できるもの
を使えば実時間に近くなる。
名 称
対象となる物理量
表現方法
アナログ時計
時間
針の角度
デジタル時計
時間
数字
● 長所と短所
1. アナログは正確な値を示しているがそれを読み取ることが難しい。デジタルは正確な
値を示していない(近い値を示している)が読み取ることが容易である。
2. 元のデータをコピーする際、アナログは完全コピーをすることは難しいが、デジタル
は数値を間違えない限り、完全コピーが可能である。デジタルはコピー以外にも加工・
編集・処理が容易で、コンピュータで処理できることがアナログよりも優れている。
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アナログ回路
第1章 電子デバイスの基礎
パソコンによる制御システム
パソコンに外部から観測データを入力したり、外部の機器に対して動作指令を与える
データ出力を行うにはインタフェースが必要である。パソコンの拡張スロットに挿入し
て使用するインタフェース・ボードをI/Oボードという。また、アナログ電圧をディ
ジタル量に変換するインタフェースをA/Dコンバータ(変換)
、その逆をD/A変換(コ
ンバータ)という。
パソコンによる制御
パソコンによる制御(具体例1)
パソコンによる制御(具体例2)
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アナログ回路
1.2
第1章 電子デバイスの基礎
導体と不導体
物体を構成している原子は、正電荷をもつ
原子核と負電荷をもつ電子からできている。
さらに原子核は、正電荷をもつ陽子と電荷を
中性子
陽子
電子
もたない中性子からできている。陽子と電子
のもつ電荷の大きさは等しく、電荷の最小単
位は、電気素量e=1.60×10 ー 19[c]である。
導体:金属のように電気をよく通す物体。
不導体:ガラス、ゴムなどのように電気をほとんど通さない物体。絶縁体ともいう。
なぜ金属は電気を通すのか?−−−−−>”自由電子”があるから。
金属内では原子の最外層の軌道にある電子は特定の原子に拘束されないで、原子間を自
由に運動する(自由電子)
。
<電流>=電荷の移動(電流の向きは正電荷の流れる向きなので、電子の流れと逆に
なる。)
1.3
半導体
エレクトロニクスの中心にある物質が半導体である。半導体は、導体と不導体の中間
的な存在である。つまり、半導体はまわりの状態や条件によって、がらりと性質を変え
てしまう特徴がある。
真性半導体:周期律表Ⅳ族のシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)の単体によるもの。
不純物半導体:真性半導体にⅢ族ないしはⅤ族の元素を含ませたもの。
元素の周期表
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アナログ回路
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真性半導体のしくみ
シリコンやゲルマニウムは、周期律表第Ⅳ族の元素であるので、最外殻の電子軌道に
4個の電子をもつ。この Si の4個の電子は、それぞれ四方の Si 原子と電子を1個ずつ
共有し、各原子は合計8個の共有された電子により結合している。このため、外からエ
ネルギーを加えない状態では、電子はすべて原子結合の状態にある価電子となり、自由
電子が存在しないので不導体に近い。
この共有結合した原子に外部からエネルギーを加えると以下のようになる。
①価電子は結合の束縛から離れ、自由電子(伝導電子ともいう)となる。
②この半導体に電界を加えれば自由電子は正電極の方へ移動する。
③自由電子の移動により電気が運ばれる。
④電子が抜けた空席は、それより右側の電子が移動してくる。
⑤電界の力で、順次電子が移動してきて空席が埋められる。
⑥負電極から電子が1個半導体に流れ込むことになる。
価電子:原子内の電子のうち、他の原子との結合にかかわることのできる電子。
価電子は、元素の周期表の族数に等しい。
正孔(positive hole:ホール)
:電子の抜けた穴。正電荷をもち、負電極へ引き寄せられ
る粒子と見なすことができる。
キャリア(carrier):電荷を運び電流を構成するもの。半導体では電子と正孔。
シリコンやゲルマニウムを半導体の材料として使用するためには、非常に純度の高い結
晶に仕上げなければならない。ゾーン生成法:99.99999999%(テンナイン)の純度
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アナログ回路
第1章 電子デバイスの基礎
不純物半導体のしくみ
<n型半導体>
Ⅳ族の Si や Ge の単体にⅤ族のリン(P)やひ素(As)などを微量に加える。Ⅴ族の
原子は5つの価電子を持っているが、このうちの4個の価電子はまわりのⅣ族元素と結
合するが、残り1個の電子は余った状態になる。外から電圧が加えられると、この余っ
た電子は簡単に不純物原子の束縛から離れ、結晶中を自由に動く電流のキャリアになる。
このようにⅤ族の元素を微量に加えた不純物半導体では、キャリアが余り電子なのでn
型半導体(negative semiconductor)と呼ぶ。また、加えたⅤ族の元素をドナー(donor)
という。
n型半導体の余り電子
<p型半導体>
Ⅳ族の Si や Ge の単体にⅢ族のアルミニウム(Al)、ほう素(B)
、ガリウム(Ga)
などを微量に加える。Ⅲ族の元素は最外殻に3個の電子を持っているが、これが半導体
の結晶に入るとどこからか電子1個を捕らえてきて、Ⅳ族の半導体原子と4個の電子で
結合する。この結果、不純物電子のまわりのどこかに価電子が抜けた部分、すなわち正
孔が存在することになる。このようにⅢ族元素を加えると、正孔が電流のキャリアにな
った半導体ができ、これをp型半導体(positive
semiconductor)と呼ぶ。また、加え
たⅢ族の元素をアクセプタ(acceptor)という。
p型半導体の正孔
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