物体の三次元形状復元による高速度映像からの音情報抽出 ∗

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物体の三次元形状復元による高速度映像からの音情報抽出
∗
☆山中悠勢, 矢田部浩平, 中村歩己, 池田雄介, 及川靖広 (早大理工)
1
カメラ S
プロジェクタ G
まえがき
Pr’
騒音源の性質を知るために振動の計測は重要であ
Ca’
Ca
Pr
り,様々な手法が用いられる.一般的なものとして,
測定物体にセンサを取り付ける振動ピックアップや,
物体にレーザを照射して一点ごとに振動を測定する
LDV が挙げられる.接触的に測定を行うピックアッ
プは振動状態そのものに影響を及ぼしてしまう可能
基準面
B
性がある.対して,LDV は非接触で振動を測定する
C
D
O
H
ことができる.しかし,両者とも音源全体の振動を計
A
測するには,多点での測定が必要であり,測定できる
物体
音源が限定されるなどの制約が生じる.一方で,間接
的に振動の様子を知る方法として近接場音響ホログ
ラフィがある [1].これは分解能に限界があるものの
図–1
広い範囲を一度に測定することが可能である.これ
格子投影法の光学系
らの手法の特徴を踏まえると,非接触かつ直接的に
広範囲の振動を計測できる手法を提案できれば騒音
と表される.ここで
源の性質調査に寄与できると考えられる.
本研究では格子投影法を利用し,非接触に広範囲
φ0 (x) = 2πf0 BC
の振動を一度に計測する手法を提案する.具体的に
(3)
は,一枚の画像から物体の三次元形状を復元すること
であり,これはプロジェクタの投影角度に起因する位
ができる格子投影法を用い,振動物体を撮影した高
相シフトである.
速度映像の各フレームごとに形状復元を行うことで,
一方,物体表面について考えると,点 C を通る光
線は物体表面の点 H にぶつかり,基準面上の点 D で
物体の三次元的な振動,音響情報を抽出する.
観測される.従って物体上の格子の輝度値は
2
振動体の三次元形状計測 [2–6]
図–1 に格子投影法の光学系を示す.格子投影法は
g(x, y, t) = r(x, y, t)
"
#
An exp i[2πnf0 x+nφ(x, y, t)]
n=−∞
物体に照射した格子模様の変形から,カメラの光軸
と垂直に設けた基準面を基に,三次元形状 Z(x, y, t)
∞
!
(4)
と表される.ここで,
を復元する手法である.図中の Ca,Pr はそれぞれカ
φ(x, y, t) = 2πf0 BD
メラとプロジェクタの射出瞳である.プロジェクタが
無限遠にある場合,そこからの光線 E
∞
は光軸 PrO
と並行となり,正弦格子の輝度値は,
gT (x, y) =
∞
!
であり,これはプロジェクタの投影角度に加え,物体
の高さ Z(x, y, t) に起因する位相シフトである.但し,
An exp(2πinf0 x)
(1)
n=−∞
と表される.しかし,Pr が有限遠である場合, 基準
面上の正弦格子の周期は一定にならない.E∞ を考え
た場合,点 A を通る光線は点 B で基準面にぶつかる
r(x, y, t) は物体表面の不均一な反射率の分布である.
物体の高さのみに起因する位相シフト ∆φ(x, y, t)
は φ0 (x) と φ(x, y, t) を用いて
∆φ(x, y, t) = φ(x, y, t) − φ0 (x)
= 2πf0 (BD − BC) = 2πf0 CD
が,Pr を射出瞳とした場合,点 C で基準面にぶつか
g0 (x, y) =
n=−∞
∗
"
An exp i[2πnf0 x + nφ0 (x)]
(6)
と算出できる.また,△PrHCa と △CHD の相似関
る.従って,基準面上の格子の輝度値は
∞
!
(5)
#
係より
(2)
CD =
−dZ(x, y, t)
L0 − Z(x, y, t)
(7)
Extracting Sound Information Using Dynamic 3D Shape Measurement Method with High-speed Movie.
By Yusei YAMANAKA, Kohei YATABE, Ayumi NAKAMURA, Yusuke IKEDA and Yasuhiro OIKAWA
(Waseda University).
日本音響学会講演論文集
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2015年9月
表–1
高速度カメラ
実験装置
MEMRECAM HX-3
(nac IMAGE TECHNOLOGY)
EB1735W (EPSON)
MSP10 (YAMAHA)
プロジェクタ
スピーカ
(a) 傾き補正前
図–3
(b) 傾き補正後
アンラップした位相シフト
Height [mm]
0
-10
0
-20
-20
160
120
160
120
80
Position [mm]
図–2
40
0
撮影した画像
図–4
-30
80
40
Position [mm]
復元したスピーカーコーンの形状
Z(x, y, t) =
L0 ∆φ(x, y, t)
∆φ(x, y, t) − 2πf0 d
(8)
相から復元することで,単一のカメラのみで三次元
−40
−60
0.05
Time [s]
図–5
実験
既知の振動源としてスピーカーコーンを用い,正
験装置を示す.スピーカへの入力信号は 50 Hz の正
弦波であり, 2000 fps で撮影した.カメラ,プロジェ
クタ,スピーカの設置位置は図–1 と同様にし,基準
面として,スピーカの前面に貼り付けた白い紙を用
いた.この時 L0 = 576mm,d = 500mm であった.
取得映像に対し,2 章で示した方法で三次元形状を復
元した.
図–2 に撮影した画像,図–3 にアンラップした位相
シフト,図–4 に復元したスピーカの三次元形状をそ
れぞれ示す.図–3(b) は図–3(a) から傾きを引くこと
でカメラの向きのずれによる影響を取り除き,図–4
は,さらに円周上の値を平均する処理を行ったもの
である.図–5 に中心点の振動の変位と,それを周波
数解析した結果を示す.時間波形は正弦波の形をして
おり,そのスペクトルからスピーカに入力した 50 Hz
0.1
−80
0
500
Frequency [Hz]
1000
(b) パワースペクトル
中心点の変位
むすび
4
弦格子を投影し高速度カメラで撮影した.表–1 に実
日本音響学会講演論文集
0
(a) 時間波形
形状を計測できる.
の信号が確認できる.
−20
−1
0
を得る.以上より物体の奥行き情報を正弦格子の位
3
0
Power [dB]
Displacement [mm]
1
となる.式 (7) に式 (6) を代入して
本研究では,格子投影法を利用することで振動物体
の音響情報が抽出できることを実験により確かめた.
今後は,同様の手法を用いて実際の騒音源となる振
動物体を計測することで,それらの性質調査を行う
予定である.
参考文献
[ 1 ] 佐藤利和, “騒音源を解明する近距離場音響ホログラフィと
その周辺技術,” 日本音響学会誌, Vol.64, No.7, pp.405–411,
2008.
[ 2 ] M. Takeda and K. Mutoh, “Fourier transform profilometry for the automatic measurement of 3-D object shapes”
Appl Opt., Vol.22, No.24, pp.3977–3982, 1983.
[ 3 ] X. Su, W. Chen, Q. Zhang and Y. Chao, “Dynamic 3D shape measurement method based on FTP” Opt. Lasers
Eng., Vol.36, No.1, pp.49–64, Jul. 2001.
[ 4 ] X. Su and Q. Zhang, “Dynamic 3-D shape measurement
method: A review” Opt. Lasers Eng., Vol.48, No.2, pp.191–
204, Feb. 2010.
[ 5 ] Q. Zhang, X. Su and L. Xiang, “Whole-field Vibration
Analysis of a Woofer’s Cone using a High-speed Camera”
Proc. SPIE 6279, 62790O, 5 pages, 2007.
[ 6 ] Q. Zhang, Y. Liu and P. Lehtonen,“Shape measurement
and vibration analysis of moving speaker cone” Proc. SPIE
9234, 92340T, 6 pages, 2014.
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2015年9月