アンコール小児病院(AHC) “9月の出来事”

アンコール小児病院
アンコール小児病院(AHC)
小児病院(AHC) “9月の出来事”
出来事”
今月は、AHCへ来た患者さん、院内の教育プログラムなどを中心にお伝えします。
入院直後のスレイロス
術後回復に向かっているスレイロス
スレイロスは15歳の女の子です。彼女は、現在、おばあちゃんと一緒に住んでいます。お母さんはシングルマザーとして、彼女を育てるためにおばあ
ちゃんにスレイロスの養育をお願いしているのです。
お母さんはスレイロスがきちんとした教育を受けられるよう、マッサージ師として働きながら養育費を稼いでいます。
2週間前のことになります。シェムリアップへ大きな悪天候を引き起こした嵐がやってきました。その嵐によって彼女の家はひとたまりもなく潰れてしま
い、下敷きになったスレイロスは、近所の人により近くの保健センターへ搬送、そこからAHCへ転送されました。
到着後すぐにERで診察を受けますが、足、腰の痛みが強く歩くことさえできませんでした。
どうやら、腰の骨を骨折している様子で、手術を受け、外科病棟へ入院。その後も理学療法士や、看護師からの手厚い看護を受け、状態は少しずつ回
復に向かっています。よかった・・・。
スレイロス自身も一日も早く学校へ戻れるよう、リハビリに励んでいます。この笑顔が順調な回復を物語っていますね。早く退院の日が来ることをスタッ
フみんなも願っています。
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左2枚の写真は、AHCで心臓の手術を受けた患者さんです。
家族は、「やっとわが子に手術の番が回ってきた!」と喜ぶ一
方、当の本人は、術前の不安そうな表情を見ているとかわい
そうなくらいですね。でも、術後の笑顔には、やっぱりスタッフ
も嬉しくなります。
AHCでは、2009 年5月からシンガポールからのスリアム・シ
ャンカー医師率いる心臓外科チームと共に、胸を開いて行う
心臓手術(開胸心臓手術)が行われてきています。これは、高
度の技術を要する手術ですので、外科チームにとっては、大
きな進歩と言えるでしょう。
開胸手術は、これまでに、9月の3例を含めた27例の手術が
行われ、全て順調に回復し退院しています。
シンガポールからの心臓外科チームは、今年12月にも再度
来院し、開胸手術を行う予定になっています。
術前で少々不安気・・・
術後は打って変わってご機嫌!
右の写真はナイちゃん 13歳の女の子。10人兄妹の6番目です。ナイちゃんの住む村はシェムリアップより100キロ
以上離れたところにあり、数年前ではとても訪問看護に行けるような場所ではありませんでした。
ナイちゃんはこれまで学校へ通ったことがありませんでした。というのも、人里離れた所で10人以上の家族が暮らして
行くのは容易なことではないからです。毎日食べて行くだけの収入を得るために、時には漁師、時には農夫、時には
森へ木を集めに行ったりと様々な仕事をしますが、収入は不定期です。更に学校までは16キロあり、自転車がなけれ
ばとても通えません。
4月から訪問看護を始め、自給自足できるように野菜の栽培を勧め、保存食の配給、蚊帳を提供しマラリヤの予防、
水のフィルターを提供し下痢予防などをすることで、日々の生活の中から発生する負担を少しでも軽減し、ナイちゃん
とその家族が健康を維持できるよう支援してきました。そして、その生活の安定こそが子ども達を学校へ通わせようと
いう余裕を持ってもらえることにつながるのではないかと思っています。
その甲斐あってか、この度、ナイちゃんとその妹、弟の6名全員が学校へ行く手続きを取ることができました。本人たち
も学校へ通えることを心待ちにしているのですが・・・通うための手段がない。
そこで、AHCからまず自転車を1台購入し提供することにしました。自転車があっても家族の協力がなければ学校へ
毎日通うことはできません。今後様子を見ながら、どう関わって行くかを現在検討中です。早く学校へ行けるといいね。
ナイちゃん!
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訪問看護時のナイちゃん
AHCは、毎日400名以上来る患者さんを診るだけではなく、医療従事者のための教育病院でもあります。その教育プログラムの一つが看護学校3年生の学生
さんを対象に実施する小児科実習です。毎年政府公認の5つの看護学校からの学生さんとインストラクターさんを受け入れています。このプログラムは、今後の
カンボジアの医療の質を向上させるために大きな貢献をしている、と実感できるものとなってきています。以下看護学生さんの実習風景とお話です。
セム・シバタ君とティアラ・パリーさんは、 「AHCから学ぶこ
とは高い技術のみではなく、ベッドサイドでのケアについて
は、他の医療施設では見られないマナーを経験している」と
言います。AHCでは、患者さんと医療従事者が対等な立場
で、また医師と看護師も対等な立場で患者さんのケアに全
力を尽くすことをモットーにしていることが伝わっているのだ
と思います。
シバタ君は、卒業後には彼自身のコミュニティーや服役囚に
対する医療に関わりたいと考えています。
またパリ―さんは、AHCでの経験を他の医療従事者へ知ら
せ広めて、カンボジア国内全体の医療水準をあげて行きた
いと考えています。
看護学生さんたちもスタッフ同様、このようなプログラムを可
能にしてくださった支援者の皆様に大変感謝しています。
理学療法(PT)部門の話題です。
AHCには、3名のカンボジア人PT(うち1名はパートタイマー、1名はシンガポールで研修中)と1名
のドイツ人PTボランティアが働いています。カンボジアでは理学療法士(PT)が活躍する場はたくさ
んあり、以前からその必要性は認識されていましたが、資金不足のために実現されずに来ていまし
た。
そこへ、2007 年にドイツの団体 アンコール・キンダー eV ジャーマニーからPT部門を作ることへの
支援があり、いまだ小さな部門ではあるものの、大きな役割を果たしてくれています。
この3年間でPTへのニーズが日々拡大していることがアンコール・キンダー eV ジャーマニーへも伝
わり、この度、新しくPT室の拡張改修工事のご支援をいただきました。この工事が終了すれば、より
多くの患者さんにサービスを提供できるばかりでなく、更に内容の濃いサービスが提供できることに
なります。
教育病院として、2011 年には、PT学生さんへのトレーニング、また院内スタッフへの腰痛予防のため
カンボジア人PTのスレイニ―
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今年2月にオープンしたサテライトクリニック(シェムリアップから離れた場所の既存の病院の中にAHCの
小児科部門を開設したプロジェクト)では、救急診療が必要な患者さんがたくさん(47名)来ました。
その中でも多かったのが様々な中毒患者さんで29症例ありました。例えば、食中毒、ガソリンや薬
物といったものです。
また交通事故や落下事故などによる外傷も多くあり、これらの数字が示すものは、予防可能な救急
患者さんが多かったということです。
サテライトクリニックでは毎日、入院患者さんと家族のみなさんへ事故や中毒に関することを含めた
健康教育を行っているのですが、その重要性をスタッフも実感しているようです。
47名のうち11名はAHCもしくは他の医療機関(頭部外傷の症例)へ救急車で転送しましたが、3分
の2の救急患者さんは、サテライトにて治療が可能であったという良い結果が出ています。
2名の患者さんは、応急処置を施し、呼吸をするための管を挿入してからの転送でしたが、AHC本
体との連携が、多くの命を救う結果になっていることが証明され、サテライトクリニックの存在意義に
更に注目が集まります。
サテライトERの診察風景
日本での出来事なのですが、埼玉県入間市にある
学校法人盈進学園 東野高等学校では、昨年から
文化祭(村祭りと言っています)でAHCのために写真展
を開催し、募金を呼び掛けてくれています。写真部
の水村君は、「集めていた1円玉全部寄付!」(写真
左)と重たいたくさんの1円玉をジャラジャラと募金し
てくれました。また、普段はやんちゃ坊主の福田君
と大塚君(写真右)は、展示場で流されていたAHCの
DVDを真剣な眼差しで見入っていて、画面が変わ
った瞬間に、「やばい!今ヤバかった~!」とちょっ
と目をウルウル。
最近の若い子は無関心、無感情、無感動といいま
すが、まだまだ捨てもんじゃないと思いました。目が
ウルウルのお2人は、その後、催し物のエイサーを
踊りに行き、そこでも彼らの純粋な力を発散させて
いました。とっても格好良かったですよ。
これからも年齢にかかわらず多くの方々にカンボジ
アのこと、AHCのことを知っていただくチャンスを作
りたいなと思います
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雨期もそろそろ終わりに近づいてきましたが、この最後の時期に雨が激しく降るこ
とが多くあります。シェムリアップ上空からの眺め(写真右)をご覧になるとわかるよ
うに、ジャングルの木々が水に浸され、そのてっぺんだけがモコモコと出ていま
す。
日本ではゲリラ豪雨と呼ばれたりしていますが、カンボジアの雨期のスコールの
激しさもかなりのものです。そんな雨を楽しむかのような、ガチョウさん。(写真下)
ガチョウさんは、大雨の最中土の中にいる虫を探っては一歩、また探っては一歩
と雨のシャワーを浴びながら、お食事でした。
のどかですね。太陽を浴びるのも自然の恵みですが、こうしたスコールをこれだけ
浴びられるというのも自然の恵みですね。
9月の出来事でした。 大好きな雨期が終わりに近付いているのは、毎年寂しい気持ちになります。また来年までお預けだ・・・というような。そして、これから年末
へかけては、どこも忙しい季節になりますね。FWABニューヨークでは、写真のオークションや、ファンドレイジングイベントが企画されています。また、シンガポー
ルでもチャリティコンサートが行われ、カンボジアでは写真学校の学生さんによる写真展示がフレンズセンターで行われる予定です。もちろん、FWABジャパンで
もクリスマス チャリティパーティーを開催予定です。(詳細はHP http://www.fwab.jp/ ) 皆さん奮ってご参加ください。お待ちしております。
アンコール小児病院 赤尾和美
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