木質エネルギーの普及に向けて −日本の課題ー

バイオマス・イニシアチブ
2005.4.25
木質エネルギーの普及に向けて
−日本の課題ー
岐阜県立森林文化アカデミー
熊崎 実
日本とオーストリア 森林と木材生産
日本 オーストリア
国土面積 3765万ha 827万ha
森林面積 2408万ha 389万ha
森林率 63% 47%
丸太生産量(2003年)
産業用 1517万m3 1372万m3
燃料用 12万m3 334万m3
合 計 1529万m3 1706万m3
出所:FAO林業統計
萎縮する日本の木材生産(2003年の現況)
日本(1960)
日本(2003)
アメリカ
フランス
フィンランド
燃材
用材
スウェーデン
イギリス
ポーランド
オーストリア
ドイツ
0
1
2
3
4
5
6
森林1ha当たりの木材生産量(m3)
出所:FAO「国別概況」の森林面積と2003年丸太生産量(www.fao.org/forestry,2005/4)
をもとに算出。ただし日本の1960年の生産量は林野庁「木材需給表」累年版による。
日本の森林・林業をめぐる状況の変化
(1)木材生産の衰退⇒過密林分の激増、森
林の管理放棄、山村地域の経済的疲弊
(2)京都議定書の発効と石油価格の上昇⇒
原料輸入・製品輸出型経済の限界、広が
る「地産地消」運動
(3)循環型社会への移行⇒ゼロエミッション・
木質系廃棄物のリサイクル
新しい木質エネルギー時代の幕開け
20年の空白のあとに
有望視される三つの分野
○木質チップによる熱供給(ボイラ)
○木質ペレットによる熱供給(ストーブ、ボイラ)
○木質バイオマスによる発電とコージェネレー
ション(CHP)
オーストリアの木質エネルギー契約
(Holzenergie Contracting)
○森林所有者のグループが木質燃料による暖房装置
(および配熱網)に投資する
○このグループは暖房システムの運営、メインテナンス、
再投資に責任をもつ
○プラント所有者が生産したチップを70%以上使う
○顧客への熱の販売は15年契約をベースとする
○ボイラ室と燃料庫はグループから15年間貸与される
森林チップの生産費と販売価格(2003年)
単位:ユーロ
実材積1m3 チップ1m3
丸太の伐出(林道まで) 25.00 8.62
中間土場への輸送 5.50 1.89
チップ化(Piber 8) 4.10
1.41
プラントまでの輸送 3.40 1.17
費用計 38.00 13.09
販売収入 燃料チップ 49.30 17.00
(参考) パルプ材2級 18.16
6.26
立木代 燃料チップ 11.30 3.91
(参考) パルプ材2級
▲6.84 ▲2.36
実材積1m3=チップ2.9m3
出所)ビオヴェルメ社資料
人口1000人当たり木質ぺレット消費量
2003年 トン/年
日本
ドイツ
ス イス
アメリカ
カナダ
ノルウェー
イタリア
フィンランド
オーストリア
デンマ ーク
スウェーデン
0
20
40
60
80
100
120
出所:Sun Wind Energy Magazine from the European Pellet Conference in 2004
木質ペレットボイラを用いた冷暖房 (夏の日中)
OMソーラーシステムとの接合
提供:OM計画株式会社
木材加工と木質エネルギーの共生
オーストリアの大規模製材工場の場合
製材工場 原木 130万m3/年
製材品(挽材)とプレーナ
がけ完成品を生産
製材工場
コージェネプラント
燃料は樹皮
電気 5,000kW 外部に販売
熱 27,000kW 木材乾燥
地域熱供給
ペレット工場
製材品
原料はプレーナ屑とおが屑 年間生産量 75,000トン
(1時間当たり8トン)
樹皮
プレーナ
がけ
おが屑
コージェネ
乾燥
完成品
地域熱
供給
乾燥
プレーナ屑
ペレット工場
売電
ペレット
日本林業改革のポイント
●森林を活性化し、川上からの安定した木材の
流れをつくる
・どんな山にも10年に1回程度は間伐(または択 伐)が入るようにする
・放置された森林に対して地域が一括利用権を 設定し、組織的な間伐を推進する
●山から伐り出される材をすべて利用する
・木材関連の工場を統合・集約化し、木材のカ
スケード利用を徹底させる
・残廃材利用のコージェネプラントで電気と熱を 生産し、木材乾燥や加工に振り向ける
木質バイオマスのカスケード利用
燃料の流れ
樹幹 末木枝条
枝払い
チップ化施設
生木 剪 定 枝 流 木
・
環境美化・森林開発等
・
森林の除間伐
熱の流れ
チップ生産(パルプ用・燃料用)
材・製品の流れ
小径木加工
製材A
製材B
乾燥
施設
ペレット製造
森の発電所
・電気
・蒸気
・温水
集成材
工場
プレカッ
ト工場
施設園芸
地域製造業
地域冷暖房
外部への売電