松江高専におけるウェブ構築および運用について 松江工業高等専門学校 ○廣瀬 誠,岡田 康,池田総一郎,川見昌治,原 元司,金山典世 1.まえがき 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法 律により,高専においてもその諸活動を国民に説明 する責務があり,近年ではウェブの浸透により,ホ ームページを用いた情報公開が一般的である.ホー ムページによる情報発信は,年々その重要性を増し ており,入学倍率,内定率,進学率など,学校の評 価につながる指標にも影響を与え始めている.その ため,多くの高専がコンテンツの充実,デザインの 刷新等に取り組み始めている. しかしながら,このようなホームページの制作に は高度な技術を要するため,学内の教職員で手掛け ることは難しく外注に頼らざるを得ない.ウェブシ ステムの設計,実装,運用,保守の全てを外注した 場合,構築にかかる費用だけでなく管理・保守費用 を永続的に支払わなければならない.また,管理業 務は一般的にシステム本体に行われるため,ホーム ページの記事の更新などは,結局のところ知識のあ る教職員が行わざるを得ず,そのような教職員も限 られているため,最終的には,専任でない 1~2,3 名の教職員による外注前のボランティア的体制で運 用されることとなる.専任の教職員を設置すること は費用的にも非常に困難であるため,見栄え的には 良いホームページが出来上がったとしても,管理体 制は従来どおりであるか,またはシステムの高機能 化により仕事量が増加するかであり,教職員の負荷 の減少はほとんど期待することができない. この体制の最大の問題は, 「ネットワーク管理者と ウェブ管理者が同一人物であること」または「ウェ ブ管理者(更新作業も含む)が 1~2,3 名であること」 である.松江高専では,前者は解決済みであったが 後者に問題があった.そこで,ホームページの更新 作業をワープロソフトが利用できる程度の知識・技 量を持つ者で行うことができるウェブシステム (CMS)の導入および前年度から取り組んでいる松江 高専のウェブシステム運用体制について述べる. 2. CMS の選択 CMS(Contents Management System)とは,ウェブ サイトのテキスト,画像,動画などのような電子デ ータを体系的に管理するシステムの総称であり,主 としてウェブサイトの構築,管理に利用されている. CMS は価格(有償・無償) ,機能(プラグイン,テン プレートなど) ,用途(ホームページ用,ブログ用な ど)などにより様々な種類が公開されている.松江 高専では,無償であり,プラグイン,デザインテン プレートが豊富な Joomla!TM 1)を採用した.本 CMS を 採用した最大の理由は ACL(Access Control List) 2) が実装されている点である.この機能により,ユー ザ毎に管理権限を設定できるため,管理画面やコン テンツなど,ユーザ権限に合わせた表示,編集を実 現することができる(図 1) .専門知識の少ない人は, 画面中に多くのメニューが表示されていると困惑す るため,更新に必要なメニューのみが表示されるこ とは非常に有効である.また,Joomla!TM のインター フェースはグラフィカルで操作性が良く,始めての 人でも扱いやすいという特徴を持っている. (a)管理者の管理画面 (b)記事執筆者の管理画面 図 1 Joomla!TM による権限毎の管理画面 3.CMS を用いたウェブ構築 松江高専におけるウェブサーバ環境を表 1 に示す. FAMP 環境により無償で構築されている. 表 1 ウェブサーバ環境 OS FreeBSD 8.2 ウェブサーバ Apache 2.2.17 ロジック PHP 5.2.17 データーベース MySQL 5.1.55 CMS Joomla 1.7.2 【連絡先】〒690-8518 島根県松江市西生馬町 14-4 松江工業高等専門学校 情報工学科 廣瀬 誠 TEL:0852-36-5154 FAX:0852-36-5154 e-mail:[email protected] 【キーワード】ウェブ,ホームページ,CMS,Joomla!,ACL Joomla!TM にはエクステンションと呼ばれる追加 機能がある.エクステンションは「モジュール」 「プ ラグイン」「テンプレート」「ランゲージ」に大別さ れる.モジュールは,ホームページ上の一部に設置 したい機能(Twitter モジュールや Youtube モジュ ールなど)である.プラグインは,管理画面などに 追加したい機能である.テンプレートはホームペー ジおよび管理画面のデザインであり,基本的には CSS で記述されている(自作も可能).ランゲージは 追加言語パッケージである.これらは The Joomla! Extensions Directory3)において約 10,000 種類(有 償・無償)が公開されている.エクステンションは 基本的にすべて ZIP 形式のファイルで公開されてお り,デスクトップ上にアップロードし管理画面から ファイルを選択するだけで容易にインストールする ことができる.また,インストール後,利用の可否 を設定することができるため,サーバの容量が極端 に少なくなければ,複数のインストールを行い試用 することができる. 松江高専の問題点に即したエクステンションとし てエディタのプラグインがある.専門知識があまり ない人(事務職員など)に運用側に参加してもらう ためには,記事の執筆,更新,削除が容易にできる エディタが必要である.普段使いなれたワープロソ フトに近い操作性を持つエディタを利用することが できれば協力依頼が成功する可能性は高い.Joomla! TM のエディタ(プラグイン)には様々なものがある が,本校では JCKEditor4)と呼ばれるエディタを採用 した.これは Microsoft Word の編集画面に非常に近 く,機能(太字,色など)もほぼ同等に扱うことが できる(図 2) . このように,コンテンツ更新者,ウェブシステム管 理者,ネットワーク管理者の 3 つに分類した.本校 ではさらに,コンテンツ更新者を,執筆者と承認者 に分類した(図 3) .つまり,記事を執筆する者とそ の記事を公開するか否かを判断する者を分離し,執 筆者の負担を軽くした.名前や写真など,記事とし て公開してよいかどうかを執筆者に判断させること は非常に負担になる.この負担を軽減させるために 承認者を設けた.また,承認者を設けることにより, ウェブシステムの知識以外に高度な専門性をもつ者 (個人情報保護,特許など)を運用側に招くことが できるため,幅広い人材による運用が可能になる. ・・・ コンテンツ承認者 コンテンツ承認者 非承認 非承認 破棄 要修正 承認 記 事 公開 破棄 要修正 作成・修正 承認 記 事 公開 作成・修正 ・・・ コンテンツ執筆者 コンテンツ執筆者 ウェブシステム 管理者 ネットワーク 管理者 図 3 運用体制 図 2 JCKEditor による記事作成画面 4.CMS を用いたウェブ運用・管理 ホームページの運用において,最も多い作業は, 更新作業である.ウェブシステムを構築した者が基 本的には更新作業をするところも多いが,それでは 作業の負荷が集中する.そこで,3 章で述べたエデ ィタを用いた更新作業をする者と、ウェブシステム 全体を管理する者(主にデザイン,機能の追加)を 分離した.もちろん,ウェブシステムが動作するサ ーバの管理も別のネットワーク管理者が管理する. 5.おわりに 本報では,松江高専におけるウェブ構築および運 用・管理について述べ,一部の教職員に負担が集中 する運用から複数の教職員に負担が分散する運用へ の試みについて報告した.現在,トップのホームペ ージのみ本運用を用いているが,今後は各学科のホ ームページ等,関連別サイトについても運用の幅を 広げていきたい. 参考文献 1) Joomla!TM: http://www.joomla.org/ 2) Joomla! Extensions Directory: http://extensions.joomla.org/ 3) ACL: http://www.slideshare.net/jen4web/jo omla -1617 -access-control-lists-acl 4) JCK Editor: http://www.joomlackeditor.com/
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