(a) 現状 卸売業・製造業側企業における受注処理の最初のプロセスであり

 EDI 業務フロー
3.
出荷
(1) 受注確定
(a) 現状
卸売業・製造業側企業における受注処理の最初のプロセスであり、小売業側企業か
ら発注された内容を確認する業務である。1 日数回、時間を区切って行われるようで
あるが EOS の場合は 1 回の受信ごとに行われる。
EOS の場合はコンピュータ内部で、電話や FAX による受注処理の場合は業務担
当者の各台帳の目視比較、あるいはコンピュータへの入力作業により行われている。
小売業側企業と直接取引の無い製造業側企業では、受注があったのち生産管理部
門と打ち合わせのうえ納品予定日を通知し、承諾を得た後に確定するのが一般的の
ようである。
(b) 問題・課題
人為的ミスの発生
電話や FAX による受注処理の場合はやはり人為的ミスが発生するので、コンピュ
ータを導入したシステム化を検討している卸売業・製造業側企業が多く、小売業側
企業へ EOS 発注を要望する。
企業独自の商品コード
独自コードが使用されている場合、発注情報のキーとなる小売業側企業からの商
品コードから卸売業・製造業側の企業内で管理している商品コードに変換する必要
があり、また商品コード変換テーブル(顧客別商品管理台帳)の管理も煩雑であり、商
品コードを社内においても、取引企業間においても共通で活用したい。
その他
発注側と受注側の発注単位の相違から、過納、未納が発生し納品率を悪化させて
いる。また、取り決められた時間を過ぎたあとの発注も多く、いつまでも受注確定
処理ができない場合や確定後の出荷中にも追加受注があり、該当商品を同じ梱包に
収める後追い処理が発生するなど、処理に苦慮している。
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 EDI 業務フロー
(c) 解決案
① 商品コードの統一
商品を一意に決定する商品コードは、やはり JAN コードを使用すべきであろう。
店舗売場における部門を区別するための理由で独自コードを利用している小売業側
企業からの発注時には、その独自コードから、発注元情報として小売業側企業の企
業コード+部門コード、発注先情報として卸売業・製造業側企業の企業コード+商品
JAN コードに事前に変換して送信すべきである。
② ソースマーキングが課題
商品特性や企業特性、売場形態など、さまざまな要因から商品へのソースマーキ
ングができない場合、後続プロセスでさまざまな問題が発生する。原則的には製造
業側でマークするのがソースマーキングであるが、卸売業側でマークするのがベン
ダーマーキング、小売業側でマークするのがインストアマーキングである。このよ
うにソースマーキングの問題は、製・配・販、各取引企業の協調作業のもと、全体の
流通工程のなかからマーキングに最適な箇所を見つけだし対応していくことが、流
通業務の全体的な効率化を求める場合には重要となる。
③発注単位の相違など
発注単位の相違については、取引企業間における商品情報に不整合が発生している場
合が多いため、1. (3)商談プロセスの取り扱い中止通知/廃番通知の節で述べたように商品
情報の交換が有効である。発注時間については、締め切り後の発注が頻繁に発生する場
合には取引企業間で定めた時間に無理が生じていると判断されるため、その原因追及を、
これも協調作業によって究明し変更するのが得策であろう。
(2) 在庫引当/生産管理
(a) 現状
受注確定後、在庫データ(在庫管理表)の現有在庫から受注分を引当て、足りない場
合には納品率を確保するため、緊急の調達や生産を行うようである。受注時には仮
引当を行い、出荷指示データの作成時に本引当を行っているのが一般的であるが、
受注確定時に本引当を行っている卸売業・製造業側企業もある。
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 ページ 2
 EDI 業務フロー
(b) 問題・課題
在庫管理
在庫管理の精度がやはり低く、受注時に本引当を行っている卸売業・製造業側企
業では、受注した順番に出荷業務が行えない場合、引当ができたにもかかわらず実
際の出荷時に商品が足りないことも多く指示どおりの出荷ができない。
予期せぬ発注と不良在庫
予測を超えた量の受注に関しては緊急の調達や生産で対処するが、納品までの時
間的余裕も尐なく間に合わず欠品となるため、事前情報を求める回答が多い。
卸売業側企業では、欠品対策のため製造業側企業に余裕を持った安全な生産発注
をする場合も多く、製造業側企業では不良在庫を抱える要因になっている。
(c) 解決案
① 出荷形態に合致した在庫管理の仕組つくりが第一歩
各卸売業・製造業側企業の出荷業務に合致した在庫管理システムを構築すること
がまずは肝心であり、受注情報をそのまま出荷指示にできる場合には、受注確定時
の在庫引当も正当であるが、発注情報を実際の出荷業務の効果を図るために、順番
を変更したり分割したり、あるいはまとめて出荷している場合には、その出荷業務
の単位で在庫引当を行わないと出荷業務と在庫管理業務との整合性が保てないため、
在庫管理の数量に信頼性がなくなり出荷業務にも大きな支障をきたす結果となる。
②
商品のロケーション管理と状態管理も大切
在庫管理は卸売業・製造業側企業においても重要な業務であり、出荷業務の効率
化を向上させるためには、商品の数量のみを把握するのではなく、その格納場所や
商品移動の情報もできうる限りリアルタイムで管理する必要があると思われる。商
品の入庫から出庫までの一連の業務を分析し、各業務の結果として在庫管理に反映
させなければならないが、入庫された商品がすぐに出庫できるとは限らないため、
商品の属性をも管理しできるだけ同じ属性の同一商品は一箇所に集めて管理するよ
うに努めるべきである。
現状では、倉庫内あるいは工場内にある商品の総在庫数量は把握できるものの、
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 EDI 業務フロー
その商品が何個どこに格納されているのか把握できない卸売業・製造業側企業が意
外に多いようであるが、これでは商品の探索に時間がかかり、あるいは探しきれな
い場合は出荷もできないなど円滑な出荷業務を望めるわけもない。
③ 予測を超えた大量商品は、すぐに出荷できない、生産できない
予測を超えた量の受注に関しては、納品までの時間的余裕を尐しでも多くとるこ
とができるよう取引企業間で事前情報を確実に迅速に交換するほかないが、小売業
側-卸売業側での交換情報が、卸売業側-製造業側にまで伝わっていない、あるいは各
企業の担当者レベルのみで交換されており、社内の関連セクションまでは伝わって
いないケースが多いようである。各取引企業間や各企業内における情報伝達業務の
改善に期待するところであるが、まずは、「予測を超えた大量の商品発注に対して
は、すぐに、商品は出荷できない、生産できない。」という考え方に立脚した取引
システム(仕組み)の構築が必要であり、取引企業間の各企業において、そのシステム
のルールを互いに遵守することが大切である。
(3) 出荷指示データの作成
(a) 現状
卸売業・製造業側企業の出荷形態によりさまざまであるが、EOS や電話・FAX によ
る受注を集約し受注確定分の在庫引当を行ったのち、取引先毎の単位(バッチ)に分け
られて出荷指示書(出荷指示データ)を作成しているようである。
出荷指示書も、手書きによる FAX 用紙や納品書からコンピュータの帳票類、ハン
ディターミナルやパソコンのディスプレイ表示を利用したものまでさまざまである。
(b) 問題・課題
各社さまざまの回答で、各社内における改善をこころみたいとの回答が多い。や
はり、手書きによる出荷指示書の場合は人為的ミスが発生するようである。
(c) 解決案
① 企業の特性や規模に合致した無理のない情報投資(仕組つくり)
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 EDI 業務フロー
各卸売業・製造業側企業の受注量や企業規模に応じて情報化投資を行い、コンピ
ュータを段階的に導入し、まずは煩雑な業務を支援する目的でシステムを構築する
のが得策である。人為的作業に頼らざるをえない場合は、二重の検査体制を整える
のが望ましい。
(4) ピッキング
(a) 現状
出荷指示書の内容に従い、在庫商品の中から受注した商品を取り揃える業務であ
る。このプロセスは、卸売業・製造業側企業ごとにその業務方法はさまざまであり、
情報化投資や機械化のレベルも同様、その差は顕著である。
どこに在庫されているか分からぬ商品を外部運送業者の運転手に指示しているレ
ベルから、無線 LAN に繋がったハンディターミナルにロケーション表示をして、商
品の JAN コードをスキャンし、検品業務も兼ねるレベルまで、いろいろである。
(b) 問題・課題
ピッキング作業の経費増大
小売業側企業からの要望に応えるため、発注単位が小口化する傾向があり、ピッ
キングの業務負担が増大していることや、受注がどうしても週頭に集中するため、
ピッキング業務の負荷分散が困難であり、人件費の無駄が省けない。作業者の目視
確認によるピッキングのため、商品違い、数量違いなどのピッキングミスを壊滅で
きない、小売業側企業から発注書単位の梱包を要求され、ピッキングの効率が上が
らないなど、ピッキング業務の効率化は、卸売業・製造業側企業の大きな課題であ
る。
いずれにせよ、小売業側企業からの要望は多種多様であり、その要求される仕様
も日々変化しており、卸売業・製造業側企業は、これらに臨機応変に対応しなけれ
ばならず、その経費増大が深刻である。
(c) 解決案
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 EDI 業務フロー
① ピッキングの効率化にはロケーション管理が有効
ピッキング作業は、商品確認、移動、探索、数量の確認、取る、置く、の繰り返
しであり、なかでも移動、探索の時間が作業の半分以上を占める。この移動・探索時
間の軽減をはかるため、商品の格納されている位置を管理し、そのロケーション順
にピッキングさせることが有効である。
商品のロケーションを決定する際には、商品特性や商品区分、取引先区分や、商
品回転率を考慮し、ピッキングリストやハンディターミナルのピッキング指示の順
番を、このロケーション順に合わせ、ピッキング作業者の移動距離を最短にするこ
とが肝心であり、定期的なロケーションの見直しが重要である。
ディジタルピッキングやパソコンを搭載したカートピッキングを行い、ピッキン
グと同時に検品を行うシステムの導入事例も増えているが、商品名での確認は、形
や色やサイズなどの判別が難しく、人為的ミスを起しやすいため、ロケーション No
と数量のみを指示してピッキングさせるなどの工夫も効果的である。
また、商品を一括で摘み取りピッキングし、そのあと店舗別にばら撒きピッキン
グをするなど、作業の効率化と的確化をはかるための工夫が大切である。
② 在庫管理とロケーション管理がやはり基本
あらゆる小売業側企業からの要望に応えられるシステムなど構築しようもないが、
商品の在庫管理やロケーション管理が、ピッキング業務を支援するシステムの核と
言える。そのうえで、EDI プラットホームの受発注情報が交換されるようになれば、
小売業側企業からの発注情報を、商品コードをキーにして、ロケーション順に並べ
替え、ピッキング指示データを作成し、ピッキング業務の効率化をはかることは容
易であろう。さらに自動倉庫やコンベアなどのマテハン機器制御との連動が図られ
ればオートメーション化も進み、その効果もさらに増すと思われる。取引先である
小売業側企業からの各種要望への対応も、この基盤となるシステムが確実に稼動し
ていれば、何らかの支援システムを講じることが可能と思われる。
(5) 出荷検品
(a) 現状
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 EDI 業務フロー
商品の在庫形態や出荷形態により異なるが、大別すると梱包する前の単品検品と
出荷梱包単位での検品がある。値札付け作業を行う場合は、単品検品時に兼用する
ようである。
検品方法であるが、システム化による支援のない企業においては、目視による検
品を出荷担当者の二重作業で行っており、システム化が図られている企業において
は、商品に貼り付けられている商品コードを、バーコードスキャナを利用して読み
取り、発注情報と照合している場合がほとんどである。
(b) 問題・課題
発注された商品をまちがいなく納品するのは当然であるはずが・・・
この検品業務については、卸売業・製造業側から、問題を提起する回答がそれほ
ど見られない。出荷作業の時間が限られているため、充分な検品を行っていない、
二重チェックなどを施しているものの人手による目視検品のため、商品の誤納が発
生する、あるいは商品コードのソースマーキングにしても、単品商品管理に対応で
きていないなど、むしろ各企業内における反省が多い。
小売業側企業から発注された商品を、まちがいの無いよう決められた期日までに
確実に納品するのは、卸売業・製造業側企業の使命である。検品業務は、発注され
た商品とその数量をまちがいなく出荷するための確認作業であるが、この精度が悪
いことが、実は小売業側企業からは随分と不満が上がっている。
(c) 解決案
発注した商品をまちがいなく納品するのは当然であり、その精度向上を、小売業
側企業が卸売業・製造業側企業に対して要求するのは自然であり、精度の低い卸売
業・製造業側企業に対して、劣悪な誤納に値する罰則を与えるのは必定であろう。過
納や商品違いは煩雑な返品作業を強いられることになるし、欠品は機会損失を発生
させるからである。
① 出荷精度の向上にはシステム化が有効であるが、ソースマーキングが課題
卸売業・製造業側企業における出荷検品は、完全を求められて当然である。人手で
賄える商品形態であれば二重・三重のチェックを行い、出荷量や、小さい細かいなど
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 EDI 業務フロー
の商品特性などに応じて、システム化を検討する必要がある。バーコードスキャン
によるシステムの導入は有効であるが、ソースマーキングの問題があり、やはり商
品コードは JAN コードに統一すべきであろう。製造業側でのソースマーキングが本
来であるが、同一商品でも梱包形態が変われば異なったコードを付番するのがルー
ルであるため、梱包形態を変えるような作業があるのであれば、卸売業側でのベン
ダーマーキングも必要である。
後述するが、小売業側企業においても入荷検品と言う作業が相当な体力を要する
業務であり、卸売業側企業における出荷検品と入荷検品、製造業側企業での出荷検
品も同様であるため、業界における入出荷業務が円滑におこなわれるよう、商品コ
ードは JAN コードの統一利用を推進すべきであり、付番ルールに従ったソースマー
キングを徹底すべきであろう。
(6) 欠品対応
(a) 現状
小売業側企業からの発注に対し、該当商品の納品ができない場合の処理であるが、
卸売業・製造業側の対応は、次回納品時に繰越して納品する企業もあれば、商品を取
り揃えた時点で遅れて追加納品する企業、何とか緊急生産を行い足りない分は納入
しない企業など、その対応はさまざまである。いずれにせよ、遅配あるいは欠品の
旨を小売業側企業に対して速やかに連絡する必要があるようだ。
こういった欠品対策や、前プロセスでも述べた卸売業・製造業側企業の出荷精度に
満足できず、誤納と同じように欠品に対しても、小売業側企業から卸売業・製造業側
企業に対し、罰則金が課せられている場合もあるようである。
また、多くの店舗を抱えるに至った小売業側企業では、各店舗での入荷検品業務
を一箇所に集約するため DC を建設し、運用している場合が多く見られるが、卸売
業・製造業側企業での欠品を何とか吸収し、小売業側各店舗における欠品が起きない
よう、品数の薄い商品の仕分け調整機能を持たせている DC もある。
(b) 問題・課題
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 EDI 業務フロー
イレギュラー発注には対応が困難
イレギュラーな大量発注には通常の在庫量ではどうしても対処しきれないため、
事前に販売計画の提示などを小売業・卸売業側企業に要望する製造業側企業が多い。
また反対に、大量受注あるいは販売計画に対応して納品した商品の大量返品も多く
あるようで、生産した商品の責任体制を問う問題提起も見られた。
(c) 解決案
① イレギュラー発注を想定した取引条件の明確化
特売商品や販促対象商品の大量発注にかんしては、やはり取引企業間の事前連絡
を迅速に確実に行うほかあるまい。また、欠品の罰則金にかんしても、これらのイ
レギュラーな大量発注の場合は、例外として措置ができるような取引企業間におけ
る取引条件を事前に定め明確化しておくことが重要である。
② 協調作業による欠品対策
出荷業務における欠品対策手段としては、限られた時間内での緊急調達や緊急生
産は、出荷業務の効率と信頼性を著しく低下させるため、できるだけ避けるべきで
あり、次回の出荷に繰越すのが得策であると考えられるが、定番の通常発注量の欠
品は起さぬよう、卸売業・製造業側企業においては、日頃から、商品ごとに発注量
の動向分析を行い、その結果に従った在庫量の調整を行うべきであろう。
EDI プラットホームの POS 情報の交換も効果的である。POS を導入している小
売業側企業では、POS 情報の開示を進めている企業もあるので、この POS 情報を
入手し、発注量の予測精度の向上を図ることも可能であり、有効な欠品対策の手段
となりえるであろう。
(7) 梱包
(a) 現状
商品の梱包形態であるが、小売業側企業の運営する DC への一括納品の場合はオ
リコン(折りたたみ式コンテナの略)、店舗に直接納品する場合は段ボールケースを使
用している場合が多いようである。
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 EDI 業務フロー
環境保護の視点からもオリコン化が進んでいるようであり、小売業側企業では段
ボールの廃棄経費も年々増大しているようである。
また、発注書単位や発注部門別の梱包を要望する小売業側企業が増えているが、
出荷業務の経費が増大するため、卸売業・製造業側では、その対応に苦慮している状
況である。
(b) 問題・課題
オリコンを導入したいが、店舗からの返却経路の確保が困難である
DC を運用している小売業側企業との取引においては、今後ますますオリコンの利
用度は高まるであろう。しかし、小売業側店舗に直接納品する場合、使用済みの空
オリコンをどう返却するか、その返却経路の確保が困難である。これは、店舗では
空オリコンを格納しておくスペースがないことや、一括納品できる DC 納品の配送
がチャータ便を利用しているのに対し、小口配送が強いられる店舗直接納品の配送
は、数箇所の拠点を経由する路線便に頼っているからである。路線便を利用する店
舗直接納品に対応できる、安価な空オリコンの返却経路を確保しなければ、オリコ
ンの普及はありえない。
オリコン化へのその他の課題
卸売業・製造業側企業ではオリコン普及への対応を覚悟しているものの、移行する
のであれば、梱包形態をオリコンのみにして行きたい。しかし、店舗側の発注漏れ
による後追いの直接発注や、限られた店舗のみのテスト販売商品、客注、商品形状
の特質による DC 不通過商品に関しては、どうしても段ボールを使用した直接の店
舗納品に頼らざるを得ない。
DC への不満
DC 一括納品により、オリコン導入など出荷業務のローコストオペレーションや物
流経費の削減が図れたものの、DC 利用の際のセンターフィがそれ以上に高額で、返
って経費が増大している場合も尐なくない。
(c) 解決案
① オリコン返却経路の確保には新しい仕組つくりが必要
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 EDI 業務フロー
オリコン普及にかんしては、各店舗からの空オリコンの返却経路の確保が第一で
ある。共同オリコン配送などの仕組作りが必要であるかも知れない。現状費やして
いる小売業側企業の各店舗における段ボール廃棄経費との相殺で運営できうるよう
なシステムの検討が必要である。
② オリコンの標準化も重要な課題
複数の企業と取引のある企業においては、出荷業務の際、取引先ごとにオリコン
の取替作業が発生し、また、空オリコンの在庫スペースを各取引先ごとに新たに確
保しなければならない。この非効率を解決する目的で、オリコンの業界統一を推進
する動きが一時高まったが、オリコンの洗浄問題や管理責任者の明確化など、その
管理運用が困難であったことから、残念ながら現実化されていない。下図.7-1 に、
業界統一オリコンの対象となったオリコンの仕様概要を示す。
蓋
・SCMの 信 頼 感 を 高 め る
・ホ コ リ 等 の 混 入 防 止 、 商 品 の 汚 れ 防 止
・盗 難 防 止 対 策 用の 封 印 も 可 能 (別 部 品 )
ラベル貼付対応
・SCMラ ベ ル の 貼 付 け や 剥 が し が し や す いよ う に
シ ボ 加 工 (下 記 斜 線部 )
仕様
・組立外寸 ・組立有効内寸
・折畳み後外寸
・内容量 ・材 質 ・重量 : 5 3 0 × 3 6 6 × 3 4 1 .5 ㎜
: 4 9 2 .5 × 3 3 4 × 3 0 7 ㎜
:530 ×366×102 ㎜
: 5 1 .6リ ッ ト ル
: ポ リ プ ロ ピ レ ン( 金 属 ピ ン 使 用 無 し )
:2940g
図.7-1 業界統一オリコンの対象となったオリコンの仕様概要
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 EDI 業務フロー
③ オリコン管理は EDI プラットホームで対応が可能
オリコンは非常に便利であり、庫内物流においても利用されることが多く、取引
業務に際するオリコンの入出庫量を確実に管理し、価値ある財産としての扱いをし
なければならない。EDI プラットホーム上で、オリコンの入出庫量を相互に交換し、
ひとつの商品として扱うことは現在でも可能であるが、近い将来、オリコンにオリ
コンを一意に示すコードを付番するようになれば、環境は飛躍的に向上すると思わ
れる。
④ DC について
DC の設置などにともなう問題は深刻である。この内容については、3-(11)出荷の
節、配送・納品の項でまとめて言及することとする。
(8) 納品書・送り状・ラベル等の発行
(a) 現状
卸売業・製造業側企業における出荷業務の際に、発送商品に添付しなければならな
い各種帳票、あるいはラベル類のことである。
納品書に関しては、アンケートの結果、ターンアラウンド伝票の 2 型が最も利用
されているとの結果がでている。ただ、この場合も小売業側指定のオリジナル伝票
同様に印字内容の指定がマチマチで、その印字および記入業務が煩雑であるとの回
答が多く、伝票の統一とその伝票に記入する内容の統一を要望している卸売業・製造
業側企業が非常に多い。
また、送り状に関しては、取引のある運送業者を二三社に限られる場合には、電
子データを送信することで送り状をすでにペーパーレス化している企業もあるが、
小売業側企業から運送業者の指定がある、あるいは配送先の地域により運送業者が
限定されるなどの理由で運送業者を絞りきれないため、送り状を運送業者ごとに替
えて記入あるいは印字している卸売業・製造業側企業も多い。
商品梱包の一個一個に貼り付ける物流ラベルも多種多様で、小売業側企業から指
定されるラベルの他に、運送業者との間で取り決めたラベルや卸売業・製造業側企業
のオリジナルラベルを貼り付けている企業もある。
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 EDI 業務フロー
(b) 問題・課題
納品書やその記入内容が取引先毎にマチマチ
納品書は小売業側企業の指定伝票を使用しているが、要望が多かったように、小
売業側指定の内容を印字、あるいは記入しなければならないので、各取引先ごとの
対応が非常に煩雑であり、人手の場合は記入ミスが多く、納品書の印刷システムで
対応している場合は、その対応システムの開発・維持経費が増大していることがあ
げられる。
納品書の運用自体が煩雑
システムにて対応している際にも、伝票や帳票類のセット替えが頻繁に発生する
ことや納品数量の訂正をする必要があり、ピッキングが終了してから後に納品書を
印刷する場合も、事前に印刷しピッキングの結果に合わせて修正伝票を探し出した
後に手作業で訂正する場合も、ともに出荷時間を圧迫しているため、納品書の発行
時間を短縮化、あるいはペーパーレス化への要望は多い。
また、商品梱包へ添付すべき納品書に他取引先の納品書を混入させたため、甚大
な問題を引き起こした経緯から、納品伝票の印字内容から原価・売価項目の削除が
要望されている。
送り状も同様
送り状に関しては、納品書とほぼ同様の問題から、送り状の廃止を進める意向の
卸売業・製造業側企業が多い。運送経費の削減を図るためにも、契約する運送業者
の絞込みを行いたいが、小売業側企業の運送業者の指定がある場合、これが足かせ
になっている。
物流ラベルの貼り付けはさらに大変
物流ラベルについてもまったく同様であり、小売業側企業の物流システムにより、
その仕様は形状や印字内容も含めて多種多様である。物流ラベルはその貼付位置が
限定される場合も多く、そのラベル貼付位置のズレが小売業側企業の DC などで使
用しているスキャナ機器にリードエラーを引き起こさせる要因となり、小売業側企
業の物流システムを大きく停滞させる場合もあるため、ラベルの購入やラベル印刷
機器を含めたラベル発行システムの購入を要望される場合もある。この場合、購入
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 EDI 業務フロー
したラベルへの記入に人手が介在することになったり、ラベル発行システムを卸売
業・製造業側企業のシステムに連動させることが困難であったり、卸売業・製造業側
企業における出荷業務のシステム(オートメーション)化の阻害要因になっている場
合も見受けられる。
(c) 解決案
① 先ずは納品書の統一から
納品書については、最も利用されていると回答のあった、次頁の図.8-1 に示すタ
ーンアラウンド伝票の 2 型に統一するのが良いだろう。印字内容の標準化について
は、伝票内容の印字項目範囲内で有効とし、各小売業側企業から要求される特記事
項については、アルファベットの A~L までの項目で吸収できると判断する。
② 次に EDI プラットホーム上で受発注情報を交換する
まだ EOS を導入していない取引企業間では、次段階として EDI プラットホーム
上の受発注情報を取引企業間で交換することで、受発注業務の効率化を図ることが
可能であろう。EDI プラットホームには、受発注情報のみではなく、その受発注情
報の交換データと連動した請求/支払情報の交換もできるため、各種帳簿書類の電子
データ保存へのシステム移行がより容易となる。
図.8-1 ターンアラウンド伝票 2 型
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 EDI 業務フロー
③ 電子データ保存化への移行も考慮しておく
平成 10 年度の税制改正で電子データ保存が認められたため、今後は小売業側企業
を中心に、各種帳票類のペーパーレス化が普及することが見込まれる。これまでは
オンラインデータ交換などで交換していた受発注情報を、わざわざプリント出力し
て保存していた企業も多い。この各種帳票類の印刷コストや書類整理の人件費、お
よび格納スペースの削減など、経費の大幅な削減になると思われる。電子帳票に関
しては、7-(2)の請求・支払いの節、支払/入金の項でも述べているので、参照された
い。
④ 物流 EDI との連動を図る
送り状に関しては、運送業者などの会員企業で構成されている物流 EDI 推進委員
会が推進している EDI プラットホーム(JTRN)との融合性を図り、送り状のペーパー
レス化をより容易にすることも可能であると思われるので、今後の検討課題とする。
⑤ 物流ラベルの統一化を検討する
小売業側システムに特化した内容になっており、納品書よりもはるかに多種多様
であり、卸売業・製造業側企業における出荷業務の効率化を妨げる要因となってい
るため、統一化の検討を推進し小売業側企業の理解を得る必要があるだろう。
物流ラベルの統一が実現されれば、各小売業側企業ごとのラベル交換が不要にな
り、卸売業・製造業側企業の出荷業務の効率化が向上するとともに、出荷業務に一
貫性が確保され、システム化の要件も高まるであろう。統一された物流ラベルの印
字システムを共同で開発し、そのインタフェースを公開することは、既存システム
へのプラグイン化を図るうえで、得策と思われる。
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 EDI 業務フロー
①
②
12345678901234567890
80m/m
12345678901234567890
③
届
け
先
XX 県 XX 市 XX 町 XXーXX ㈱ ○○○○ ○○○○センター
④
店
番
⑤
99999
部
門
⑥△△△ 店
⑦
⑧
出
荷
元
999
自由使用
XX 県 XX 市 XX 町 XXーXX ㈱ ○○○○○○○工場 電話999-999-9999
115m/m
各項目の名称
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
店仕分け用 ITF バーコード(最大 20 桁)
SCM 検品用 CODE-128 バーコード(最大 20 桁)
届け先
店コード
(最大 5 桁)
部門コード (最大 3 桁)
店名
自由使用欄 (ベンダーコード(6 桁)・納品指定日等)
出荷元
図.8-2 業界単位で統一が検討される SCM ラベル
⑥ SCM ラベル
上図.8-2 に当業界で物流ラベルの統一を検討した際に考案した SCM(Shipping
Carton Marking の略)ラベルを示す。SCM ラベルとは、受注側の JAN コードスキ
ャナ検品による梱包単位とその明細である SCM 情報(ASN(Advanced Shipping
Notice:事前出荷情報のこと)情報と呼ぶ場合もある)とを紐付けする PD ラベル(荷
札)のことである。ITF コードからなる発注(小売業)側での店別仕分け用情報と、
CODE-128 からなる受注側での出荷梱包をユニークに示す情報の 2 種のバーコード
からなる。EDI による小売側の検品合理化をはかるための基本となる荷札であり、
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標準化されることにより受注側企業における生産性に大きく寄与するため、そのサ
イズやフォーマットに関しては現状の標準化のルールを不都合ない限り取り入れた
ものである。
このラベルは運送業者での仕分け作業を想定していないため、路線便に頼った小
口配送の場合には、別途運送業者用のラベルを貼り付ける必要があるが、チャータ
便による小売業側企業の有する DC への一括納品の場合には有効である。普及率は
まだ低いが、改善を加え業界標準の物流ラベルとして使用して行くことが肝心であ
る。
⑦ SCM ラベルの持つ重要な機能
SCM ラベルは、EDI プラットホームで交換される SCM 情報や SCM リターン情
報と商品の梱包とを紐付けし、小売業側の入荷検品業務と卸売業・製造業側の出荷
検品業務を、取引企業間で交換される同一データに照合して行うことができるので、
検品システムも共同で利用でき、取引企業間相互の検品業務に信頼性が生まれるた
め、他の取引業務の効率化を飛躍的に推進する引き金になるであろう。下図.8-3 に
SCM ラベルを使用した際の物流フローのイメージ図を示すとともに、次頁の図.8-4
にSCMラベルと発注情報とSCM情報の関連図を示す。
ン
ー
タ
リ
M
送
C
伝
S
報
情
⑩
情報
発注
① 小売業
卸売・製造業
② 品揃え
③出荷検品
⑨ SCMラベル
を読み込んで入荷
検品
⑦ SC
M情
報伝
送
④ SCM情報作成
⑧ 配送
⑤ SCMラベルの貼付
⑥ 梱包
図.8-3 SCMラベルを使用した物流フローイメージ図
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○ 発注情報 : 明細行が3行ある納品書2枚の発注があったとする
・一枚目の発注番号(10 桁):0000000001
・二枚目の発注番号(10 桁):0000000002
明細行
商品コード
発注数量
明細行
商品コード
発注数量
01
ABC
20
01
abc
20
02
DEF
20
02
def
10
03
XYZ
70
03
xyz
10
● オリコンには商品がMAX50個しか入らない場合、実際に出荷した梱包は3つになる。
※SCM バーコード=“00”(識別子 2 桁固定)+“0”(梱包タイプ 1 桁固定)+
国コード(2 桁)
+ 商品メーカーコード(5 桁) + 梱包の連続番号(9 桁) + チェックデジット(1 桁)
☆ SCM情報:
★ 実際の梱包ケース内容
① 番目の梱包
SCM バーコード(20 桁):
0004912345000000001c
発注番号
明細行番号
商品コード
出荷数量
0000000001
01
ABC
20
0000000001
02
DEF
20
0000000001
03
XYZ
10
② 番目の梱包
SCM バーコード(20 桁):
1/3 個口
ABC x 20 個
DEF x 20 個
XYZ x 10 個
0004912345000000002c
2/3 個口
発注番号
明細行番号
商品コード
出荷数量
0000000001
03
XYZ
50
③ 番目の梱包
SCM バーコード(20 桁):
ABC x 20 個
DEF x 20 個
XYZ x 10 個
0004912345000000003c
発注番号
明細行番号
商品コード
出荷数量
0000000001
03
XYZ
10
0000000002
01
abc
20
0000000002
02
def
10
0000000002
03
xyz
10
図.8-4
3/3 個口
ABC x 20 個
DEF x 20 個
XYZ x 10 個
SCMラベルと発注情報とSCM情報の関連図
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(9) 出荷付帯作業
(a) 現状
出荷業務のさいに小売業側企業から卸売業・製造業側企業に要望される作業も、
実にさまざまである。値札付け作業はその代表的なものであり、そのほか梱包明細
書や出荷明細書の添付などがある。また、卸売業・製造業側企業の商品コード(JAN
コード)以外に、小売業側企業の店舗売場における部門を区別するため、小売業側企
業のオリジナル商品コードを貼り付けるインストアマーキングを依頼されている場
合もある。
(b) 問題・課題
値札付けなどの付帯作業が出荷負担になっている
これらの要望は、各小売業側企業の業務内容に適応した特別措置の場合が多く、
卸売業・製造業側企業の出荷業務を著しく低下させる原因となっている。なかでも、
値札付けの作業依頼は多くの小売業側企業が依頼しているようである。POS 導入店
舗における値札の価値を問う声も多い。
(c) 解決案
①
値札の標準化も必要?
POS 導入店舗における値札の価値分析は小売業側企業内の課題であろう。客観的
には、値札付け作業は小売業側企業で行うのが適当であると思われるが、当該作業
に要するコスト分析を相互に行い、その結果、当該作業を小売業側企業内で行うの
か、卸売業・製造業側企業のサービスとして提供するのか、その経費を商品の原価
に上乗せするのかの検討は、取引企業間で協議すべき商談項目のひとつである。
回答の解決案にも多く提案があった業界標準値札については、製、配、販、各業
態企業における出荷業務の効率化を目的に、その可能性と実現案を検討したい。
(10) 出荷仕分・積込
(a) 現状
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卸売業・製造業側企業の出荷担当者が、梱包済み商品を配送する運送業者別に仕
分けしておき、トラックなどへの積み込み作業は、運送業者の運転手が行うのが大
半のようである。また梱包された商品には、総小口数と何番目の梱包かを示すシー
ケンス番号が記入された運送業者用の物流ラベルが貼り付けられる。
(b) 問題・課題
積込ミスや配送ミスが減らない
人為的作業に頼るとことが多いため積込みミスが発生し、商品の紛失、あるいは
誤配、遅配が発生する。この際、納品書が一緒に梱包されていた場合は重要な問題
に発生しかねない。
荷物の総個口数のシステム化が困難
また運送業者用の物流ラベルに記入しなければならない商品梱包の総小口数は、
すべての商品の梱包が終了した時点で判明するため、その数量の記入が大変であり、
システム化の方法が見当たらない。
(c) 解決案
① 先ずは二重三重のチェック体制
業務的には、運送業者任せにするのではなく、卸売業・製造業側企業の出荷担当
者の立会いによる積込み時の二重チェックで対応し、相互確認書を交わし、責任の
明確化をすべきである。
② SCM ラベルのスキャンニングによるシステム化が有効
システム化を検討する際には、前述の SCM ラベルのスキャンニングを行うことで、
梱包された商品の積込みミスをチェックすることが可能であるし、EDI プラットホ
ームの SCM 情報を送信する場合には、この作業は必須となる。この作業を怠った場
合、梱包明細の情報を送るにもかかわらず、実際に商品が梱包されているケースや
オリコンが出荷されたことを保証できなくなってしまう。また、この積み込み時の
スキャンニング結果を運送業者にデータ転送、あるいはディスク等を利用して引渡
す作業が、送り状印刷の代替作業となる。
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(11) 配送・納品
(a) 現状
小売業側企業への納品形態によって、利用する運送業者の形態も変わるのが一般
的のようである。小売業側企業の DC への一括納品、あるいは店舗直接納品であっ
てもオープン改装時には大量のためチャータ便を、通常の店舗直接納品は尐量のた
め路線便を利用している。また客注など緊急の場合は、宅配便扱いの運送業者を利
用することが多い。利用する運送便については、小売業側企業から指定された運送
便や集荷便に限定される場合もあるようである。
多店舗展開している小売業側企業への DC 一括納品を要望している卸売業・製造業
側企業も多いが、反面、DC 納入の際に課せられるセンターフィの増大に不満をこぼ
す卸売業・製造業側企業も見られる。
また、週 2、3 回の納品を要望されている卸売業・製造業側企業も尐なくない。発
注から納品までのリードタイムが 24 時間以内の極めて短時間の出荷業務を強いら
れている企業もみられた。
(b) 問題・課題
DC 利用時のセンターフィの妥当性
一括納品による出荷効率の向上は認識するものの、DC 利用の際に課せられるセン
ターフィの費用増大に納得のいかない卸売業・製造業側企業が多い。なかには、配送
経費が店舗直納時の 1.5 倍に増えた、店舗直送する商品があるにかかわらず一律、
収めた商品にセンターフィが課せられているとの、回答も見られた。
配送する運送業者が指定されている
小売業側企業の指定による運送業者については、費用交渉や業務交渉を任意に行
うことのできぬ不満が募っている。
納品経費の増大傾向など
発注から納品までの時間が 24 時間未満であり、とても余裕のある出荷業務が行え
ず人件費が増大している、配送ロットの多頻度小口化の傾向があり、一回の納品単
位が小口化し、物流経費が倍増しているとの回答がみられた。特に緊急の客注納品
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に関しては、費用の高い宅配便を利用することが多いため、この傾向が顕著のよう
である。
(c) 解決案
この項では、この節のまとめを含めた見解を述べる。
① DC 評価の指標
DC の設置等に伴って生じる費用の負担額及びその算出根拠等について納入業者
と十分協議することなく一方的に負担を要請し、納入業者に不利益を与えることと
なる場合や、DC の設置等に伴って生じる費用を納入業者が得る利益の範囲を超えて
一方的に納入業者に負担させる場合などは、独占禁止法上問題となるとの指針が、
商談プロセスのところでも紹介した公正取引委員会からのレポートに記述されてい
るので参照されたい。
ともあれ、卸売業・製造業側企業においては、DC を利用することによって、何の
経費がどれだけ削減され、何の経費がどれだけ増大し、結果、要求されたセンター
フィが妥当であるかどうかの検証を行う必要がある。下表.11-1 の DC センタ業務に
対応した物流コスト算出表に、一般的な DC 機能を示すので、これを参考に卸売業・
製造業側企業内における物流コストがどれほど増減するかを算出して頂きたい。尐
なくともこの程度の検証結果をもって、取引先である小売業側企業との協議を行う
べきである。
表.11-1 DC センタ業務に対応した物流コスト算出表 (例)
センタ形態
※ <路線便/チャータ便>
TC 機能
(Transfer Center)
DC 機能
(Distribution Center)
機能
有無
無
有
有
有
有
有
有
無
利用時
コスト
¥
250
¥
¥
¥
¥
¥
¥
¥
80
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機能
配送センタまでの運送費
店舗別配送仕分け
配送センタ-店舗配送費
店舗業務の人件費軽減
検品精度の向上
店舗別梱包
多頻度小口配送の吸収
欠品対策用の在庫保管
単位:千円
業務
要否
要
要
要
否
要
要
要
要
不利用
コスト
¥
250
¥
80
¥
340
¥
¥
80
¥
80
¥
80
¥
80
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有
無
無
有
PC 機能
(Process Center)
※ <センタ利用費>
計
②
¥
¥
¥
¥
¥
80
80
600
1,090
大量供給による原価引下
値札付け作業
その他付帯作業
否
要
要
否
¥
¥
¥
¥
¥
80
80
1,140
納入業務に関するさまざまな制約
小売業側企業が卸売業・製造業側企業の納品業務に要望する項目には、以下のもの
があげられる。
・ 運送便指定
・ 納期指定
・ 分割納品
・ 小口配送
・ 緊急の客注配送など
いずれも卸売業・製造業側企業における出荷業務や納品業務への制約条件となり、
小売業側企業からのすべての要望は、卸売業・製造業側企業での何らかしらの付帯作
業項目に現れていると言える。
③
出荷業務や納品業務を構成する各作業項目のコストを明確化する
DC を利用する場合と利用しない場合のコスト比較だけでなく、卸売業・製造業側
企業の出荷業務や納品業務を構成するこれらの細かな作業項目をすべて洗い出し、
その作業に必要な伝票やラベル類の購入費、システム開発費やシステム機器の導入
費や維持費、各作業にかかわる人件費など、さらに詳細な内容まで細分化する。
以下に示すように、より細かいより具体的なレベルまで落とすことが好ましい。
・ 小売業側から指定された物流ラベル一枚の購入単価
・ 物流ラベルを商品の梱包に 1 枚貼り付けるための人件費
・ 梱包された商品を 1 ケース配送する費用
チャータ便の場合
路線便の場合
宅配便の場合
・ 商品をひとつピッキングする人件費
まとめてピッキングする場合
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店舗別にピッキングする場合
・ 納品書の印字項目内容がひとつ増えた際のシステム開発費 など
すべてを最初から洗い出すことは難しいかも知れないが、まず自社における基本
的な出荷業務や納品業務を構成する作業項目を把握し、その各作業項目のコストを
算出することから始める。
④ 各取引先ごとのコストを把握する
ある小売業側企業から発注があった場合、その受注商品を納品するためにどうい
った作業項目が必要であり、どういった作業項目が不要なのか、各取引先別に把握
することが肝要である。こういった各取引先ごとの分析を行わず、どの取引先に対
しても商品を同原価で提供する場合、要望の尐ない(出荷効率の良い)取引先で得た利
益を、要望の多い(出荷効率の悪い)取引先で消費していることになるし、その状況を
いつまでも認識できないことになる。
小売業側企業から新しい出荷要件の要望があり、それに対応したため出荷経費が
相当分増大するにもかかわらず、商品原価が以前と同じであるならば、他の小売業
側企業もやがて同じような要求をしてくることは必然である。同じ要望でなく、同
じほど経費の増大する困難な要望であるかも知れない。要望の多い小売業側企業と
要望の尐ない小売業側企業とに、同じサービスをすべきではなく、何らかの格差を
つけるのは当然である。それは商品原価に反映されるべきであり、やがては一般消
費者へのサービスに繋がるであろう。
EDI プラットホームは、取引業務で交換される各種情報の標準化から始まり取引
業務の標準化を促し、いまやローコストオペレーションを目指す各企業の物流業務
にもその標準化の重要性を示唆する。
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