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よそお
会期:2016年1月15日(金)〜2月21日(日)会期中無休
時間:11:00〜20:00(入場は19:30まで)
会場:ポーラ ミュージアム アネックス
新春にギャラリーを “粧う” のは江戸時代に花開いた、日本のあざやか
な「美」の系譜です。婚礼や晴れ(ハレ)の日の装いはもちろん、日々
の「化粧」ひとつにも女性は心躍るような、ときめきを感じてきたは
ずです。白粉を塗り、眉をひき、紅をさす。そのひとときの至福を彩っ
てきた道具や装身具。浮世絵から見えてくる往時の洒落た風俗。縁起
をかつぎ、めでたさで愛されてきた吉祥の文様たち。時代は変われど、
見目麗しくの根底に流れる心意気や感性は今を生きる私たちの「よそ
ほい」の中に息づいています。
本展は「化粧・女性・美意識」をキーワードに、化粧文化の研究活動を
行っているポーラ文化研究所 40 周年記念展となります。新しい年の始
まりを祝した「嫁入り」
「元服」
「晴れ(ハレ)の装い」
「吉祥文様」の4
テーマで繰り広げる華やかな「和」の晴れ姿を是非お楽しみください。
出品作品リスト
●「嫁入り」
番号
作品名
作者
制作年
1
三定例之内婚礼之図
一勇斎国芳
嘉永元年(1848)
相当身分の高い姫様であろう、
唐草模様の乗物から白無垢の花嫁として現われ、待上臈(婚礼の進行役)
が手を添えてい
る。
まわりの御殿女中たちは花嫁の美しさに見とれている。
2
源氏御祝言図
三代歌川豊国
文久元年(1861)
白無垢を着た花嫁が、
花婿の隣に座るところであろう。御殿の中らしく、
片はづし
(江戸時代の御殿女中や官女たちの髪型)
を結った奥女性たちが控えている。
3
婦人諸禮鑑之内 婚礼
一勇斎国芳
まちじょうろう
橘唐草紋散蒔絵婚礼化粧道具
弘化頃
(1844~48)
江戸時代後期
富裕な豪商などの婚礼であろう。蒔絵の鏡台や貝桶などが見えている。
白無垢の花嫁は勿論のこと、
周りの女性たちも豪華
な衣装である。
武家など上流階級が作らせた婚礼化粧道具で、
江戸時代前期に体系化され、
江戸時代後期まで作られ続けたものである。
この道具は、
十二手箱などが揃っていないが、
ここまで揃っていることは珍しい。漆の状態もよく、
唐草に橘や五三桐、
蝶や鶴
の紋が散らしてある。
香水のなかった江戸時代、鳥籠のように伏籠の中に香炉ほ置いて香を焚き、上に小袖や打掛などを掛けて、香りを焚きしめ
た。
4
伏籠
5
山水蒔絵阿古陀香炉
6
眉作箱
7
お歯黒道具一式
耳盥、渡金、
潼子、
鉄漿次、
お歯黒壺、
嗽茶碗、
五倍子箱、
お歯黒筆などが揃ってお歯黒道具一式となる。
お歯黒は鉄漿と
もいい、
江戸時代、
結婚が決まると歯を黒く染めた。
黒はほかの色に染まらないことから貞節のしるしとされた。
8
渡金箱
その下に鉄漿次、潼子、
お歯黒に使用する渡金を収納する箱。一般庶民の渡金箱には、収納する際、掛子に渡金を乗せ、
五倍子箱、
お歯黒筆などが一緒に収納されているものもある。
9
円鏡・円鏡箱・鏡台
引き出し付きの箱の上に、
鳥居形のような差し込む形の鏡台と円鏡、
それに円鏡箱である。
この形の鏡台は室町時代頃に作
られ、
鏡掛のような柄鏡ではなく、
円鏡を掛けて使用した。
鏡は凸レンズになっているのか、
顔が少し大きく見える。
10
鏡掛・鏡箱
(中)
持ち運びが便利な折りたたみ式の鏡掛と鏡箱で、
鏡箱は大中小の大きさがあり、
中に柄鏡が入っている。大きいものは少し離
れて姿見にも利用したのだろう。
この道具類のみが、
紋散らしになっていて、
唐草は描かれていない。
11
鏡箱(大・小)
鏡掛とセットになったもの。
大は姿見にも使用した。
明治時代
火取香炉(香を焚きしめるのに用いる香炉)
で、上に烏帽子形の金属製の網を掛けたもの。伏籠の中に置いて香を焚き、衣
服などに香りを焚きしめた。
刷毛や筆、
ヘラ類など、眉作り道具を収納する箱。江戸時代以前、上流階級の女性たちは、
ある程度の年齢になると、眉を
剃って別の眉を描いたが、
江戸時代末期の御殿女中、
とくに御台所などは毎月1日、
15日、
28日と五節句といった日だけ眉を描
いていたという。
みみだらい わたしがね しょうず
か ね つ ぎ
うがい
ふ
し
ば
こ
かけご
12
角盥・匜 角盥は手や顔を洗うのに使用したもの。角のような取手は、着物の袖を掛けて濡れないようにするため。匜は、湯水を入れる
のに使用した。
江戸時代以前の絵巻物の中でもよく描かれていたが、
江戸時代では形式的な道具だったようだ。
13
爪切箱
爪切用の小刀が入っていたと思われるが、
今は残っていない。御殿など上流階級では辰の日爪を切ったらしい。
もちろん自分
で切らずにお付の女性が切った。
一般庶民は鋏で切っている様子が浮世絵など描かれている。
14
毛垂・毛垂箱
毛垂は剃刀のことで、
それを収納する箱を毛垂箱といった。刃は「への字」になった両刃で、
柄に木綿の布を巻いて使用した
らしい。
身だしなみの第一歩として、
毎日顔を剃り、
白粉のノリをよくしたのかもしれない。
15
刷毛・筆類
白粉に使う刷毛と生際や額に使う刷毛、
紅筆などが含まれている。
刷毛は鹿の毛やウサギなどの毛も使った。
16
桶盥・湯桶
桶盥と湯桶は化粧などに使用するだけでなく、
御殿女中などが年中行事に使う大事な道具でもあった。浮世絵『千代田の大
奥』
の「おさざれ石」に、
御台所が手を出されてお湯を受けるお清めの式に、
桶盥と湯桶が使われている。
17
旅櫛箱
携帯用化粧道具セットである。蓋を開けたところに折りたたみ式の鏡掛を収納し、
真ん中の引出しには、
鏡や白粉箱、
刷毛な
どの化粧小物をいれたのだろう。
一番下段には水滴と硯が備え付けてある。
18
化粧小箱類
五倍子箱、
鬢水(整髪料のようなもの)入れ、
油桶、
化粧香合などで、
鏡台の引き出しや、
旅櫛箱などに含まれたものかもしれ
ない。
小箱類は微妙に大きさが違っている。
入れる化粧料によって変えたのだろう。
はぞう
びんみず
●「吉祥文様」
19
当勢三十二想 はずみ相
一鴬斎国周
明治2年(1869)
結綿に宝尽しの櫛、
豆造の簪を挿した若い娘。助六の付いた羽子板を抱えている。着物は琴柱と琴糸と思われる。雁の紋が
ついている。
20
当勢三十二想 飾って見た相
一鴬斎国周
明治2年(1869)
若い娘は、
七宝繋ぎに追いかけ扇の紋が入った着物。帯びは切りはめ模様になっている。髪は奴島田でふくら雀の簪、
鳥の
付いた大きな簪もしている。
21
当勢三十二想 よくみた相
一鴬斎国周
明治2年(1869) 菊模様の着物に折鶴の紋。
胸に懐紙入れが見えている。
牡丹のついた簪を挿している。
ちょうど見合いの最中かもしれない。
22
当勢三十二想 相談が整ひ相
一鴬斎国周
明治2年(1869)
麻の葉模様の着物に蝙蝠の付いた簪。
縁談が整ったのか、
鰹節が縄で繋がれている。
23
松竹梅鶴亀びらびら簪
幕末~明治時代
松竹梅に鶴亀の付いたもの。
鶴も亀も寿命が長く、
めでたいものとされた。
縁起物として種々の飾りに用いる。
24
松竹梅鶴亀びらびら簪
幕末~明治時代
松竹梅に鶴亀の付いたもの。
鶴も亀も寿命が長く、
めでたいものとされた。
縁起物として種々の飾りに用いる。
25
松竹梅びらびら簪
幕末~明治時代
松竹梅のついたびらびら簪。
26
軍配団扇形蒔絵香箱
江戸時代末期
軍配団扇は武将が軍陣で采配の代わりに用いた道具。
27
扇形初音蒔絵香箱
明治時代
扇は末広ともいう。次第に末の方が広がってゆくこと、
次第に栄えてゆくこと、
と見られた。初音は鶯、杜鵑などその年の初め
ての泣き声をいう。
こうもり
うぐいす ほととぎす
番号
作品名
28
貝桶模様金蒔絵木櫛
作者
制作年
江戸時代末期
貝合せ
(平安末期から一般に行われた貝殻を覆い合せる遊び)
に使われる蛤の貝殻を収納した貝桶の模様。
29
陶製おしどり形紅・白粉入れ(紅清製)
明治時代
夫婦・男女の仲よく常に連れだっているさまをおしどりという。
そのおしどりに紅、
白粉を入れたもの。
30
松竹梅鏡箱
江戸時代後期
松竹梅が描かれた鏡箱。
婚礼時に持参したと思われる。
31
南天獏柄鏡
江戸時代後期
南天は難を転じるの意で、
獏は悪い夢を喰い邪気を払うとされたことから吉祥文様とされた。
32
菊水柄鏡
江戸時代後期
中国河南省内郷県にある白河の支流。
この川の崖上にある菊の露がこの川にしたたり落ちて、
その水きわめて甘く、
水辺に
住むものがその水を飲めば長命するといわれていた。
33
南天柄鏡
江戸時代後期
南天は難を転じるというところから、
柄鏡には多く描かれている。
34
龍門文字入滝柄鏡
江戸時代後期
龍門は登竜門のことで、
立身出世をあらわす。
35
松竹梅鶴亀柄鏡
江戸時代後期
松と竹と梅。
いずれも寒さに耐えるもので中国では歳寒の三友と呼んで画の題材とされた。
日本ではめでたいものとして慶事
に用いる。
36
高砂文字柄鏡
江戸時代後期
兵庫県南部、
加古川の河口部西岸にある市。古来、
播磨の重要な港で、
風光明媚なところ。高砂神社にある相生の松で知
られる。
また、
「高砂」は能の作品の一つで、
相生の松によせて、
夫婦愛、
長寿を愛で、
人生を言祝ぐ大変めでたい能になって
いる。
37
亀戸初卯祭
歌川豊国
亀戸天満宮の境内にある亀戸妙義社では、
毎月卯の日に縁日が開かれている。正月初卯の日の詣では特に賑わったという。
安政元年(1854) 左は既婚女性、真ん中は武家の娘か、着物は「よきことをきく」
という判じ物(文字や絵画に隠された意味を当てるなぞ解き)
が書かれている。
右の女性は芸者であろう。
38
浅草奥山四季花園観梅遠景
歌川豊国
嘉永5年(1852)
浅草奥山の花見の様子を描いたと思われる。描かれているのは、
御殿女中であろう。遠くに富士山が見えている。浅草奥山
ようきゅうば
は、
見世物や料理屋、
楊弓場などが並んだ盛り場であった。
●「晴れ(ハレ)の装い」
39
婚礼色直し之図
一勇斎国芳
弘化4年(1847)
花嫁が白無垢から色物の小袖に着替えるところである。周りにいるのは仲人や親戚のものかもしれない。女性にとって一番
華やかで、
美しく見えるときであろう。
40
双六「出世娘栄寿古録」
五雲亭貞秀
天保~
明治時代初期
娘が誕生して、嫁入りするまでを描いた双六。武家に奉公したり、町方でお見合いをしたり、娘たちの夢を描いたものであろ
う。
41
先笄
江戸時代後期
京阪の富裕な町家の新妻が結った髪型。
手柄の色が新妻らしいピンク色になっている。
42
雄おしどり
江戸時代末期~
上方の町家の娘が婚約した後で結った髪型。
島田髷に掛前髪を掛けたもの。
明治時代
43
丸髷
江戸時代末期~ 丸髷はもっぱら既婚女性が結ったもので、
年齢によって髷が大・中・小、
厚み、
薄手などがあり、
若い人は大きく、
年配の人は小
さくなっていった。
明治時代
44
奴島田
江戸時代後期
江戸では高島田といった。髷の根が高いので上品とされた未婚の女性の髪型である。
45
萌黄縮緬地梅桜菊唐扇模様振袖
幕末~明治時代
萌黄色に刺繍で菊や桜、
梅の花と唐扇が全体に描かれている。
富裕な家の若い女性が着たものであろう。
46
竹雀模様懐紙入れ
江戸時代末期
御殿女中が使用していたもの。竹に雀模様の方は綴れ織で、
留め金は銀製の牡丹に蝶模様の留め金の対になっている。
さっこう
47
牡丹模様懐紙入れ
江戸時代末期
御殿女中が使用していたもの。鏡のほかに、
文政4年(1821)
と書かれた火傷の呪いの札(やけどをしないようにするお守り)
が入っている。
48
白綸子地松竹梅鶴亀模様打掛
幕末~明治時代
刺繡を中心に摺匹田
(絞りに似せた技法)
を加えた松竹梅鶴亀模様を描いている。伝統的な蓬莱模様で、
鮮やかな色合い
になっている。
49
牡丹蝶模様箱迫
江戸時代末期
牡丹に蝶が金糸で刺繍された豪華な箱迫になっている。
牡丹と蝶の組み合せは、
昔から喜ばれた模様である。
50
紅白梅宝尽くし模様箱迫
江戸時代末期
紅白梅に宝尽くしが刺繍された箱迫である。箱迫は懐紙入れから発達したもので、
普通はびらびら簪が付いている。現代で
も七五三や結婚式の際、
女性の胸元を美しく飾っている。
すりひつ た
●「元服」
みずしまぼく や
51
化粧眉作口伝
宝永5年(1708)
元禄4年(1691)
、女性の礼儀作法を研究した礼法家 水嶋卜 也が書いた「化粧眉作口伝」の写し。眉の描き方や眉作り道
具などが書かれている。
52
違鷹羽根紋蒔絵櫛台
江戸時代
白粉箱、
化粧香合、
油桶、
鬢水入れ、
三つ櫛、
眉刷毛、
それに袖なり、
しんさし、
横おし
違鷹羽根紋が付いた櫛台のセットもの。
といった眉化粧に使用するヘラ類などが含まれている。
一般庶民用ではなく、
上流階級のものであろう。
53
君たち集り粧ひの図
安政4年(1857)
吉原遊郭の身支度風景。
お歯黒の後なのか、
中央の遊女が耳盥を前に、
房楊枝で舌かきをしている。
54
庶民用お歯黒道具一式
江戸時代後期
耳盥の下にあるのは台輪で、
女性たちが屈んで歯を染めなくてもいいように底上げをしている。
お歯黒壺には、
自分で作った
お歯黒水が入っている。
毎朝使う分だけ鉄漿次に入れ温めた。
お歯黒を付けた後は渋かったので、
嗽茶碗で嗽をした。
55
当勢三十二想 はつかし想
一鶯斎国周
明治2年(1869)
丸髷をしているので人妻であるが、
まだ眉があるので新妻であろう。
お歯黒をつけていたところか、
手前にお歯黒道具が見え
ている。
56
新柳二十四時 午後一時 月岡芳年
明治13年(1880) 二十四枚揃いの美人画のひとつ。
新柳は、
新橋、
柳橋のことで、
芸者の二十四時間を描いたもの。
ちがいたかはねもん
三代歌川豊国
ふさようじ
●「白粉化粧」
溪斎英泉
文政頃
(1818~30)
芸者であろう。右手に懐中鏡、
左手に刷毛で有名だった福岡式部(京阪の小間物屋)
の白粉を延ばしている。
口紅は当時流
行の笹紅色である。
57
美艶仙女香
58
白粉包み
幕末~明治時代
歌舞伎役者や官女などが描かれた畳紙は、
幕末から明治時代にかけての白粉包みである。人気役者や美人の代名詞、
小
野小町を連想させる図柄である。
中の白粉はまだ鉛白粉で、
無鉛白粉は明治30年代も後半になってからである。
59
刷毛類
幕末~明治時代
顔の中でも顔全体に使うものと、
鼻など部分によって使う刷毛が違っていた。水で溶いた白粉はすぐに延ばさないと斑になる
ことから、
手早く牡丹刷毛などで延ばした。
60
白粉三段重
江戸時代末期~ 白粉を入れたり、
水で溶いたりするのに使用する容器。花や鳥などが描かれたものが多い。一番下が深くなっており、
水を入
明治時代
れたと思われる。
刷毛や手で白粉を付けたが、
江戸は薄粧を好み、
京阪は一般的に濃化粧を好んだ。
●「紅化粧」
弘化元年(1844)
肩に前垂れを掛けて、
紅猪口を持っている洗い髪の女性は遊女だろうか。
紅花に小野小町と小町の歌が小間絵に描かれて
いることから、
この紅猪口は文化頃
(1804~18)
に売り出された小町紅かもしれない。
紅板類
幕末~明治時代
携帯用の紅入れで、
大きさは五センチ程度である。象牙や木、
金属などの材質に蒔絵が施され、
筆が付いているものもある。
外出先で化粧直しに使ったのだろう。
紅猪口
江戸時代末期~ 紅花から作った紅を、
猪口や皿の内側に塗って売った。筆や指などで付けたが、
蓋はなく、
使用しないときは猪口を伏せてお
明治時代
いた。
大正時代になって棒状口紅が発売されるまで、
こういった紅猪口類が女性たちの唇を彩っていたのである。
なぞらえろっかせん
61
模擬六佳撰
62
63
一陽斎豊国