シミュレーションによる永久磁石型同期電動機の 可変速運転に関する

A-02
シミュレーションによる永久磁石型同期電動機の
可変速運転に関する基礎的研究
太田
浩史
1. はじめに
近年、多くの自動車メーカが力を入れて製造する
電気自動車・ハイブリッド自動車において、その核
となるドライブシステムを含めたモータに関する
研究はますます盛んになってきている。既に数社か
ら電気自動車が販売されているが、現状では本体価
格がまだハイブリッド車やガソリン車と比べ高価
であり、またバッテリーの持ちが悪く、充電に関し
ても解決すべき課題が多くある。
しかし、大気汚染や騒音問題を引き起こさない電
気自動車は、地球温暖化や化石燃料の枯渇等、環境
問題が騒がれている現代社会において、今後ますま
す需要は高くなることが予想される。
電気自動車に関する実験は大規模かつ高額な実
験装置が必要になるが、近年のシミュレーション技
術の発達に伴い、シミュレータを利用した研究も行
われつつある。本研究では、電気自動車用モータと
して永久磁石型同期電動機に着目し、
“MATLAB/Simulink”を用い、シミュレーションを
行い、特性算定を行った。
2. 電気自動車の概要
電気自動車は、バッテリ(蓄電池)に蓄えた電力で
モータを回転させて走行する。そのため、排気ガス
をまったく出さないうえ、走行騒音も小さく、発電
所で電気エネルギーを生み出す際の排出分を考慮
しても CO2 や NOX の排出量は通常の自動車よりも
少ない。また、内燃機関自動車に比べ構造が簡単で、
エンジンのかわりにモータを、キャブレターのかわ
りに制御装置を、燃料タンクのかわりにバッテリを
使用する。
(家名田研究室)
3. モータの選定
3.1 電気自動車に適したモータ
電気自動車で使用されるモータには、車両の駆動力か
ら要求される出力特性を満足すると同時に以下の条件も
満たす必要がある。
①小型軽量であること
②出力制御が容易に行えること
③モータ本体の耐久性が高いこと
④最小限のメンテナンスで済むこと
⑤動力源としての危険性が低いこと
3.2 永久磁石型同期電動機
永久磁石型同期電動機は、電源周波数に同期して回る
交流モータの一つであり、永久磁石を使用することによ
り、ブラシと整流子との接触に起因する騒音や電気的ノ
イズが発生せず、さらにモータ本体のメンテナンスがほ
ぼ必要なく、固定子が作る回転磁界に同期して回転する
ため「すべり」が発生しない。したがって、モータの回
転速度は回転磁界の速さで決定され、回転磁界の速さは
交流電源の周波数と固定子の極数で決定される。また、
電源周波数に同期したとき、初めて安定な回転特性が得
られ、その回転も長期にわたって安定する。一般にはイ
ンバータ等を用いて電源周波数を変化させ回転速度を制
御している。一方、ロータが同期速度にならないとトル
クの方向が定まらず、振動を伴い停止してしまう。また、
ロータに最大トルク以上の負荷を与えると同期速度を維
持できなくなり、脱調現象を起こす。
図 1 MATLAB/Simulink による永久磁石型同期電動機のシミュレーションブロック図
最高回転速度 [rpm]
12000
4000
3477
0
0
2
4
6
8
10
Gain
図 2 各 Gain での制御可能回転速度の比較
6000
回転速度 [rpm]
4000
2000
0
-2000
-50
-25
0
25
負荷トルク [N.m]
50
図 3 負荷トルク限界値(速度指令値:3000 [rpm])
回転速度 [rpm]
6000
実回転速度
4000
2000
0
0
100
200
300
時間 [sec]
図 4 可変速運転を行った場合の計算結果
40
20
4000
速度指令値
0
2000
-20
負荷トルク
0
0
100
200
時間 [sec]
300
負荷トルク [N.m]
回転数 [rpm]
6000
4000
2000
0
0
100
200
時間 [sec]
300
図 6 速度指令値と実回転速度の比較
11210 10900 10460
8000
6000
回転速度 [rpm]
4. MATLAB/Simulink によるシミュレーション
4.1 ブロック図
シミュレーションに使用したブロック図を図 1 に示す。
今回使用したモータは三相交流永久磁石型同機電動機で
あり、回転子の極数は 2 極、定格出力は 1.1 [kw]、定格
電圧は 310 [V]、定格回転速度は 3000 [rpm]である。モー
タの速度制御は PWM インバータで行っている。速度制
御は PWM インバータで行っている。
4.2 最高回転速度について
回転速度制御部における Gain 値について検討を
行った。図 2 は各 Gain の回転速度追従の比較であ
る。これより Gain 4 以上であれば 10000 [rpm]程度
まで制御可能であることがわかる。しかし、Gain
を大きくしすぎると不安定状態が発生する恐れも
あるため、今回は Gain 4 を採用した。
4.3 可変速運転に関する検討
図 3 は Gain 4 における限界負荷トルクの図であ
る。この結果から±31 [N.m]の範囲の負荷トルクに
対応していることがわかる。
図 4 は負荷トルク 0 [N.m]一定とし、可変速運転
した場合の計算結果である。同図より回転速度は速
度指令値に追従していることがわかる。
実際の走行を想定したシミュレーションを行っ
た。図 5 に速度指令値と負荷トルクを示し、図 6
は速度指令値と実回転速度の比較を示す。両図に示
されるように実際の走行に近い加速、定速、減速の
速度指令値と変動負荷を与えた場合でも指令値回
転速度を維持していることが確認できる。
5. まとめ
以上、永久磁石型同期電動機の特性についてシミ
ュレーションに基づき検討を行った。今回使用した
電動機は、実際の走行条件を想定した負荷トルクに
対して速度指令値に応じた速度で回転しており、電
気自動車への応用の可能性が高いことが示唆され
る。
今後、更に実際の走行状況に近いシミュレーショ
ンモデルを構築するため、ギアやミッション、大出
力のモータを搭載することで、その時々の走行状況
に適した効率の良い速度制御を行うことが可能と
なると考える。また、可変速制御を応用することに
より自動走行制御にも対応でき、安全性が高まる電
気自動車の発展が期待されると考える。
-40
図 5 速度指令値と負荷トルクの関係
文献
1) 菅原北斗:
「シミュレーションに基づく永久磁石型同
期電動機の特性算定に関する基礎的研究」、東北文化
学園大学卒業論文 (2013).