ラクオリア創薬(JQ:4579)

審査済 A
審査番号 TA11-171
(平成 23 年 7 月 20 日 )
新規上場企業レポート
ACE Research Institute
ラクオリア創薬(JQ:4579)
上場前説明会:2011 年 6 月 22 日
【非連結】
決算期
2009/12
2010/12
2011/12
2011/12
2012/12
2013/12
2014/12
2015/12
担当:池野 智彦
(億円、%、円:権利落ち修正後)
会
予
予
予
予
予
売上高
0
12
15
15
24
28
37
39
【セグメント情報】
医薬品契約一時金
伸率
-
-
29
26
57
19
30
7
営業利益 伸率 経常利益 伸率 当期利益
-27 -
-26 -
-26
-13 -
-13 -
-13
- -
-17 -
-17
-16 -
-16 -
-16
-8 -
-8 -
-8
-5 -
-5 -
-5
0 -
0 -
0
3 -
3 -
2
2010/12
【PER】
100% 11/12予
12/12予
13/12予
- BPS
- 株主資本
- 総資産
時価総額
伸率
-
-
-
-
-
-
-
-
EPS
-
【財務指標】
318円 公開価格
42億円 売買単位
44億円 発行株数
212億円 PSR
配当
0
0
0
0
0
0
0
0
10/12末
1,600円
100株
1,327万株
13.8倍
<注目ポイント>
① 世界最大手の医薬品企業ファイザーの国内研究所が 2008 年 2 月に独立。
② 新薬開発の初期段階を自ら手掛け、開発インフラが必要な後期段階を製薬会社に導出。
③ 28 万の新薬候補化合物のライブラリーを活用、特定の創薬ターゲットに関する知見も蓄積。
④ 導出先から受け取る契約一時金とマイルストン、販売額に応じたロイヤルティが収入源。
⑤ 保有する 15 プロジェクト 18 化合物の 1/3 を導出済み。疼痛と消化管疾患が中心。
⑥ 11 年度まで契約一時金が主体、来期以降はマイルストンの比率アップ。14 年度収支均衡。
目標株価
2020 年度までの業績予想に基づく DCF 法による妥当株価を中心に、類似会社の時価総額、
創薬系バイオ企業や製薬企業の PBR 及び黒字化後 PER を総合的に勘案、目標株価を 1,800
円とする。
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日本ファイザーの中央研究所のスピンアウトで誕生
医薬品業界で世界トップのファイザーの日本法人が所管する中央研究所(愛知県知多郡)
が前身。同中央研究所は 1985 年に設立され、抗炎症疾患分野の新薬の探索研究を開始した。
その後、疼痛と消化管疾患領域を中核分野と位置付けるとともに、前臨床試験(主に動物で安全
性を確かめる試験)のための設備も揃えた。
ところが 2007 年初頭、ファイザーグループ内で研究開発体制などをグローバルレベルで見直
すことになり、日本にある中央研究所の閉鎖が決定された。この決定を受け、当時の中央研究所
長で現在のラクオリア創薬社長の長久厚氏らがファイザー側と協議、翌 2008 年 2 月に研究開発
型の創薬ベンチャーとして独立することになった。旧研究所の役職員 390 名のうち 59 名が同社
に移籍したほか、研究用機器などの有形資産や新薬候補化合物、化合物ライブラリーの使用権
などを譲り受けた。一方、起業後の累計出願特許は 40 件を超え、大学や公的機関との共同研究
も延べ 27 件に達しているほか、ライセンスの導出活動を担う事業開発部門を中心に 3 割以上増
員するなど、ファイザーから自立しつつある。2010 年後半からは新薬候補品の導出が始まった。
ただ、中央研究所を切り離したファイザー自身、同社株を 18%近く保有する第 3 位株主であり、
IPO 後の保有比率も 14%弱を占める。会社側によると、これは同社に譲渡した新薬候補の開発
進展を見守るためであり、短期的に保有株数が大きく変動する可能性は少ないとのこと。
図1 沿革
年月
1985.6
1996.12
2000.6
2004.12
2007.1
2008.2
2008.6
2010.8
2010.9
2010.12
2011.3
2011.7
図 2 出願特許数
事項
前身であるファイザー中央研究所設立
前臨床試験の設備を獲得
研究開発分野を疼痛と消化管疾患に集中
研究開発分野に肝臓疾患を追加
中央研究所閉鎖が決定
ラクオリア創薬設立
中央研究所閉鎖、ファイザーから資産譲受
疼痛薬を丸石製薬に導出
消化管疾患薬を韓 CJ 社に導出
感染症薬を米デュラタ社に導出
動物薬を米アラタナ社に導出
米リリー社とイオンチャンネルに関する共同研究契約
統合失調症薬を明治製菓ファルマに導出
ジャスダック上場
(出所) 会社資料からエース経済研作成
新薬開発の初期段階を手掛ける
一般的な新薬開発の流れは、①候補化合物を見つける探索研究、②前臨床試験、③ヒトで安
全性と有効性を評価する臨床試験、④規制当局への申請と承認、⑤製造販売となる。
①はさらに、候補化合物をスクリーニングするための評価系の構築、新薬となる可能性が高いリ
ード化合物の特定、リード化合物の分子構造の一部を製剤化しやすいように改良する最適化に
分かれる。②も P(フェーズ)1、P2 前期、P2 後期、P3 に分かれ、①~④でトータル 10~12 年を
要す。同社は主に①と②を手掛け、場合によっては③の P2 前期まで担うこともある。その後、大
型治験に対応でき、製造、販売インフラを持つ製薬会社に権利を導出する。
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図 3 新薬開発プロセス
製薬会社の事業領域
ラクオリア創薬の事業領域
2~ 3 年
探索
評価系
大型治験、製造、販売インフラが必要な領域
1~ 2 年
前臨床
リード探索 最適化
P1
5~ 7 年
1~ 2 年
臨床試験
申請
承認・販売
P2 前 P2 後 P3
(出所) 会社資料からエース経済研作成
現在、28 万個に及ぶ新薬候補化合物のライブラリーが活用できるほか、細胞膜上にあって薬
の標的となる受容体(鍵穴)やイオンチャンネル(通路)に関する技術基盤を蓄積している。
収益源は契約一時金からマイルストンの比重が高まる
同社の収入源は主に以下の 3 つ。
①契約一時金収入は導出先企業と契約を結ぶ際、同社がそれまでに実施した研究成果の対価
として受け取るもの。契約時の開発ステージや患者数、対象疾患の範囲と権利が及ぶ地域によ
って異なるが、P2 前期までのステージなら数千万円~10 億円程度。
②マイルストン収入は導出先の開発進捗度に応じて受け取るもの。P3 開始や承認申請、上市な
どの開発イベントが契約時に取り決められることが多い。市場性の高い地域ほど、開発後期
ステージに進むほど、多額となる。
③ロイヤルティ収入は新薬の上市後に販売額の一定割合を受け取るもの。一般には数%だが、
販売額が一定額を超えると料率が変化したり、マイルストン収入が発生したりすることもある。
前年の夏から製薬会社に対して、開発初期段階にある新薬候補品の導出が始まったことから、
前期と今期の収入は契約一時金が主体。来期以降、開発進展に伴って徐々にマイルストン収入、
ロイヤルティ収入の割合が増えるだろう。
15 の開発プロジェクトを保有
現在、リード化合物を特定できたものから臨床試験に入っているものまで、合計 15 プロジェクト
18 化合物を保有している。他に、特定のイオンチャンネルに関する知見を活用してリード化合物
を共同で探索するプロジェクトが 1 つある。
このうち、5 プロジェクト 6 化合物については導出先が決まっているほか、共同探索プロジェクト
も提携先が決まっている。
中央研究所で手掛けてきた疼痛や消化管疾患の薬が多いが、感染症や中枢疾患の薬も保有
している。また、2 つの化合物は動物薬である。
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図 4 新薬開発プロジェクト
プロジェクト
EP4 拮抗
COX2 阻害
グレリン受容体作動
5HT4 部分作動
アシッドポンプ拮抗
ダルババンシン
ジプラシドン
アニデュラファンギン
5HT2b 拮抗
CB2 作動
モチリン受容体作動
Nav1.3Na チャンネル遮断
TRPM8 遮断
Ca チャンネル遮断
Nav1.7Na チャンネル遮断
化合物コード
RQ7
RQ8
RQ317076
RQ5
RQ9
RQ10
RQ4
RQ774
RQ2
RQ3
RQ1
RQ310941
RQ202730
RQ201894
RQ203066
RQ203078
-
-
適応症
疼痛、炎症
疼痛、炎症、ガン
急性疼痛
動物食欲不振
アルツハイマー
胃食道逆流症
胃食道逆流症
胃食道逆流症
MRSA 感染症
統合失調症
カンジダ症
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群
機能性胃腸症
神経因性疼痛
神経因性疼痛
神経因性疼痛
神経因性疼痛
作用メカニズム
炎症に関わるプロスタグランジン E2 の作用を阻害
炎症性疼痛を抑える他、ガン組織の縮小を確認
炎症や疼痛時に発現する酵素 COX2 を阻害
摂食や消化管運動を促すペプチド「グレリン」を増強
アルツハイマー病の原因となる脳内アミロイドβ を減尐
既存薬より効果発現に要する時間が短い
効果発現に要する時間が短く、夜間症状も改善
RQ4 が失敗したときのバックアップ化合物
強力な抗菌力を持ち、内臓への負担も軽い
代謝異常が起きにくく、血糖値等の増加も尐ない
重篤な副作用や使用制限がない系統の薬剤
腹痛・便通異常改善。便秘等の副作用も尐ない
興奮や幻覚に関わる CB1 受容体には作用しない
消化管運動を促進することで胃炎等の症状改善
痛みの伝達経路を遮断
冷刺激に対して生じる痛みを特異的に阻害
痛みの伝達経路を遮断
痛みの伝達経路を遮断
(出所) 会社資料からエース経済研作成
導出プロジェクト
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2010 年度は複数の導出契約を締結
2010 年 12 月期の売上高は 11.87 億円。すべて契約一時金収入である。
8 月には丸石製薬に RQ7(疼痛)を注射剤として独占的に開発、製造、販売する権利を与えた。
ヒトと動物の両方が適応対象だが、地域は日本と東アジア(中国、韓国、台湾)に限定される。今後
は、P2 後期試験と P3 試験の開始時、日本での承認時などにマイルストン収入を、上市後の販売
額に応じたロイヤルティ収入をそれぞれ得ることになっている。エース経済研では、2018 年申請、
ピーク時売上高 100 億円、ロイヤルティ率 5%と想定。丸石製薬は麻酔や疼痛薬領域の開発に強
みのある国内企業だが、マーケットの大きい欧米での権利導出が収益のカギとなろう。
9 月には韓国 CJ 社に RQ4(胃食道逆流症)及びバックアップ用化合物 RQ774 をヒト用医薬品
として、東アジアで開発、製造、販売する独占権を与えた。P2 及び P3 開始時、承認及び上市時
などにマイルストン収入を得るほか、販売額に応じたロイヤルティ収入も得られる。RQ4 の P1はす
でに 12 月に被験者への投与が終了しており、まもなく報告書ができる予定である。エース経済研
では、対象地域の上部消化管疾患薬市場を 2,000 億円、シェア 10%として 2017 年申請、ピーク
時収入は年 10 億円と見ている。こちらも、市場の大きい日欧米での権利を導出できれば収益ポテ
ンシャルは膨らむだろう。なお、CJ 社は食品、飼料、エンターテイメント、製薬などの事業を広範囲
に手掛けるコングロマリット企業 CJ グループの傘下にある。
12 月には米国アラタナ社に上記 RQ7 と RQ5(食欲不振)を全世界で動物薬として独占的に開
発、製造、販売する権利を与えた。なお、丸石製薬に与えた権利とオーバーラップする日本及び
東アジアでの注射剤の権利は除かれる。マイルストンが発生する開発イベントはいずれも欧米で
の承認申請と上市だが、RQ5 はこれに安全性試験の開始が加わる。欧米の動物薬市場 3200 億
円のうち疼痛が 20%、食欲不振は 10%と仮定、シェア 30%、ロイヤルティ率 5%として、ピーク時
収入は、両薬合わせて年 15 億円と見られる。動物薬であるため開発スピードは速く、2015 年には
上市が可能だろう。
12 月にはまた、米国デュラタ社に対して、RQ2(MRSA 感染症/ダルババンシン)の国内開発、
製造、販売権を譲渡した。2017 年と見られる承認時までマイルストンは得られない。ピーク時予想
売上高は 50 億円。なお、アラタナ社、デュラタ社はいずれも米国のベンチャーキャピタルの出資
により誕生した開発型企業であり、販売権は他企業にサブライセンスされる可能性が高い。
12 月はさらに、グローバル製薬大手リリー社と、特定のイオンチャンネル(細胞膜上のイオンの
通路で、創薬ターゲットとなる部位)を利用した新薬開発に関して共同研究契約を結び、契約一時
金を得た。開発が進展した場合、マイルストンなどが得られる契約である。
2011 年度は既に中枢疾患薬の導出に成功
今年 3 月、RQ3(統合失調症など/ジプラシドン)を国内で独占的に開発、製造、販売する権利
を、明治 HD の傘下企業である明治製菓ファルマに与え、6 億円の一時金を得た。欧米では既に
上市されており、国内では経口剤の P1 が終了しているため、開発リスクは比較的少ない。次のマ
イルストンの発生イベントは、2015 年と見られる承認申請と翌期の承認取得である。なお、国内統
合失調症薬市場 1400 億円のシェア 10%を獲得し、ロイヤルティ率 5%と想定すると、ピーク時収
入は年 7 億円となる。
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今 3Q(7~9 月)には RQ1(抗真菌剤/アニデュラファンギン)が導出される可能性がある。当初
計画では 2Q に契約されることになっていたが、契約条件等の合意で手間取った模様。同疾患領
域への進出を狙う国内製薬会社が対象。エース経済研では契約一時金 2.5 億円、承認申請期を
2016 年と想定。また、同疾患の国内市場 900 億円に対してシェア 10%、ロイヤルティ率 5%とする
と、ピーク時収入は年 5 億円となる。既に欧米アジアの 50 ヶ国以上で承認されていることから、
国内で承認されないリスクは低いと思われる。
今期は他に 3~4 品の契約一時金やマイルストンなどが得られる前提で、売上収入 15 億円を
予想する。一方、費用として、提携先への治験薬の供給費、前臨床試験や探索段階にある新薬
候補化合物に係る費用、基礎研究費と開発人件費、ファイザーからの新薬候補の取得費、一般
管理費や上場費用など、総額 31 億円が発生すると見て、16 億円の経常損失を予想する。なお、
5 月にファイザーから RQ317076(疼痛薬)の権利を取得。米国でファイザーが実施した P2 前期
試験で良好なデータが得られており、来期中に導出できれば 2017 年の申請も可能だろう。
図 5 開発品目の進展と契約金の受領予想
-契約企業
2010
RQ7(EP4 拮抗)
2011 予
2012 予
2013 予
2014 予
2015 予
B/治験
A/P2
B/申請
B/上市
A,C/P3
A 疼痛(アジア/注射剤)-丸石製薬
○
100
B 疼痛(動物)
○
250
アラタナ
C 疼痛(欧米)
200
RQ8(EP4 拮抗)
250
P1
自己免疫疾患、ガン
200
RQ5(グレリン受容体作動)
食欲(動物)
250
治験
アラタナ
○
RQ4(アシッドポンプ拮抗)
50
A/P1
A 胃食道逆流(アジア)
CJ
○
RQ9(5HT4 部分作動)
P1
アルツハイマ-
200
RQ10(5HT4 部分作動)
P1
胃食道逆流
500
350
統合失調症
MRSA 感染
P2
250
300
450
800
100
申請
500
申請
600
P2
P3
250
500
350
1,187
(出所) エース経済研予想
1,500
250
350
450
600
150
180
200
上市
150
250
1,000
P2
1,000
750
500
650
申請
1,000
1,000
申請
1,000
4,400
150
上市
P3
3,900
450
上市
申請
P3
3,650
350
申請
P3
500
2,800
250
800
P2
250
450
450
申請
P2
2,350
300
300
200
○
100
100
上市
P2
機能性胃腸症
250
300
上市
P3
P1
P1
100
800
申請
200
RQ201894(モチリン受容体作動)
上市
上市
800
過敏性腸症候群
450
B/上市
上市
500
P2
P1
リリー
300
100
800
P3
P1
100
500
申請
200
イオンチャネル
300
B/申請
1,000
800
RQ202730(CB2 作動)
神経因性疼痛(欧米アジア)
100
上市
500
申請
P3
P1
RQ203078(TRPM8 遮断)
60
950
A/上市
800
P3
過敏性腸症候群
130
1,000
480
P3
P3
RQ310941(5HT2b拮抗)
2020 予
A/申請
150
P1
カンジダ症(日本)
売上高
350
○
アニデュラファンギン
欧米日
1,000
800
P2
P2
デュラタ
1,000
200
250
600
RQ2(ダルババンシン)
1,000
申請
B/P3
500
P2
明治製菓ファルマ
250
A/P3
250
RQ3(ジプラシドン)
850
800
P2
急性疼痛
2019 予
上市
500
RQ317076(COX2 阻害)
600
800
250
250
2018 予
A.C/上市
P3
100
B 胃食道逆流(欧米)
350
500
B/P1
2017 予
100
600
P2
申請
2016 予
百万円
5,280
6,300
上市
1,000
100
7,110
7,960
(注)○は契約済。P(フェーズ)は新薬の開発段階を示し、少数の健常者を使って安全性
を見る P1、患者を使って有効性を確認する P2、多数の患者を使う P3 がある。
その後、各国ごとに承認申請し、承認されると上市(販売)できるようになる。
P1
P2
P3
申請
上市
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2015 年度以降の黒字化を予想
会社側は、今期売上高を 12.90~17.77 億円、同経常損益を▲18.97~▲14.51 億円とレンジ
で公表している。想定していた経済条件で契約が出来ないこと、あるいは契約そのものが中止・
延期されることがある一方で、日々の売上収入がないため、業績が大きく振れやすいビジネスモデ
ルとなる。この点は、同社セクターへの投資を考える場合、十分に注意すべきである。
今期までは契約一時金収入が主体であるが、来期からマイルストン収入が徐々に増える見通し。
動物薬が上市する 2014 年度には収支がほぼ均衡し、P3 段階にある導出品が 9 品目に達する
2015 年度には黒字転換するとの前提で業績予想を作成した。なお、開発が頓挫するリスクを考慮
しない一方、新規シーズを獲得する可能性も考慮していない。
図 6 業績予想
年度
2010
売上高
1,187
百万円
2011 会計
2011 予
2012 予
2013 予
2014 予
2015 予
2016 予
2017 予
2018 予
2019 予
2020 予
1,500
2,350
2,800
3,650
3,900
4,400
5,280
6,300
7,110
7,960
120
105
100
100
100
100
100
100
100
100
売上原価
102
1,290
~1,777
粗利益
(開発費)
販管費
営業利益
1,085
1,653
2,431
▲1,346
-
1,380
1,965
2,980
▲1,600
2,245
2,002
3,045
▲800
2,700
2,061
3,151
▲451
3,550
2,412
3,550
▲0
3,800
2,285
3,473
327
4,300
2,426
3,667
633
5,180
2,558
3,856
1,324
6,200
2,686
4,048
2,152
7,010
2,820
4,251
2,759
7,860
2,961
4,463
3,397
経常利益
▲1,296
▲1,897
~▲1,451
▲1,600
▲800
▲451
▲0
327
633
1,324
2,152
2,759
3,397
当期利益
EPS
▲1,308
▲1,901
~▲1,454
▲1,600
▲800
-
▲451
-
▲0
-
229
17
443
33
927
70
1,506
114
1,932
146
2,378
179
-
注)2011 年度の会社計画は上限と下限のレンジで示されている
(出所) エース経済研予想
目標株価は 1,800 円でスタート
現在保有している新薬シーズの開発進展が、将来のキャッシュフローの多寡に繋がるため、
短期業績はファンダメンタルズを表さない。また、赤字が数年間続くために今期 1 株利益を元にし
た株価指標は使えない。以下の複数の手法を用いて総合的に算定する。
①DCF 法
将来得られるキャッシュフローの総和を現在価値に直す DCF(ディスカウンティッドキャッシュフ
ロー)法による株価算定を図 7(省略)に示す。妥当ゾーンは 1,500~2,100 円。
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審査番号 TA11-171
(平成 23 年 7 月 20 日 )
新規上場企業レポート/ラクオリア創薬
ACE Research Institute
②類似会社時価総額
比較可能な創薬系ベンチャーは、オンコセラピーサイエンス(東 M:4564)、そーせいグルー
プ(東 M:4565)、アンジェス MG(東 M:4563)の 3 社。これらの過去 2 年間の平均時価総額は
209 億円(1,580 円相当)。この上下 20%に当る 1,260~1,900 円を妥当ゾーンと考える。
図 8 主要創薬ベンチャーの時価
2 年平均 209 億円
→1580 円
2009 年
2010 年
2011 年
(出所) エース経済研
③1 株当り指標(PBR と黒字化後 PER)
創薬ベンチャーの PBR は、2011 年初から低下しているが、5 月以降は大きな変化がない。
過去 3 ヶ月間の平均値 2.8 倍を同社に当てはめると 2,000 円となる。
また、エース経済研では 2014 年度の収支均衡を見込んでいる。この翌期から 3 年目に当る
2017 年度の予想 EPS70 円に製薬業界の中期的な PER 水準 18 倍強を掛けると 1,330 円。
このため、1,330~2,000 円を妥当ゾーンと考える。
①~③をまとめると図 9 のようになる。3 手法で算定した妥当株価の単純平均は 1,680 円だ
が、将来のキャッシュフローを加味した DCF 法を重視して1,800 円を当面の目標株価とする。
図 9 妥当株価のレンジ
公開価格
円
(出所) エース経済研
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