タンデム その1 蒼 が「あした、学校は2時間目から始まるんだって」と言いました。 きょう、校長先生の判断で、決まったらしいです。 (ワールドカップまっただなかなので)夜遅くまで 子ども達もドイツを応援するから、ということで。 表題の「タンデム」というのは、ドイツ語で「二人こぎ自転車」のことです。 でもここでは、ことばのタンデムについて書きます。 (二人組になって、互いに相手から、他国語を学び合います。) 夫が、日本でネットを使って、すでに募集を出してくれていました。 最初に応えてくださったのは、 ブレーメン大学で博士号を書いている弁護士さんでした。 慶応大学に半年いたことがあるそうです。 炊飯器だって、東京で買って、家に持っているし、 温度計を使って温泉卵(ドイツには無い)を作るのが習慣だし、 生のさばを買って自分で料理して食べるのが好きです。 (そうそう、こないだ、ブレーメンの魚屋さんを教えてもらいました。) (われらの弁護士Bさんと違って)とても真面目で、 冗談を言うときには(かなり)気を使います。 (Bさんみたいに)言葉にとても厳密で、 何か不適当なことばを使うと、すぐに、いろんな状況設定を例に出して、 言葉のニュアンスの違いを教えてくれるので、とてもよくわかります。 (Bさんみたいに)グルメです。私がチーズが好きだと言ったら、 チーズ小事典みたいなのをすぐに買ってきてくれました。 ビザの申請がなかなかできなかった時には、 お役所のことをとても怒っていて、 僕を連れて行け、抗議してやる、と言ってくれました。 W杯が始まって、出回った、日本人選手を揶揄した絵葉書を見せたら、 「こんなのを愉快だと思うのか。それは人がいい。 僕は、これを書いた奴は無学で傲岸だと思う」とムッとしていました。 こういう反応には、いつまでも慣れることができません(^^;)。 ちなみに、その絵葉書はおもしろかったです。 中央には日本人選手が一人が描いてあります。 目はだたの細い線で、サムライブルーのシャツを着て、合掌しています。 左右の足の付け根にそれぞれ穴が開いていて、 そこから指を出して遊べるようになっています。 その周りにはこんなコメントがあります。 日本人は、だいたいボールを取りにこれるんだろうか、 あんなに礼儀正しくて、いつも、お先にどうぞ、という精神なのに。 日本人に、ヘディングなんてできるんだろうか、 ほとんどみんな他の国より背が低いことで有名なのに。 日本もやっと、サッカーに熱が入ってきたのは、いいことだ、 今までアメリカびいきで一生懸命だったけど、(← 野球のこと) やはり、正義が、本物が、貫徹するのだ。(← サッカーのこと) 競技中に日本人をののしったら、 テコンドーでやられるのじゃないかと、いつも恐くなる。(← これは韓国) ヨーロッパに、日本人選手のスターがいると、 シックな服装と、カラフルな毛髪で、すぐにそれとわかる。 スタジアムで、日本人チームの声が聞こえると、 思わず寿司レストランの献立表を思い出す。 (これはハンブルクでできた絵葉書なので。) * * * * * * いま、イタリア対ドイツは、まだ0−0、延長戦、110分です。熱い! 観客席のメルケル首相が大きく写されました。 (ZDF専属契約ではなく、いくつかの放送局が日替わりで放送します。) 6月20日 顔をたたく と きどき日本のニュースを見ます。 雨の被害が出ているようですね。 こちら、昨夕は、ドイツ × スウェーデン戦だったので、 通りも電車もバスも、がらんどうでした。 おまけに旧市街(中心部)は、 電車も迂回して、車両通行禁止になっていました。 前回の対エクアドル戦のときには、 連邦議会も、試合開始1時間前の午後2時には閉会。 郵便局も、市役所も、どこもかしこも、仕事をやめてしまったそうです。 * * * * * * おととい蒼が言っていました。 「日本で思っとったときには、言葉が通じんことが これほどつらいとは思わんかった。 言葉が通じんのだったら、 ひとりでサッカーでもすればいいと思っとった。 でも、こっちに来てみて、 言葉が通じんかったら、それどころじゃないということがわかった。 日本の友達のことを思い出して悲しくなるし、 ストレスがたまってイライラするし、 サッカーするような元気も出んようになる。 けど、ぬいぐるみ(自分で作ったもの)と一緒に遊ぶときには、 本当に仲間がおるみたいで、安心できるし、 お父さんやお母さんにお話してもらうのも、元気が出る。 言葉に出会えるけんね。」 蒼も自分の気持をやっと言葉にできるまでになれたようです。 言葉の壁の前に現れる、無視や、誤解や、嘲笑は、 蒼のような性格には、とくにこたえることでしょうけど、 よく頑張っているなと思います。(でも攻撃的になっています。) 先日、表題の事件が、二つの学校 (ここの小学校とインターナショナルスクール)で、同じ日に起こりました。 沙代より2歳上のアメリカ人の女生徒と、 沙代のクラスの男生徒が女生徒とケンカしました。 そのうちに、女の子が男の子の顔を1回叩いたので、 男の子が2回叩き返したそうです。 ドイツの学校では、頭への攻撃はイエローカードものです。 (突いたり、蹴ったり、唾をはきかけたりは、結構見かけますけど。) 女の子のお父さんは、生徒間でも評判の(?)お父さんで、 すぐに学校に警察が呼ばれたそうです。 そして翌日、その男の子は謹慎処分で欠席しました。(理不尽…) 小学校のほうの事件では、顔を叩いたのは、悠でした。 ことの成り行きは、こうでした。 クラスにお調子者の女の子がいて (3、4年生によくいますよね、元気な女の子)、 最近は、盲いたふりをして、クラスの子の頭や顔を触って遊ぶのを、 喜んでやっていました。 クラスの子たちも、それには迷惑していたようですが、 うちの子たちは特にうるさがるので、 余計におもしろがられて、やられていたようです。 しかし、この日は、そのおふざけの最中に、 蒼(10)が、頭を強く打ちつけてしまいました。 それまでにもいい加減に腹を立てていた悠(9)は、 蒼のかわりにやり返してやろうとして、 女の子の顔を叩いてしまったのでした。 クラスは騒然となりました。 相手の女の子も、みんなが見ているので、引くに引けず、 自分の鼻に指を入れて、「鼻血が出た! 悠が顔を殴った!」と。 先生の耳にもすぐに届いて、悠は謝らなければならない、といわれました。 (頭は攻撃してはいけないのだから!) でも悠は頑として受け入れず、先生は蒼に、 悠に謝るように教えてやって、と頼みました。ところが、 蒼は、自分が悠の代わりに謝るように、といわれたのだと誤解して、 ものすごく腹を立てて帰ってきました。 実際には、クラスの子達は、悠と蒼には理解を示していたのです。 状況を先生に伝えた男の子は、 「僕だってやってたと思う」といって、話したそうです。 残念ながら、そういう細やかな同情の言葉は、 悠と蒼の耳の前を素通りします。 悠と蒼は、それでも、クラスの子ども達には信頼をもっているのです! こんな誤解の中にいるのに、 クラスの中で受け止めてもらえることを実感しているのです。 不思議でしょう? 私には奇跡のように思えます。 それを支えている、先生の使命感と愛情と努力には、ほんとうに敬服します。 サーカス週間 今 月末で、学年が終わるので、どちらの学校でも、行事が目白押しです。 サーカス週間は「小学校祭り」に因んだ行事でした。 話は5月最後の週にさかのぼります。 サーカス団が、小学校の小さな校庭にテントを張り、 1週間かけて、毎日2時間ずつ、子ども達に曲芸を教えてくれました。 内容はこんなものでした。 ・魔法の箱(箱の中に美女?が入り、その箱にナイフを何本も刺す) ・なげ縄(太い縄の先を円形にしたものを振り回して操る) ・グラスバランス(水の入ったコップを額にのせて、歩いたり、回ったり、寝転 がったりする) ・フラフープ(2個から3個のフラフープを同時に回す) ・アクロバット(人間ピラミッドや、 サーカスのお姉さんの体の上でポーズをする) ・皿回しやボールなどの曲芸 ・ヤギ使い(ヤギに、ハードルを飛ばせたり、 高い細い板の上を渡らせたりする) ・馬乗り(歩く馬の上で、寝転がったり、 立ち上がったり、ポーズをとったりする) ・風船(風船でいろんなものを作る) ・綱渡り ・ピエロ(変装して、二組のグループになって、掛け合いをする) ・東方の踊り(腰や手先をくねらせて踊る、艶っぽい踊り) これらの中から、それぞれ2つづつ選んで5日間練習し、 金曜日の午後、小学校祭りのとき、親たちの前で発表します。 (悠は、「皿回し」と「馬乗り」でした。 皿回しはマスターできませんでしたが、 家で道具を買って、まだ、ずっと練習し ています。 馬乗りでは、後ろ向きにうつぶせて、肘 をついて、「テレビを見るポーズ」という のをやりました。) (蒼は、「アクロバット」と「ヤギ使い」。 アクロバットでは、サーカス団のお姉 さんの肩に立ち上がって、飛び降り、 日本人の器用さ(?)を披露して、喝采をあびました。 ヤギ使いはハードル跳びに挑戦しましたが、蒼の順番になると、 ヤギが駄々をこねて動かなくて、爆笑でした。) お祭りは、親(喫茶)と サーカス団(綿菓子・ポップコーン)とで準備します。 ケーキやジュース・コーヒーなどは、みんなで持ち寄ります。 それぞれ1杯・1切れが、50セント(75円くらい)で売られます。 お母さんたち手作りのケーキが30種類くらい並んだところは豪快でした。 ぜんぶ種類が違うのです。本当にこちらの人はケーキ作りが上手です。 最後はサーカス団のお兄さんが、 火を飲んだり吹いたりする芸を見せてくれました。 子ども達は、サーカス団のお兄さんをとても尊敬しています。 6月26日 クラス旅行とBBQ 6 月の最後の週末に、 小学校では学年末クラス旅行が、 インターナショナルスクールではバーベキューがありました。 うちの場合は、どちらも親が参加しなければならなかったので、 旅行には父親が、バーベキューには母親が付き添いました。 小学校のクラス旅行は、毎年なんらかの形でやっているようです。 小学校の4年間は、ずっとクラス替えがなく、同じ担任が持ち上がります。 ただし、飛び級(成績の良い子は年齢よりも上のクラスにいく)もいるし、 留年する子もあります。 旅行先は、郊外のスクールハイムで、3学年末には2泊します。 市の補助が得られたので、二人の子どもに親父までつけて、 一家の参加費は、たったの75ユーロでした。 カバンには、着替えや、水着や、お気に入りのぬいぐるみ、 シーツや枕カバー、懐中電灯、ボールといったものを詰め込んで 電車とバスに乗り継いで、みんな揃っていきました。 朝ご飯と晩ご飯は、みんなで食べますが、あとは自由です。 食事はたいへん質素で、毎食パンなので、主人はきつかったようです。 (生にんじんの丸かじりなど、典型的なドイツの子どもの昼ごはんです。) 大人はバーベキューをしてお酒も飲んでいたそうですが。 誰が同じ部屋に泊まるかは、子ども同士で決めます。 1日中みんな好きなことをして過ごします。 大きな枝を、のこぎりで切って、釘を打って、遊具を作ったり、 森のなかを散策したり、サッカーしたり、鬼ごっこをしたり、本を読んだり。 夜は10時半まで明るいので、 そのころまで子どもも起きて遊んでいたそうです。 最後は、みんなで掃除して帰ります。 それまでダラダラと、散らかり放題にしていた連中が、 クラス役員の鳴らすピーッという笛の合図で、 一斉に作業に取りかかり、あっというまに元通りに片付いたそうです。 まるで軍隊みたいだったそうです。 インターナショナルスクールのバーベキューは、 学校の敷地で、親がすべて準備をして、午後いっぱいパーティをしました。 ソーセージやステーキを炭で焼いて、 アイスやジュースやビールを売ります。 親がそれぞれサラダやケーキや名物料理を手作りしてもちよります。 アトラクションには、子ども達のバレエやヒップポップダンスの披露のほか、 ブレーメンでよく知られている ブラジル風空手の教室の人たちがきていました。 最後に、カルチャー・バスケットというコーナーでしめくくります。 それぞれの国の名産品を籠につめて持参し、競りにかけるのです。 ワインやハムや布などが、美しい籠の中に盛られて、 リボンがかけられています。 実際には何千円かの品物が、 またたくまに何万円という値段になって、買われます。 そして、そのお金は、学校に寄付されます。 (この学校は、やっと去年、市からの補助がでることになり、 この秋から、新校舎が建てられることになっているそうです。) その光景は、私には信じがたくて、ただただ呆気にとられて見ていました。 私は、その事情を知らないで参加したので、 百均の竹とんぼをテーブルの上に置いていました。 さて、105円の竹とんぼはいくらになったでしょう。 6月27日
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