9892 卑弥呼

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9892
卑弥呼
柴田
一
(シバタ
オサム)
株式会社卑弥呼 代表取締役会長
「モノ」と「コト」両面から顧客囲い込みを図る
◆2015 年 3 月期業績概要
経営企画室長 進士裕志
当期の売上高は 38 億 91 百万円で、前期比 16.4%減という非常に残念な実績となった。売上減少に伴い、売上
総利益も 5 億 18 百万円減少した。経費抑制に努めたものの、販売費および一般管理費は 1 億 97 百万円の削減
にとどまった。その結果、前期 3 億 34 百万円であった営業利益が当期は 13 百万円(前期比 95.9%減)となった。
経常利益は 91 百万円(同 78.7%減)、当期純利益は 1 億 35 百万円(同 45.3%減)という結果となった。当期純利
益が経常利益よりも多いのは、特別利益として投資有価証券の売却益 1 億 74 百万円が計上されているためであ
る。
売上高減少の主な要因は、店頭在庫の減少に努めたことに伴う出荷ベース売上への影響が 4 億 40 百万円、
退店による影響が 1 億 54 百万円、その他の要因が 1 億 67 百万円となっている。売上総利益率は 48.2%と前期
比 3.3%の悪化となったが、その要因は、店頭在庫減少に伴う返品調整引当金戻し入れ額の減少、商品廃棄(56
百万円)、さらに、まだ在庫が多い状況からセールを増やしたことによる粗利悪化である。
営業利益については、販売減による粗利の減少影響が 4 億 56 百万円あった。経費削減によるプラス要因が 1
億 98 百万円あったものの、返品調整引当金戻し入れ減少によるマイナスが 63 百万円あり、結果として 13 百万円
の営業利益に終わった。
貸借対照表の主な増減については、純資産・総資産ともに前期比減少している要因は、自己株式の取得 3 億
82 百万円、配当金支払い 3 億 84 百万円という財務キャッシュフローの減少によるものである。投資キャッシュフロ
ーは投資有価証券の償還 10 億円により 12 億 58 百万円の増加となった。商品については、ここ 3 年間、在庫削減
に努めており、店頭在庫整理はかなり進んだが、倉庫在庫は前期比 40 百万円減にとどまっており、更なる消化促
進が必要な状況である。
◆2012~2014 年度の振り返り
2012 年度から 2014 年度までの直近 3 年間の急激な業績落ち込みの最大の要因は、過剰在庫に陥ったことで
ある。顧客の当社に対する期待は本来、靴業界の先頭を切るような、新しい価値の提案であった。しかし、当社は
2012 年度に、在庫が少ないためにサイズ欠品による売り逃し・販売機会ロスが経営に大きな影響を与えているの
ではないかという点にフォーカスして、売れ筋商品を店頭に大量に投入する策を取った。しかし売上は増加せず、
投入した商品が店頭にそのまま残るという結果に終わってしまった。その後、巻き返しを図るため、サブブランドを
廃止して主力 4 ブランドのブランド事業部体制で立て直しを図ったが、積み上がった店頭在庫が売場の見え方の
鮮度を失わせてしまうという状態を招き、在庫問題に苦しむ 3 年間となった。昨年度末には、店頭在庫については
2011 年度並みにほぼ正常化したが、倉庫に残っている在庫の消化がまだ課題として残っている。
そうした中で、新しい販路の開拓として、当社独自のオンラインショップサイトを立ち上げたこと、昨年にはファッ
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ションサイト ZOZOTOWN に出店したことなど、web の売上は順調に拡大して成果を上げている。
◆2016 年 3 月期予想と今後の取組
在庫過剰状況が続いているため、売上高は 34 億 30 百万円(前期比 11.8%減)、営業利益マイナス 1 億円(同
65.9%減)、経常利益 10 百万円(同 89.0%減)、当期純利益 0(同 58.2%減)という予想を立てている。
配当については、安定的かつ継続配当を行う方針に則り、一株当たり 10 円の配当を計画している。
今後、現況をどのように立て直ししていくかという問題については、中期計画の方向性を社内で確認している段
階である。今期はまだ消化すべき在庫があり、店頭ベースで 47 億円、決算ベースで 34 億円となるが、マイナス成
長は今年で底を打つと見ている。
セール比率の高さが利益構造・収益構造を悪化させる要因となっているため、MD の精度を向上させてプロパー
販売を強化、再び新しい価値を提案できる従来の卑弥呼を取り戻したいと考える。
また、当社が独自に特許を取ったウォーターマッサージインソールをテコにして、新しい事業を拡大、収益の第 2
の柱としていきたい。したがって、中期的施策の方向性としては、既存事業の立て直しと新規事業の拡大の 2 本柱
で進めていく予定である。
◆組織変更について
昨年、組織をブランド事業部制という体制に変更し、ブランド価値の向上に取り組んできた。その中で、特にエレ
ガンス卑弥呼ブランドは成功し、復活の兆しが見えている。しかし、各ブランドの営業・店舗運営・商品開発のすべ
てをブランドリーダーが指示する体制であったために、足もとの売上に集中するあまり、重要な MD まで手が回らず、
コンサバティブな品揃えに陥りがちであった。
この問題を改善するため、今回の組織変更では、従来のブランドリーダーを MD に専念させ、MD の精度を向上
させていくこととした。また、各ブランドに置かれて作業が重複していた営業を、地域別に再編し、この MD と営業部
が一体となって、小林がマネジメントする形とする。商品開発には外部から別のマネージャーを招へいし、専門職
として置いた。
この体制となってまだ 2 カ月であり、全店売上は前年比 9 掛けであるが、ウォーターマッサージブランドとエレガ
ンス卑弥呼の 2 ブランドでプロパー売上の改善が見られている。この成功事例を横展開してプロパー売上の向上
を図っていく。
◆既存事業の立て直し
MD・営業・事業開発部マネージャー 小林 史伸
既存事業については、定番商品のリニューアルによってプロパー比率を高め、また、MD 部を MD に特化するこ
とで、より精度の高い商品開発を行うことに注力している。従来の月単位ではなく、二十四節気に合わせた年間 24
回の短サイクルで、なおかつ上質で従来の卑弥呼の特長であった提案性の高い商品を展開するという精度向上
に努めていく。それにより、プロパー消化、セール比率の低減を図っていく。目標として 2014 年度 21%であったセ
ール比率を 2017 年度 6%まで下げていく。
さらに、ブランドコンセプトの見直しを行っている。当社の基幹ブランド「卑弥呼」は、時代の一歩先を行く「遊び精
神(ごころ)」というポリシーが現在十分に提案できていないという反省から、再度旗艦ブランドとしての提案力を復
活させていく取り組みを行っている。加えて、履き心地、高品質、品格にこだわったものづくりを徹底していく。
「エレガンス卑弥呼」ブランドについては、国内ブランドとインポートブランドの、中間ラインの商品開発に注力し
ている。その効果が 4 ブランドの中で最も顕著に見られ、最も提案力の高いブランドとなっている。インポートの佇
まいと JAPAN MADE の品質、履き心地の両立が当ブランドの特長である。昨年後半より、踵の滑り止めなど、機
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能面の充実化も追加して商品化を行っている。
「WANONANO」ブランドは、定番のバレエタイプが市場のスニーカーブームに押されて不振であった。定番のリ
ニューアルと上品なソフトカジュアルな「大人かわいらしさ」を追求した商品を提案していく。
「ウォーターマッサージ」ブランドは、インソールの優位性を最大限に活かした、「美と健康」をさらに追求していく。
また、新型ウォーターマッサージインソールへ順次切り替えを行い、インソールの他社へのライセンス供与を強化
しながら、ウォーターマッサージのマスターブランドとしての位置付けを高めていく。
一方、販売面における既存事業立て直し策として最も注力するのはコンサルティング販売の徹底である。商品
面における MD 精度向上など「モノ」と「コト」(コンサルティング販売)の環境整備を進め、モノとコトの組合せを店頭
で実現させていきたい。靴というものは、どんなに良い商品であってもその人の足に合わなければ意味がない。そ
こで、当社は良い商品を提供するだけでなく、フィッティング技術を向上させ、最大限良いコンサルティングができ
る環境を作っていく。これにより、当社売場のファン(固定客)の囲い込みを図ることが当期の最大の注力ポイント
である。
◆新規事業への取り組みについて
ウォーターマッサージインソールの外販を今年度、本格的にスタートする。自社製品のみでの展開から、他社が
扱う商品への採用を強化している。また、昨年 5 月より海外展開(タイ)も開始した。現在 10 店舗の展開で、将来的
にアジア他国への横展開を視野に交渉していく予定である。
さらに、インソールの水漏れ率をより少なくする改良により、2 月に新たな特許を取得した。また法人営業として
大手航空会社客室乗務員との共同開発も行っており、今年度の商品化を予定している。ウォーターマッサージイ
ンソールそのものの外販に関しては、当社の扱っていないスポーツシューズ、作業靴、安全靴、看護士用などによ
る採用が具体的に今年度より順次スタートする予定である。
ウォーターマッサージインソールの外販を狙う市場は、国内では現在の婦人靴市場以外に、足の疲労負荷の高
い職業従事者用の靴市場に拡大していく。また、ロイヤリティの獲得も今後注力していく。海外では、増加するアセ
アン富裕層への訴求、および現地での認知度向上と日本国内店舗への送客効果も狙っている。
(平成 27 年 6 月 11 日・東京)
*当日の説明会資料は以下の HP アドレスから見ることができます。
http://www.himiko.co.jp/corporate/ir/irdoc.html
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