腎移植

本日のお話
腎臓移植の進
歩
1. 腎不全治療の現況
2. 生体腎移植と死体腎移植
3. 拒絶反応 と 免疫抑制
4. 感染症の克服
5. 最近の進歩(血液型不適合腎移植、先行的腎移植)
砂川市立病院 腎透析センター 柳瀬 雅裕
1
2
慢性透析療法の現況
(千人)
350
300
250
(%) 70
1年間で
およそ1万人の増加
2009年12月
290,675人
糖尿病腎症 44.5%
慢性糸球体腎炎
37.6%
40
200
30
150
20
100
10
50
0
50
患 者 比 率
37,543人の導入
27,729人の死亡
透析患者全体
新規導入患者
60
腎硬化症 10.7%
0
68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 (年)
慢性透析患者数の推移
糖尿病性腎症
35.1%
慢性糸球体腎炎 22.0%
腎硬化症 7%
(年)
'83 '84 '85 '86 '87 '88 '89 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09
透析導入患者の主要原疾患の推移
3
4
腎不全治療の比較(血液透析・腹膜透析・腎移植)
血液透析 (HD)
腹膜透析= 3.4%
シャント手術
カテーテル挿入術
通院回数
3回 / 週
1回 / 月
免疫抑制剤
除水による血圧低下
不要
お腹が張る
不要
食事・水分制限
多い(水・塩分・K・P)
やや多い(水・塩分・リン)
旅行・出張
制限あり
(通院透析施設の確保)
制限あり
(透析液・装置の準備運搬)
出 産
スポーツ
入浴
社会復帰率
5
穿刺による痛み
その他の利点
困難
ほぼ自由
困難
腹圧がかからないように注意
透析後はシャワーが望ましい カテーテルの保護が必要
中程度
医学的ケアが常に提供され
る。日本で最も普及している
治療方法
腎臓移植
正常の50%程度
必要な手術
治療による
自覚症状
血液透析= 96.6%
腹膜透析(PD)
腎機能廃絶
腎機能
やや高い
血液透析に比べ
自由度が高い
腎臓移植手術
1回 / 1~2月
爽快感など症状の
改善
不可欠
少ない
自由
腎機能により可能
ほぼ自由
問題なし
高い
透析による束縛からの
開放感
6
1
わが国の透析医療の実体
なぜ腎移植か?
透析患者=全国で30万人
末期腎不全に対する唯一の根本的治療
日本人の400人に1人が透析をしている!
毎年 3万7500人が導入
毎年 2万7600人が死亡
1.生存率の改善
毎年 1万人ずつ増加
2.QOLの向上
国民総医療費35兆円の4%を占める
3.医療経済の改善
(1兆3500億円)
7
8
原疾患別の透析導入後の生存率
透析患者の生存率(日・米・欧)
(%) 100
80
米国
60.2
67.0
生 60
存
率 40
• 5年生存率 61.4%
• 10年生存率 39.2%
• 15年生存率 28.7%
• 20年生存率 26.9%
日本
87.3
79.8
EU
38.8
35.0
39.6
20
18.8
11.0
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
透析期間 (年)
成績:年代別の生着率 (生体・献腎)
%
eGFR
献腎移植
%
2000年以降
100
2000年以降
1990-1999年
(n=2561)
1982年以前
1983-1989年
40
1982年以前
20
(n=4045)
1年
82.7%
94.2%
93.5%
96.7%
20
3年
75.0%
87.2%
88.2%
93.8%
30
5年
69.1%
79.1%
81.9%
90.9%
781万人
7.6
40~49
236万人
2.3
30~39
57万人
0.55
GFR< 50:
0.19
蛋白尿陽性: 274万 (2.6%)
15~29
0
10
50~59
(n=564)
0
0
88.4
(n=1695)
(n=2588)
1983-1989年
20
10年
57.7%
60.2%
67.6%
-
年
0
10
献腎移植
1982以前
83-89
90-99
2000以降
20
1年
51.6%
81.4%
84.5%
90.6%
3年
41.6%
70.9%
75.8%
84.7%
30
5年
34.8%
62.8%
67.4%
78.6%
年
15未満
10年
26.8%
45.9%
52.6%
-
合計
11
+
GFR≧60で蛋白尿陽性の人
232万人 (2.3%)
9222万人
19万人
4.5万人
1億320万人
0.04
100.0
慢性腎臓病 有病率 = 12.9 %
=
40
10
GFR 60未満の人
1098万人 (10.6%)
60以上
1990-1999年
60
(n=989)
生体移植
1982以前
83-89
90-99
2000以降
%
(n=191)
80
80
60
人数
100
(n=981)
観察期間(年)
20歳以上の腎機能分布と 慢性腎臓病 有病率
1983年よりシクロスポリン、1990年代にはタクロリムス、2000年以降にはミコフェノール酸モフェチルが使用できるようになった。
(バシリキシマブは、2002年より市販される。)
2000年以降の5年生着率は、生体腎移植90.9%・献腎移植78.6%にまで向上している。
生体腎移植
DM腎症:10年生存率= 28%
9
317万 (3.1%)
では積極的な治療が必要!
慢性腎臓病 有病率 = 5.7 %
590 万人
12
2
腎機能と末期腎不全、心血管系合併症による死亡との関係
慢性腎臓病(CKD)とは、
慢性腎臓病は、心血管疾患の
大きな危険因子である。
⇩
腎臓が悪いと、
心筋梗塞、脳梗塞、脳出血になって
死ぬ。
末期腎不全に至るよりも、心血管系の
合併症で死亡する患者が多い !!
13
血液透析患者に対する疑問
(%) 100
透析導入後のDMの有無別
冠動脈疾患の発症時期
80
血液透析開始後、
DMなし
平均値130ヶ月
中央値139ヶ月
60
・いつ頃 重篤な心臓病を発症するのか?
DMあり
40
・いつ頃 死亡するのか?
14
20
平均値25ヶ月
中央値10ヶ月
0
発生例
発生例
P=0.002
0 2
4 6 8 10 12 14 16 18 20 22
観察期間 (年)
15
16
血圧:140/90 mmHg → 160mmHg
視床
小葉間動脈
中大脳動脈
90mmHg →130mmHg
1本の血管が枝分かれして、
抹消に行くにしたがって血圧
はスムーズに下がっていく。
分岐の途中に太くて血圧の高い
血管があり、そこから細い血管
が垂直に分岐している。
17
50 mmHg
20ミクロン
内頚動脈
非常に高い負荷がかかる。→ 糸球体高血圧
18
3
微量アルブミン尿:strain vesselの障害を反映する。
高血圧、肥満、糖尿病の微量アルブミン:
生命維持に重要な細血管の障害を反映している。
⇒ 早期からCVDを発症する。
腎臓
糸球体疾患における蛋白尿:
糸球体が障害を受けているのであって、strain vesselの異常
ではない。⇒ 尿蛋白そのものはCVDのリスクではない。
しかし、腎機能が低下していくとCVDのリスクは高くなる。
生命の進化(3億年前、海から陸へ)・・・・・
その宿命
腎臓にはたくさんの血液が流れ込みます。
食塩摂取困難、低血圧、循環障害 ⇒ 太い動脈から直接分枝して
生命維持に重要な臓器に血液を運ぶ構造 (strain vessel) の獲得。
傍糸球体装置・RAAシステム(強力なNa保持作用)、ヘンレのルー
プの発達(尿濃縮機構) ⇒ 水の少ない環境での生命維持
腎臓は働き者
(1分間に1000ml = 1日で約1500リットル)
(ドラム缶1本 = 200リットル)
19
20
透析中の合併症
(100ml /min = 144L /day)
<循環器系合併症>
・成人の血漿量=3000 ml = 30 dL
1. 高血圧
・クレアチニンの濃度= 1.0 mg / dL (=10 μg/ml )
2. 低血圧(透析困難症)
3. 心筋梗塞、狭心症、拡張型心筋症
・血漿内のクレアチニンの総量= 30 mg
4. 脳梗塞、脳出血
・腎臓が毎分 排泄するクレアチニンの量=1mg
5. 閉塞性動脈硬化症 (ASO)
細菌 (肺炎)
ウイルス
結核
<感染症>
<腎性貧血>
(クレアチニンの総量の1/30)
< 消化管合併症>
腎臓は30分ですべての血漿からクレアチニンを排泄する
能力がある。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍
腎臓は1日にほぼ50回、血漿の大掃除をしている。
< 高カリウム血症>
21
<悪性腫瘍> 発生率:1.4倍
死亡率:1.9倍
< 高リン血症>
22
生体腎移植における年間医療費
透析中の合併症
生体腎移植年間医療費-血液型適合移植、不適合移植の比較
<骨合併症>
(万円)
国内で腎移植をする場合、医療費には医療保険が適応され、そ
れ以外の自己負担分は特定疾病療養制度、自立支援医療(更
生・育成)、小児慢性特定疾患、重度障害者医療費助成制度の
対象となるため、医療費の自己負担はほとんどありません。
7,877,000
800
・ 二次性副甲状腺機能亢進症 → 線維性骨症
700
・ 副甲状腺機能低下症 → 無形成骨症
6,672,000
600
500
<透析アミロイドーシス>
生体腎移植(血液型適合)
生体腎移植(血液型不適合)
400
300
・ アミロイド骨・関節症
・ 手根管症抗群 ・ 破壊性脊椎関節症
1,834,000
2,087,000
1,628,000
200
1,596,000
1,480,000
1,491,000
1,430,000 1,319,000
100
<その他>
0
1年
・ かゆみ
・ 不眠
2年
3年
4年
5年
(移植後経過)
・ 便秘
23
24
4
医療費比較(2008) ( 生体腎移植 / 献腎移植と血液透析)
腎移植後 外来患者の1ヶ月あたりの医療費
(万円)
生体腎移植の総医療費は、ドナーも含めた手術費や入院費などにより、血液透析に比べて高
額になるが、移植後20ヵ月を過ぎると生体腎移植の総医療費が血液透析を下回り、それ以
降は差が拡大している。また献腎移植の総医療費は28カ月以降に血液透析を下回っている。
16
12
8
4
退院後
1ヶ月
退院後
2ヶ月
退院後
3ヶ月
退院後
6ヶ月
退院後
12ヶ月
直近
外来医療費= 13200円
(血中濃度測定4700円 + 血液検査7400円 + その他)
12万600円
院外処方せん調剤料= 107400円
(薬剤料 + 調剤技術料3100円 + 薬学管理料490円)
25
安定期の年間医療費= 144万7200 円
腎移植の種類
腎移植症例数の年次別推移
生体腎移植(健全な生体からの提供)と
献腎移植(死体からの提供)の2種類がある。
(例)
総数
生体腎移植:86%
死体腎移植:14%
血縁間腎移植
生体腎移植
26
生体腎
親子、兄弟、祖父母などからの提
供
非血縁間腎移植
配偶者からの提供
腎移植
脳死腎移植
献腎移植
献腎(心停止)
心臓停止前に、脳死と判定されたド
ナーから摘出された腎臓を移植
献腎(脳死)
心臓死腎移植
(年)
心臓停止直後に摘出された腎臓
を移植
27
28
わが国における透析・腎移植患者数の推移
2009年末現在、およそ29万人が透析療法を受けており、腎移植は
1,312例実施された。脳死を含む献腎移植は少なく生体間移植が大部
分を占めているのが特徴で、ABO血液型不適合移植や夫婦間移植も
年々増加傾向にある。
生体腎移植数
世界の腎移植件数
透析患者数
透析患者数
心停止下献腎移植数
脳死下献腎移植数
250,000
Opting Out
本人が生前、臓器提供に反対の意思を文書で残さない限り、臓器提供をするものとみなす。
臨床の現場では家族の反対があれば実際には臓器提供しないことが多い。
200,000
イタリア
150,000
スペイン
26.4
46.7
フランス
移植者数
1200
300,000
献腎移植希望登録者
100,000
1000
移植希望者
800
10,000
32.5
ベルギー
43.0
オーストリア
42.2
Opting In
本人が生前、臓器提供の意思を示していた場合または家族が臓器提供に同意した場合、臓器提供がおこなわれ
る。
総移植件数
オランダ
600
2009年度
1312
400
生体腎
1123
200
献腎 175
脳死腎 1
78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
(2003年度:百万人あたりの移植件数)
アメリカの人口は、日本のおよそ2倍であるが、人口百万人当たりの腎移植数は約10倍にもなる。
日本の移植数は、他の先進国と比べても桁違いに少ないのが現状である。
(年)
29
25.2
イギリス
ドイツ
25.6
アメリカ
日本
献腎移植件数
22.0
29.5
1.1
(件)
30
5
腎臓移植が受けることができない人(禁忌)
腎移植は誰でも受けられるの?
1. 活動性の感染症(C型肝炎、B型肝炎、梅毒、結核、エイズ )
・血液透析/腹膜透析 患者
・近々 透析が必要患者
2. 治っていない癌、または 治癒して間もない癌
全身麻酔手術が可能であれば問題なし。
(心肺機能が問題ない人)
3. 性格・気質、精神疾患で自己管理ができない人
本人が腎臓移植を強く希望し、家族もそれに同意している
ことが大切です。
4. ドナー のTリンパ球に対する抗体を持っている人
(クロスマッチ陽性)
しかし・・・・・
次のような患者さんは、腎臓移植はできません。
31
32
生体腎移植のドナー (腎提供者)には誰でもなれるの?
レシピエントの適応基準
1. 末期腎不全患者。
生体腎提供者(ドナー)の条件として、
倫理的な条件と医学的な条件があります。
2. 本人が移植を強く希望し、家族もそれに同意している場合。
3. 自己管理ができる人。
<倫理的条件>
4. 全身麻酔と手術に耐えられる。
・意思表示がしっかりできる人で、自発的に腎臓の提供を
申し出ていること。
5. 心不全、狭心症、不整脈、脳血管障害、下肢動脈閉塞、
肝障害の場合は、治療を受けてから。
・あくまでも見返りのない善意の提供であること。
6. 全身感染症 (ウイルス、細菌、結核、真菌) がない。
・誰からも強制されない自らの意思に基づいた提供であること。
7. 活動性肝炎がない。
・報酬 (金銭授受など) を目的とするものであってはならない。
8. 悪性腫瘍がない。(癌があれば癌が治ってから)
33
・親族に限定する。
「親族」とは?
生体腎移植と献腎移植の特徴
親族とは6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族を指す。
長
※ 姻族 : 配偶者の血族や血族の配偶者など
3
2 祖父母
1
3
親
おじ・おば
4
いとこ
1
34
2
親
兄弟・姉妹
所
短
所
・計画的な手術が行えるため、
生体腎ドナーと生体腎レシピエ
ントがともに最善な状態で移植
・健康人(生体腎ドナー)に対して
が可能
手術が必要
生体腎移植
・透析離脱
・精神的な葛藤が大きい
・血液型不適合や前感作症例
等、前処置が必要な患者の場
合でも可能
2
兄弟・姉妹
2 配偶者
3
本人
献腎移植
甥・姪
4
・献腎ドナーがきわめて少ない
配偶者
1 子供
2 孫
3
1 血縁者の親等
1 非血縁者の親等
35
・
健康人を傷つけない
・移植後しばらく透析継続のケー
スが多い
36
6
生体腎移植 ドナーのリスク
①手術に伴うリスク
手術による死亡リスクは0に近いが、感染・ヘルニアなどは数%の可能性があ
る。
何歳まで腎移植を受けれますか?
腎摘出手術死亡率(米国の古いデータ): 0.03% (3,333人に1人)。
現在の医学の進歩のもとではこのようなリスクは限りなく0に近い(しかし、0とは
言い切れない)。
命に関わらない合併症としては、数%に傷の感染や出血・ヘルニアがみられる。
手術に耐えられる健康状態であれば、
年齢のみで腎移植は制限されません。
②腎摘出に伴う腎機能低下などのリスク
透析にいたるようなリスクは殆ど無い(0.5%未満)が、高血圧や蛋白尿は数%あ
る。
腎摘出後の腎機能は提供前のおよそ70~75%程度となるが、その後はほとんど
変化しないとされ、それ自体で透析や移植が必要な腎不全になることは稀。
しかし、もともとの腎機能が低いと、そのリスクが高くなるので、術前に腎機能が
良好であることが必要。
欧米のデータでは10年以上の後に透析にいたるような腎不全の率は約0.5%未満
とされる。また、高血圧や蛋白尿などの出現は数%に見られる。
37
38
生体腎移植の流れ
腎移植における血液型の組み合わせ
提供者
(ドナー)
の血液型
① ドナーとレシピエントの適合性を調べるために、血液型、組織適合性(HLA)、クロスマッチテスト(交差試験)などの検査を行う
② 血液やウイルス検査などの精密検査によって手術適応を判断する。不適応の疾患がある場合は前もって治療する。
生体腎ドナーでは提供する腎臓の検査を行う
③ 生体腎移植実施
患者(レシピエント)の血液型
一致
不一致
A
AB
不適合
適合性検査
①レシピエント
移植コーディ
ネーターと面談
適合性検査
・血液型
・HLA(ヒト白血球抗原)
・リンパ球直接交差試験
・血液型
・HLA(ヒト白血球抗原)
・リンパ球直接交差試験
・PRA
外来受診
A
B、O
B
B
AB
A、O
O
O
A、B、AB
-
AB
AB
-
精密検査
A、B、O
ABO型生体腎ドナーとレシピエントの適合性検査
移植可能
条件によっ
て移植可能
移植不可能
抗体価が低下しない場合
③生体腎移植
・血液(血液一般、生化学、電解質)
・検尿
・ウイルス検査(HIV抗体, HTLV-1抗体, HBs抗原,
HCV抗体, CMV抗体, EB抗体)
・心電図検査
・肺機能検査
・胸・腹部単純X線検査
・上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
・下部消化管内視鏡検査(便潜血)
・腹部CT検査(腹部エコー)
・歯科/眼科精査
・(婦人科受診)
・細菌培養検査
・膀胱造影
※最近では提供が自発的意思であることを確認するため、精
神科医が評価することが増えています。
40
ドナーとレシピエントの関係
6.3%
3.2%
11.0% 12.5%
17.5%
6.3%
HLA
リンパ球クロスマッチテスト
(交差試験)
白血球の表面にある膜抗原で、
これによって自己と非自己を認
識することができる。class Ⅰ(A、
B各2つ)とclass Ⅱ(DR2つ)があ
り、それぞれの適合性を検査
ドナーリンパ球(T・B)に対
する抗体の有無を調べる
検査
(生体腎:2000年~推移)
13.8% 14.6%
5.0%
4.7%
4.1%
21.3% 24.2%
25.1%
28.7%
6.6%
14.2%
15.8%
15.7%
13.7%
免疫抑制剤投与により、
不一致の場合でも特に問
題はない
高感度の検査法で陽性であっ
ても、前処置により可能な場合
もある
68.8%
66.6%
65.0%
56.2%
55.2% 56.5%
6.2%
5.2%
34.9%
37.2
%
12.2%
12.8%
46.7%
44.7%
他 (実子、祖父母、
叔父叔母、一卵
性双生児、血縁
その他、未記
入)
非血縁
(夫婦)
14.2%
抗T細胞抗体 陰性
適合(一致・不一致)
不適合
・移植時の脾臓摘出、抗血液型
抗体の除去⇒血漿交換や
DFPP
⇒強力な代謝拮抗剤とステロイ
ド剤の投与などの術前処置に
より、抗体価低下すれば可能
(現在では脾臓を摘出しない
ケースも多くなっています)
②レシピエントの
移植適応確認
ドナーの決定
夫婦間腎移植(非血縁に含まれる)の占める割合は、この数年増加傾向にある。
①血液型、②HLA、③リンパ球クロスマッチテスト(交差試験)の適合検査を行う。
血液型
精密検査
・血液(血液一般、生化学、電解質)
・検尿
・ウイルス検査(HIV抗体, HTLV-1抗体, HBs抗原,
HCV抗体, CMV抗体)
・心電図検査
・肺機能検査
・胸・腹部単純X線検査
・クレアチニン・クリアランス(Ccr)
・腎血管3D-CT
・腎シンチグラフィー
・上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
・下部消化管内視鏡検査(便潜血)
39
薬剤投与や処置により移
植が可能
レシピエント
生体腎移植希望
ドナー(複数)
適合
52.2%
兄弟・
姉妹
親子
抗T細胞抗体陽性
(LCT法、AHG-LCT法)
41
42
7
ABO血液型の適合度(生体腎:2000年~推移)
レシピエントの術前透析療法と透析期間(2009)
ABO血液型の不適合生体腎移植は、臓器不足と移植成績の向上に伴い、2008年度には全体の24.2%を占めるまでに至っている。
5.2%
0.5%
11.9%
0.8%
1.1%
0.4%
0.0%
0.2%
0.8%
0.0%
15.5%
14.6%
17.7%
20.9%
23.3%
23.3%
24.2
%
19.9%
18.6%
20.4%
13.3%
21.1%
19.7%
18.2%
21.3%
20.2%
23.5%
術前の透析期間の平均は、生体腎で4年、献腎で17年
不明
不適合
生体腎(n=973)
7.2%
不一致
8.6%
66.4%
63.8%
65.7%
61.5%
59.4%
55.1%
55.8%
52.3%
1.5%
9.4%
14.8%
8.9%
21.9%
適合
63.3%
献腎(n=203)
0.6%
一致
46.9%
80.3%
1ヶ月未満(透析なしを含む)
1ヶ月以上1年未満
1年以上10年未満
10年以上
不明(透析期間)
不明(透析療法の有無)
1年未満
1年以上10年未満
10年以上
不明(透析期間)
43
44
HLA(Human Leukocyte Antigen)
遺伝子の型(組織適合抗原、HLA型)は
合っている必要がありますか?
HLA抗原の遺伝子群はヒトの第6染色体の短腕に位置していて、A・B・C・D(DR・DQ・
DP)の抗原型がタイピングされている。
現在、腎移植ではHLA-A、B、DRの適合性が重要視されており、各々が2本の染色体
上に存在しているので、計6つのHLAの型の適合を一般的に調べています。
父親
HLA抗原とは、拒絶反応の原因となる物質です。
母親
A座
A座
B座
B座
DR座
DR座
HLA抗原の個数が合うほど移植後の腎機能は良好
ですが、
優れた免疫抑制剤の登場により、一つも合っていなく
ても移植はできます。
子供1
45
腎移植手術までの流れ
生体腎移植の場合
透析治療
献腎移植の場合
透析治療
子供3
子供4
46
献腎移植 レシピエント選択基準
※ ドナーの状況によっては、透析導入前の移植も可能。
適合条件
腎臓
組織適合性検査
医学的適応検査
生体腎移植
組織適合性検査
医学的適応検査
登録
透析治療 継続
待機
献腎移植
移植後3~4ヵ月まで
4ヵ月以降
 ABO式血液型の一致
 リンパ球 クロスマッチ 陰性
優先順位
約4週間
免疫抑制療法開始
感染症予防
退院
以下4項目を点数化し、合計点数が多い順
 提供施設と移植登録施設の所在地
一般的な移植手術後の流れ(期間は目安です)
手術
子供2
父親から1本、母親から1本もらい、2本で一対になっています。従って子供同士では4つの組み合わせがあり、
ぴったり合う確率は25%です。一方父親や母親とは半分は一致するがもう一本は合わないことになります。
初期維持期
週1~2回受診
※ 免疫抑制療法、感染症予防は、
退院後も継続する。
 HLA抗原のミスマッチ数の少なさ
維持期
月1~2回受診
 待機日数
47
 小児待機患者 (16歳未満加点)
48
8
レシピエント優先順位の点数
腎移植希望者 (レシピエント) 選択基準
1.搬送時間
前提条件
同一 都道府県内
12点
同一 ブロック内
(1) ABO式血液型
6点
2.HLA型の適合度
(2) リンパ球直接交叉試験陰性
DRミスマッチ数
0
0
0
0
0
1
1
1
1
1
2
2
2
2
0
1
2
3
4
0
1
2
3
4
0
1
2
3
4
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
AおよびB
ミスマッチ数
優先順位
点数
2
(1) 搬送時間 (阻血時間) 同一都道府県内、
同一ブロック内 ( 6 or 12点 )
3.待機日数 > 4014日
(2) HLA型の適合度 (0 ~ 14点)
(3)
待機日数 ( 1年:1点
(N)
10+log1.74 (N/365-9)
10年以上 log計算 )
(4) 小児待機患者 ( 16歳未満: 14点 )
4.小児 待機患者 年齢≧16
0点
<16
14 点
49
移植待機患者数
N/365
≦ 4014日
(日本臓器移植ネットワーク登録)
腎移植待機患者 年代別と待機期間
<2010年 9月 30日 現在>
<2010年 9月 30日 現在>
心
(心肺同時含む)
肺
(心肺同時含む)
腎臓
肝臓
膵臓
小腸
179
4
(日本臓器移植ネットワーク登録 : n=11,708)
年代別
待機期間
(膵腎・肝腎同時含む)
現登録者数
170
141
254
11,708
50
1.8%
腎臓移植 希望登録者数 (ブロック別)
0.2% 0.5%
19.7%
ブロック
男
女
希望者
北海道
299
187
486
東北
439
213
652
関東甲信越
2,987
1,518
4,505
東海北陸
1,521
710
2,231
近畿
1,099
672
1,771
中国四国
583
345
928
九州沖縄
708
427
1,135
合計
7,636
4,072
11,708
2.9%
7.6%
3.8%
13.1%
41.7%
21.3%
27.7%
33.9%
*15歳未満:46名
0~9歳
10~19歳
20~29歳
30~39歳
40~49歳
50~59歳
60~69歳
25.7%
5年未満
5年以上10年未満
10年以上15年未満
15年以上20年未満
20年以上
平均待機期間= 17年
51
52
献腎ドナー適応条件
臓器提供意思表示カード
・臓器提供意思表示カード(ドナーカード)の所持 ⇒ 臓器提供の意思あり
・生前に本人が書面による意思表示をしている。
・患者家族の承諾がある。
臓器提供者として不適格な場合
①悪性腫瘍の既往がある場合(根治手術後、5年無再発は献腎ドナー候補として考慮)
(*脳腫瘍、皮膚がんを除く)
53
②活動性感染症(肺炎、敗血症など)がある場合
③伝染性感染症(AIDS、B型肝炎ウイルスなど)をもっている場合
④年齢が70歳を超える場合
⑤血液検査、尿検査などで器質的腎障害が考えられる場合
54
9
腎臓摘出術(ドナーの手術)
提供可能な臓器および組織
直視下腎臓摘出手術
脳死下
心臓
肺
肝臓
小腸
鏡視下腎臓摘出手術
心停止下
腎臓
臓器
眼球
膵臓
皮膚 耳小骨 気管
心臓弁 血管 骨
組織
手術時間:通常4時間程度。
輸血:通常必要ない。
手術方法
直視下:従来から行われている手術法。後腹腔を開く。
◆脳死下、心停止下での臓器・組織提供:生前に本人の意思表示が
なくても家族の書面による同意があれば提供可能 (組織提供につい
ては、臓器移植法範疇外)
55
腎移植手術:レシピエントに移植する場所
鏡視下:後腹膜と腹腔からのアプローチがある。
基本的には、両方とも1cm程度の小さな切開をおいて内視鏡と
手術器具を挿入して行う。
56
腎臓を移植する場所
腎臓は本来、腰のあたりにありますが、腎移植の際には、おなかの右下の皮膚をおよ
そ15cm切開し、骨盤の中(腸骨窩)に移植します。
下大静脈
青線:切開部(手術創)
腹部大動脈
腎静脈
腎動脈
移植腎
尿管
膀胱
下腹部を20~25cm切開する
 おなかの中には「腹膜」という膜があり、腹腔を形成していますが、移植後の腹膜炎や腸閉塞等の合併症を予防
するため腹膜を傷つけないように腹腔の外(後腹膜)にスペースをつくり、そこに腎臓をおさめます。
 腎臓には「動脈」「静脈」「尿管」の3本の管があり、それぞれを「内あるいは外腸骨動脈」「外腸骨静脈」「膀胱」に
つなぎます。

通常、手術時間は約4時間。
57
移植手術
58
免疫とは?
細胞性免疫
Tリンパ球(Th,Tc)が主導
で非自己の侵入物を
攻撃排除する。
レシピエントの腎臓は摘出せず、
ドナーの腎臓を下腹部(腸骨窩)に移植
59
液性免疫
Tリンパ球からBリンパ球に
情報が送られ、Bリンパ球
は形質細胞に変化し、
抗体を産生し、非自己の
侵入物を攻撃排除する。60
10
拒絶反応の起こり方
腎移植において免疫と拒絶とは?
マクロファージが働く
移植された腎臓を非自己(自分と違う)と判断する。
リンパ球が働く (免疫)
移植腎を攻撃排除 (拒絶) する。
61
62
63
64
65
66
HLA型
HLA-A、B、DR(各2種類、計6つ)の抗原について検査を行う。
ドナーとレシピエントの間でHLA型が一致するほど生着率が高く
なる。
しかし優れた免疫抑制剤の登場でHLAの適合率と生着率の関
係はそれほど明確ではなくなった。
ダイレクトクロスマッチ (リンパ球交叉試験)
レシピエントの血清中にドナー腎に対する抗体の有無を調べる。
ダイレクトクロスマッチ陰性が必要。
特にT細胞が常温で反応する場合には(T-warm)といい、
超急性拒絶反応を起こす可能性が強い。
11
免疫抑制剤が関係する合併症
主な免疫抑制剤の種類
分類
一般名(略号)
商品名(販売会社)
シクロスポリン(CyA)
サンデミュン/ネオーラル(ノバルティスファーマ)
カルシニューリン シクロスポリン・マイクロエマルジョン(CyA ME)
阻害剤
タクロリムス(FK506)
プログラフ/グラセプタ―(アステラス)
タクロリムス水和物徐放性カプセル
アザチオプリン(AZ)
核酸合成阻害剤
ミゾリビン(MZ)
イムラン(グラクソスミスクライン)/アザニン(田辺三菱)
ブレディニン(旭化成ファーマ)
セルセプト(中外)
ミコフェノール酸モフェチル(MMF)
プレドニゾロン
ステロイド剤
プレドニン(塩野義)
メチルプレドニゾロン
抗IL-2レセプター抗体
免疫グロブリン
その他
ソルメドロール/メドロール(ファイザー)
バシリキシマブ
抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン
塩酸グスペリムス(DSG)
シムレクト(ノバルティスファーマ)
サイモグロブリン(サノフィアベンティス)
スパニジン(日本化薬)
67
68
免疫抑制剤の副作用に対する対策
カルシニューリン阻害剤
併用療法:複数の免疫抑制剤を組み合わせることで各薬剤の投与量を減らし副作用の
発現を抑えようとする投与法。
発現
強
サンディミュン(シクロスポリン)
副作用
副作用
ネオーラル(シクロスポリン)
副作用
免疫力
拒絶
投与量が少ない
ので軽減される
プログラフ・グラセプター(タクロリムス)
副作用
薬理作用
生着
(至適量)
リンパ球に作用する(IL-2産生抑制)。代謝拮抗剤
のように、細胞毒性的に働くのではなく、
lymphostaticに可逆的に機能を抑制する。濃度が低
ければリンパ球の活性は抑制されない。
弱
感染症、悪性腫瘍
(オーバーイムノサプレッション)
単独療法
併用療法
69
70
シクロスポリンの血中濃度
シクロスポリンの血中濃度
(mg/dl)
(mg/dl)
600
600
Trough= 谷、くぼみ
500
400
500
200
100
100
1
2 3 4 5 6
8
12
トラフ値
300
200
C0
AUC0-4
400
トラフレベル
300
C2
(hr)
1
71
2 3 4 5 6
8
12
(hr)
72
12
プリン合成経路 (de novo 系)
ミコフェノール酸モフェチル (MMF)
(セルセプト)
IMP
起源
 ミコフェノール酸の誘導体、経口投与後、加水分解され活性体ミコ
フェノール酸となる
IMP dehydrogenase
XMP
作用機序
6-MP, TIMP
 プリン代謝系のイノシンフォスフェイト脱水素酵素の活性を阻害
GMP
→ グアノシンヌクレオチド合成のデノボ経路を阻害する
MZB-5’-P
ミコフェノール酸
副作用
 下痢、CMV感染症
DNA, RNA
細胞内
74
モノクローナル抗体の種類
Murine
(マウス抗体)
Chimeric
(キメラ抗体)
マウス100%
シムレクトの特性
● IL-2レセプターα鎖 (CD25) に対する
Humanized
(ヒト化抗体)
マウス25%
ヒト/マウス キメラ型 モノクローナル抗体。
マウス10%
● 2回投与(Day 0, 4)で
IL-2レセプターを1ヵ月以上ブロック。
親和性
抗原性
半減期
高い
高い
短い
高い
低い
長い
● 急性拒絶反応の発現を30% 減少。
低い
低い
長い
マウス型
● 有害事象発現率: プラセボと同等。
ヒト型
75
免疫抑制剤による感染症
生体腎移植 免疫抑制療法
MMF (セルセプト)
4~8mg/kg
免疫抑制剤内服で、免疫力が低下しすぎて感染症発症が問題。
(30~20mg/kg/day)
移植後3~4ヵ月の安定期に入ると免疫抑制剤服用量は減少する
ので感染症発症頻度は少なくなる。
CyA
シクロスポリン (ネオーラル) 8mg/kg/day
ネオーラル
CyA 2mg/kg
サンディミュン
肺炎が多く、サイトメガロウイルス(CMV)による肺炎が7割以上。
ソルメドロール
(mg)
125100
80
76
60
メドロール
(mg)
40
20
16
12
8
CMV感染症の早期診断(アンチゲネミア法)が可能になり、治療薬
(ガンシクロビル・バルガンシクロビル)の開発で治癒率が向上。
4
シムレクト 20mg (day 0, 4)
土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日
-2
0
2
4
6
8
10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30
日数
77
移植後のカリニ肺炎に注意。
昔はカリニ肺炎が起こると7割ぐらいの患者が死亡していたが、ST
合剤の予防投与でカリニ肺炎の発症頻度は極めて少なくなった。 78
13
サイトメガロウイルス (CMV)
腎移植後に起こりやすい感染症
ヒトヘルペスウイルス 5
身近な、ありふれたウイルス。
成人の90%が既感染して抗体陽性。
正常人に感染しても発症しない。
易感染性宿主には重篤な感染症を引き起こす。
(感染防御免疫が未熟な胎児、移植患者、HIV感染者)
サイトメガロウイルス
79
∴ 典型的な日和見病原体。
80
どのパターンがCMV感染を発症し易いか?
サイトメガロウイルスの再活性化機序
ドナー
CMV抗体 (+)
CMV抗体 (+)
CMV抗体 (-)
CMV抗体 (-)
① 同種免疫反応によるTリンパ球の活性化
② 免疫抑制によるCMVの内因感染・体内伝播の助長
免疫抑制、腫瘍、AIDS、妊娠
レシピエント
CMV抗体 (+)
CMV抗体 (-)
CMV抗体 (+)
CMV抗体 (-)
サイトメガロウイルス感染症の治療
潜伏 CMV
バルガンシクロビル(バリキサ錠) 内服薬
感染性 CMV
ガンシクロビルのプロドラッグ 副作用:骨髄抑制、腎毒性
再活性化
ガンシクロビル(デノシン注) 副作用:骨髄抑制、腎毒性
(reactivatuin)
81
82
症候性CMV感染症の診断基準
CMV感染症の臨床像と障害機序
1. ウイルス学的所見(ウイルス/抗体)
肺炎
(間質性肺炎)
① CMV (ウイルス/抗原/核酸)の検出
CMV感染細胞に対する
間接的な 細胞障害
② ペア血清で、抗体陽転あるいは抗体価の4倍以上の上昇・単一血清
でIgM抗体の検出
( ①および②の両方またはどちらか一方が陽性であること )
網膜炎
腸炎
2. 臨床所見(症状/徴候)
CMVの直接的な 細胞障害
肝炎
① 不明熱
② 白血球減少・血小板減少・異型リンパ球の出現
消化管潰瘍・出血
肺炎・網膜炎・肝炎・消化管潰瘍・膵炎・腎症
83
( ①に加えて②の9項目中1項目以上が陽性であること )
84
14
ニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)
CMV感染症の診断法
原因:Pneumocystis jirovecii (真菌)
臓器移植、骨髄移植、白血病、AIDSで細胞性免疫能低下
患者に日和見感染を引き起こす。
1. CMV アンチゲネミア法 (CMV抗原血症):
CMV抗原に対する特異的モノクローナル抗体
治療:
バクタ (ST合剤): 4~12錠 2× 内服
ベナンバックス (Pentamidine isetionate):
2. PCR法:CMV-DNAの検出
吸入療法
筋注(点滴静注)
85
バクトラミン注 (ST合剤)
86
ABO血液型不適合腎移植
今や生体腎移植のうち、25%を占める。
87
88
ABO血液型不適合腎移植
血液型と糖鎖抗原
従来は「免疫学的禁忌」とされていた。
A型
GalNAc
Gal
GlcNAc
<免疫学的禁忌の理由>
Gal
Gal
Gal
抗B抗体
B型
Fuc
B型
A型
GlcNAc
Gal
ドナーの移植腎血管内皮細胞に発現している血液型抗原に
レシピエント体内に存在する「自然抗体」である抗B抗体が反応し
Fuc
て、「抗体関連型 拒絶反応」により早期に移植腎を喪失。
89
90
15
リツキサン (Rituximab) について
「ABO血液型不適合腎移植における治療戦略」
・ 分子標的治療薬(抗体製剤)
1. 脱感作療法 (免疫抑制療法:術前4週前~セルセプト内服)
・ マウス-ヒト キメラ型モノクローナル抗体
2. 抗体 (抗A抗B抗体) 除去 :血漿交換、二重濾過血漿交換)
・ ヒトBリンパ球表面の分化抗原CD20リン蛋白
に結合して抗腫瘍効果を示す。
3. リツキサン (CD20抗体) 投与 または 脾臓摘出
・ 適応:CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫
4. 抗凝固療法 (anti-DIC療法、抗血小板薬)
・ 副作用:アナフィラキシー様症状、肺障害
91
ABO血液型不適合腎移植における年度別生着率
バジリキシマブ (抗CD25 抗体)
ミコフェノール酸 (MMF)
92
生着率
カルシニューリン
阻害剤 (CYS/FK506)
細胞性
免疫
%
T細胞
100
細胞障害性T細胞
90
リツキシマブ ( 抗CD20 抗体)
(3年)
94%
’01-‘04
(1年)
(245cases) 96%
’98-’00
(149cases)
85%
79%
’95-’97
(123cases)
81%
78%
’92-’94
( 85cases)
81%
76%
’89-’91
( 83cases)
82%
81%
80
70
液性
免疫
Ⅹ
Pre-B細胞
B細胞
60
形質細胞
Accommodation(免疫学的順応)
抗体除去
(DFPP)
脱感作療法
50
40
<2001~2010年>
1年生着率=96%
1年生存率=98%
5年生着率=91%
5年生存率=96%
9年生着率=83%
9年生存率=91%
30
20
抗A・抗B抗体
抗A・抗B抗体
腎移植
-2週
1〜2週
0
5
93
10
15
years
日本ABO血液型不適合移植研究会 200594
何故、PEKT (preemptive kidney transplantation:
先行的腎移植) なのか?
先行的腎移植 (PEKT: preemtive kidney transplantation)
定義: 維持透析を経ないで 腎移植を行う治療。
移植腎予後 規定因子は何か?
(一過性の透析を行った場合も含む。)
⇒ 移植前の透析期間
Paired kidney analysis の考え
PEKTの利点とは?
・ 1980年代に小児で開始。
(小児透析: 困難さ、成長・発達の利点)
1. 心血管疾患: 発症や悪化の抑制 ⇒ 生存率向上
・ 腎移植のうち12%がPEKT (成人でも年々増加)。
・ PEKTの利点:
log-rank
(Kaplan-Meier)
0
0
-1ヶ月
10
移植前 EF<20% の拡張型心筋症 ⇒ 腎移植 ⇒ 84%で EF>50%
生着率/生存率: 良好
心機能改善:
・ eGFR= 15~30 ml/minで 準備
eGFR= 10~15 ml/minで 移植
95
する/しない の違いは何 ? ⇒ 透析期間
心収縮機能 改善例 ⇒ 透析期間 1年未満
心収縮機能 非改善例 ⇒ 透析期間 3年以上
96
16
PEKTの利点とは?
PEKTのCKDに対する利点とは?
2.PEKTの概念が浸透
⇒ 保存期腎不全のCKDケアの質的向上。
・
・
・
・
・
・
・
・
CKD stage 4, 5 での教育入院 → その後のGFRの低下スピードを減らす。
循環器内科/腎臓内科:CKD患者の冠動脈造影/インターベンションを躊躇。
(造影剤腎症を恐れる)
CKD患者の虚血性心疾患 では、胸痛を訴えない。
労作時呼吸困難で腎性貧血のせいにされたり、IHDと考えられないこともある。
早期の専門医紹介
CVDスクリーニング・積極的 IHDの除外
腎性貧血の積極的治療
CKD-MBDの積極的治療
がんスクリーニング率向上
感染症 の監視・予防
ワクチン接種率向上(HBV、肺炎球菌)
医療経済的メリット
KDOQIの推奨 ⇒ 全移植の50%をPEKTで!!
保存期のCKD患者に早期のCAG → 腎移植後の予後にメリット高い。
Transplant first initiatine
CKD-MBDの管理:
移植後高Ca血症の問題(intact-PTH>500では高率に高Caになる。)
保存期からのVitD3製剤投与の重要性
必要であれば移植前に副甲状腺のインターベンションを。
(まず腎移植をやっていこう! というイニシアチブ)
CKD stage 4 / eGFR 20ml/min くらいで移植施設へ紹介を!
97
CKDに対する新たな治療戦略
腎移植患者の死因(n=497)
GFR
2.4%
1.0%
移植 透析
> 90 60~89 30~59
脳血管障害
1.2%
1.6%
1.8%
15~29
< 15
脳血管障害
12.7%
13.9%
98
感染症
Stage 1 Stage 2 Stage 3
悪性新生物
Stage 4
Stage 5
死
亡
心疾患
16.9%
4.8%
現在の治療
消化器疾患
心血管合併症
呼吸器疾患
自殺
事故
7.8%
今後の治療
血液・造血器疾患
心疾患
14.1%
腎・泌尿器疾患
Stage 4
その他
18.1%
心血管合併症
Stage 3
記入なし
Stage 5
介入(教育・指導・治療)
先行的腎移植
99
Stage 1
Stage 2
100
Preemptive kidney transplantation
17