慈恵医大誌 200 5;12 0:143 -5 1. 【第 1 2 1回成医会 会宿題報告】 卵巣癌の予後因子に関する研究 落 合 和 徳 東京慈恵会医科大学産婦人科講座,臨床腫瘍部 PROGNOSTI C FACTORSOF OVARI AN CANCER Kazunor iOCHIAI Depar tment of Obstetr ics and Gynecology and Depar tment of Clinical Oncology , The Jikei Univer sity School of Medicine Pr ognos t i cf ac t or sofovar i anc anc e rwe r er evi e we d. Fac t or scoul dbedi vi de di nt ot hr ee gr oups:pat i e ntf ac t or s ,t umorf ac t or s ,andt r eat mentf ac t or s . Oft hepat i entf ac t or s ,ageand per f or manc es t at us i nf l uenc e ds ur vi valr at es i gni f i c ant l y. Tumor f act or s ,s uch as s t age, hi s t opat hol ogi cf i ndi ngs ,hi s t ol ogi cgr ade ,ande xpr es s i onofc ance r r e l at e dge ne s ,al s os i gni f i c ant l yaf f e ct e ds ur vi val . Tr e at me ntf ac t or s ,s uc hasr e s i dualt umors i z eandt hec he mot he r ape ut i cr e gi men,we r eal s oi mpor t antf orpr ognos i s . The s epr ognos t i cf act or sandt he r ape ut i c r es ul t s ,s ugges tt hatmaxi maldebul ki ngs ur ge r yandc he mot he r apywi t hpac l i t axelandcar bopl at i ns houl dbepe r f or med,e s pe ci al l yf orpat i ent swi t hadvanc e ddi s e as e . ( TokyoJi ke i kaiMe di c alJ our nal20 05;12 0:14 3-5 1) Keywor ds:ovar i anc anc er ,pr ognos t i cf act or ,r e s i dualt umors i ze とができる(Fi ) .本稿は Ochi g.4 aiら の研究に I .は じ め に 最近の文献的検討を加えて概説したものである. 卵巣癌は予後不良の疾患として知られており, I I . 研究対象と方法 世界的統計を見ても進行症例の 5年生存率はいま だに 30 ) .本邦における % を下回っている(Fi g. 1 本邦の卵巣癌患者 1 , 1 85例を対象に過去の診療 年齢調整死亡率は 2 00 0年で婦人 10万対 4 . 5と報 告され (Fi ) , 死亡数も年間 人をこえてい g.2 4 , 0 0 0 録からアンケート方式で患者背景,治療内容,予 る (Fi ) .今後も増加傾向にあると思われ,2 g.3 01 5 年の罹患数は約 12 人, 年齢訂正罹患率は , 2 00 1 0. 2 るかを検討した.生存率の解析にはカプランマイ に達すると推計されている .卵巣癌は化学療法 法,ならびに一般化ウィルコクソン法を用い,p < に比較的感受性があるとされ,プラチナ製剤やタ 0 . 0 5を有意とした.1 , 1 85例の進行期別 類,組織 別 類を Tabl e1に示した.進行期を見ると比較 キサン製剤の導入により,生存率の向上が認めら れ卵巣癌撲滅の期待が一気に膨らんだが,いまだ 抗癌剤だけでの根治は望むべくもなく,適切な手 術との組み合わせではじめて 命効果が期待でき る.卵巣癌の予後に関与する因子については多く の報告がなされているが,大別して患者自身の因 後を調査しどのような因子が予後にかかわってい ヤー法を用い,生存率の差の検定にはログランク 的 早 期 で 発 見 さ れ る の は 1, 185例 中 557例 (4 ,進行例で発見されるのがこれに対して 7 %) 6 2 8例(53 %)と発見時半数以上が進行例であるこ とがわかる. 組織型別には, 液性が 5 (4 75例 9%) 子(患者因子) ,腫瘍のもつ因子(腫瘍因子) ,治 と一番多く,これに粘液性 2 ,明細胞 9 0例(2 4 %) 癌1 例( ) ,類内膜性 例( 43 1 3% 1 3 4 11 %)と続い 療にかかわる因子(治療因子)の 3つに た. けるこ 144 落 合 Tabl e1 . Pat i entsdi s t r i but i on by s t age and hi s t ol ogy St age Hi s t ol ogy Fi g. 1. Fi veye ars ur vi valr at eofovar i an c anc er pat i ent s Ye art r e ndbyFI GO s t agi ng I I I I I II V Tot al Se r ous 1 15 7 42 90 9 6 Muc i nous 148 2 0 67 1 5 5 75 2 50 Endomet r i oi d 53 2 7 4 6 8 1 34 Cl earce l l 60 3 3 4 2 8 1 43 Undi f f er ent i at ed 5 9 1 8 1 4 4 6 Uncl as s i f i ed 9 4 1 7 3 7 Tot al 7 3901 6 74 8014 8 1, 1 85 Fi g. 2. Age adj us t ed deat hr at ei n Japan (1 950 ) 1 999 Fi g. 5. Agedi s t r i but i onofpat i ent s Fi g. 3. Gyne col ogi cc anc erdeat hi nJapan (1 950 ) 1 999 Fi g.6 . Sur vi valr at ebypat i entsage I I I .結 果 1 . 患者因子 ) 年齢 1 対象症例の年齢 Fi g. 4. Pr ognos t i cf act or sofovar i anc anc er 布をみると 5 -59歳をピーク 0 にした正規 布を示す(Fi ).しかしこの最多 g. 5 年齢帯周辺の患者数をみると 4 0歳代のほうが 6 0 歳代より多く,閉経前から閉経後にかけての時期 卵巣癌の予後因子に関する研究 145 Fi g.10 . Sur vi valr at ebyhi s t ol ogi cgr ade Fi g.7. Sur vi valr at ebyper f or mances t at us Fi g.8. Sur vi valr at ebys t age Fi g.1 1. Sur vi valr at ebys i zeofr e s i dualt umor 2 . 腫瘍因子 ) 進行期 1 腫瘍の進展とともに予後が悪くなることは明ら かであるが, 卵巣癌でもその傾向は著明である. 片 側の卵巣に限局した I a期で発見された場合は 5 年生存率が 9 0 % にも達するのに I V 期では 20 % にも達しない(Fi ) .したがって卵巣癌の予後 g.8 改善には早期発見が重要である. Fi g.9 . Sur vi valr at ebyhi s t ol ogi ccl as s i f i cat i on が卵巣癌好発年齢であることが推測される. 年齢は若い方が予後が良好で,5 0歳以上の症例 に比べ,4 (Fi ) 9歳以下の予後は良好であった. g.6 ) 全身状態 2 Pe r f or manc es t at us( PS)は全身状態を示す よい指標であるが,疾患が日常生活にまったく影 響を与えない PS0の予後は良好であり,全身状 態が悪化するにつれて予後が不良となる.(Fi g. ) 7 ) 組織型 2 組織型別では有意差は認められなかった(Fi g. ) .しかし組織全体で予後を論じることはあまり 9 適当とはいえない.というのは Tabl e1にも示し たように 液性腺癌は進行例に多く, 粘液性腺癌, 明細胞癌は比較的早期症例に多いからである. ) 組織学的 化度 3 組織学的 化度は予後とよく相関した(Fi g. ) .組織学的によく 化した高 化癌の予後は低 10 化癌に比べて予後良好であった. 146 落 合 に譲ることにする. 3. 治療因子 ) 手術 1 卵巣癌では初回手術時の残存腫瘍の大きさが, I V. 最近の卵巣癌診療の動向 直接予後に反映されることから,腫瘍組織の減量 考察にかえて 1 . 早期発見の工夫 卵巣癌患者の過半数が I I I期 I V 期の進行癌で (cyt は極めて重要な意義をもつ.数あ or educ t i on) る予後因子の中でもわれわれが自らの手で直接関 あり,かつ進行期と予後が著しく相関することを 与しうる因子であり,本研究でも残存腫瘍の直径 考えると,早期発見は卵巣癌全体の予後改善には が 2cm 以下に縮小された症例の予後は比較的良 必須と考えられる.子宮癌検診受診者に対し内診 好である (Fi ) .それゆえ腫瘍をいかに切除す g. 11 と同時に経腟超音波を用い,卵巣の状態をチェッ るかは大変重要な課題である. クすることが行われている. また CA1 25と経腟超 ) 化学療法 2 卵巣癌の標準化学療法としてながらく CAP療 法 が 行 わ れ て き た.こ れ は cycl ophos phami de , adr i amyci n, c i s pl at i nの併用療法で,これから adr i amyci nを除いたものが CP療法である.この 中でプラチナ投与量が最も重要な予後因子であ り,1 7 . 5mg/ m/ we e k以上の dos ei nt e ns i t yがあ るか否かでとくに進行期症例の予後が異なること を報告してきた .今回,後述するタキサン製剤が 卵巣癌化学療法のキードラッグとして導入されて Fi g.1 2. Hypot het i c almodelofcar ci noge nes i sof ovar i ancance r きたので,化学療法剤と予後に関する検討は別稿 -r Tabl e2. Cance r el at edge neexpr es s i oni novar i ancance rbyhi s t ol ogy Hi s t ol ogy K -r as SA MA EA CCA MET p53 RB p16 p19 Smad4 PTEN p51 /1 0 1 0/6 /25 6 /12 1 0/25 1/12 /25 0 /12 1 0/ 25 1/ 12 1/ 12 /7 1 1/ 11 / 1 6 0/ 11 / 0 6 1/5 1/1 2 0/3 /14 2 /18 2 1/14 3/18 /14 0 /18 1 0/ 14 1/ 18 3/6 /6 0 /6 0 /6 0 /7 0 1/ 12 /3 0 / 1 5 0/ 12 / 0 1 / 0 5 0/ 12 / 0 1 SA:s er ousadenocar ci noma,MA:muc i nousadenocar ci noma, EA:endome t r i oi dadenocar ci noma,CCA:c l e arcel ladenocar ci noma, MET:mi xede pi t he l i alt umor -r Tabl e3. Cance r el at edge neexpr e s s i oni novar i ancance rbyFI GO s t age St age K -r as p53 RB 2/1 5 0/7 /23 1 /11 3 3/23 1/11 1/23 1/11 1/ 23 1/ 11 1/ 16 /8 1 2/ 15 / 0 7 0/ 15 0/ 7 I V 0/1 0 0/4 /31 9 /12 1 0/31 1/12 0/31 0/12 0/ 31 0/ 12 0/ 12 /7 1 0/ 10 / 1 4 0/ 10 / 0 4 I I I -I I I I V 2/2 2 0/1 4 /34 4 1 0/4 3 4/34 /43 1 /34 2 0/43 2/ 34 0/ 43 2/ 24 1/ 19 2/ 22 1/ 14 0/ 22 0/ 14 Tot al /77 2/3 6 1 4/7 7 5 ( 6%) (1 8%) (7 %) I I I I I I p16 p19 Smad4 PTEN p51 /77 2/ 2 77 3/ 43 3/ 36 0/ 36 (3 %) (3 %) (7 %) (8%) (0%) 卵巣癌の予後因子に関する研究 147 音波をスクリーニングに用いる試みもなされてい 卵巣癌発生にこれらの癌遺伝子,抑制遺伝子が相 るが 互に関与している可能性が示唆されている(Fi g. ) .教室で検討した癌関連遺伝子の卵巣癌での発 12 期での陽性率が低く,NCIの Cons e ns us Me e t i ngでもこの両者を用いたスクリーニング の有用性は低く一般化することはできないと報告 現異常を Tabl e2 , 3に示す. している.しかし,卵巣癌発生にもとづいてハイ 2 . 進行期別治療戦略 リスク対象者を ) I期,I 1 I期 片側あるいは両側の卵巣に病巣が限局した I a, り込めばスクリーニングも意味 があるとされる. 表層上皮は多 化能を有するため,外方への腫 瘍性発育や,陥入して封入嚢腫 (i )を nc l us i onc ys t )の場合 I b期でかつ組織学的に高 化(Gr ade1 , 2 は手術療法が主体であり,腹式子宮単純全摘術 化をおこすとされて (TAH) ,両側付属器切除術(BSO) ,大網切除術 (OMTX) が標準術式である.しかし妊娠すること いる.そして卵巣表層上皮ないし卵管上皮に類似 のできる能力(妊孕性)の温存を希望する婦人に した漿液性腫瘍,子宮内膜上皮に類似した類内膜 は,患側の付属器切除術を行うがこれだけでも良 腫瘍,子宮頚管腺上皮に類似した粘液性腫瘍など 好な予後が得られる .ただし明細胞癌は転移再 が形成される. 発の傾向が高く,保存手術の適応にはならないと 形成するなどの過程においていろいろなミュラー 管上皮ないし卵管上皮への 卵巣癌発生の危険因子として,未婚,未妊,不 妊症などが挙げられている.これらに加え卵巣腫 されている. このほかの I期症例は再発の危険性が 2 0 %位 瘍が思春期前後には少なく, 年期周辺で多く, ま ある た年齢が増すにつれて少なくなるなどという事実 が必須となる.さらに骨盤内他臓器転移の認めら から,腫瘍発生には内 れる I I期では TAH, BSO,OMTX に加え,傍大 泌的な因子の関与が考え られている.また,反復する排卵による卵巣上皮 の外傷が卵巣腫瘍発生の一因であるとする説もあ ことから上記手術に加えリンパ節の検索 動脈(PA)および骨盤内(Pe l v)リンパ節郭清 (LNX) ,積極的な腫瘍減量手術(c yt or e duc t i on 生が多く,一方経口避妊薬を服用した婦人や多産 s ur ge r y,de bul ki ngs ur ger y)が行われる.術後の 化学療法は必須であり 6コース行う. の婦人,すなわち人工的または自然に排卵が抑制 これらの高危険群早期卵巣癌の化学療法の必要 された婦人には卵巣癌発生が少ないという疫学的 性に関し,最近興味ある報告が発表された.Eur - 調査の結果と符合する.すなわち排卵に伴う表層 上皮の障害と修復の過程で上皮細胞に永続的な ope an Or gani zat i on f or Res e ar ch and Tr e at mentofCance r( EORTC)と I nt er nat i onalCol - DNA の損傷を引き起こし腫瘍化への道を るこ とも推測できる.さらにまた,タルク,マグネシ l abor at i ve Ovar i an Neopl as m t r i al gr oup (I CON)は 19 9 0年から開始した Adj uvantCl i ni - ウム,シリコンなどの外的因子,あるいは喫煙も calTr i ali nOvar i anNeopl as m (ACTI ON)t r i al (対象 :s ) t age I a,I b( gar de 2, 3 ,I c,I I a( al l り,これは排卵誘発剤を 用した婦人に卵巣癌発 発癌に関与しているとされている.食習慣,とく 化が,昨今の卵巣癌発生の増加傾向と関連してい ) gr ade ,c l e arc e l lc ar c i noma)と,1 9 91年から開 始した I (対象 :補助化学療法を行う CON1s t udy るといわれている. かどうか迷う早期卵巣癌)をあわせて解析した. にコレステロール摂取量の増加などの食生活の変 告もあり,第一親等の親族に卵巣癌をもつものの それによるとove r al ls ur vi val(OS) ,r e c ur r e nce f r ees ur vi val(RFS)ともに補助化学療法を行う 相対危険率は 1 卵巣癌発生 7倍以上とされている. ほうが予後良好であった .しかしこの効果は正 増殖に関与するといわれている癌遺伝子としては 確なステージングが行われていなかったサブグ Kr as, c -er bB 2, myc などが,また家族性卵巣 癌家系には BRCA1癌遺伝子が挙げられている. ループのみで認められている可能性があり,正確 さらに p5 ,RB,DCCなどの癌抑制遺伝子が卵巣 3 対する補助化学療法の有用性については不明であ 癌において高率に欠失しているとの報告もあり, る . また以前より,卵巣癌の家族発生についての報 にステージングされて早期癌と診断されたものに 148 落 合 Gyne c ol ogi c Oncol ogy Gr oup (GOG)の GOG15 7でも同様の検討がなされており,高危険 したレジメン(DJ療法)を TJ療法と比較してい る.これによると両群の OS,DFS( di s eas ef r e e 群早期卵巣癌(s ) t ageI a,I b( gr ade2, 3) ,I c ,I I に 対 し car bopl at i n (CBDCA) AUC7 . 5+pa- )に差はないものの,末梢神経毒性,筋肉 s ur vi val 痛,骨痛,四肢脱力感などは DJのほうが有意に良 )を 3コース投 c l i t axe l(PTX)1 75mg/ m ( 3hr 与する群と 6コース投与 す る 群 を 比 較 し た.6 好であることが示され ,これにより標準療法の コース投与群の相対危険度は HR=0 . 67 2( 9 5% CI:0. 41 6 1. 0 8)で,再発頻度も 3コース群 2 7 %, コース群 と コース群が良好で あった . 6 1 9 % 6 残念ながら統計学的有意差は認められなかったが これはサンプルサイズが小さかったためだともい われており,これらの結果をもって高危険群早期 選択 肢 が ひ ろ がった.以 前,CP療 法 と こ れ に (A)を加えた CAP療法の有用性の検 adr i amyc i n 討が行われ, met aanal ys i sで CAP群が勝ってい たが,同様の検討が TJ療法においても行われて いる.TJに e を加え,その有用性を pi r ubi c i n(E) 検討したが,OS,PFSに有意差はみられず,むし 卵巣癌の補助化学療法を省略する根拠とはなりえ ろ毒性が高まり,TEJ療法の意義は乏しいものと 思われる . ず,現時点では I a期,Gr adeIの場合のみ化学療 肝臓実質内転移や遠隔転移の認められる I V期 法を省略しそれ以上に進展したものについては化 は全身状態が良好であれば,腫瘍減量手術を行い 学療法を実施すべきであろう .現在進行中の ついで化学療法を施行する.しかし腫瘍減量手術 プロトコールに GOG17 5があるが,これでは高危 険群早期卵巣癌の術後に CBDCA AUC6+PTX 1 75mg/m を 3コース投与し,その後経過観察群 の遂行が困難な場合には,組織採取,進行期決定 と PTX 4 0mg/ m 毎週 2 4週投与するものであ る. chemot her apy,NAC)その後反応を見てから主た る病変の切除を行うこともある. ) 進行癌(I 2 I I期,I V 期) 骨盤腔をこえ腹腔内に転移浸潤したり,後腹膜 のためのステージング手術(試験開腹術)のみを 行い,化学療法を数コース行って(Neo-adj uvant 3 . 最近の治療的研究 リンパ節への転移の見られる I I I期では腫瘍減量 ) I 1 nt e r valde bul ki ngs ur ge r y( I DS) EORTCにおいて van de rBuur gら は残存 手術と化学療法の併用が標準である.残存腫瘍径 腫瘍径が 1c m 以下となった卵巣癌患者 2 78例に が 2cm 以内に減量できるいわゆる opt i mal s ur - 3コース の CP療 法(cycl ophos phami de+ ci s - ge r yが期待される場合には TAH,BSO,OMTX に加え,傍大動脈および骨盤内リンパ節郭清が行 pl at i n)を行った後,I DSを行った群と行わなかっ た群の予後を比較した.これによれば I DSを行っ われ予後の改善が期待される.しかし残存腫瘍が た群は行わなかった群に比べ,中央値で 6カ月の .術 2cm を超える場合は予後が不良である 後の化学療法は必須であり 6コース行う. 生存 長を認め (p <0 ) ,この手術は有意義であ . 01 ると結論している.一方 Ros eらは GOG15 8にお いて同様の検討を行い,I DSにより予後の差はみ が開発され,I Pacl i t axel( TXL) I I期,I V 期の 進行卵巣癌を対象に TP療法対 CP療法の大規模 られなかったと報告した .これらの結果を詳細 比較試験(GOG1 ) が行われた.これにより TP 11 療法の有用性が示され ,さらに TP療法と TJ に検討すると,初回手術時における婦人科腫瘍専 療法の比較試験で,奏功率,生存期間の同等性が, 毒性のプロフィールの相違が示され,TJ療法の EORTCの研究ではわずか 7 % であったことか ら,初回に婦人科腫瘍専門医による腫瘍縮小手術 ほうが管理しやすいという結論に至った .した が 達 成 で き な け れ ば 3コース の 化 学 療 法 後 に がって現在,TJ療法が標準的化学療法レジメン I DSを行うべきであるとよみかえることができ よう. として,さらに多くの比較試験の対照群として取 り上げられている. Sc ot t i s hGyne c ol ogi c alCanc e rTr i al sGr oup ( (D)に変 SCOTROC)では TXLを doc e t axe l 門医の関与が GOGの研究では 95 % に達し,一方 ) 腹腔内化学療法 2 初回手術時の残存腫瘍径が 2c m 以下になった 症例に対して,経静脈的な c yc l ophos phami deの 卵巣癌の予後因子に関する研究 149 投与に加え,c i s pl at i nの腹腔内もしくは経静脈的 投与が比較された.報告によれば,c i s pl at i nの腹 療法の治療的意義についてはいまだ一定の見解は 腔内投与を行った群はメジアンで 8カ月の生存の 得られておらず,今後も臨床研究として症例が蓄 長を認め ,CP療法における c i s pl at i nの腹腔 内投与は経静脈的全身投与より患者の生存率を 積されていくと思われる. 長させることが示された.しかしながら現在主流 となっている TP療法ないし TJ療法での詳細な 検討はなく,t axan製剤との併用化学療法におけ る腹腔内化学療法の意義については今後の検討課 題である. も有意差は見られなかった .以上より,維持化学 ) 再発症例 5 再発卵巣癌症例に対しては,s e condar yc yt or e duc t i onにより腫瘍摘出が可能であれば,これを 行い,その後,化学療法を行う.Sec ondar ycyt or e duc t i onは完遂できれば予後改善に寄与するこ とが知られている .前回化学療法最終投与から ) Neo-adj 3 uvantc he mot he r apy( NAC) EORTCで は I I I c,I V期 を 対 象 に I DS群 と 6カ月以内の再発・再燃には標準的治療はないが 6カ月以上の再発には初回と同様の白金製剤を含 NAC群の同等性比較検討を行っている.I DS群 では,初回手術時にできる限り腫瘍組織を切除す むレジメンを投与する. その際の奏功率は 4 3 %と 報告されている .また I CON4研究でもプラチ るも s ubopt i malに終わった症例を対象に,3コー ナ感受性の再発癌に対しては PTX+白金製剤が スの化学療法後に I DSを行い,さらに 3コースの PTX を含まないプラチナベース化学療法より有 効であることが示された . 化学療法を追加するものである.一方 NAC群は 術前化学療法(NAC)を 3コース行った後,奏効 例と不変例に de bul ki ngs ur ge r yを行い,さらに 白金製剤が耐性になった症例の対応は困難な場 術 後 3コース の 化 学 療 法 を 追 加 す る も の で あ 合が多いが,初回治療後 6カ月未満で再発した場 合でも白金製剤の有用性があるとする報告もあ る . り ,白金製剤の 4 ) 維持化学療法 一定の化学療法のコースが終了し,臨床的寛解 ( CR)の得られた症例に対し,維持化学療法が必 要かどうか迷うところである.GOG17 8 では TJ 療法後の CR例で,TXL17 )2 5mg/ m ( 3hr 8日 ご と に 3コース 投 与 群 ( 1 2 8例)と 1 2コース 投 与群 (1 3 4例)を比較した.TXLの投与量は神経 毒性のため 1 3例 が エ ン ト リーし た 時 点 で 13 5 用も検討に値する.Taxolは 単剤で 48 % 程度の奏功率を示す .しかし初回治 療に Taxolが われた 場 合 は 救 済 療 法 と し て Taxolの有用性は低くむしろ Taxot er eの方が有 効とさ れ て い る .そ の 他 の 薬 剤 と し て は, Doxi l ,I f os phmi de ,VP1 6 ,CPT11 ,Topot ec an などが有効と報告されている. 本宿題報告の機会を与えていただいた成医会会長 )に減量され,試験が継続された.中 mg/m ( 3hr 間解析で 1 コース投与群の 2 PFSが有意に優れ 栗原敏学長,ならびに座長の労をおとりいただいた産 て い た た め (p =0 . 00 3 5;l og-r ank t e s t , p= )効果安全性委員会 0 . 00 2 3;Cox mode lanal ys i s 臨床研究に直接御指導いただいた恩師,寺島芳輝先生 により試験継続中止が勧告され,以後のエント リーが中止されたため,本試験での OSは求める 婦人科学講座の田中忠夫教授,そして卵巣癌の基礎, に深謝いたします. 文 献 ことができなくなった.したがってこの結果から 予後一 19 1) 癌統計白書一罹患/死亡/ 93. 富永祐 民 ほか編.東京 :篠原出版 ;1 993 . 維持化学療法の長期予後に対する効果を知ること 2) Ochi aiK,Sas akiH,Ter as hi ma Y,Fuku- はできないが,再発時期を遅 させることは事実 であり,この点は評価に値する.一方 TJ療法 6 コースで寛解の 得 ら れ た I cI V 期 症 例 に 対 し, s hi ma M. Pr ognos t i cf act oranal ys i sand t r e at me nt r es ul t s of ovar i an c ancer i n J apan. I ntJTe chnolAs s es sHeal t h Car e -5 t opot e can (1 . 5mg/ m ,day1 ,3週ごと,4コー ス投与する) による維持化学療法群(1 3 7例)と無 1 994;10:40 6-2 5. 3) 寺島芳輝,佐々木寛,横山志郎,落合和徳,植 田国昭,吉川裕之ほか.21施設による進行卵巣 治療経過観察群(1 36例)の比較では PFS,OSと 癌の治療成績 :とくに治療法の相違による生 150 落 存率の差異を中心に.日産婦会誌 1 993;45: -70 363 . 4) Zanet t a G,Chi ar iS,Rot a S,Br at i na G, Maneo A,Mangi oniC. Cons er vat i ve s ur - 合 e pi t he l i alovar i an canc er:r e s ul t s of t wo pr os pect i ve r andomi z ed t r i al s . N EnglJ -7 Med1 990;322:1 021 . 1 2) Hat aeM,Oni s hiY,NodaK,Yakus hi j iM, ge r yf or s t age I ovar i an car ci noma i n Oz akiK,Oc hi aiK,e tal . Randomi z edt r i al women ofchi l dbear i ng age. BrJ Obs t et -5. Gynaecol1 997;104:1030 onadj uvanti vchemot her apy CDDP+CPA ver s usPO chemot her apyCPA f ors t ageI A 5) DemboAJ,DavyM,St e nwi gAE. Pr ognos - ovar i an cance r by Japane s e Gynec ol ogi c t i cf ac t or si npat i ent swi t hs t ageIe pi t he l i al Oncol ogyandChemot her apy St udy Gr oup. ovar i an c ance r . Obs t etGyne col1990;75: -73 263 . Pr ocASCO 1 99 8;14 12366 a. 1 3) Hos ki nsWJ. Sur gi c als t agi ng and cyt or - 6) AhmedFY,Wi l t s haw E. AHe r nRP,Ni col B,Shepher d J,Bl ake P,et al . Nat ur al e duc t i ves ur ger y ofepi t hel i alovar i an c an):15 c er . Canc er1 993;7 1( 4Suppl 3440. hi s t or y and pr ognos i sofunt r eat e ds t ageI 1 4) Hos ki ns WJ,McGui r e WP,Br ady MF, epi t hel i alovar i anc ar ci noma. JCl i nOncol -75 199 6;14:2968 . Bal lH,Be r e kJ S. 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Ovar i an Ne opl as mt r i al:t wo par al l e lr an- Theef f ectofdebul ki ngs ur ge r yaf t e ri nduc- domi zedphas eI I It r i al sofadj uvantc he mo- t i on c hemot her apy on t he pr ognos i si n t her apyi npat i ent swi t hear l ys t ageovar i an advanced epi t hel i al ovari an cancer. car ci noma. J Nat lCance rI ns t2003;95: -12 105 . Gyne col ogi c alCancerCoope r at i veGr oupof 8) Tr i mbosJB,Ver got eI ,Bol i sG,Ver mor ke n JB,Mangi oniC,Madr onalC,etal .I mpact ofadj uvantchemot her apyands ur gi c als t agi ngi near l y-s t ageovar i ancar ci noma:Eur - t he Eur opean Or gani z at i on f or Re s ear ch andTr e at me ntofCancer . N EnglJMed 1 995;3 32:6 2934. 1 6) McGui r e WP,Hos ki ns WJ,Br ady MF, Kuce r a PR,Pat r i dgeEE,Look KY,etal . ope anOr gani z at i onf orr es ear chandTr eat - Cycl ophos phami deand c i s pl at i nc ompar ed me ntofCancer Adj uvantChemot her apyi n wi t h pacl i t axeland ci s pl at i ni n pat i ent s Ovar i an Ne opl as m t r i al . 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Pr ocAm Soc ) Cl i nOnc ol200 1;#8 05.(abs t 20) Ros ePG,Ner e ns t oneS,Br adyM,Cl ar kePear s onD,Ol tG,Rubi nSC,Moor eDH,A phas eI I Ir andomi zeds t udyofi nt e r vals e condar y c yt or e duct i on i n pat i ent s wi t h 151 pacl i t axeli npat i e nt swi t hovar i ancance r: Mul t i c ent erI t al i an Tr i al si n Ovar i an Can)r c er (MI TO-1 andomi ze ds t udy. J Cl i n -42 Oncol200 4;22:2 635 . 2 5) Ei s enkop SM,Fr i edman RL,Spi r t osNM, Ther ol eofs ec ondar ycyt or educt i ves ur ger y i nt het r eat mentofpat i ent swi t hr e cur r ent e pi t he l i alovar i ancar ci noma. Canc er2 000; -53 8 8:144 . 2 6) Mar kmanM,Rot hmanR,HakesT,Rei chmanB,Hos ki nsW,Rubi nS,etal . Se cond- advance ds t age ovar i an car c i noma wi t h l i nepl at i num t he r apyi npat i e nt swi t hovar - s ubopt i malr es i dualdi s eas e:aGyne col ogi c i ancanc erpr e vi ous l yt r eat e dwi t hci s pl at i n. JCl i nOncol199 1;9:38 9-9 3. Oncol ogy Gr oup s t udy GOG1 52. 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Phas e I I Ir andomi zedt r i alof1 2ver s us3mont hsof mai nt enance pac l i t axe li n pat i e nt s wi t h advance d ovar i an c anc er af t er c ompl e t e r e s pons et o pl at i num and pacl i t axe l bas e d chemot her apy:A Sout hwes t Oncol ogy Gr oup and Gynecol ogi c Oncol ogy Gr oup t r i al . JCl i nOnc ol2 003;2 1:24 605. c anc er . JNat lCancerI ns t1994;86:18 2 4. 2 9) Ve r s hr aegenCF,Si t t i s omwongT,Kudel ka AP,Guede sE,St egerM,Ne l s on-Tayl orT, e tal . Doc et axe lf orpat i e nt swi t hpacl i t axe l r e s i s t ant mul l er i an car ci noma. J Cl i n -9. Oncol200 0;18:2 733 3 0) Ros ePG,Bl es i ngJA,Bal lHG,Hof f manJ , 24) De Pl aci do S,Scambi a G,DiVagno G, War s halD,De Ge es tK,etal . A phas eI I -r s t udy ofdocet axeli n pacl i t axel e s i s t ant Nagl i e r iE,Lombar diAV,Bi amont eR,et ovar i an and per i t oneal car ci noma:a al . 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