低電圧指令 2006/95/EC への適合のためのガイド (第2版)

e-OHTAMA, LTD.
低電圧指令 2006/95/EC への適合のためのガ イド (第 2 版)
株式会社 e・オータマ 業務グループ 佐藤智典
2013 年 10 月 1 日
目次
1
概要
1
概要
この指令は「特定の電圧限度内での使用のために
1
設計された電気機器に関する加盟国の法律の近似化
2
適用範囲
2.1 除外品目 . . . . . . . . . . . . . . . .
2.2 コンポーネントの扱い . . . . . . . .
3
4
5
低電圧指令の目的
1
1
2
3.1
電気機器の安全の確保 . . . . . . . .
2
2
3.2
自由な流通の保証 . . . . . . . . . . .
3
低電圧指令への適合の流れ
ような意味の長いタイトルを持ちますが、通常は単
に低電圧指令 (low voltage directive) と、あるいは
その頭文字を取って LVD と呼ばれています。
本稿では、この指令の概要や適合のための手続き
について、簡単に解説します。なお、正確な情報に
ついては、指令本文 [1] やその他の公式な資料を参
照して下さい。
3
4.1
4.2
規格の選択
4.3
4.4
4.5
技術文書の作成 . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . . . . . . .
規格への適合性の評価 . . . . . . . .
3
3
適合宣言書の作成 . . . . . . . . . . .
CE マーキングの貼付 . . . . . . . .
3
4
4
5.1
設計段階での配慮 . . . . . . . . . . .
5
5
5.2
5.3
技術的要求事項 . . . . . . . . . . . .
. . . . . . . . .
5
6
5.4
低電圧指令の改訂 . . . . . . . . . . .
7
補足
適合性の達成と維持
のための欧州議会、並びに欧州閣僚理事会指令」の
適用範囲
2
低電圧指令は 、特に除外されたものを除く、交
流 50∼1000V 、あるいは直流 75∼1500V の電圧範
囲†1で使用するように設計された電気機器に適用さ
れます。
2.1
除外品目
除外されるのは、以下のものです:
6
参考資料
7
• 爆発性の 雰囲気で 使用するための 電気機器
(ATEX 指令 94/9/EC でカバーされる)
• 放射線医学、及び医療用の電気機器 (医療機器
指令群 93/42/EEC 、90/385/EEC 、あるいは
98/79/EC でカバーされる)
• 貨物用、及び 乗客用リフトのための電気部品
(リフト指令 95/16/EC でカバーされる)
• 電力量計 (計量器指令 2004/22/EEC でカバー
される)
†1 これは入力や出力の電圧であり、電気機器内部でのみ用い
られる電圧は含みません。
1
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• 家庭用のプラグ/ソケット (国ごとの規制の対
象となることがある)
1. 一般的条件
(a) 電気機器を安全に 、また意図されたよう
• 電気フェンス制御装置
に使うために必要な情報が示されている
こと
• 加盟国が加盟する国際機関が定めた安全条項に
適合する、船舶、航空機、あるいは鉄道で使用
(b) ブランド 名か商標が明確に表示されてい
ること
するための特別な電気機器
(c) 電気機器とその部品が 、安全かつ正し く
組み立てられるように作られていること
コンポーネント の扱い
2.2
(d) 意図された用途で使用されている限り危
一般に、他の電気機器に組み込むためのコンポー
険に対する保護が与えられるように設計
ネントも、除外とはなりません。
され 、製造されていること
但し 、低電圧指令の適用に関するガイド ライン [2]
2. 電気機器から生じる危険に対する保護
は、他の電気機器に組み込むように設計された基本
的なコンポーネントで、その安全性がそれがどのよ
(a) 直接的あるいは間接的な接触から生じ 得
る傷害やその他の危害の危険に対して人
や飼育動物が適切に保護されていること
うに組み込まれるかに強く依存し 、それがどのよう
に組み込まれるかを全面的に考慮しなければ安全性
の評価を行なえないものは、この指令でカバーされ
(b) 危険を生じるような温度、アーク、あるい
ないと言っています。このガ イド ラインは、そのよ
は放射を生じないこと
うなコンポーネントの例として、IC 、トランジスタ、
整流器、コンデンサ、インダクタ、抵抗、フィルタ、
(c) 電気機器によって引き起こされる非電気
的な危険に対して人、飼育動物、及び財
産が適切に保護されていること
コネクタ、プリント板実装型リレーなどを示してい
ます。
(d) 予見し 得る状況に対して絶縁が適切であ
EU に出荷される機器に組み込むために販売され
るが 、それ自身としては EU 内で流通させられな
いコンポーネント (例えば 、コンポーネントを日本
ること
3. 電気機器に対する外部からの影響によって生じ
得る危険に対する保護
国内の製造業者に納入し 、それを組み込んだ機器が
EU で販売される場合) については、低電圧指令を
適用する必要はありません。†2
(a) 人、飼育動物、及び財産が危険にさらさ
れないように 、期待される機械的要求に
適合すること
低電圧指令の目的
3
電気製品を EU 内で自由に流通させられるようにす
(b) 人、飼育動物、及び財産が危険にさらさ
れないように 、非機械的な影響に耐える
こと
ることを、主な目的としています。
(c) 予見し得る状況や過負荷において、人、飼
低電圧指令は、電気機器の安全を確保しながら、
育動物、及び財産を危険にさらさないこと
3.1
電気機器の安全の確保
より具体的な要求は整合規格で定められており、該
当する整合規格の要求に適合する電気機器は指令の
低電圧指令は、安全の確保のため、電気機器が達
安全目標を満足しているものと見做されます。†3
成すべき安全目標 (safety objectives) として次のよ
うなものを挙げています:
†2 ですが 、このような場合でも、納入先から CE マーキング
を付けることを要求されることがあるようです。このような場
合、CE マーキングの貼付には、該当する指令で定められた全て
の義務と責任が伴うことに特に注意して下さい。
†3 指令は、この概念を指すために「適合性の推定 (presumption
of conformity) 」という表現を用いています。
2
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3.2
自由な流通の保証
(パート 2 規格) がある場合には、一般要求事項
(パート 1 規格) と併せてそれも適用します。
低電圧指令の発効に伴って、EU 内での電気製品
との独自の規制 (例えば 、指定された機関による認
• 安全の全ての側面をカバーするため、複数の規
格の適用が必要となることもあります。例えば、
可や認証の要求) は撤廃されています。つまり、低
レーザーを使用している機器は、その機器に該
電圧指令の適用対象となる機器は、低電圧指令を含
当する規格でレーザーの安全の規格が参照され
む、該当する全ての指令の要求に従うことによって、
ていなかったとしても、レーザーの安全の規格
EU 内のどの国においても流通させられることにな
ります。
も適用することが必要となるでしょう。
の安全性に関する技術基準は統一され 、また国ご
適当な整合規格がない場合、その代わりに国際規
低電圧指令の要求への適合性は自己宣言によって
格や国家規格を使用することも可能です。ですが 、
示し 、この際に第三者の関与 (例えば 第三者認証)
既に整合規格の整備が進んでいますので、これが必
を受ける必要はありません。†4 これにより、機器
要となるケースは減っているでしょう。
の出荷に先立って認証や認可を得なければならない
また、規定上は、適当な規格があるかど うかにか
場合と比較して製造業者の負担は軽減され、また出
かわらず、規格を適用せずに安全目標 (§3.1) への
荷までの時間の短縮が可能となります。
適合を示し 、適合宣言を行なうことも認められてい
ます。ですが、これは容易なことではなく、この方
法を用いるケースはかなり稀だと思われます。
低電圧指令への適合の流れ
4
4.1
規格の選択
4.2
適用する規格は、通常は、低電圧指令のもとで発
規格への適合性の評価
規格を適用する場合、選択した規格の要求に適合
行された整合規格†5 の中から、次のような原則に従っ
しているかど うかを、設計の評価 ( インスペクショ
て選択します:
ン ) 、あるいは試験に基づいて評価します。
低電圧指令は、この評価の実施に何ら資格を要求
• その 規格が 適用可能で あ るかど うか の 判断
は 、それぞれの規格に明記されている適用範
囲 (scope) に基づいて行ないます。
していません。従って、低電圧指令の適合手続きの
上では、この評価は社内の任意のスタッフが行なう
ことも、外部の任意の試験所に依頼することも可能
• 基本的には、適用する規格は機器の意図された
用途によって決定します。例えば 、コンピュー
です。しかしながら、適切な評価のためには規格に
タを内蔵した測定器はあくまでも測定器であ
の不足は重大な不適合の見落としを引き起こす可能
り、情報技術機器ではありません。
性があります。リスクの低減のためには、信頼でき
対する充分な理解が必要であり、その理解やスキル
るスタッフや外部試験所を選択することが重要とな
• 適用可能な規格が複数ある場合は、その機器に
るでしょう。
より相応しい (通常は、適用範囲がより限定的
評価の結果は、通常、評価の結果を規格のそれぞ
な) 規格を優先します。該当する個別要求事項
れの条項ごとに記載した試験報告書としてまとめら
†4 これは 、低電圧指令の対象となる製品に対する第三者認証
れ、これは技術文書の重要な一部となります。主要
の体制がなくなったことを意味するわけではありません。低電
圧指令がカバーする範囲においては第三者認証が法的に要求さ
れることはありませんが 、それとは無関係に 、製造業者は自ら
の判断で第三者認証を求めることが可能です。また、製品の種類
や対象とする市場によっては 、認証マークの付いていない製品
は販売上不利となることもあるかも知れません。
†5 整合規格は、それがいずれかの加盟国で発行された時から、
全ての加盟国で適合性の推定を得るために使用できるようにな
ります。欧州官報 (Official Journal)[3] で整合規格のリストが
公表されていますが 、整合規格をいつから低電圧指令のもとで
使用できるようになるかに関しては 、このリストは参考として
の扱いとなります。しかし 、大抵は規格はこのリストから探せば
充分で、またその方が便利でしょう。
な規格に対する試験報告書のフォーム (TRF) は 、
IEC[6] などから購入できます。
4.3
技術文書の作成
技術文書は指令の要求への適合の根拠を示す文書
であり、指令は、少なくとも以下の情報を含めるこ
とを要求しています:
3
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• その機器に関する説明
4.4
• コンポーネント、サブ・アセンブリ、回路など
適合宣言書の作成
適合宣言書 (Declaration of Conformity; DoC)
の図面類
は、その機器が指令の要求に適合する旨を、製造業
者 (あるいはその任命された代理人) が宣言する文
• 上記の図面類とその電気機器の動作の理解に必
要な情報
書であり、以下の情報を含みます:
• 適合を宣言する指令のリスト
• 全面的に、あるいは部分的に適用された規格の
一覧
• 宣言の対象となる機器を同定する、名称、型式、
製造番号などの情報
• 規格を適用しなかった場合、指令の安全側面を
満足させるために用いた手段の説明
• 適用した整合規格のリスト (規格の参照には 、
年、及び Amendment を含める)
• 設計上の計算、実施した検査の結果など
• 該当する場合、適合を宣言する規定のリスト
• 試験報告書
• 製造業者、もし くは EU 内の代理人の名前と
住所
• 適合宣言書
これに加えて 、以下のものも含めることが多いで
• 適合宣言書に署名する人に関する情報 (所属、
肩書など )
しょう:
• 仕様書、取扱説明書、設置指示書など
• 適切な権限を持つ個人†7による署名
• 安全関連部品の安全性に関する証明書
• CE マーキングが最初に付けられた年の下 2 桁
技術文書は、EU の公用語のいずれか (例えば英
適合宣言書も、技術文書と同様、機器の出荷から
語) で書く必要があります。技術文書に含めようと
10 年が経過するまでは EU 内で保管することが求
する資料 (特に、図面などの) に日本語が含まれてい
められます。適合宣言書を顧客に提供することは義
る場合も少なくないでしょうが、日本語を読めない
務付けられてはいませんが、多くの製造業者は、適
専門家でもその資料を理解できるように、最低限、
合宣言書のコピーを機器に添付している (例えば 、
重要な部分についてだけでも英語で書く (あるいは
取扱説明書に含めることで ) ようです。
英語を併記する) ようにすべきです。
複数の指令 (例えば 低電圧指令と EMC 指令) へ
4.5
の適合宣言を行なう際には、単一の技術文書でそれ
ら全ての指令のための文書を兼ねさせることが可能
CE マーキングの貼付
機器が指令の要求に適合していることを示すため
です。但し 、その場合にはそれらの指令が技術文書
の方法として、CE マーキング (図 1) と呼ばれるも
に対して何を要求しているのかを確認し 、それらの
のが規定されています。指令の要求への適合性を達
要求を同時に満足させることが必要となります。
成したならば 、最終的に、機器に CE マーキングを
技術文書は、機器の出荷から 10 年が経過するま
貼付することによって、その機器を EU 内で自由に
では EU 内†6で保管し 、当局からの要求があったな
流通させられるようになります。
らば速やかに提出することが求められます。製造業
CE マーキングは、認証マークのように外部の機
関から取得するものでなく、指令の要求に適合して
いるという宣言の証として、製造業者が自らの責任
者が EU 内にないならば 、技術文書の保管の責任は
EU 内の代理人 (さもなくば輸入業者) が持ちます。
の元に機器に貼付するものです。
CE マーキング (図 1) は、原則としてその機器自
身に付けます。但し 、機器に付けることが不可能な
†7 誰が「 適切な権限を持つ」かは 、適合宣言を行なう組織自
身の判断によります。また、この個人は、EU 内に居住している
必要はありません。
†6 EMC
指令とは異なり、低電圧指令では EU 内での保管が
明示的に要求されています。
4
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また、安全性を確認済みの部品を正しく使用し
ている場合、その部分については評価を大幅に
省略できることがあります。
• 安全に関係する購入部品や材料については、そ
の安全性の証拠となるものを事前に入手し 、内
容を確認しておく。
図 1: CE マーキング
このような部品や材料については、第三者機関
(灰色の線は補助線であり、マークの一部ではない)
が発行した証明書などを事前に入手し 、その内
容が適切であるかど うかを確認しておいた方
が確実でしょう。一般に、カタログや仕様書の
場合 (例えば 、それが小さ過ぎるために ) には、そ
「低電圧指令適合」や「 EN 60950-1 適合」のよ
の包装や添付文書に付けることも認められます。
うな記載は、充分な証拠とは言えません。充分
CE マーキングは、高さが 5mm 以上であり、か
つその形状の比率が保たれている限りは、任意に拡
大/縮小することができます。このマーキングは、容
な証拠を入手できない、あるいはその部品や材
易に見ることができ、かつ容易に剥がれたり消えた
後の段階になってわかった場合、その部品や材
りしないような方法で行なう必要があります。
料を他のものに変更せざるを得なくなることが
CE マーキングは 、その機器に適用される、CE
マーキングの貼付を規定している全ての指令への適
合を示すものとなります。例えば、その機器が EMC
あります。
ド、電源プラグ/ソケット、電源スイッチ、電
指令の対象にもなる場合、その機器に低電圧指令へ
源フィルタ、電源フィルタ用コンデンサ、ワイ
の適合のみに基づいて CE マーキングを付けること
ヤ、ヒューズ、トランス、スイッチング電源、
は認められません。
基板、プラスチック材、絶縁テープなどが挙げ
料がその機器での用途に適切ではないことが最
このような部品や材料の例としては、電源コー
られます。
補足
5
5.1
技術的要求事項
5.2
設計段階での配慮
適合を速やかに達成し 、またその達成のために必
具体的な要求事項はそれぞれの規格ごとに定め
要なコストを低減するためには、設計段階で次のよ
られますが、一般には、次のようなことが要求され
うな点に留意しておくことが望ましいでしょう:
ます:
• 危険な箇所 (危険な電圧が印加される箇所、可
動部など ) に人が接近できないこと
• 指令の安全目標 (§3.1) や規格の基本的な要求
(§5.2) を理解し 、基本設計の段階からそれらの
要求に留意する。
• 人が触れることのできる箇所の温度が、火傷の
設計が完了した後で初めて規格への適合を考え
危険を生じるほど 高くならないこと
た場合、大幅な設計変更や、コストや手間を要
• 各部の温度が、発火や絶縁の劣化などの危険を
する対策を余儀なくされることがあります。
生じるほど 高くならないこと
• 規格への適合性を示しやすいように設計する。
• 危険な放射 (レーザー、電磁波、放射線など )
を生じないこと
例えば 、本質的に危険な部分 (例えば AC 電源
に関係する部分) とそれ以外の部分を明確に分
離することで、その機器の多くの部分について
• 筐体が充分な強度を持つこと
詳細な安全性の評価を省略できるようになり、
• 予期し得る使用状況で転倒する危険がないこと
従って適合性確認のための時間とコストを大幅
• 絶縁が適切であること
に低減できることがあります。
5
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• 保護接地 (必要な場合) が適切であること
• 量産時のばらつき— ある型式の機器のサンプ
ルが試験に合格したという事実は、同じ型式の
• 火災を生じる危険がないこと
全ての機器が同一の試験に合格することを保証
• 漏洩電流が大き過ぎないこと
するものではありません。製造業者は、実際に
• 単一故障状態でも安全が損なわれないこと
出荷されるそれぞれの機器が技術文書に示され
た通りに製造されており、またそれらが指令の
• 必要な表示が適切に行なわれていること
要求を満足していることを確かとするために必
• 取扱説明書の記載が適切に行なわれていること
要な手段を講じる必要があります。
このための手段の例としては、製造工程の適切
5.3
な管理や、適切な検査 (例えば 、機器が正しく
適合性の達成と維持
組み立てられていることの目視確認、完成品に
対する試験の実施など ) の実施などが挙げられ
所定の適合手続きに従って適合宣言を行ない、CE
ます。
マーキングを付けさえすれば 、それで全てが完了と
いうわけではありません。
• 部品や工程の変更— 継続的に生産される機器
指令の要求への適合性を確かとし 、またそれを維
においては、途中で部品や工程の変更が必要と
持するために、次のような点についても配慮するこ
なることがあるかも知れません。そのような場
とが必要となります。
合、必要に応じて再評価を行ない、変更後の機
• 使用上の注意— 実際の使用状況で安全性が達
器が要求を満足することを確かとする必要があ
成/維持されることを確かとするために、組み
ります。
立て、設置、保守、あるいは使用に際して何ら
• 整合規格の改訂— 整合規格は、その改訂、ある
いはそれよりも限定的な適用範囲を持つ整合規
かの注意が必要である場合には、必要な全ての
情報を関係者に提供する必要があります。
格の制定に伴って、別の整合規格によって置き換
この情報は、対象となる人がその内容を正しく
えられることがあります。この場合、置き換えら
理解し 、その指示に従うことができるものでな
れた整合規格は欧州官報 (Official Journal)[3] で
ければなりません。例えば 、非専門家による設
規定された期日 (date of cessation of presump-
置が想定される機器の設置指示に技術的な知識
tion of conformity of the superseded standard)
や技能を必要とするような内容が含まれていた
以降は適合性の推定を与えなくなりますので、
場合、その指示が守られると想定することはで
それ以降に出荷される機器について適合性の推
きないでしょう。
定を得るためには、新しい整合規格の適用が必
要となります。†8†9
• 安全目標の達成— 整合規格の全面的な適用に
よって安全目標 (§3.1) への適合性の推定を得る
ことができますが、これはその製品が安全であ
ることを保証するものではありません。また、
†8 それ以前に EU 内で出荷された機器にまで遡って新しい規
格を適用する必要はありません。但し 、製造業者の EU 内の事
業所などに機器が移送された時点ではその機器はまだ出荷され
てはいないと考えることができますので、そのような在庫品に
ついては新しい規格の適用が必要となるでしょう。なお、ここで
「 機器」と言っているのは機器のそれぞれの個体のことであり、
ある型式の機器全体を指しているのではないことに注意して下
さい。また、新しい規格に適合させるために何らかの変更が必
要であった場合には特に 、出荷済みの製品に関しても何らかの
処置を行なうべきかど うかを製造物責任の面からも考えること
が必要となるかも知れません。
†9 §4.1 で述べたように、整合規格の適用は必須ではありませ
んので、この場合に必ず新しい整合規格を適用しなければなら
ないというわけではありません。しかしながら 、古い整合規格
はもはや適合性の推定を与えませんので、新しい整合規格を適
用しないのであれば 、整合規格の適用による適合性の推定の恩
恵なしに、安全目標への適合を示すことが必要となります。
実際にその機器が充分に安全でなかったことに
よって事故が起きてしまったならば 、規格に適
合しているという理由だけで免責されるとは
限りませんし 、たとえ法的に責任を追求されな
かったとしても信頼を損なうことになる可能性
は高いでしょう。
規格への適合は、それ自身を最終的な目標とし
て考えるのではなく、安全を達成するための手
段の1つとして考えるようにした方が良いで
しょう。結局のところ、製品は安全でなければ
なりません。
6
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5.4
低電圧指令の改訂
2006/95/EC は 2007 年 1 月に発効し 、それまで
使われてきた 73/23/EEC を置き換えました。です
が、これは 73/23/EEC とそのアメンド メントをま
とめて再発行したものであり、その内容に本質的な
変更はありません。
近い将来、NLF (New legislative framework)[7]
への整合化のための改訂が予期されます。
6
参考資料
[1] Directive 2006/95/EC of the European
Parliament and of the Council of 12
December 2006 on the harmonisation
of the laws of Member States relating
to electrical equipment designed for use
within certain voltage limits
http://ec.europa.eu/enterprise
/sectors/electrical/lvd/
[2] Guidelines on the application of Directive 2006/95/EC
http://ec.europa.eu/enterprise
/sectors/electrical/lvd/
[3] http://eur-lex.europa.eu/en/index.htm
(Official Journal of the European Union)
[4]
http://ec.europa.eu/enterprise
/policies/european-standards
/harmonised-standards/new-approach en.htm
(The “New Approach”)
[5]
http://ec.europa.eu/enterprise
/policies/european-standards
/harmonised-standards/low-voltage/
(Harmonised Standards – List of Directives
and Subjects)
[6] http://webstore.iec.ch/
(IEC Web Store)
[7] ’New legislative framework’ for marketing of products, European Commission
http://ec.europa.eu/enterprise/policies
/single-market-goods/internal-marketfor-products/new-legislative-framework
/index en.htm
c 2008–2013
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7