3. Discovery CT 750HDが もたらす空間分解能の向上

Cardiac Imaging 最前線 最前線 ─ 最新 CT がもたらすイノベーション
Ⅰ 循環器画像診断の新ストラテジー
─心臓CTの臨床:Routine & Topics
3.Discovery CT 750 HD が
もたらす空間分解能の向上
陣崎 雅弘 / 田波 穣 / 栗林 幸夫 慶應義塾大学医学部放射線診断科
画像再構成法の開発や,検出器列数の
出器,サンプリング技術を開発することに
り,通常撮影においては 2496 ビュー/ 回
増加,ガントリ回転速度の高速化という
よって空間分解能の向上を実現している。
転,心臓撮影においては 1662 ビュー/ 回
ここ数年間のアルゴリズム,ハードウエア
の向上によって,心臓 CT イメージングが
研究領域からより臨床的な検査となった
ことは,2008 年の診療報酬改定において
空間分解能向上の効果
HDCT は,ガーネットの結晶構造を
転に増加したことによって,高周波成分
を延ばした再構成関数を用いた画像再構
成が可能となり,面内空間分解能が向
上している。
冠動脈 CT 加算が認められたことからも知
利用した新しい X 線検出器“Gemstome
まず,視覚的な評価のためスリットファ
ることができる。一方,冠動脈狭窄の診
ディテクタ”を搭載している。この検出
ントムをセンター,オフセンターに置い
断能についても,多施設研究の報告がい
器は,従来の X 線検出器と比較して,
て,VCT,HDCT 両者を用いて心臓撮
くつかなされている。検出器列数 64 列,
X 応答速度が約 100 倍の 0 . 03μs,40 ms
影モードで撮影した。VCT に関しては
後残光特性が 1 / 4 の 0 . 001%まで改善し
Standard 関数,HDCT では高空間分解
(GE 社製:以下,VCT)を用いた多施設
ており,高速応答が特長の 1 つである。
能モードで撮影し,HD Standard 関数
共同研究“ACCURACY”においては,有
X 線検出の高速化はサンプリング数の増
を用いて再構成している。オンセンター
意狭窄を 50%としたときの感度,特異度,
加を可能とする。空間分解能の改善には,
では VCT は 7 lp/cm,HDCT は 9 lp/cm
陽 性 適 中 率, 陰 性 適 中 率 がそれぞれ
検出器の細分化あるいはサンプリングの
までのスリットが観察でき,またオフセ
95%,83%,64%,99%と報告され,冠
稠密化の 2 つの方法があるが,HDCT で
ンターでは VCT は 5 lp/cm,HDCT は
動脈 CT 検査の有効性が示唆されている 1)。
は後者の方法を用いて空間分解能の改
7 lp/cm までを観察でき,いずれにおいて
しかし,依然として限界もある。重度
善を実現している。従来の 64 列 CT と比
もHDCTの描出能が改善している(図1)。
石灰化病変における狭窄率の評価の困難
較してチャンネル方向のサンプリングを
また,ワイヤファントムを測定して,
回転速度 0 . 35 秒の「LightSpeed VCT」
さは,偽陽性病変を増やし,診断能を低
高密度化し,さらに回転方向のサンプリ
心臓撮影モードにおける変調伝達関数
下させる要因となる。ステント内再狭窄の
ングの指標であるビュー数が 2 . 5 倍とな
(MTF)を計測し,HDCT と VCT の面
評価も,3 mm 以下のステント径に関して
は困難なことが多い。また,冠動脈 CT に
期待される役割として CT 値計測による冠
動脈プラークの性状評価があるが,小さな
ROI を用いての CT 値計測は十分な精度
を維持できていない。これらの問題の根本
的な原 因は,C T 値の高い高 吸 収 体の
“blurring”によるボケが原因である。言い
換えれば,空間分解能が向上すれば,こ
9 lp/cm
(0 . 56 mm)
7 lp/cm
(0 . 71 mm)
a:ノーマルモード(オンセンター)
b:高分解能モード(オンセンター)
5 lp/cm
(1 . 0 mm)
れら複数の問題点を克服できることになる。
2008 年 12 月に導入した「Discovery
7 lp/cm
(0 . 71 mm)
CT 750 HD」
(GE 社製:以下,HDCT)は,
現行 CT の性能を単純に拡張したものでは
c:ノーマルモード(オフセンター)
なく,CT の構成要素である X 線管球,検
図 1 スリットファントムによる空間分解能の検討
10 INNERVISION (25・1) 2010
d:高分解能モード(オフセンター)
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