No2

第11回 都市デザインの手法 (3)高さのコントロール
都市デザイン
No.2 海外の事例
3. 眺望による高さのコントロール
(1)イギリスの戦略的眺望(ロンドンを中心に)
□都市計画の基本的な仕組み
・ ・プラン Development Plan
長期間の を経て定めた都市計画の基本方針
保全すべきあるいは促進すべき都市 などを記述
プランナーの 的嗜好による判断を避ける
・一般的開発規制(計画 制度) → プランナーの裁量
原則として、全開発行為を 制度によって に規制
□ Strategic View の指定
・1992 年 中央政府指定による 的に重要な眺望
図2 戦略的眺望による規制の
考え方、ロンドン(出典:DoE,
1990)
・ロンドン内 10 の戦略的眺望の指定
・眺望対象:セント・ポール寺院など
高 さ 規 制 区 域( ビ ュ ー イ ン グ コ リ
ドー)は、眺望点と幅 300m で設定
した対象を結ぶ区域。広角眺望協議
区域は、眺望限界点と対象の両側を
それぞれ結んだ内側の区域。背景協
議区域は、眺望限界点から見て対象
物の背後に指定される区域。
・眺望点: アクセスが可能で標高がある など
□規制等の内容
・ビューイング・ Viewing Corridor =高さ規制区域:
眺望点と幅 300m で設定した対象ランドマークを結ぶ区域
高さ制限平面を超える建築物の原則 ・ 眺望協議区域 Wider Setting Consultaiton Area
各眺望点の両側に眺望 点を設定
図1 戦略的眺望(Strategic View)、ロンドン(出典:City of Westminster, 1994)
国家的に重要な重要な眺望として、公式的には 1992 年から始められた。現在、ロンドンに 10 の戦略的眺望が指定されている。中央政府からの
指示を受けた地方政府は、それぞえ r の都市計画に眺望保全措置を反映させることになる。ロンドンに指定されている眺望対象は、円国のラン
ドマークであるセントポール大聖堂もしくは国会議事堂である。眺望点は、すべてが公園などの公共的アクセスが可能な場所である。
図3 戦略的眺望規制(セントポール大聖堂)における高さ制限、ロンドン(出典:DoE, 1990)
背景協議区域の奥行きは、眺望によって異なり、2.5 〜 4km で設定されている。上の例の場合は 2.5km。背景協議区域は、ランドマークの後ろ
に屏風のような建築物が建設されることを避け、ランドマークそのもののスカイラインを維持するためである。高さの閾値を超える開発に関し
ては、一般的に抑制的で、ランドマークの眺望を乱さないよう協議による誘導が行われる。
対象ランドマークと結んだ内側の区域
眺望に影響を与える開発は一般に ・ 協議区域 Background Consultaiton Area
眺望限界点から見て対象物の に指定される区域
奥行き 2.5 〜 4km
高さの閾値を超える開発に関しては抑制的 → (2)パリの 規制 ☞ モンパルナス・タワー建設
□基本的考え方
・ある特別な を持つ景観を阻害する建築物の規制
→ パリの 地の一体的保護
・フュゾー= 体:
建造物の と眺望者を結ぶ平面とその地表面への投影と
が形成する立体 → 物のボリュームが許される範囲
図4(上) フュゾー規制の基本的な考え方、パリ市
図5(右) フュゾー規制の3つのタイプ、パリ市
図6(下) シャンゼリゼにかかるフュゾー規制 (No19b)
1977 年、パリの土地占用計画において、その景観の総合的保存システ
ム「フュゾー規制」が策定された。図4は、フュゾー規制の基本的理念
を図化した一例で、ある歴史的記念物に対する景観が保護対象になって
・ :ある眺望地から対象物への眺望
おり、その背景に阻害する建造物が出現するのを阻止するものである。
・ :歴史的市街地や建造物群の一部もしくは全ての見晴らし「フュゾー」とは、建造物の棟線の両端と眺望者を結んだ2直線が形成
する平面とその地表面への投影が形成する立体であり、背景側にある建
・ :街路とその両側の町並みの「谷」の焦点
築物が「フュゾー」の中に収まっていればよいという考え方である。パ
リでは、図5に示すように、その景観の特殊性から、①「パースペクティ
□フュゾーの詳細プラン例:シャンゼリゼ
ヴ」、②「パノラマ」、③「切り通し」の3タイプのフュゾーを運用して
いる。パリ市では、1977 年の創設から今日まで、合計 48 が設定されて
・パリ市内に 48 設定 → ほぼ全市上空
おり、ほぼ全市上空を覆っている。図6はその中で最も典型的なもので
あるシャンゼリゼのフュゾーである。また、フュゾーの軸に対して垂直
・チェイルリー庭園からシャンゼリゼ大通り、 門
方向の移動を考慮していることも応用されている点である。
□フュゾー規制のバリエーション
・凱旋門を照準とし、その ラインに上限高度面決定の参照線
・幅 800m まで開く「 」の保護
・一般的欠点: の自治体の範囲内⇒ラ・デファンスは対象外
4.サンフランシスコ市のアーバンデザイン施策
□ ・プラン:都市計画に関わる最高文書
・4課題:都市 、保全、主要な新規開発、 住区環境
・構 成:人間的欲求、 、基本原則、方針
□特徴的な例:
・ :丘の形状との関係→高いところをより高く
・ :丘の中腹の高層建築物による眺望の阻害
・周辺との :スケールの への配慮
参考文献:
1)西村幸夫+町並み研究会、
「都市の風景計画、欧米の景観コントロール 手法と実際」
、
学芸出版社、2000
図7(左)
アーバンデザイン・プランに示された景観規制、
サンフランシスコ市(出典:City and County of San Fransisco,
Master Plan, 1995)
サンフランシスコ市では、都市計画のマスタープランのなかにアー
バンデザイン・プランが位置づけられている。その具体的な内容
は、都市パターン(city pattern)
・保全(conservation)
・主要な新
規開発(major new development)
・近隣住区環境(neighborhood
evironment)の4つの課題に分けられている。そして、それぞれに人
間的欲求(human needs)
・目的(objective)
・基本的原則(fundamental
principles)
・方針(policies)の4つが示されている。ここに示すのは、
スカイライン、眺望、スケール、周辺との連続性といった特徴的なも
のである。スカイラインは、「高いところはより高く」という考え方
になっている。
図8(上)
ダウンタウン・プラン内のファサード規制、サン
フランシスコ市(出典:City and County of San Fransisco, Master
Plan, 1995)
マスタープランの区域内では、1997 年までに市内 11 の地区について
地区計画が制定されている。これらの地区では、景観的側面として、
アーバンデザイン・プランを各地区の特性に即して詳細化し、1歩踏
み込んで規制を加えている。最も広く知られているダウンタウン・プ
ランを例にとると、7つの事項(商業スペース、住宅スペース、オー
プンスペース、歴史的環境の保存、都市形態、都市内移動、耐震安全
性)に関して、それぞれ目的、方針が示される構成になっている。アー
バン・デザインに強く関するものとしては、都市形態の項におけるファ
サード規制がある。