' ' Title 圃場還元利用されている実際的な牛ふん尿堆肥に含ま れる腐植酸およびフルボ酸の化学的特徴 Author(s) 李, 香珍, 谷, 昌幸, 相内, 大吾, 小池, 正徳, 倉持 , 勝久, LI, Xiangzhen, TANI, Masayuki, AIUCHl, Daigo, KOIKE, Masanori, KURAMOCHI, Katsuhisa Citation Issue Date URL Rights 日本土壌肥料学雑誌, 80(4): 335-346 2009 http://ir.obihiro.ac.jp/dspace/handle/10322/2697 日本土壌肥料学会 帯広畜産大学学術情報リポジトリOAK:Obihiro university Archives of Knowledge 335 圃場還元利用されている実際的な牛ふん尿堆肥に含まれる腐植酸および フルボ酸の化学的特徴* 李 キ ワ ド 香 珍 1・谷 昌幸2, 3 ・相内大吾1・小池正徳、2 ・倉持勝久2 牛ふん尿堆肥,圃場還元,腐植酸,フルポ酸, FT-IRスベクトル 1' は じ め に 牛ふん尿の堆畑化とその利用は,北海道の農畜産業にお ける最も重要な課題の一つである とくに,フリーストー 2 0 0 0 )ーまた,家畜ふん尿や各種の有機性廃棄物などには 腐植酸やフルボ酸などの腐植物質が含まれており,堆肥化 の発酵過程においてより安定した腐植化度の高い形態へ ル牛舎などから排出される乳牛ふん尿の場合には,敷料の と変化すると報告されている ( S a n c h e z M e n e d e r oe ta ! . , 2 0 0 2 ),一方,わが国でも稲わら堆肥やおがくず牛ふん堆 使用量が少ないために水分含量が高く,好気的な発酵によ 肥などの堆肥化や腐朽化に伴う腐植の形態および光;学的特 る堆肥化が進行しないケースが多くなってきている(志賀 性の変化について調べられており,稲わら堆肥の粒径の違 ら. 2 0 0 1;北海道立農業・畜産試験場家畜ふん尿プロジェ いにより腐植酸の光学的性質や構造が若干異なること(広 クトチーム. 2 0 0 4 ) 一方,肥育牛舎から排出される肉牛 瀬・熊田. 1 9 7 2 ) . 稲わら堆肥やおがくず牛ふん堆肥に含 ふん尿の場合では,パークやおがくずなど木質系の敷料が まれる腐植酸がリグニン的性格によって特徴付けられる 利用されることが多いために水分合量が低く,好気的な発 酵がある程度進みやすいものの,木質物が概して難分解性 こと ( S u z u k iandKumada. 1 9 7 2 ;1 9 7 6 ) . 堆積方式によ り製造されたおがくず牛ふん堆肥の堆積期間や堆積部位に であるため堆肥の腐熟化が不十分となることが多い(原田. よって腐植酸の吸光係数や相対色度が変化し,腐植化の進 2 0 0 4 ),このように堆肥化や腐熟化が不十分である堆肥を 圃場に施用すると,未熟堆肥中の易分解性有機物の急激な 行が認められることなどが報告されている ( S u z u k iand 9 8 1 )ー以上のように,植物遺体 Kumada. 1 9 7 6 ;渡辺ら. 1 分解と,生育阻害物質である揮発性脂肪酸やフェノール性 や有機性廃棄物の堆肥化に伴って腐植の量や腐植化度が変 酸が生じることなどにより,窒素飢餓や土壌の異常還元に 化することが国内外向わず広く報告されているが,多くの 加え,作物に発芽障害や生育抑制を引き起こすことが知ら 研究では,実験室内や小規模試験で試作されたそデノレ的な れている(原田. 1 9 8 3 ;Haradae ta ! . ,1 9 9 3 ),一方で,家 堆肥を対象としており,好気的な発酵が起こるように最適 畜ふん尿などの有機性廃棄物の適切な堆肥化や腐熟化を行 な水分調整や切返しが十分に行われ,中には保温により腐 うことにより,堆肥がより良い機能を有する可能性につい 朽化を促進させるなど,堆肥化や腐熟化が確実に起こるこ て明らかに示すことができれば,牛ふん尿の積極的な処理 とを前提に試料の調製が行われている と活用につながると考えられる. しかし,前述した ように農業生産現場で現実的に製造され,かっ実際に園場 海外では,とくにヨーロッパを中心に,様々な有機廃棄 還元により利用されている堆肥は,必ずしも十分な好気発 物の堆肥化や腐真A 化に伴う“腐植化"に関する研究が多数 酵を伴う堆肥化が行われていない,あるいは腐熟化が進ん 行われている.例えば,固液分離した乳牛ふん尿の堆肥化 でいない堆肥が多いのが実状であり,そのような堆肥を対 により,堆肥から抽出される腐植酸の腐植化度が高まった 象としている研究はほとんどない ことや,下水汚泥の堆肥化に伴って,堆リ肥化初期に腐植酸 一方,堆肥や土壌に含まれる腐植物質がオーキシンや の含量が一旦減少し,堆肥化の進行に伴って再び増加する ジベレリンのようなホルモン様生理活性を持つことが報 ことが報告されている C I n b a re ta ! . ,1 9 9 0;Veekene tal . 告されており ( C a c c oandD e l l 'Agnola.1984;P i z z e g h e l l o e ta ! . ,2 0 0 1;N a r d ie ta ! . ,2 0 0 2 ) . 腐植酸やフノレボ酸が植物 *本研究の一部は 2 0 0 6年 9月日本土壌肥料学会秋田大会にお いて発表した. 1岩手大学大学院連合農学研究科(帯広畜産大学所属 . 080 1番地) 8 5 5 5帯広市稲田町西 2線 1 2 帯広畜産大学地域環境学研究部門 ( 0 8 0 8 5 5 5 帯広市稲田 町西 2線 1 1番地) E m a i l :m a s a t a n i @ o b i h i r o . a c . j p 4日受付・ 2 0 0 9年 3月 1 6日受理 2 0 0 8年 7月 1 日本土壌肥料学雑誌第 8 0巻 第 4号 p,335~346 ( 2 0 0 9 ) 3連絡先 への硝酸イオンやカリウムイオンの養分吸収促進に直接 的な影響を与えることが知られている ( D e l l 'Agnolaand ta ! . ,1 9 8 7 )目また,腐植物質は鉄 N a r d i .1 9 8 7;Maggionie や亜鉛などとの錯体形成能により,これら必須微量元素の 植物への吸収を促進することも報告されている ( P i n t o n e ta ! . ,1 9 9 8;C l a p pe tal .2 0 0 1 ),このような,植物の生理 活性や養分吸収などに及ぼす効果は,植物根への働きかけ や細胞内への取り込みによって生じる現象であり,堆肥や 日本土壊肥料学雑誌第 8 0巻 第 4号 3 3 6 ( 2 0 0 9 ) 土壊に含まれる可動性の高い水溶性(溶存)腐植物質に起 積期間において終始水分が高く保持されていた.堆積 5ヶ 因すると考えられる.とくに,堆肥の圃場還元に伴う植物 月後も流動性が高く,牛ふん尿特有の臭気が強く感じられ 生育へ及ぼす腐植物質の直接的な影響を評価し,堆肥の機 たことから,好気的な発酵を伴う堆肥化はほとんど進行し 能や有効性を明らかにしていくためには土壌中での可動性 なかったと考えられた. が高い水溶性腐植物質を対象とすべきであると考えられる 一方,肥育牛舎などから排出される肉牛ふん尿の場合で が,多くの研究では水酸化ナトリウム溶液やピロリン酸ナ は,木質系の敷料が利用されることが多いために水分含量 トリウム溶液によって抽出される腐植物質を対象としてお が低く.好気的な発酵がある程度進みやすいものの,木質 り,堆肥の園場還元に伴う実際的な効果として論じること 物が概して難分解性であるため堆肥の腐熟化が不十分とな は難しいと考えられる, ることが多い(原因. 2 0 0 4 ) . 本研究では,有限会社大平 本研究では,堆肥化の進行や腐熟度の異なる牛ふん尿堆 畜産工業(北海道河東郡鹿追町)の肥育牛舎において肉牛 肥について,堆肥製造業者や一般の畜産農家および畑作農 ふん尿堆肥 1点を採取した 家が製造し,かっ圃場還元により実際に利用されている堆 マツ間伐材を主原料とするエコカールマットと呼ばれる旦 肥を供試し,腐植の特性による牛ふん尿堆肥の評価を行う ライス状チップを使用している ために,牛ふん尿堆肥から水および水酸化ナトリウム溶液 使用した敷料について,エアレー ν ョン施設を用いて発酵 により腐植酸およびフルポ酸を抽出し,腐植の形態分析お と乾燥を行い,再び戻し敷料として使用している よび腐植酸のスベクトル解析を行い,それらの化学的持徴 して 3回再使用した時点で,ふん尿の臭気が強くなるため, を明らかにすることを目的とした 敷料としての使用をやめて堆肥として利用ないし販売して 同牛舎では. 2~3 週間 敷料と いる.この段階の堆肥を採取したが,好気的な発酵が十分 2 試料と方法 に行われたにも関わらず木部の大部分が残っており,腐熟 1)牛ふん尿堆肥試料 まず,堆肥化期間の違いが牛ふん尿堆肥の腐植化に及ほ す影響を調べるために,堆肥化における堆積期間が異なる 堆肥試料を供試した 同牛舎では,敷料としてカラ 化が不十分であると考えられた.一方.この堆肥を普通畑 で利用している有限会社大牧農場(北海道河東郡音更町) では,この敷料堆肥に生鶏糞と野菜残笹を容積比 6:3:1 牛ふん尿ノミーク堆肥の製造と販売を の割合で混合して再発酵させた堆肥を製造している.混合 行っている森産業株式会社(北海道河東郡士幌町)の堆肥 後に自動撹祥装置付きのオープン式堆肥盤で約 2ヶ月間発 製造工場において,肉牛ふん尿を主原料としたパーク堆肥 酵させ,さらに約 1 2ヶ月間の堆積により二次発酵させて を2 0 0 4年 9月に採取した.このパーク堆肥は,同工場に いる 隣接する畜産農家において排出された肉牛ふん尿と,製材 7 0C ) が認められ,さらに堆積後には敷料の木部組織が 一次発酵時には好支泊甘な発酵に伴う温度上昇 (60~ 0 工場から排出されるパークの混合物を堆積・切返しして製 ほとんど視認できない程度まで腐熟化が進んでいた.本研 造されている.肉牛ふん尿とパークの混合比率は容積比で 究では,この再発酵・堆積後の混合堆肥 1点を採取した 6:4であり,堆積後 1ヶ月毎に切返しを行い,約 1 5ヶ月 間の堆積により堆肥化を行っている 本研究では,堆積期 上記の堆肥試料計 6点について,現地にて採取した後に 速やかに実験室へ持ち帰り. 1 0 5Cの通風乾燥機内で 2 4 0 間が 5ヶ月間および 1 2ヶ月間の堆肥計 2点を,いずれも 時間以上乾燥して堆肥現物当たりの水分含量を測定したー 切返し作業の直後に採取した. さらに,乾燥した堆肥を粉砕機にて微粉砕した試料を調製 次に,堆肥の原料や発酵過程などの違いが牛ふん尿堆肥 の腐植化に及ぼす影響を調べるために,堆肥化の進行およ び腐熟度が著しく異なる 4点の堆肥を供試した 前節でも述べたように,フリ一九トーノレ牛舎などから排 して以下の実験に供試した なお,堆肥から腐植を水抽出 するためには未乾燥試料を用いることが好ましいが,とく に好気的な発酵がほとんど起こっていない堆肥や木質系の 副資材が多く残る堆肥から均質な試料を採取することは極 出される乳牛ふん尿の場合には,敷料の使用量が少ないた めて困難であり,本研究では乾燥と微粉砕による前処理を めに水分含量が高く,十分な通気がミ確保できないために好 行った試料を供試した. 気的な発酵による堆肥化が進行しない(北海道立農業・畜 産試験場家畜ふん尿プロジェタトチーム. 2 0 0 4 ) . 本研究 では,ホクレン畜産技術研究所(北海道常呂郡訓子府町) 2 ) 堆肥の理化学性と腐熟度 試料の pHおよび ECは,それぞれガラ λ 電極法および 白金電極法により測定した 灰分含量は. 5 5 0Cのマッフ 0 のフリーストール牛舎から排出された搾乳牛のふん尿を堆 ノレ炉で 4時間の強熱を行い,重量減少量を測定して求めた 肥盤に堆積し . 2004年 6月末より 5ヶ月間堆積した.堆積 全炭素・窒素量は CHN全自動元素分析装置(エレメンター 後 1ヶ月毎に切返しを行い,堆積期聞が 1ヶ月間と 5ヶ月 ル社:v a r i o E L U D を用いた乾式燃焼法により測定した. 間の堆肥計 2点を,いずれも切返し作業の直後に採取した 堆肥の腐熟度指標として,熱水抽出液によるコマツナ幼 この堆畑はコンクリート床の屋根付堆肥盤に堆積し,月に 植物発芽試験を行った l度の切返しを行ったにも関わらず,堆積期間中の堆肥内 マツナの発芽等に対し害を及ぼす成分の有無を検証する この試験は堆肥成分の中で,コ 部温度は 20~40T の範囲であり,活発な好気発酵に伴う ことを目的とした(日本土壌協会. 2 0 0 0 ) . 試料 2 . 5 gを 十分な温度上昇 (60~70T) には至らなかったため,堆 100mL三角フラスコに測り取り,沸騰水 5 0mLを加え 李・谷・相内・小池・倉持 圃場還元利用されている実際的な牛ふん尿堆肥に含まれる腐植酸およびフルポ酸の化学的特徴 たアルミホイノレで?ふたをして 1時間の静置後.定量ろ紙 (ADVANTEC:N o . 6 ) を用いてろ過した発芽試験シー 337 値(相対色度)を算出した(太田. 1 9 8 5 ) . ト(富士平工業株式会社・たねびた)にコマツナ種子を L IlogK=l o g (E 4 0 0 ! E 6 0 0 ) RF=(E600X 1 0 0 0 / ( bx3 3 . 3 ) ) 50粒播き,プラスチックシャーレに敷いた ろ液 10mL をシャーレに分注L.. 2 0"Cの恒温機に静置した なお,対 照区として蒸留水 10mLを入れたものを用意した.試験 た だ し 品 川 と E6嗣はそれぞれ波長 400nmおよび 6 0 0 nmにおける腐植酸液の吸光度. bは腐植酸液 2mL中 mg) の有機炭素量 ( 開始から 2日目に発芽数を計測し発芽した種子について 4 ) 腐植酸のスベクトル解析 は根長を測定した試験は 3連で行った 上記の操作において,腐植酸の沈殿物を水酸化ナトリウ ム溶液で再溶解後,直ちに波長 220nmから 700nmまで 3) 腐植の抽出と形態分析 本研究では,土壌中での可動性が異なる腐植物質につい の紫外可視吸収 λ ベクトんについて,自記分光光度計(島 て比較するために,蒸留水および 0 . 1molL-1水酸化ナト 津製作所:W1240) を用いて測定した 一方,水抽出および 0 . 1molL l水酸化ナトリウム溶液 リウム溶液により腐植を抽出した. 水抽出では,乾燥・徴粉砕した試料 19に蒸留水 5 0 mLを加えて室温で 1 6時間振とうし,遠心分離 ( 1 0 0 0 0 G .1 5分 間 ) と 孔 径 0. 4 5μmのメンプランフィノレター (ADVANTEC:セルロ一月アセテートタイプ)を用いた ろ過により抽出液を得た 水酸化ナトリウム溶液による抽 により得られた抽出液の一部について,濃塩酸を加えて pH1.0に調整し,一晩静置して腐植酸制定殿させた 腐植 酸の沈殿を定量ろ紙 (ADVANTE C :N o . 6 ) 上に集め. 0 . 1 1 molL - 水酸化ナトリウム溶液で再溶解させた後に,陽イ オン交換樹脂カラム (SUPELCO: A m b e r l i t eI R 1 2 0 )に 出では,乾燥・微粉砕した試料 19を遠沈管に測り取り, 0 . 0 5molV1硫酸 15mLを加えて 1時 間 振 と う し 遠 心 分 通過させて H+型に変換し凍結乾燥を行った.得られた 腐植酸粉末をメノウ乳鉢で粉砕し,簡易プレスを用いて 離ClO O O O G .1 5分間)により上澄み液をデカントした後に, 1 0 . 1molL-水酸化ナトリウム溶液 15mLを加え,室温で KBrベ レ ッ ト を 作 成 し た 希 釈 濃 度 は 1 0 0倍 と し た 波 1 1 数4 0 0cm- から 4000cm- までの赤外吸収 λ ベクトノレに ついて,フーリエ変換赤外線分光光度計(日本分光 :FTI R 4 2 0 ) を用いて透過法で測定した 測定結果は,透過度を 1 6時間振とうした振とう後,硫酸ナトリウム 0 . 5 gを加 えて溶解させてから遠心分離ClO O O OG .1 5分間)し,得 られた上澄み液を 50mL容メスフラ兄コに移した.遠j 土 1 管に 3%硫酸ナトリウム含有 0 . 1molL -水酸化ナトリウ ム溶液 10mLを加え. 1時間振とう後,遠心分離ClO O O O G .1 5分間)を行った.上澄み液は上記と同じ 50mL容メ スフラスコに移した.この操作をもう 1度繰り返し 5 0 1 mL容メ 1 フラスコに集めた抽出液を 0 . 1molV 水酸化ナ 吸光度に変換したスベクトルとして示した 3. 結果および考察 1)堆肥化期聞が異なる牛ふん尿バ ク堆肥の理化学 性,腐熟度,および腐植の形態 堆肥化期聞が異なる牛ふん尿パーク堆肥の理化学性およ びコマツナ発芽試験の結果を表 lに示した堆肥化期間の トリウム溶液を用いて定容した. 抽出された腐植の分固と定量,および形態分析は以下の 経過に伴って,水分含量,全炭素含量および C/N比は減 通りに行った (Kumadae ta l .1 9 6 7;熊田. 1 9 8 1;Maiee t 少 し 灰 分 含 量 . ECおよび全窒素含量が増加した.これ は,微生物による有機物の分解と無機化,発酵熱の上昇に a l . .2 0 0 2 ) . 得られた抽出液の一部に濃硫酸を加えて pH1 沈殿を よる水分の蒸発など,好気的な発酵を伴う堆肥化特有の特 定量ろ紙 (ADVANTEC:N o . 6 ) 上に集め. 0. lmolV1水 酸化ナトリウム溶液で再溶解させて腐植酸画分を得た ろ 徴を表している(松崎.1 9 9 2 ;藤原.2 0 0 3 ) . また,コマツ 液についてはポリピニノレピロリドン樹脂カラム(和光純薬 率および根長指数が増加し,堆肥化 1 2ヶ月後では発芽率 o l y c l a rVT) に通L.. O . lmolL l水酸化ナトリウ 工業 P ム溶液で脱着させて PVP吸着フルボ自主画分を得た なお, 腐熟化が進行していると考えられた に調整し,一晩静置して腐植酸画分を沈殿させた ナ発芽試験の結果では,堆肥化期間の経過に伴って,発芽 が 90%以上となり,作物に悪影響を及ぼさない程度まで 堆肥から抽出され,上記操作で分画される腐植酸画分およ 一方,堆肥化期聞が異なる牛ふん尿ノくーク堆肥の腐植の び PVP吸着フルボ酸画分には非腐植物質も含まれる,あ 形態分析結果を表 2に示 Lた.堆肥化に伴い,いずれの抽 るいは分画されない函分にも腐植物質が含まれると考え 出でも,沈殿部割合 (PQ) や腐植酸の相対色度 (RF値) られるが(熊田・鈴木. 1 9 6 9 ;WatanabeandKuwatsuka. が増加し,色調係数 ( L ll o g K ) が減少した.腐植酸の RF 1 9 9 2 ).本研究では各画分をそれぞれ便宜的に堆肥から抽 出された腐植酸およびフルポ酸として取り扱うことにし 値は炭素重量当たりの色の濃さを意味し(熊田. 1 9 81 ) . 堆肥化や腐熟の進行に伴う腐植化度の増加を示していると た 分画した腐植酸液およびフルボ酸液中の有機炭素濃度 考えられる.しかしいずれの腐植酸も極めて未熟な Rp を重クロム酸カリウム 型に分類された (Kumadae ta l . .1967;熊田. 1 9 81 ) 水 酸化ナトリウム溶液による抽出では,堆肥化 5ヶ月後から 硫酸混液を用いた比色法により測 定した(立J1 . 11966) また,腐植酸液の有機炭素濃度と波長 400nmおよび 600nm における吸光度から • L ll ogK ( 色調係数)と RF 1 2ヶ月後までの聞に腐植酸炭素量が約l.8倍 , フノレボ酸 炭素量が約l.6倍に増加し,堆肥化に伴う腐植の量的な変 338 日本土壌肥料学雑誌第 80巻 第 4号 化も認められた 水による抽出では,腐植の抽出割合が極 めて低いものの,腐植酸の R F値は水酸化ナトリウム溶液 酵が進行して水分が蒸発したことを反映していると考えら れた で抽出された腐植酸よりもやや高かった. コマツナ発芽試験の結果では,高水分乳牛ふん尿堆肥の 2 ) 原料や堆肥化過程が異なる牛ふん尿堆肥の理化学 性および腐熟度 発芽率力1 低く,とくに堆積 1ヶ月後の堆肥では全く発芽し なかった 堆肥化および腐熟化の程度が異なる ( 2 0 0 9 ) 4種類の牛ふん尿堆 肥の理化学性およびコマツナ発芽試験の結果を表 3に示し また,堆積 5ヶ月後の堆肥は 30%が発芽した ものの,根長指数が 3.8%と極めて低かった.一方,肉牛 ふん尿敷料堆肥および混合堆肥の発芽率はいずれも 90% 高水分乳牛ふん尿堆肥は,堆積 1ヶ月後および 5ヶ月 以上と高く,作物に悪影響を及ぼさない程度まで腐熟化が 後のいずれも水分含量が 80%以上と高かったが,堆積期 進行していると考えられた.一方,根長指数は肉牛ふん尿 た 間の経過とともに灰分合量,全窒素含量が増加し全炭素 敷料と鶏糞の混合堆肥が肉牛ふん尿敷料堆肥よりも高かっ IN比 が 減 益 し た 現 地 で の 観 察 で は , 堆 積 5ヶ 含量と C た 月後の堆肥において悪臭が強く,データは示さなかったが 比べても肉牛ふん尿敷料堆肥の根長指数が低く,堆肥化期 高濃度の硫化水素が検出されたことから,好気的な発酵で 聞が短い肉牛ふん尿敷料堆肥には分解不十分な木質資材が はなく嫌気的な発酵が進行したと考えられた.また,堆積 多く含まれ,資材中に植物の生育阻害物質が残存している また,表 lに示した牛すん尿ノ〈ーク堆肥の根長指数と 5ヶ月後の pHが高かったことは,嫌気的な分解に伴うア ことを示唆しており(原田. 2004). 腐熟化が十分ではな ンモニアの生成に起因すると考えられた.一方,肉牛ふん いことを示していると考えられた 尿敷料堆肥は,水分含量が 71%と乳牛ふん尿堆肥よりも 以上のことから,本実験で供試した 4点の牛ふん尿堆肥 低く,灰分含量が低く,かつ全炭素含量が高かったことか は,原料や堆肥化過程が異なるために堆肥化の進行に伴う ら,敷料として用いられたカラマツ晶1 伐材チップの影響を 腐熟度の変化として単純には比較することはできないもの 強く受けていると考えられた の,高水分乳牛ふん尿堆肥については腐熟化がほとんど進 さらに,肉牛ふん尿敷料と 鶏糞の混合堆肥は,水分合量が 52%と他の堆肥よりも低 んでおらず,肉牛ふん尿敷料堆肥および肉牛ふん尿敷料と く,鶏糞や野菜残査を添加したことに加えて,好気的な発 鶏糞の混合堆肥については,ある程度の腐裂化が進んでい 堆肥試料 表 1 堆肥化期聞が異なる牛ふん尿パーク堆肥の理化学性およびコマツナ発芽試験結果 EC 全炭素含量全窒素音量 発芽率キ 恨長指数料 水分合量 灰分含量 pH (..1<' _._1¥ ' " ' . . . , ,' ' ( " " ' ' , ~~\==-/" '-'"'-'-'C/Nヒ I : J ( gk g ' ) ' ' " ( d Sm ' ) 只k g-1 ) (%) 牛ふん尿パーク堆肥 6 3 5 1 0 5 7 . 7 2 . 9 4 8 1 1 9 . 1 2 5 . 2 8 6 4 7 ( 5ヶ月) 牛ふん尿パ グ堆肥 5 7 9 1 8 0 7 . 8 4 . 1 4 5 5 2 2. 4 2 0 . 3 9 3 5 7 ( 1 2ヶ月) 水分音量は堆肥現物あたり,灰分含量,全炭素量および全窒素量は堆肥乾物あたりで示した *発芽率播種量に対する発芽率を示した 材根長指数対照区の根長に対する比率(%)を示した 表 2 堆肥化期聞が異なる牛ふん尿パーク堆肥の腐植田形態分析 H20抽出 NaOH抽出 堆肥試料 抽出 割合 PQ* RF L 11og J ( * * 型*材 ( 0 / 0 ) Ch/Cf 抽出 割合 PQ RF . J!ogK 型 Ch/Cf (%) 牛ふん尿パーク堆肥 4 4 1 8 Rp Rp 1 .8 1 .0 3 . 0 2 2 7 1 9 1 .0 6ヶ月 牛ふん尿パーク堆肥 Rp Rp 2 . 2 1 0 6 0 2 9 0 . 9 2 4 6 3 1 0 . 9 3. 4 ( 1 2ヶ月) *PQ沈殿部割合で,抽出腐植量に対する腐植酸量の割合を示した * * . J! o g K :!ogK400nm-!ogK600nmの式で求めた * * * 型 Kumadaらの区分に従った n 表 3 堆肥化および腐熟化の程度が異なる牛ふん尿堆肥の理化学性およびコマツナ発芽試験結果 堆肥試料 水分合量 灰分合量 疋 (k g 1 ) pH ! ,U EC 全炭素含量全窒素含量 ____1¥ ( _ , _-:\~~.. -~ < d Sm 1 ) ( gk g 1 ) ("]C' C/N比 発芽率*根長指数料 (%) 。 。 4qORd 113 qdouQd 064 高水分乳牛ふん尿堆肥 8 3 5 2 1 7 6 . 1 11 .4 4 0 7 1 7 . 7 2 2 . 9 ( 1ヶ月) 高水分乳牛ふん尿堆肥 8 1 9 8 . 8 1 2. 4 3 3 4 2 0 . 6 1 6 . 3 3 5 5 6ヶ月) 肉牛ふん尿数料堆肥 7 1 0 1 4 6 7 . 2 3 . 8 4 1 3 1 8 . 6 2 2 . 2 肉牛ふん尿敷料と鶏糞 1 6 . 5 5 2 2 3 2 3 8 . 4 5 . 1 3 4 3 2 0 . 8 の混合堆肥 水分含量は堆肥現物あたり,灰分含量,全炭素量および全窒素量は堆肥乾物あたりで示した *発芽率:揺種量に対する発芽率を示した 紳根長指数対照区の根長に対する比率(%)を示した 339 苧 宰相内小池・倉持困場還元利用されている実際的な牛ふん尿堆肥に含まれる腐植酸およびフルポ酸の化学的特徴 るが,木質資材を多く含むため,とくに好気的な発酵によ り短期間の堆肥化を経ただけの肉牛ふん尿敷料堆肥では腐 な影響を与えたことが考えられた.本研究で供試した肉牛 ふん尿敷料堆肥や鶏糞との混合堆肥の腐植物質では,好気 熟化が不十分であることが示された. 的な発酵に伴って RF値が低い未熟な Rp型腐植酸が相対 3) 腐熟度が異なる牛ふん尿堆肥から抽出された腐植 的に減少したとともに,温度上昇や堆肥の自重に起因する の形態分析 高い圧力によって新たに生成した腐植化度の高い腐植酸が 堆肥化および腐熟化の程度が異なる牛ふん尿堆肥から水 増加したと考えられ,とくに腐熟度の高かった肉牛ふん尿 酸化ナトリウム溶液および水により抽出された腐植の形態 敷料と鶏糞との混合堆肥で腐植化の進行が顕著であった. 分析結果を表 4に示した 水抽出では,水酸化ナトリウム溶液による抽出よりも腐 水酸化ナトリウム溶液による抽出では,高水分乳牛ふん 尿堆肥から約 25%の腐植が抽出された.沈殿部割合 (PQ) 植の抽出割合が低く,いずれの堆肥においても 10%以下 て、あった 一方,いずれの堆肥試料についても水抽出され は約 60~70% であり,腐植酸の相対色度 (RF 値)は 7 た腐植酸の RF値は水酸化ナトリウム溶液で抽出された腐 と著しく低く,色調係数(L ll o g K ) も1 . 3と高く,腐植 植酸よりも高かった.同様の傾向は稲わら堆肥についても 酸としては極めて未熟な Rp型に分類された (Kumadae t 認められており,水酸化ナトリウム抽出よりも水抽出で腐 a l .,1967;熊田, 1981) 高水分乳牛ふん尿堆肥は堆肥化や 植酸の RF値が増加し, L llogKが減少する結果が報告さ 腐熟化がほとんど進んでいないにも関わらず未熟な腐植 酸やフルボ酸が含まれており,これらの成分は主にふん れている ( S u z u k iandKumada,1 9 7 2 ) . 豚ぷん麦秤混合 物の速成堆肥化では, リクーニンや生体高分子成分が難分解 中の未消化繊維,および敷料として利用された少量の麦稗 性腐植酸様物質の核として残存するとともに,堆肥化によ などの植物腐朽遺体に含まれるリグニンを主とする成分 り生成した易分解性化合物が弱い物理的な結合を介して核 に由来すると考えられた(熊回・鈴木, 1969;S uzukiand 9 7 2 )ー肉牛ふん尿敷料堆肥や鶏糞との混合堆 Kumada,1 肥では,抽出割合が 9%ないし 13%と低かったものの, PQが 65%以上と腐植酸の占める割合が高く,腐植酸の を被覆するメカニズムが報告されている ( G e n e v i n ie ta l ., 2002a;2 0 0 2 b ) 堆肥から水抽出される腐植物質は,水酸 化ナトリウムを用いた場合にも抽出されると考えられ,水 酸化ナトリウムを用いた場合には,水抽出される腐植物質 RF値も高水分乳牛ふん尿と比べて高かった 肉牛ふん尿 敷料堆肥の腐植酸は未熟な Rp型.肉牛ふん尿敷料と鶏糞 抽出するため,水酸化ナトリウム抽出よりも水抽出で相対 とともに, リグニンなど RF値の低い未熟な非腐植物質も との混合堆m 'oは腐植化がやや進行した B型に分類された. 的に高い RF値を示すと考えられた 本研究で供試した牛ふん尿ノ〈ーク堆肥や肉牛ふん尿敷料 ナトリウム抽出よりも水抽出された腐植酸の腐植化が高い 堆肥の腐植酸は,おがくず牛ふん堆肥を供試した既存の 結果は,植物腐朽遺体由来のリグニンなどを含む堆肥特 研究で報告された腐植酸と比べて RF値が著しく高く,と 有の傾向であると考えられる くに肉牛ふん尿敷料と鶏糞との混合堆肥では既存の研究で んでいないと判断された高水分乳牛ふん尿堆肥について このように,水酸化 好気的な発酵がほとんど進 は全く認められていない B型に分類された ( S u z u k iand も,堆肥化期間の経過に伴う RF値の増加と L llogKの減 ) 堆肥の原料が異なること Kumada,1976;渡辺ら, 1981 も考慮すべきであるが,既存の研究が重量と Lて約 400 kgから数 Mg程度,堆積高さ 0.8mないし1.5m程度の小 規模な堆肥化試験によって製造された試料を供試したのに 少に示される腐植化の進行が認められたが,腐植酸画分 対 L,本研究で対象とした堆肥は重量として数百から数千 高かった肉牛ふん尿敷料と鶏糞との混合堆肥では,水抽出 Mg ,堆積高さ 3mから 4 m程度の実規模で製造されたも のであり.堆肥内部の温度や圧力の違いが,腐植化に大き においても PQが 60%,腐植酸の RF値 が 50と高く,腐 植酸は E型に分類された 水抽出された腐植は水酸化ナ に抽出される脂肪酸などの化合物が分解されたことにより 相対的に RF値が上昇したと考えられた ( G e n e v i n ie ta l ., 2 0 0 2 a ) 本研究で供試した堆肥試料の中で最も腐熟度の 表 4 堆: H E 化および腐熟化の程度が異なる牛ふん尿堆肥の腐植の形態分析 NaOH抽出 堆肥試料 高水分乳牛ふん尿堆肥 (1ヶ月) 抽出 割合 ( % ) PQ* RF 2 4 4 3 7 H20抽出 L 11 0 g K判型林中 1 .3 Rp C h / C f 抽出 割合 ( % ) PQ RF L 11 0 g K 型 C h / C f 1 .6 7 B 1 2 1 .0 Rp 0 . 2 高水分乳牛ふん尿堆肥 Rp Rp 2 6 5 4 7 2 . 1 1 0 4 2 1 7 1 . 3 1 .0 1 .6 ( 5ヶ月) 肉牛ふん尿数料堆肥 9 3 2 Rp Rp 3 3 2 6 6 0 . 9 1 .9 3 7 1 .0 1 . 1 肉牛ふん尿敷料と 6 1 3 7 1 4 1 0 . 9 B 2 . 3 6 0 5 0 0 . 9 B 4 . 1 鶏糞の混合堆肥 キP Q:沈殿部割合で,抽出腐植量に対する腐植酸量の割合を市した 材。 l o g K :l o g K4 0 0nm-logK6 0 0nmの式で求めた 材*型 Kumadaらの区分に従った 340 日本土壌肥料学雑誌 第 8 0巻 第 4号 ( 2 0 0 9 ) トリウム溶液によって抽出された腐植よりも抽出割合が低 たが,表 3に示したように堆肥化期間の経過に伴って pH いものの,その腐植化の程度は高く,牛ふんや敷料などの が上昇しており,堆肥化 5ヶ月目における高い pHによっ 原料に由来するリグニンなどの非腐植物質が.水酸化ナト て腐植酸炭素の抽出割合が高くなったことも一因であると リウム溶液によって多く抽出されることに起因すると考え 考えられた られた ( A d a n ie ta l .,1 9 9 5 ) 合再発酵により,水抽出された有機炭素に占める腐植酸炭 水酸化ナトリウム溶液および水により抽出された有機炭 一方,肉牛ふん尿敷料堆肥では,鶏糞との混 素の割合が増加し,フルポ酸炭素の割合が減少した 肉牛 素に占める腐植酸炭素とフルボ酸炭素の分配割合を図 1お ふん尿敷料堆肥および鶏糞との混合堆肥では,水抽出され よび図 2にそれぞれ示した. 1 た腐植酸炭素含量がそれぞれ 38mgglおよび 12.0mgg- 水酸化ナトリウム溶液により抽出された有機炭素に占め であり,抽出された有機炭素に占める割合だけでなく,そ る腐植酸炭素およびフルポ酸炭素の割合は約 70~80% で の含量が大幅に増加しており,好気的な発酵を伴う堆肥化 あり,高水分乳牛ふん尿堆肥よりも,腐熟化の進んだ肉牛 と腐熟化過程において生成した可動性の高い腐植酸の増加 ふん尿敷料堆肥や鶏糞との混合堆肥で腐植酸炭素が占める を反映していると考えられた ( G e n e v i n ie ta l ., 2 0 0 2 a ) . 割合が高かったーフノレボ酸炭素は逆の傾向であり,堆肥化 4 ) 腐熟度が異なる牛ふん尿堆肥から抽出された腐植 酸のスベクトル解析 や腐熟化が進んだものほど割合が低く,堆肥化および腐熟 化の過程においてフルボ酸が微生物の分解を受けたことに 水酸化ナトリウム溶液および水により抽出・分画した腐 植酸について,図 3および図 4に紫外可視吸収スベクトん 0 0 4 ) . よるものと推測される(保井ら, 2 水抽出された有機炭素に占める腐植酸炭素およびフルボ を示した 酸炭素の割合は約 40~70% と水酸化ナトリウム抽出より も低かった とくに,高水分乳牛ふん尿堆肥 1ヶ月目では, 腐植酸炭素の割合が極めて低く,腐植酸やフノレボ酸に分画 されない成分が多く抽出された ( a ) 高水分乳牛ふん尿堆肥 5 ヶ月目では,好気的な発酵を伴う堆肥化や腐熟化が進まな かったが,高水分乳牛ふん尿堆肥 1ヶ月固と比べて有機炭 素に占める腐植酸炭素の割合が顕著に高かった.高水分乳 ( b ) 牛ふん尿堆肥では,嫌気的な発酵により揮発性脂肪酸や易 分解性有機物などに由来する有機炭素が減少したことによ (出町田相場)煙語友個出G制 端 医 り腐植酸炭素の占める割合が相対的に増加したと考えられ 高水分乳牛る、ん尿堆肥 ( 1ヶ月) 高水分乳牛A、ん尿堆肥 ( 5ヶ月) 肉牛ふん尿敷料堆肥 肉牛ふん尿数料と鶏糞 の程合堆肥 m o 園底鑓酸炭素 図 5 0 % ロフルポ酷炭素 ( c ) ( d ) 1 0 0出 口その他 1 水酸化ナトリウム抽出された有機炭素の腐植物質への分 配割合 高水分乳牛品、ん尿堆肥 ( 1ヶ月) 高水分乳牛ふん尿土佐肥 ( 5ヶ月) 6 0 0 700 5 0 0 4 0 0 3 0 0 2 0 0 肉牛ふん尿敷料堆肥 波 長 (nm) ベ堆鶏 ス尿と 収ん料 吸ふ敷 視牛尿 可乳ん 外分ふ 紫水牛 り高肉 ω ω 概 腐人巴 た月割 引ヶ料 旧日開 図 2 水抽出された有機炭素の腐植物質への分配割合 拍間川 1 0 0 % ロその他 ι 3時 ふ 5 0 % ロフルポ酸炭素 九回肥糞 圏腐植酸炭素 高 K混 )(の 0 % ち m F d牛 ,h肉 リ vp rふ ト n 図3 の im合堆!~ ナ ( 牛u 訓 仙 r、同凶 1レ ﹄ レノi u 酸ト分防相 水ク水久住 肉牛ふん尿敷料と鶏糞 341 李・谷・相内・小池・倉持 圃場還元利用されている実際的なヰふん尿堆肥に含まれる腐植酸およびフルポ酸の化学的特徴 高水分乳牛ふん尿堆肥から水酸化ナトリウム溶液により 280nm付近の明瞭な肩状吸収と 330nmから 400nm付近にかかる緩やかな吸収 が顕著に認められた(図 3 a,b ) これらの特徴はリグニン の旦ベクトんに類似しており(熊田, 1 9 81),未熟な乳牛 熟化の進んだ堆肥では腐植化の進行した腐植物質によって 抽出された腐植酸では, リグニンなどに由来する吸収がマスクされていることなど ともに, を示していると考えられた. 一方,水抽出された腐植酸では,水酸化ナトリウム溶液 3 0 により抽出された腐植酸と比べてリグニンに特徴的な 3 ふん尿 λ ラリーから抽出された腐植酸についても,同様な nmから 400nm付近にかかる緩やかな吸収が,いずれの 見ベクトんが認められている(保井ら, 2 0 0 4 ) また,堆 堆肥についても明瞭ではなかった 積 1ヶ月間の高水分乳牛ふん尿堆肥では 660nm付近に弱 肥から水抽出された腐植酸では, い吸収が認められ(図 3 a ),クロロフィルもしくはその分 吸収および 330nmから 400nm付近にかかる緩やかな吸 969; 解物の存在に由来すると考えられた(熊田・鈴木, 1 a,b ) 肉牛ふん尿敷料堆肥 収がわずかに認められた(図 4 熊田, 1 9 81 ) 肉牛ふん尿敷料堆肥および肉牛ふん尿敷料 および鶏糞との混合堆肥から水抽出された腐植酸では,ほ と鶏糞との混合堆肥から水酸化ナトリウム溶液により抽出 とんど明瞭な吸収が見られなかった(図 4 c,d ) . これらの 高水分乳牛ふん尿堆 280nm付近の弱い肩状 280nm付近に極めて弱い肩状吸収が ことは,水抽出される腐植酸は,水酸化ナトリウムによっ 見られたが, 330nmから 400nm付近にかかる緩やかな吸 て抽出されるリグニンなどの非腐植物質の影響を受けにく された腐植酸では, c,3 d ) . これらのことは,堆 収は認められなかった(図 3 , く とくに好気的な発酵と腐熟化が進行した堆肥では,高 肥の理化学性や腐槌の形態分析の結果と同様に,堆肥化や い温度と圧力の下に生成した腐植化の進んだ腐植酸の影響 腐熟化がほとんど進行していない高水分乳牛ふん尿堆肥で を強く反映すると考えられた は,原料に含まれるリグニンなどの非腐植物質が水酸化ナ 水酸化ナトリウム溶液およひ水により抽出・分画した トリウム溶液により抽出されたこと,あるいは堆肥化や腐 腐植酸について,図 5および図 6にフーリエ変換赤外吸 F FT-IRA ベクトル)を示した 収スベクトノレ ( 各 FT ーI R スベクトルに認められた吸収パンドの帰属は S t e v e n s o n ( 19 9 4 ) による腐植酸の FT-IRスベクトル分析の概念, ( a ) 物理的に分画した稲わら堆肥から抽出した腐植酸の I R スベクトノレの報告(広瀬・熊田, 1 9 7 2 ), 稲 わ ら 堆 肥 や Rスベクトノレの報告 厩 肥 か ら 抽 出 し た Rp型腐植酸の I ( b ) ( S u z u ! 口a ndKumada,1 9 7 2 ),各種廃水処理汚泥を原料と する堆肥から抽出した腐植酸の FT-IRスベクトルの報 g (出国皿判明)堀誠寂蝋出早G幽 泊m 告 ( G e r a s i m o w i c zandB y l e r ,1 9 8 5 ),牛ふん尿を原料と ーI Rλ ベクトノレの報告 する堆肥から抽出した腐植酸の FT ( In b a re ta , . l1 9 9 0 ),製紙スラッジを原料とする堆肥から 抽出した腐植酸の FT-IRスベクトノレの報告 ( P r o v e n z a n o ( c ) e ta l .,1 9 9 8 ),都市廃棄物を原料とする堆肥から抽出した ーI Rスベクトルの報告 ( G o n z a l e z V i l ae ta l ., 腐植酸の FT 1 9 9 9 ),下水汚泥コンポストから抽出した腐植酸の FTta l .,2 0 0 2 )に IRスベクトノレの報告 (Sanchez-Monederoe ( d ) 従った.本研究で供試した堆肥から水酸化ナトリウム溶 ーI Rスベクトノレに 液および水により抽出した腐植酸の FT → 認められた主要な吸収ノ〈ンドおよびその帰属は, 2920cm 付近(脂肪族 C -H伸縮振動), 1720cm-1付近(カルボ キシノレ基の CニO伸縮振動) , 1 6 5 0cm-1~ 1 6 2 0cm-1 ( ア の C=o伸縮振動ないし芳香族 C ニCの伸縮振動), ミド I 1 4 6 0cm-1付近(脂肪族 C -H変角振動ない L リグニン芳 2 2 0cm-1付近(カノレボキシノレ基の C 香環の伸縮振動), 1 O伸縮振動, O-H変角振動ないしアミド皿の C-N伸 縮 7 0 0 6 0 0 5 0 0 4 0 0 3 0 0 2 0 0 波長(nm) 図4 水抽出された腐植酸の紫外可視吸収スベクトル ( U V V I S ) ( a )高水分乳牛ふん尿堆肥(1ヶ月), ( b )高水分乳牛ふん尿堆肥 ( 5ヶ 月 ) , (c) 肉牛ふん尿敷料堆B~ , (d) 肉牛ふん尿敷料と鶏糞の 混合堆肥 振動), 1140cm-1付近(脂肪族 C l l iの対称伸縮振動,各 -Hまたは C-O伸縮振動ないし芳香環の変 種官能基の O 角振動), 1 1040cm付近(多糖の C -O仲縮)とした 水酸化ナトリウム溶液により抽出した腐植酸では,高 水分乳牛ふん尿堆肥で 1 4 6 0cm-1付近に明瞭な吸収パンド が認められたが(図 5 a,b),肉牛ふん尿敷料堆肥および 日本土壌肥料学雑誌 第 8 0巻 第 4号 342 ( 2 0 0 9 ) 鶏糞との混合堆肥ではほとんど認められなかった(図 5 c, バンドは,紫外可視吸収スベクトルで得られた結果と同様 1付近の吸収バンドは脂肪族 1 4 6 0cmC H変角振動に由来すると考えられるが,製紙 λ ラッジや に,堆肥の原料に含まれるリグニンなどの非腐植物質の構 620cm-1付近の吸 造を強く反映していると考えられた 1 都市廃棄物を原料とする堆肥からアルカリ溶液で抽出さ 収パンドは主に 1 650cm-1付近のアミド Iの C=o伸縮振 れた腐植酸においては 1付近に 1427cm- 動および 1600cm-1付近の芳香族 C=Cの伸縮振動に由来 リグニン芳香環骨格の伸縮振 する三重パンドと考えられ,肉牛ふん尿敷料と鶏糞との混 d ) . 一般的に, 1 4 6 0cm-1ないし 同様なバンドが認められ, 動に由来すると推定されている C P r o v e n z a n oe la l .,1998; d ) . 堆肥から 7ノ レ カ 合堆肥て苛温い吸収が認められた(図 5 la l .,1 9 9 9 ) . また,都市廃水処理汚泥コン G o n z a l e z V i l ae ポストから抽出した腐植酸について 1 3 CCPMAS-NMRお 650から リ溶液によって抽出される腐植酸に認められる 1 芳香環の伸縮振動に由来する可能性が高いことが報告され 1600cm-1付近のブロードな吸収ノ〈ンドは,主にタンパク やベプチド態窒素の存在に起因すると考えられており,堆 肥化の進行に伴う窒素含量の増加,および安定的なタン パクの濃縮によって吸収ノ〈ンドの強度が増加すると報告 ている C GerasimowiczandB y l e r , 1 9 8 5 ) . さらに, 市福オつら されている .C 広瀬・熊田, 1 972;GerasimowiczandB y l e r , イ Rを用いて解析した研究においても, よび FT FTーI R スベクトルで 1 4 5 5cm-1付近に認められた吸収ノ、ンドは, や各種木部のリグニンと堆肥から抽出された腐植酸におい 1985;G o n z a l e z V i l a e la l ., 1 9 9 9 ) 肉牛ふん尿敷料と鶏糞 て,いずれも 1460cm-1付近に明瞭な吸収ノ〈ンドが認めら との混合堆肥で明瞭な吸収ノ〈ンドが認められたことは,堆 れ, 1 5 0 0から 1400cm-1I こわたるパターンに類似性が認 肥化や腐熟化の進行により窒素含量が高いことに加え,鶏 972; められることなどが報告されている(広瀬・熊田, 1 糞との混合による高い温度での好気発酵に伴って, より安 1 9 7 2 ) 以上のことから,高水分乳牛 SuzukiandKumada, ふん尿堆肥でのみ認められた 1460cm-1付近の明瞭な吸収 定的なタンパクあるいはタンパク様物質が相対的に濃縮さ れた影響を反映していると考えられた.また,いずれの堆 ; 1 1 4 0 1 4 6 0 C a ) 2 9 2 0 。 以 ︿ OOEMMf ω円 C d ) 4 0 0 0 3 0 0 0 2 0 0 0 1 0 0 0 1 ) W a v e n u m b e rC c m - 図 5 水酸化ナトリウム抽出された腐植酸のフーリエ変換赤外吸収スベクトル ( F T I R ) ( a )高水分乳牛ふん尿堆肥(1ヶ月).( b )高水分乳牛ふん尿堆肥 ( 5ヶ 月 ) , ( c )肉牛ふん 尿敷料堆肥, (d) 肉牛ふん尿敷料と鶏糞の混合堆肥 李・各・相内・小池・倉持 圃場還元利用されている実際的な牛ふん尿堆肥に含まれる腐植酸およびフルポ酸の化学的特徴 343 肥から抽出した腐植酸でも認められた 1 1 4 0cm-1付近の顕 ん尿や製紙スラッジなどを原料として製造された堆肥から 著な吸収バンドは,脂肪族 c t もの対称伸縮振動に由来す 水酸化ナトリウム溶液やピロリン酸ナトリウム溶液との混 る部分と多糖類の C -o伸縮振動に由来する部分が重なっ 液を用いて抽出された腐植酸を対象とした既存の研究例で た二重バンドと推定されたが,既存の研究における腐植酸 1 7 2 0cm-1付近のカルボキシノレ基に由来する吸収ノくン ドがほとんど認められない ( S u z u k iandKumada,1 9 7 2: la l .,1 9 9 8 ),あるいはわずかな肩状ピ クし Provenzanoe か認められていない C I n b a r e la l .,1 9 9 0 ) . 本研究で供試し の吸収バンドとしてはあまり認められておらず,本研究の 結果だけで帰属を判定することは難しいと考えられた. 一方,水抽出された腐植酸では,水酸化ナトリウム溶液 により抽出された腐植酸と比べて FT-IRλ ベクトノレの形 は , た堆肥についても,水酸化ナトリウムにより抽出された腐 1720cm →付近に明瞭なパンドが 水抽出された腐植酸では 1 6 5 0cm-1付 状が著しく異なり,それぞれの抽出剤で抽出された腐植酸 植酸の λ ベクトんには, の構造単位の存在割合が大きく異なることが示された 認められなかった 高 水分乳牛ふん尿堆肥から水酸化ナトリウム溶液により抽出 近のアミド I の C=o伸縮振動に由来するとされる吸収バ された腐植酸で認められた 1460cm-付近のリグニン芳香 ンドも明瞭であり,堆肥化や腐繋げヒが進行した堆肥で顕著 環の伸縮振動に由来すると考えられる吸収ノ《ンドは認めら れず,水抽出された腐植酸の紫外可視吸収スベグトノレで得 2920cm-1付近の脂肪族 C -H 1 伸縮振動に由来する吸収ノ〈ンド,および 1 0 4 0cm-付近の られた結果と一致した -o伸縮に由来する吸収バンドも認められたが,堆 多糖 C 1 cm-1 付近および 水抽出された腐植酸では, 1 7 2 0 1220cm-1付近のカルボキジノレ基に由来 c,d ) . 一方, であった(図 6 肥による大きな差は認められなかった 原料に含まれる糖 するとされる吸収バンドが顕著であり,とくに肉牛ふん 類は堆肥化過程で比較的早く分解されると考えられるが, 尿敷料堆肥および鶏糞との混合堆肥で強い吸収バンドが認 本研究では同じ原料に由来する堆肥を供試していないた められた(図 6 c,d ) 稲わら堆肥および固液分離した牛ふ め,糖に由来する吸収バンドの強度が減少しなかったと考 1 0 4 0 1 7 2 0; 1 1 6 5 0 12~0 j ooteSLOωD︿ 4 0 0 0 3 0 0 0 2 0 0 0 1 0 0 0 W a v e n u m b e r( c m -I) 図日 水抽出された腐植酸のフーリエ変換赤外吸収スベクトル ( F TーI R ) ( a ) 高水分乳牛ふん尿堆肥(1ヶ月), ( b ) 高水分乳牛ふん尿堆肥 ( 5ヶ月), (c) 肉牛ふん尿敷料堆!~, ( d ) 肉牛ふん尿敷料と鶏糞の混合堆』巴 日本土壌肥料学雑誌第 8 0巻 第 4号 344 えられる ( 2 0 0 9 ) また,都市廃棄物を原料とする堆肥について, 7週間の堆肥化前後において FTーIR兄ベグトノレでは 1010 cm-l付近の糖に由来する吸収パンドに大きな差が見られ 構造単位の違いを明らかにした. なかったのに対し 13C-NMRでは炭水化物に由来する領 域が堆肥化の進行に伴って明瞭に減少することが報告され 度 ており ( G o n z a l e z V i l ae ta l .,1 9 9 9 ),今後は他の只ベクト 肥から水酸化ナトリウム溶液および水により抽出された腐 ノレ解析も組み合せて検討する必要があると考えられる. 植酸とフノレボ酸の光学的特性を比較した 堆肥化期聞が異なる牛ふん尿ノ〈ーク堆肥では,堆肥化に よる腐熟化の進行に伴って,沈殿部割合や腐植酸の相対色 ( R F値)が増加した. 堆肥化および腐熟化の程度が異なる 4種類の牛ふん尿堆 水酸化ナトリウ 以上の紫外可視吸収スベクトノレおよび FT-IRλ ベクト ム溶液では,堆H E:化や腐熟化がほとんど進行していないと J t 肥化や腐熟化の程度が大きく異なる 判断された高水分乳牛ふん尿堆肥から極めて未熟な Rp型 牛ふん尿堆肥から抽出された腐植酸の構造単位の存在割合 腐植酸が抽出され,牛ふん中の未消化繊維や敷料などの植 は著しく異なることが明らかとなった 物腐朽遺体に由来するリグニンなどの成分に由来すると考 ノレ解析の結果から, 水酸化ナトリウム 溶液により抽出された腐植酸では,とくに堆肥化がほとん えられた.腐熟化の進行が認められた肉牛ふん尿敷料堆肥 ど進行してない高水分乳牛ふん尿堆肥でリグニンなど原料 や肉牛ふん尿敷料と鶏糞との混合堆肥では,好気的な発酵 中の植物腐朽遺体に由来する構造を強く反映した 一方, 水により抽出された可動性の高い腐値酸では, とくに堆肥 と温度上昇に伴って生成した腐植化の進んだ腐植酸が含ま れていると考えられ,とくに腐熟度の高かった鶏糞との混 化や腐熟化が進行した肉牛ふん尿敷料堆肥や鶏糞との混合 合堆肥から B型腐植酸が抽出された 堆肥でカノレボキシノレ基やアミドなどの腐植酸の構造単位に 化ナトリウム溶液による抽出よりも腐植の抽出割合が低 顕著な違いが認められた かったが,水抽出された腐植酸の R F値は水酸化ナトリウ 水抽出では,水酸 ム溶液で抽出された腐植酸よりも高かった 4 結 論 紫外可視吸収 λ ベクトノレおよびフーリエ変換赤外吸収ス 本研究では実規模で製造および利用されている牛ふん尿 ベクトノレ解析の結果から,堆肥化や腐熟化の程度が大きく 堆肥を対象に,堆s B 化や腐熟化に伴う腐植酸およびフノレボ 異なる牛ふん尿堆肥から抽出された腐植酸の構造単位の存 酸の光学的特性や構造特性の変化を明らかにした 在割合は著しく異なることが明らかとなった その結 果,好気的な発酵や十分な腐熟化を経た牛ふん尿ノくーク堆 水酸化ナト リウム溶液により抽出された腐植酸では, とくに堆肥化が 肥や肉牛ふん尿敷料堆肥では,腐植酸の量と光学的特性が ほとんど進行してない高水分乳牛ふん尿堆肥において,植 著しく変化し,とくに相対色度の増加が顕著であった 物腐朽遺体に起因するリグニンなど非腐植物質の構造特性 実 験室規模や小規模堆肥化試験から得られた既存の研究成果 を強く反映した.一方,水により抽出された可動性の高い とは異なり,相対色度は 4 0前後と高い値を示した,一方, 好気的な発酵がほとんど生じないために,その処理主利用 腐植酸では, とくに堆肥化や腐熟化が進行した肉牛ふん尿 敷料堆肥や混合堆肥でカノレボキシノレ基やアミドなどの構造 が課題となっている高水分乳牛ふん尿堆肥は,堆積に伴う 単位が顕著に認められた. 腐植化はほとんど進行せず,腐植酸の構造単位の存在割合 も未消化繊維や敷料などの植物腐朽遺体に由来するリグニ ンなどの非腐植物質の特性を強く反映した また,実際の 園場還元において,土壌中での可宣言川生が高く,植物の生育 や生理活性に直接的に影響を与えると考えられる水抽出さ れる腐植酸は,水酸化ナトリウム溶液により抽出される腐 植酸よりも相対的に腐植化が進んでおり,とくに堆肥化や 腐熟化が進行した肉牛ふん尿敷料堆肥や肉牛ふん尿敷料と 鶏糞との混合堆肥から水抽出された腐植酸で、はカノレポキシ ノレ基やアミドなどの構造単位が顕著に認められた 5 要 約 本研究では,堆肥化の進行や腐熟度が大きく異なる牛ふ ん尿堆肥について,堆肥製造業者や一般の畜産農家および 畑作農家が製造し,かっ固場還元している実際的な堆肥を 対象に,牛ふん尿の堆肥化と腐熟化に伴う腐植酸およびフ ノレボ酸の化学的特徴,および腐植酸の λ ベクトノレ解析から 構造単位の存在割合の違いを明らかにした.さらに土壌 中での可動性が異なると考えられる腐植を水および水酸化 ナトリウム溶液により抽出して比較し,その化学的特徴や 文 献 A d a n i ,F .,G e n e v i n i ,P ., . La n dTambone,F .1 9 9 5 .Anewi n d e xo f o r g a n i c m a t t e r s t a b i l i t y .C o m p o s tS c i .U t i l ., 3 , 2 5 3 7 C a c c o, G ., a n dD e l ] 'A g n o l a , G .1 9 8 4 .P l a n tg r o w t hr e g u l a t o ra c t i v i t y a n . ]S o i lS c i ., 62, 3 0 6 3 1 0 . 0 1s o l u b l eh u m i cc o m p l e x .C C ., . Eα l e n, Y . , H a y e s , M .H ., . Ba n dChenιH.H .2 0 01 .P l a n t C l a p p, .S .S w i f ta n d g r o w t hp r o m o t i n ga c t i v i t yo fh u m i c s u b s t a n c e s .1 1 1R K .M .S p a r k s( e d . )U n d e r s t a n d i n ga n dM a n a g i n gO r g a n i cM a t t e r i nS o i l s , S e d i m e n t s , a n dW a t e r s, p .2 4 3 ー 2 5 5 .I n t e r n a t i o n a lHumic , M a d i s o n S c i e n c eS o c i e t y .,andN a r d i,S .1 9 8 7 .H o r m o n e l i k ee 古" e c tand D e l ] 'A g n o l a,G e n h a n c e dn i t r a t eu p t a k ei n d u c e dbyd e p o l y c o n d e n s e dh u m i c l l o l o b o P l lO r ar o s e aa n dA .c a l i g i n o s a f r a c t i o n so b t a i n e df r o mA f a e c 田 B i o l .F e r t i l .S o i l s , 4, 1 1 5 1 1 8 藤原俊六郎 2 0 0 3堆肥のっくり方・使い方原理から実際まで,農 文協,東京 G e n e v i n i, , . PA d a n i ,F .,V e e k e n ,A .H .M.,a n dS c a g l i a,B .2 0 0 2 a ・ l i k ed u r i n gh i g h E v o l u t i o no fh u r n i ca c i d l i k ea n dc o r e . h u m i ca c i d o i lS c i r a t ec o m p o s t i n go fp i gf a e c e sa m e n d e dw i t hw h e a ts t r a w .S P l a l l tN u t r ., 48, 1 3 5 1 4 1 P ., A d a n i, , . FV e e k e n, A .H .M ., N i e r o p, K .G . , . ]S c a g l i a , B ., G e n e v i n i, a n dD i j l e m a , C .2 0 0 2 b .Q u a l i t a t i v em o d i f i c a t i o n so fh u m i ca c i d 李・苔・相内 小池宜持園場還元利用されている実際的な牛ふん尿堆肥に含まれる腐植酸およびフルポ酸の化学的特徴 l i k eandc o r e h u m i ca c i d l i k ed u r i n gh i g h r a t ec o m p o s t i n go fp i g f a e c e samendedw i t hwheatstm 皿 おl iS c i .P l a n tN u t r ., 48, 1 4 3 1 5 0 G四 s i m o w i c z , Wv . ,a ndB y l e r , D .M .1 9 8 5 .C町 b o n 1 3CPMASNMR andFTIRs p e c t r o s c o p i cs t u d i e so fhumica c i d s .S o i lS d ., 139, 2 7 0 2 7 8 G o n z a l e z V i 1 a ,F . ] .,Almen 也' o s ,G . ,a ndMac 1 r id,F .1 9 9 9 .M o l e c u l a I a l t e r a t i o n so fo r g a n i cf r a c t i o n sf r o mu r b a nw a s t ei nt h ec o u r s eo f c o m p o s t I n gandt h e i rf u r t h e rt r a n s f o r m a t i o ni namendeds o i . lS c i 236 , 2 1 5 ー 2 2 9 . T o t a I E n v i r o l l ., 原田靖生 1 9 8 3家畜ふん尿堆肥の品質基準及びその判定法と残され た問題点農林水産省農業研究センター編有機物の処理・流通・ . 1 4 2 1 6 3綜合農業研究叢書,第7 号. 利用システム, p H a r a d a,Y . , H aga,K . ,O sada,T . ,a ndK o s h i n o ,M .1 9 9 3 .Q u a l i t y0 1 c o m p o s t p r o d u c e df r o ma n i m a lw a s t e s . ] A R Q , 26, 2 8 3 2 4 6 原因靖生 2 0 0 4家畜ふんi 倒 Eの 腐 熟 度 農 文 協 編 畜 産 環 境 対 策 大 事典第2 版 , p .11ι120良 文 臥 東 京 . 1 9 7 2物理的に分画した稲わら堆肥の性状(そ 広瀬春朗・熊田恭 の2 )植物遺体の腐朽化過程に関する化学的研究(第3 報) 土肥誌 43, 1 1 5 1 1 8 北海道立農業・畜産試験場家畜ふん尿プロジェクトチーム 2 0 0 4家 畜ふん尿処理・利用の手引き 2 0 0 4 ,p . 1 7 1 8 .北海道立畜産試験場, 北海道 I n b a r ,Y . , C hen ,Y . , a ndHadar ,Y .1 9 日O .Humics u b s t a n c e sf o r m e d d u r i n gt h ec o m p o s t I n go fo r g a n i cm a t t e r .S o i lS a .S o . cAm.f,54, 1 3 1 6 1 3 2 3 Kumada,K . , S a t o,0 .,Ohsumi,Y .,andOhta,S .1 9 6 7 .Humus c o m p o s i t i o no fmountains o i l si nc e n t r a l]apanw i t hs p e c i a l r e f e r e n c et ot h ed i s t r i b u t i o no fPt y p ehumica c i d .S o i lS c i .P l a n t 1 3, 1 5 1 1 5 8 N u t r ., ・鈴木正昭 1 9 6 9 腐朽噛物遺体の腐植組成土』目見 40 , 3 5 3 3 5 7 熊田恭一 1 9 8 1 土 壌 有 弘 吻 の 化 学 第2版 。学会出版センター, 熊田恭 東京 M a g g i o n i ,A . ,V a r a n i n i ,Z .,N a r d i,S .,andP i n t o n ,R .1 9 8 7 .A c t i o no f 5 0 Bhumicm a t t e ronp l a n tr o o t s:s t i m u l a t i o no fi o nu p t a k eand e f f e c t so n仰 i +K+)ATPaseactivity.Sc i .T o f a lB叫 i 1 ' O l 1 . , 62 , おι 3 6 3 .,Watanabe,A .,Hayamizu,K . , a ndKimura,M.2 0 0 2 Maie,N C o m p a r i s o no fc h e m i c a lc h a r a c t e r i s t i c so fTypeA humica c i d s e x h ' a c t e df r o ms u b s o i l so fpaddyf i e l d sands u r f a c ea n d os o i l s . G e o d e r m a , 1 06 , 1 1 9 松崎敏英 1 9 9 2土と堆肥と有機物,社団法人家の光協会,東京 345 N a r d i,S .,P i z z e g h e l l o,D . , M uscolo,A . , a ndV i a n e l l o,A .2 0 0 2 P h y s i o l o g i c a le f f e c 恒o fhumics u b s t a n c e sonh i g h e rp l a n t s .S o i l B日 l . B J 日c h e m ., 34, 1 5 2 7 1 5 3 6 日本土壌協会 2 0 0 0 .堆肥等有機物分析法, 日本土壌協会,東京 9 8 5中央ネパール カリガンダキ河流域に分布する土壌 太田誠一 1 ー土壌有機物の蓄積と腐植組成 の気候的遷移について -2 ベド ロジスト, 29 , 1 8 3 2 P i n t o n ,P . ,C e s c o ,S .,DeN o b i l i ,M. ,S a n t i,S . ,a ndV a r a n i n i ,Z .1 9 9 8 W a t e r -andp y r o p h o s p h a t e -e x t r a c t a b l ehumics u b s t a n c e s i o l . f r a c t i o n sa sas o u r c eo fi r o nf o rF e d e f i c i e n tc u c u m b e rp l a n t s .B l s, 2 6, 2 3 ー 2 7 F e r t i l .お i P i z z e g h e l l o , D . ,N i c o l i n i , G ., a n d N a r d i, S .2 0 01 .H o r m o n e l i k ea c t i v i t y 肥s t s . N e wP h y 如l o g i s t , o fhumics u b s t a n c e si nFaguss y l v a t i c a ef o 1 5 1, 6 4 7 6 5 7 P r o v e n z a n o , M.R . ,S e n e s i, N ., a n d M i i k k i, v '1 9 9 8 .C h a r a c t e r i 坦 t i o n o f c o m p o s t sandhumica c i d sf r o mp u l pandp a p e rm i l lb i o s l u d g e sby DSCi na s s a口 組o nw i t hFT.IRs p e c 廿o s c o p y .JT h e n n a lA n a l y s i s , 52, 1 0 3 7 1 0 4 6 白 印 n c h e 白z S a C α h e m i c 回a lands t 位 r 山 u c t 加 u r 悶 、 司 a 叫 le v o l u t 旧町 no fhumicac 口凶 1 d sd u r i n g凹 0 r 耳am 犯 C ¥V 田 a s t 匝 , e c 凹0 凹mp ロ 田s t i n g . B i 叩 o 巾 d e , g r a d α ,t i O , l I1 3, 3 6 1 3 7 1 志賀一一・藤田秀保・徳永隆一・吉原大二 2 0 0 1酪農における家畜 ふん尿処理と地域利用 循環型農業をめざして ,酪総研,札幌 S t e v e n s o n , F . ] .1 9 9 4 .HumusC h e m i s t r y2nde d . , p .4 9 5 , J o h nW i l e y& S o n s, I n c ., NewY o r k M., andKumadaK.1 9 7 2 .S e v e r a lp r o p e r t i e so fRpt y p ehumic S u z u k i, a c i d .S o i lS c i .P l a l l tN l l t r ., 18 , 5 3 6 4 四 k i, M., andKumadaK.1 9 7 6 .An a l y s i s0 1t h er o t t i n gp r o c 田 s 0 1 Su s a w d u s tb a r n y a r dm a n u r e .S o i lS c i .P l a l l tN u t r . , 22 , 3 6 1 3 7 2 立川 涼 1 9 6 6土壌および液試料中の有機物の迅速定量法ならひ穂 類に関するこ,三の定量法土肥誌 37 , 2 8 3 3 . , N i e r o p,K . , d eWilde,v . , a ndHamelers,B .2 0 0 0 Veeken,A C h a r a c t e r i s a t i o no fNaOH-extractedhumica c i d sduring c o m p o s t i n g o fab i o w a s t e . B i o r e s o w :T e c l l o l ., 72 , 3 3 4 1 渡辺突・板川秀雄・矢崎仁也 1 9 8 1おがくず牛ふん堆積物の腐熟 過 程 土 肥 誌 52 , 3 3 9 3 4 6 . ,a ndKuwatsuka ,S .1 9 9 2 .C h e m i c a lc h a r a c t e r i s t i c so f Watanabe,A s o 1 i和 l v i ca c i d sf r a c t i o n a t e du s i n gp o l y v i n y l p y r r o l i d o n eC P V P ) S o i lS c i .P l 削 ,t N u t r . , 38, 3 1 4 1 . 保井聖一・筒木潔・明石憲宗木村義彰 2 0 0 4乳ヰふん尿消化液 から抽出した腐植酸およびフルポ酸の化学的特徴土肥誌 75 , 3 4 7 3 5 4 Chemicalc h a r a c t e r i s t i c so fhumicandf u 1 v i ca c i d si nc a t t l emanurep r a c t i c a l l yprocessedanda p p l i e di n af i e l d XiangzhenW ,MasayukiTANI',DaigoAIUC Hl l ,M asanoriKOIKE'andK a t s u h i s aKURAMOCHI' 1T h eU J 仰向 d Gra S c h .A g r i c .S , 口, I w a l eU n i v . , ι . c 2D e p .A g r o E n v i r o l l .S c i . ,O b i h i r oU n i v .A g r i 防t . M e d R e c e n t l ys p e c i a la t t e n t i o nhasb e e np a i dt ot h eh u m i f i c a t i o no fo r g a n i cw a s t e sd u r i n gc o m p o s t i n gt oe v a l u a t em a t u r i t y 巴 ,c t so fc o m p o s t i n gp e r i o dandd e g r e eo fma 加l ' i t yonp r o d u c t i o nando p t i c a lc h a r a c t e r i s t i c so f andq u a l i t y0 1p r o d u c t s .Thee l l humics u b s t a n c eands t r u c 加r a lf e a t u r e so fhumica c i di np r a c t i c a l l yp r o c e s s e dc a t t l emanureswerei n v e s t i g a t e d .B e e fc a t t l e whichweremixedw i t hb a r kl i t t e randw e l lcomposted( b a r kc o m p o s t )bymonthlyt u r n i n gl o r5and1 2months, were manure, s e l e c t e dt oe v a l u a t ee f f e c t s0 1c o m p o s t i n gp e r i o d sont h eh u m i l i c a t i o n .R e l a t i v ec o l o rd e n s i t y(RFv a l u e )0 1humica c i di nbark c o m p o s t si n c r e a s e dw i t hi n c r e a s ei nt h ed u r a t i o no fc o m p o s t i n g .O p t i c a lc h a r a c t e r i s t i c sands t r u c t u r a lf e a t u r e so fhumic whichshowedc o m p l e t e l y a c i d se x h ' a c t e dbyw a t e randNaOHs o l u t i o nlroml o u rs e l e c t e dd a i r yandb e e lc a t t l emanures, 346 日本土壌肥料学雑誌第 8 0巻 第 4号 ( 2 0 0 9 ) , w e r ec o m p a r e d .Humica c i d se x h " a c t e dbyNaOHs o l u t i o nf r o md a i r yc a t t l em a n u r e s, w h i c hw e r e d i f f e r e n td e g r e eo fm a t u r i t y e x t r e m e l yh i g hi nm o i s t u r ea n dn o ta e r o b i c a l l yc o m p o s t e d ,w e r ec l a s s i f i e di n t ot h ei m m a t u r eR p t y p ea n dc h a r a c t e r i z e dby l i g n i n l i k es t r u c t u r e sf r o mU V V I Sa n dFT I Rs p e c t r a .A e r o b i c a l l yf e r m e n t e da n dw e l l m a t u r e db e e fc a t t l em a n u r ec o n t a i n e d t h eh u m i f i e dB t y p eh u m i ca c i d , w h i c hwasc h a r a c t e r i z e dbyc a 巾o x y l i cg r o u pa n da m i d es t r u c t u r e s .T h e s ef u n c t i o n a lg r o u p s w e r em o r er e m a r k a b l ei nt h ew a t e r e x t r a c t e dh u m i ca c i d st h a nN a O H e x t r a c t e do n e s .I twasc o n c l u d e dt h a tp r a c t i c a l l yw e l l p r o c e s s e da n dm a t u r e dc a t t l em a n u r e , w h i c hh a db e e ns e l e c t e di nt h ep r e s e n ts t u d y , c o n t a i n e dh i g h l yh u m i f i e do r g a n i cm a t t e r 加d i e s , p r o b a b l yd u et oh i g ht e m p e r a t u r ea n di t sownh e a v yw e i g h to nal a r g e c o m p a r e dt ot h o s er e p o r t e di nt h ep r e v i o u ss s c a l e I ゑy μo r d s :c a t t l em a n u r e , f i e l da p p l i c a t i o n, h u m i ca c i d, f u l v i ca c i d, F o u r i e r t r a n s f o r mi n f r a r e d σ T I R )s p e c t 悶 U p n .JS o i lS c i .P l a n tNut , . r8 0 , 3 3 5-3 4 6, 2 0 0 9 )
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