2016年7月 清水 清 2016年のマラウイ訪問記録 2014年に、木下マラウイ基金からの活動資金の払い出しを受けて、マラウイを訪問 して木下サンボイラーを設置しましてから2年が経過しました。 前回の訪問時は、設置した木下サンボイラーの試運転の立会いや運用方法の確立に関与 する時間が十分取れないまま帰国しました。また、最近の現地情報では、ボイラーが運用 されていない状況になっているとのことでした。 今般、このようなことを背景として、木下サンボイラーの改修・再稼動及び現地における 運用方法の確立、並びに木下マラウイ基金に賛同くださった方々への経過報告のための情 報や今後のマラウイ支援活動の検討計画に資する情報の収集等を目的として、清水がマラ ウイを訪問しました。 本記録は、2回目のマラウイ訪問の主要な行動をまとめるとともに、国内及び現地で支 援・協力をして下さった皆様への感謝の気持ちを記したものです。 なお、前回の訪問の経緯をご存知の読者を念頭に置いて記述していますので、登場人物 や説明が唐突な部分は、前回の訪問記録を掲載している木下マラウイ基金のホームページ 等を参照して下さる様、お願いします。 ( http://kmwif.web.fc2.com/ ) 1 / 11 2016 年 7 月のマラウイ訪問記録 1.訪問期間 2016 年 7 月 3 日~7 月 11 日 2.訪問先 マラウイ共和国ブランタイヤ、チレカ周辺とMIRTDC工場 3.今回の現地協力者 本田佳織さん JICAコミュニティ開発 2 次隊チクリ派遣 塩田君 “ 遠藤さん “ Mr.タウロ JICA海外協力隊 (病院薬事支援) ” (飲料水検査支援) MIRTDC (送迎、総合、手配) Mr.ニレンダ “ (沸騰データ採取、ボイラー管理) Mr.モーゼ “ (ボイラー修繕作業) Mr.ジミー “ (ボイラー修繕作業) 阪口文代さん Mr. JOHN 前回お世話をして頂いた旧海外協力隊、現地在住 WILSON 英国人で阪口さんの御主人(前回、お金を貸して頂 いた) KATA村長 現地責任者 Mr.シンクレア 現地保守管理者(KATA 村長の弟) 4.渡航ルート 伊丹~成田~香港(経由)~エチオピア~リロングウェ(経由)~ブランタイヤ 5.今回の日本からの持参品 ギアポンプ、Vベルト、Vシーブ、レバーブロック、水ホース 30m、塩ビ配管材料、シ ールテープ、工具セット 5 式、ドリルセット 2 式、工具、クランプ 4 式、ビニールテープ、 ファイバー断熱材、反射板ゲージ、シリコンコーキング材、コーキングガン、黒色艶消し ペイント、温度計 2 個、その他 (資材・工具の総重量:50kg) 6.活動資金 2014年の活動においては、募金のために設置した木下マラウイ基金に寄せられた寄 付金を払出して活動資金としたが、今回の渡航は私(清水)個人の発案による個人的な活動 であり、活動資金を募ることはせず、私費により活動することにした。ただし、一部の知 人の方々から寄せられたご厚志も活動資金に充てさせていただいた。 2 / 11 2016 年 7 月のマラウイ訪問記録 7.日程と活動内容 7月3日 伊丹 14:10 出発 (鈴木さん、大源さん 見送り) 成田から出国 (M7 横田さん 見送り) 7月4日 ブランタイヤ着 16:00(2 時間遅れ着) チレカ空港お迎え 日本との時差 7 時間 JICA本田さん、Mr.タウロ 今年から、マラウイは入国ビザが必要となり、75 ドルと高額の要求が有った。 空港職員のチップ要求が、更に公然と行われている。 Mr.タウロの車で、途中JICA塩田君をピックアップして、陽気なフランス人ボス のホテルへ移動。本田さん、塩田君 と夕食を共にして、今回の渡航目的 と木下サンボイラーの説明をし、彼 らの意見を聞かせてもらった。(写 真1) その結果、飲料水は非常に大事な 問題なので、バングラデシュから移 動されてきた、水検査支援の遠藤さ んを紹介して頂くことになった。以 後、JICAの 3 名の若い人達に協 写真1 塩田君 力して頂くことになった。 清水 本田さん(ホテルにて) 7月5日 天気 曇り時々雨 9:00 タウロ君によるホテルピックアップ。 午前中 MIRTDCの工場訪問。 現地組織のトップMr.Christopher が、挨拶に来て待っていてくれた。 荷物サイズの関係で切断して持参した反射板ゲージを、ボルト止めで修復する作業を依 頼。機械製缶の技術の熟練したジミー君とモーゼ君が手際よく製作してくれた。 午後 ボイラー設置場所 NKATA 村へ移動し、現状確認。 木下サンボイラーは、昨年末から壊れて使用 していない状態で、受光部は帯状にガラスが割 れ、受光の黒色ペンキが剥がれた状態であった。 現地では、通常、金属類は泥棒の餌食であるが、 完璧に守られており、何一つ盗難被害は無かっ たことに、まずは嬉しく思った。(写真2) 写真2 訪問最初の姿 3 / 11 2016 年 7 月のマラウイ訪問記録 ガラス割れは、中央での軸線方向に完全に割れて おり、原因は空焼きと断定した。(写真3) 村のメン テナンスが原因であるが、村内での煮沸水の分配で トラブルが有ったようだ。 水を運んで来てボイラーに入れるが、作業しない 人達が煮沸水をもって帰ってしまう。このようなこ とが起こらないようにする運用上のルールが住民の 間で話し合われていなかったことが、トラブルの原 写真3 ガラス割れの状態 因であったそうだ。 事実は不明だが、2 年前、私達がボイラー設置作業をして帰国した後、水汲み場に誰かが 毒を入れたので、別の場所に穴を掘ったとのこと。新しい穴は、放牧のヤギの糞尿が流れ 込むような更に劣悪な条件であった。又、水量が足りないので、その横の水溜まりからも 採取している。 どうしても理解できないのが、2 年前ボイラーの近くにマラウイ政府?が掘った井戸が有 ったそうだ。約 40m離れた所に、立派な井戸(「1998-11-5 設置」と印字されたコンクリー ト)が有ったらしいが、ボイラー設置時に、彼らは、それを教えてくれなかった。 村人へのヒヤリングでは、2 週間前に中国人がそこにポンプをつけてくれたとのことであ ったが、それも事実ではないようなので後日、村長に聞くことにした。 ボイラーから 40mの井戸(写真4)には、2 週間前から手押しポンプが設置され村人が 列をなして水汲みに来ていたが、雑な作りでピストンロッドのネジが外れ、井戸の中に落 ちてしまった。その結果、写真5の取水穴から水汲みをしなければならなくなった。 写真4 ボイラーから 40m 写真5 前の取水場近くの取水穴 の位置の井戸 4 / 11 2016 年 7 月のマラウイ訪問記録 本田さんによると、チレカ、チクリ一帯は、 干ばつ被害による飢餓が深刻なところで、各国 際援助機関が、食糧、保健援助を行っていると のこと。 2 年前にボイラー設置場所を裸足で均してく れたキャサリンちゃんが、来てくれた。(写真7) あの時は 11 歳だったが、その後、家を離れ、つ い最近おばあちゃんの家に帰って来た。 生後 2 週間の赤ちゃんにおっぱいをあげるお 写真6 水汲み場近くの沼(洗濯に使っている) 母さんになっていた。いくつになったと問うと、17 歳と答えた彼女の言葉に、たくましさ とやりきれぬ悲しさを覚えた。赤ちゃんのお父さんはどこかへ行ってしまったとのこと。 写真7 キャサリンちゃんとタウロ君の表情 タウロ君は、いつもマラウイの 20 年後のことを考え、現在、南アフリカのケープタウン 大学で、2030 年のマラウイのエネルギー事情とエネルギー確保の研究をしていて、論文も 発表している。MIRTDCに行った時、トウモロコシの残さをブリケットにして燃料化 するテストをしていた。40%を海外援助に頼るマラウイからの脱却と自立を夢みて頑張っ ている姿を見て、2 年前に日本に来た時の彼の誠実さに変わりない印象を受けた。 ボイラー修繕に関する打ち合わせをし、実施事項を次の通り確認。(参加者 6 名) ・ゲージによる反射板角度の調整 ・ガラス切断品購入と再セット ・黒色艶消しペイント施工 ・傾斜調整用レバーブロックのハンガー取り付け ・採光に邪魔な木の処理 ・温度計の交換(MAX120℃なのでオーバーヒートによる破損) 5 / 11 2016 年 7 月のマラウイ訪問記録 ・配管の変更(エアーブリーザーの追加とチャージ配管に位置変更) ガラス切断品購入は 8 日納期だが、タウロ君のねばりで、本日中の受取が可能に。 7 月 6 日(マラウイ建国記念日の祝日) 天気 曇り 8:00 タウロ君が私を、ホテルピックアップで、MIRTDC工場へ。 貨物車が無いので、タウロ君のカローラにエンジンジェネレーターを積み込む予定だっ たが、トランクには入らず、後部シートに積み込んだ。このため、 ドアゴム破損、ドアレバー破損が生じてしまい、申し訳なかった。 本日は破損ガラスの撤去、黒艶消しラッカー刷毛塗り、ガラスセ ット用シリコン施工及びゲージによる角度調整作業。 写真8 ジェネレ-タ積載 写真9 ジミ-君とモ-ゼ君の修復作業 昼食は村でシマを頂いた。 KATA村長との面会に彼の自宅を訪問するも、葬式参列で不在の為、会いたいとの伝 言をしておいた。タウロ君が事前に連絡をしてくれていたが、葬式の連続で面会が難しい 状況であった。 休日返上で、タウロ君、ニレンダ君、ジミー君、モーゼ君は問題ないと 17 時過ぎまで作 業をしてくれた。 彼らの労賃は、休日分だけ支払ってやってくれ とタウロ君が言ってくれたので、甘えることにした。 一人 5000KW(7 ドル)/日を支払った。 写真10 要領良く作業するメンバ- 6 / 11 2016 年 7 月のマラウイ訪問記録 私達が作業に行くと、毎日子供達が集まって来る。 今回は本田さんに遊んで貰うのが楽しみな様で、皆 キラキラとした目と笑顔である。 JICA水質検査の遠藤さんと連絡がとれて、7 月 8 日に会合予定となった。休日の為、午後から、本田 さん、塩田君が現場に来てくれ、村人へのヒヤリング 写真11 作業する私達の廻りに 毎日集まる幼児達 をしてくれた。 ・2 年前から、Mr.シンクレアという人が、ボイラーの運営をやってくれており、一 番信頼されている人物であること。 ・井戸とポンプは、中国人が掘ったということ。 の 2 点が分かったが、いずれも信憑性に乏しいので、KATA村長に後日確認すること とした。 現在、マラウイKWは値下がりし、1 ドル 730KW(2 年前は 430KWであった) 一般ワーカーの日当 1、200KW、ガソリン 800KW/L 参加者 7 名 7 月 7 日(在マラウイ・イスラム信者のラマダン最終日で休日) 天気 曇りのち雨 8:00 タウロ君が、私をホテルピックアップ後、MIRTDC工場へ。 全員合流して、チレカの現場へ移動。昨日と同様休日返上で作業してくれた。 終日、配管変更、ガラス取り付け、シリコンコーキング、温度計交換、ミラー洗浄、レ バーブロックフック取り付け、木の枝伐採、等の作業。 昼食は同じく村で、シマを頂いた。 昼前、KATA村長が葬式出席の合間に、現場へ来てくれた。 本田さんが村長から、チレカ地方に入っている援助団体についてヒヤリングしてくれた。 チレカ地方に支援を展開している団体名と内容を教えてもらった。 WFP(ワールドフードプログラム) シマ粉、油、の無料配布 フレッシュウオータープロジェクト 井戸堀り、ポンプ設置 セーブザチュルドレン シマ粉、油、大豆の配布 DAP トイレ シレ川プロジェクト 灌水事業 USエイド(アメリカ) 生活支援(厳しい環境で支援している)ど この海外協力隊も過酷な生活条件でも、使命感に燃えて活動されている。その様な若い人 達に頭の下がる思いである。 井戸を掘ったのは、フレッシュウオータプロジェクトの仕事で、ポンプを設置したのも 7 / 11 2016 年 7 月のマラウイ訪問記録 同じ彼らがやったそうだが、昨日、ポンプが壊れ、我々に直してくれと依頼があった。 簡単な作りで、修繕は可能であったが、また壊れた時、今度は日本人の責任となるし、 あの構造では直ぐ壊れるので、お断りをした。時間が有れば、ネジロックを追加して、恒 久対策は可能だが、設置したNPOの為にもならないので、正解だったと思う。 KATA村長からは、ポンプと配管でボイラーまで送水して欲しい、と我々に依頼があ ったが、タウロ君が、「貴方は何をするのか?」と彼に言った。私も、「これは支援団体に 貴方が依頼すべきで、貴方の仕事です。私はもう金が無い。タウロ君は、2030 年のマラウ イのエネルギー対応の研究をしている。村長も一緒にやるべき」と言い、話は終わったが、 真意が理解されたかどうかは解らない。本田さんがしっかりと英語で伝えてくれたが、村 長の英語力が疑問である。 その結果、彼の弟であるMr.シンクレアにボイラーの面倒を見させることと、送水に 関してはKATA村長が支援団体に依頼すると言ってくれた。勿論、風車駆動のポンプを 採用するなら、MIRTDCで施工可能で、協力もするということになった。 参加者 7 名 写真12 子供達にゲ-ムを 写真13 得意顔で臼をつく少女 教える本田さんと塩田君 7月8日 天気 曇りのち雨、嵐 8:00 同じくタウロ君のピックアップ 配管ソケット割れ、漏水修理作業は全作業終了。 2 年前に渡した木下サンボイラーの取り扱い説明書は紛失しており、チュワ語に翻訳した 書面を作成し、再度、教育をすることにした。 ホテルに帰って、日本語の取説を制作して、メールで本田さんに送付し、英訳してもら う。(翌朝、本田さんとタウロ君がチュワ語に翻訳して、Mr.シンクレアに注意項目を説 明。) 8 / 11 2016 年 7 月のマラウイ訪問記録 彼女が居なければ、今回の成果は半減していたであろうと感謝。 12:00 阪口さんと Wilson さんが、ゾンバから陣中見舞いに来て下さったので、ホテル に戻り、本田さんと 4 人で昼食をした。前回のお礼として、御馳走するつもりだったが、 Wilson さんが知らぬ間に支払われ、又もお世話かけることになった。 写真14 清水 阪口文代さん Mr.wilsonn 本田さん 今回、本田さんを御紹介下さったのは、阪口さんであり、マラウイでの活動の原点を提 供頂いた。御主人(Mr.Wilson)も、わざわざゾンバから一緒にお越し頂き、感謝と共 に御縁を感じた。 阪口さんが 14:00 に帰られ、16:00 に水試験の遠藤さんの仕事終わりを待って、彼女を迎 えに行った。水試験の 3 サンプルの取り方をタウロ君に説明してもらった。 遠藤さんには、水試験のサンプルとして、現在使用中の沼の水、その水の沸騰後の水、 近くの井戸水の 3 サンプル及び比較用にブランタイヤの水道の試験データの取得を依頼し た。私が帰った後、11 日にタウロ君がサンプル採取して遠藤さんのところに持ち込む手は ずを決定し、データの日本への送付をお 願いした。 遠藤さんによる水試験で取得できる検 査データの項目は、外観と臭気、pH、濁 度、一般細菌 及び大腸菌群とのこと。 写真15 遠藤さん 清水 本田さん これで、全ての作業が終了したが、恨めしい天気で 1 日の晴れもなく、一番の目的であ る沸騰テストのデータが取れなかったことが、心残りである。 悔しがる私をみて、タウロ君の部下であるニレンダ君が自分に任せてくれとのこと。 9 / 11 2016 年 7 月のマラウイ訪問記録 晴れの日に、タウロ君と一緒にデータをとる。その後、ポリテクの生徒になって、サン ボイラーの原理をテーマに勉強をすると言ってくれた。私が一番望んでいた言葉であった し、今回のマラウイ訪問の前に、そう言っていたそうです。 また、今回お世話下さった、JICA の本田佳織さんが、以後のボイラーの状況を定期的 に連絡してくれることを申し出てくれました。彼女には、遠藤さん塩田君への橋渡し、通 訳、資料作り等、全般のお世話をして頂きました。25 歳の若さで、電気の無い家に住み、 夏場はトタン一枚の屋根からくる熱で寝られぬ環境。移動はJICA から支給されたバイク (100cc)で赴任地を駆け廻っています。いくらしっかりしていても、御両親がどれ程心 配されていることか。無事に、任期を終えられることを祈ります。 写真16 タウロ君 ニレンダ君 モ-ゼ君 写真17 清水 KATA村長 10 / 11 清水 ジミー君 タウロ君 2016 年 7 月のマラウイ訪問記録 7月9日 曇り 10:30 タウロ君の車でチレカ空港へ。帰国の途に就く。 7 月 10 日 夜、成田に無事到着し、帰国。 7 月 11 日 姫路市内の自宅に帰着。 8.所感とお礼 今回は、阪口さんからご紹介頂いた本田さん、そして塩田君、遠藤さんのご協力によっ て、水のサンプル試験、村でのボイラーの管理、MIRTDCの活動とテストデータ作成 及び以後の連絡と、ほぼ完璧なフォローが可能となったこと。木下サンボイラーが、マラ ウイの子供達に役立ってくれることを嬉しく思います。 タウロ君と別れ際、空から木下さんが見ている様だと私が言った時、共通する思いの握 手ができたことが私の手に残っています。 厳しい環境の中、業務の合間に貴重なお時間 と労力を頂いた、本田さん、塩田君、遠藤さん、 本当に有難う。日本人にしか出来ない心からの 誠意は、きっとマラウイの人達に伝わっている と思います。 事故に気を付け、無事に帰国されることを祈 っています。ありがとうございました。 写真18 塩田君 11 / 11 KATA 村長 本田さん 2016 年 7 月のマラウイ訪問記録
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