八ヶ岳 石尊稜 裏同心ルンゼ 山行報告 天気はピーカン!

八ヶ岳 石尊稜 裏同心ルンゼ 山行報告
天気はピーカン!
ルートも快適! バージンアイスにラッセルもありました。
2011 年 12 月 29 日(木)2012 年 1 月 2 日(月)
参加者、CLY下、[山嶺]I 口、H田 (文中敬称略で失礼します)
29 日(木) 20 時 20 分小倉駅、22 時 20 新大阪駅 松本高速バス
30 日(金)快晴
6:16 松本 6:51−7:32 茅野、8:15 美濃戸口 8:25、9:20 元小松山荘(やまの子)、
10:25 赤い橋、11:30 赤岳鉱泉設営 12:30、12:40 石尊分岐、13:35 石尊稜取り付き
14:10 分岐戻る 14:30 鉱泉、17 時頃夕食、19 時就寝
31 日(土)快晴
4:00 起床、6:00 出発、6:25 分岐、7:30 取り付き、9:20 上部岩壁、10:45 稜線、
11:25 地蔵尾根下降点 11:35、12:25 行者小屋、14:10 ジョウゴ沢入口ジョウゴ沢
15:50、16:05 鉱泉、17 時頃夕食、19 時就寝
2012 年1月 1 日(日)快晴
5 時起床 6:30 出発、7:35 裏同心沢出会い、8:05F1、8:50F2、9:35F3、11:05 大同
心稜 11:40、裏同心沢出会い、13:30 裏同心 F1・F2 、14:50 出会い、15:00 鉱泉
テント場、16 時夕食、18 時就寝
2日(月)曇りのち雪
5 時起床、6:50 発、7:35 赤い橋、8:57 美濃戸口(赤岳山荘)、塩尻、名古屋、
広島 16 時頃、博多 17 時 30 頃着
前章
毎度、山嶺のメンバーとの山行ばかりで、想山会からクレームが出ないかと心配です
が、通常ルートから外れたバリエーションルートとなるとなかなか、同行してくれるメ
ンバーがいなくて登攀意欲だけではなく実力もついてきた山嶺の I 口さんと、意欲だけ
は人一倍、体力はいまいちH田さん 3 名で行ってきました。会のY田さんも行きたい意
欲は充分あったのですが、訓練山行の鷲ケ峰に参加できなく、今回も不参加となりまし
た。
石尊稜は八ヶ岳のバリエーションとしては最も易しい部類のルートとなっております
が、ネットの解説を読むと取り付き1ピッチ目が核心のようで、敗退して帰ったパーテ
ィもいるようです。
裏同心沢のアイスクライミングは F1、から F5まで4時間、F1はロープがなくても
登れると解説にあり、楽勝コースだろうと高をくくって取り付いたのであります。
29日(木)快晴
小倉駅から新幹線で I 口さんと合流。
新大阪駅から高速バスで松本に向かいます。バスの座席はいまいち熟睡とはいきません。
H田さんは今朝から出て茅野駅前で投宿しているはずです。
30日(金)快晴
松本駅から茅野まで JR で移動して H 田さんと合流。
天気図をみると、だいたい晴れで小さな低気圧が通過するので北部山岳は雲が多く八
ヶ岳付近は曇り時々晴れくらいだろうと予想して出掛けたのだが、
茅野駅に降りたときからピーカンの晴れでした。
タクシーで美濃戸口まで5千円。
降りると遭難対策の警察の方々が計画書提出を求めて、装備をチェックしておりました。
我々は既にネットで長野県警察に提出しておりましたが、求めに応じて再度簡単に書い
て提出いたしました。
ここから鉱泉まで3時間、南アルプス甲斐駒や北アの入山に比べれば気楽なものであ
ります。
1時間ほど行くと、以前は小松山荘と呼んでいた やまの子山荘 で一休みです。
車道は赤い橋のところで終わりになって、ここから山道です。
今年は雪は少ないようで、快適なアイスクライミングが楽しめそうです。
鉱泉には12時前に到着いたしまして、
テントを設営して早速石尊稜の取り付きまで偵察に出かけました。中山尾根は登攀経
験があるのですが、石尊稜の取り付き点には不安があります。
中山尾根の手前の沢筋に踏み跡があり、遡行して行きます。と小さな沢が右に分岐し
ていますが、一番大きな沢筋をトレースのとおり辿っていくと次第に傾斜がきつくなっ
てきて、これ以上はアイゼンがないと登れないと判断される小さな尾根に突き当たりま
す。
手前でアイゼンを装着して進むと木の根を持って登るところや 50 センチほどのギャッ
プを越えて登ったりして、漸く岩壁の取り付きに2本ボルトが打ってあるところが見え
る安定した小尾根にでました。
下を見ると二人は登ってくる様子はなく、帰りに会えばそのまま引き返すように、と
考えてとりあえず、始点のピンにタッチして戻ってくることにしました。
確かに下りの小ギャップは怖い。後ろ向きになって慎重に降りました。
二人は ロープも出さないで良く行くね と言われてしまいました。
鉱泉に戻ったのが14時30分。資料を見ると取り付きまでも、上部もいろいろとバリ
エーションのルートがあるようです。
17時には夕食を始めて、19時には就寝いたしました。
この日は、前日バスだったこともあり、良く眠れました。
31日(土)快晴
4時起床して、7時には取り付きに到着しました。
朝、一番苦労したのはアルパイン用の軽量ハーネスを持ってきたのですが、バックル
の折り返しが入らない!軽量でないのは末端のテープを引くだけでよいのだが、5、6
分苦闘して他のメンバーにも手伝ってもらって漸く装着。沢登りでは使えるが冬や寒い
ときには固まってトイレに行くにも大変な思いをしなければなりません。バックルなし
のハーネスを探しましょう。
岩壁の写真を見るとかなり立っているように見えましたが、取りつきから左に回り込
んでいくとちょっと窪んだところがありそこから入っていくと右斜め上にトラバースし
て上がっていけるようです。
ロープを2本セットして装備を確認して登りはじめます。
このルートは1ピッチ目が核心で、左から右に上がり込んだところがアイゼンの前歯
だけで立ち込んで上がらなくてはいけないところがあって、ちょっと緊張しました。
でも、阿蘇の赤壁のようにテープシュリンゲを出したくなるようなこともなく、ここを
抜けてしまえば難しいことはありませんでした。
大きめの立木にビレーを取って二人を引き上げると、次のピッチは I 口さんリードを
お願いして樹林の中の 雪原 と言うにはかなり傾斜のきつい斜面を上がっていきます。
先行していた、男女パーティーのセカンドの女性が取り付きに張り付いているのが見
えます。
周囲を見渡すと近くは大同心から、阿弥陀、遠くは中央・北アルプスを明確に見るこ
とができます。
冬山でこれほどの晴天は滅多にないことです。出発前に集めた天気図気象情報でもこ
れほどの晴天は予想していませんでした。
上部の取り付き先行パーティに追いついてみると、2本のロープが縺れていて1本で
登りたいようで1本引き上げようとしています。
時間はあるしゆっくり処理してもらって、我々が登り始めたのが 10 時 30 分で1ピッ
チ。このピッチは窪んだところを慎重に登っていけばロープはいらない程度と感じまし
た。次のピッチはコンテでも行けそうでしたが念のためリードビレーしてもらって登る
と後は急な雪原状態で主稜線に到着が 10 時 45 分でした。
富士山も鮮明に遠望できました。360 度のパノラマ写真を撮影して地蔵尾根に向かっ
て下りに掛かると、行き交う人が何か話ししたそうにこちらを見るので何事かと思った
ら、なんと福岡労山(アゼリア)の面々でした。登山学校のT山さんもいます。
お地蔵さんの前で大休止、行動食を摂って一気に下ると12時。やっとハーネスを外
してトイレに行けます。
中山尾根周辺で見る大同心、小同心、横岳の西壁が鮮明に迫力をもって見ることがで
きます。登ってきた石尊稜もルートを確認することができました。
こんどは小同心クラックをつるべで登りますかね?!
この日は早く終了できたので、アイスクライミングのトレーニングには最適のジョウ
ゴ沢のF1に行ってみることにしました。
テントに戻って、アイススクリューを持ってジョウゴ沢F1に向かいます。
F1には関西系の男性が女性を指導していました。
氷は以前来たときに比べると右側の岩が出ていて着氷は少ないようです。
氷も薄くところがあり中の水流が見える状態でした。関西系のパーティーは左の
一番氷の立ったところを使って指導しています。なにやら、バイルを刺した状態で
両手を離さないでスクリュウの操作をするようと、言っています。所詮遊びなんだから
そんなに厳しく指導しなくてもと思いますが・・。指導者のクライミングは思いっきり
バイルのピックを氷に叩きつけて、そんなに打ったら氷が割れて次の人が登れんだろう
が、と思うほどで。登れないで焦るとついつい強打してしまうのですが・・。
ちょっと窪んだところを2、3度ピックで叩いて掛かりを確認して、体を引き上げて
登るのです。そうは言っても2、3度が同じところにヒットしないでイラついてつい
強打するんですよね!
私の直バイルはピックに傾きがなくて、特に最後の登り込みのところでの手の支点が
不安定で怖いです。ここでは立木にトップロープを掛けて、落ちることはないが、リー
ドでは使えません。
左が空いたあと、2、3回トレーニングしてみるが足だけで踏ん張ってスクリューを
セットするのが難しい。バイルを氷に引っ掛けた状態でリーシュに頼って右手でスクリ
ューを廻すのですが、各自リーシュを工夫してバイルでバランスを取りながら、左手で
スクリューを支えています。
他人のバイルでは腕の長さも各自違っていて自分なりのリーシュの工夫をして、
臨まないと巧くいきません。
H田さんは、初めてとあってここぞとばかりにストレス解消のように氷りを叩きまくっ
て登っておりました。
適当に疲れて、16時には帰幕。18時過ぎには就寝。
巷では何とか歌合戦とかで盛り上がっているようですが、
今日は、運動量が足りなかったのかあまり良く眠れませんでした。
2012年1月1日(日)快晴
年が変わって 2012 年、年が替わっても相変わらず山ばかり(^_^;)
今日は遅めに起きて5時起床7時出発。バックルの装着に少しは慣れて出発が早くな
ったが、これは買い換えなければ、冬には使えない。
早速、ジョウゴ沢の手前の裏同心沢に入って行きます。
大同心沢の入り口にはロープがセットしてあり、[危険 一般ルートではありません。
(立ち入り禁止を強制するものではありません)]と但し書きがプレートに認めてあり
ます。『こんな危険な遊びはやめましょう』くらい書いておけば良いのにと思いながら
進入して行きます。
30分も遡行すると氷瀑が見えてきてこれがF1です。
近づいてみると、2パーテーが張り付いていました。HPで事前に調べた記録では
ロープを出さなくても登れると記述がありました。
F1
これで、ロープなし!?(写真参照)と この氷は違うだろうと右をみると、いかに
も傾斜の緩いすべり台のようなナメの氷がありこれに入ってみることにしました。
これなら、ロープなしで行こうとすると、H田はロープを出してというので念のため
コンテで登ることにしました。
すぐ、新雪のラッセルになり左に小尾根があり正面に大同心が迫ってきます。
これは右に寄りすぎているが左に戻らなくてはと思うものの、そのうち合流するだろう
と、そのままラッセルで上がっていくとそれなりの5m程の滝が出てきました。
右の方の氷柱の凹んだところを登ることにしました。
ここは、バイルもアイス用を持っている I 口がリードをしましょうと勢いがあります。
アンカーの他にスクリューを2本打ちこんで慎重に登り上がりました。
F2に挑む I 口
ここまでは良かったのですが、次の H 田が2mほど上がり込んだところでバイルが外れ
てアッと落ちていきます。上でビレーしていたので、墜落ではないがずずっと落ちてい
く。雪面にお尻から落ちていって軟着地で外傷はないようす。
I 口のビレーは上がり込んだところが緩い雪原で、これにバイルを刺してアンカーに
していたのが緩んで、止められなかったようです。
緩い雪ではアイス用のバイルは曲がっていてアンカーとしては効かないのです。
もう10mほど上流に小さなアイスがあったのでここで、スクリューアンカーを取るべ
きでした。再度登りなおしてもらって、私の番です。
2歩上がったところで左の直バイルが思うように刺さらない。
乗り越し(マントル)も平面に打ち込まなくていけないので、巧く刺さらないで
膝で上がり込んでしまいました。
上がり込むとリードを引いた I 口はビレーを止められなかったことを恐縮していまし
た。更にラッセルを続けていくとまた5m程の氷瀑がありました。ここは、山下がリー
ドを引きます。スクリューも打ち込んで登ろうとします、がやはり直バイルに不安があ
り。
F3
I 口さんのアイスバイルと交換してもらいました。
旧式の直バイルで登ろうとしているクライマーはこの八ヶ岳にはいない。
刺さり方 安定感が全々違います。
ここもアンカーとは別に2個のスクリューを打ち込んで、何とか抜けることができま
した。ここで、私はアンカー用のスクリューを F2 に忘れてきたことに気が付きます。
いまさら戻るわけにもいかず、下の道まで降りてから取りに戻ることにしました。
ラストの I 口は直バイルで こんな物使えん と叫びながら、リーシュも振り回して
登ってきました。
大同心が目の前に迫ってきて、これから、本来の裏同心沢に戻るれるとは思えないし、
いまさら、降りるわけにもいかないので、右の大同心稜を目指して登っていくことにし
ました。短くはありますが胸まである激しいラッセルで小さな谷の横断すると、その先
の稜線にトレースが見えました。これで帰れる!ほっと安心。
ひと休みして急な尾根を 30 分も下っていくと、元の谷筋の出会いに戻ってきます。
出会いまで降りても、まだ12時。
スクリューを回収して、できれば本来の裏同心沢の F1、F2くらいまで登ってみたい
ものです。
もう一度裏同心沢を詰めて、F1にたどりつきました。右俣に入ってスクリューを回
収すると、H 田さんが 漸く登ってきました。
トップロープにして練習しないかと誘いましたが、テントに帰って休むと言います。
予定外のラッセルが堪えたようです。
I 口さんと私は易しい右から登っていって、上部の潅木にトップロープを掛けて練習
することにしました。
F1はロープなしでも登れるとは言うものの、左の方はかなり立っています。
I 口はリーチを生かして、遠いところにバイルを打ち込んで巧いこと登っていきます。
私は借りた、左のバイルが決まらずつい強打してしまって、氷の塊を落としてビレーヤ
ーに当たりそうになってしまいました。
こんなことを1時間ほどやってついでに F2も触ってから降りると、
テント場に 15 時です。
テント場では H 田さんがテントから疲れたようすの顔を出して、出迎えてくれました。
ここも今晩で最後、明日朝出発です。
名残惜しい思いでドライカレーを食べると刺激もあって、美味です。
今回の反省は小屋で水を分けてもらえるので、ガスは中 2 本、予備に 1 本計3本あれ
ば十分だったのですが、I 田が 2 本持ってきていて全部 5 本も持ってきていました。
I 田さんは美濃戸から水も担いできており、しかも使い捨てカイロが 20 個もある。
今回の山行は美濃戸口から鉱泉まで 3 時間程度だったので多少の装備過剰でも着いてし
まえば、BC みたいなもので行動に支障はないのですが稜線の縦走や甲斐駒北沢峠のよ
うに BC に 6 時間以上かかる山域であればかなりのダメージになり、軽量化は必須です。
でも H 田さんのホッカイロはサロンパス製の消炎剤付で使用感もよかったです。
近所の薬局で探してみましたがありませんでした。
6 時過ぎには就寝、昨夜も充分寝たせいか、運動量が足りないせいか、長い夜となり
ました。
1 月 2 日(火)曇りのち雪
朝 5 時起床、今日は帰るだけなので早く起きる必要もないのですが、そうそう寝てい
られません。
今日はお茶だけ沸かし朝食は行動食ですませて、6 時 30 分には出発です。
さすがに 3 日続いた晴天も夜半には風が吹き出して、朝にはガスが出てきて周囲の稜
線は全く見えません。
赤い橋まで、40 分。車道を 1 時間 30 分ほど歩いて美濃戸口の赤岳山荘に到着いたし
ました。やはり、八ヶ岳は楽です。
甲斐駒を戸台から北沢峠まで歩かせてしまった大串さんもここなら、きっと冬山を好
きになってくれただろうに。と思いながら歩きました。
労山の会に入って最初に来た山がこの八ヶ岳で 25 年も前のことでした。
当時も軽量化と言いながら、食担が豊富な食材を持ってきて、しまいにはパインの缶詰
まで出てくる始末で、背負子まで持ち出してきて荷物は 30 キロを超えていました。山
の中で美味しいものを食べる必要はないのですが、ついいろいろ持ってくるもので、軽
量化は永遠のテーマでしょう。
八ヶ岳山荘でテレビを見ていると、なんで八ヶ岳という名前になったのかというのをや
っていました。
昔、富士山と八ヶ岳が背比べをして、昔は八ヶ岳の方が高かったのだそうで、八ヶ岳
はヤンチャな二男坊で何かあると噴火して石を投げつけていて 怒った神様が富士山に
どうしたものかと、聞くと富士山は やつが高けー! と言ったそうで、それで神様は
八ヶ岳に雨を降らせて今のように低くしたそうです。
ここで、まともな食事を摂って風呂に入ってタクシーで帰りました。
今回の反省。
○アイスクライミングは道具です。バイルはベントバイルを揃えておきましょう。
○食料は二日目、三日目はドライもので軽量化されていてよかったです、
○装備は水を確保できるので、ガスは一人1本に減らしておくべきです。
○マットは重要な防寒装備で、シュラフは薄くてもマットがしっかりしていれば充分
寝ることができます。
○手袋も常に予備が出せるようにポケットに入れておくべきでしょう。
○計画書をよく読んで余分な装備はないか確認いたしましょう。
今回は天候が良すぎて、厳しい寒さを体験することはありませんでしたが
はもっと厳しいものです。
充分な心構えを持って冬山に入りましょう。
皆さんご苦労さまでした。
次回はウドウチ谷のアイスをやりましょう。
YK記
本来、冬山